魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十一章

『強敵の兆候』

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 諸島群攻略作戦が開始され、干潮時には浅瀬になる場所を落した。
まずはそこを拠点に戦力を集め、浅瀬になった所を次々に落としていく計画である。緒戦は奇襲ともあって損害らしいものはなく、干潮を待ちながら殲滅と情報収集にあたっている。

その中には良い情報もあれば、当然のように悪い情報も含まれていた。

「この島にはリザードマンの集落はありませんでした。これでひとまずの掃討は完了したものと思われます。しかし……」
「他の島から渡って来た。しかも更に強い魔物に追われてと言う事だな?」
「はっ」
 島を軽く回って来た騎士が報告にやって来た。
攻略した島自体に脅威が居なくなったこと自体は良い事だ。島なのから掃討はし易いのだが、逃げ易くもあるので確実な戦果を挙げたという事でもある。だが、同時にこれは次の敵についての情報も示唆していた。浅瀬になったら隣の島に残ったリザードマンが、逃げ込むように大挙してやって来る可能性があるという事だ。

もちろん食われて数も残っていない可能性もあるが、その場合は強い奴が来るだろう。

「という訳だ諸君。交代で休息を取るが浅瀬になる部分の警戒はしておこう。運が良ければ中規模の集落を潰し、その後にゆっくりと強敵を料理出来るな。運が悪い場合は、追い立てて来る奴と狂乱した集団がいっぺんにやって来るという所だ」
「緒戦は楽勝でしたからな。部下たちも腕の見せようもなかった」
「いよいよ本格的な戦というところですかな」
 油断は禁物なので大げさに言うのだが、貴族連中は楽観視している。
弩末自分が直接戦う訳ではないし、自分も参加しなければ功績の全部が俺の物になるからと同乗していたに過ぎない。彼らが言うように『ゴルビー伯の功績がゴーレムを貸与しただけ』で済ませる気だったのだから、足手まといには大人しくして欲しい物である。これが相談に乗ってくれたり、ピンチの時に叱咤激励してくれるならば良いのだが。

ただ、その辺は割り切って次の目標に向けて邁進するとしようか。

「この島を維持し、浅瀬で行ける限りの島々を攻略する。それで諸島群制圧の第二段階が終了と言っても良いだろう。その為には増援到着まで橋頭保であるこの島から逃げ出す訳には行かないし、強力な魔物とやらも能力を把握して討ち取る為の作戦を立てるところまでは行きたいところだ。諸君らの意見を聞かせてもらいたい」
「ゴルビー伯はどんな魔物を想定しているのでしょう? それによります」
「何を弱気な! 本隊の到着までにすべて片付ければ良い話よ!」
 ひとまずの目標を設定した俺の言葉に二人ほど反応した。
騎士の方は話が分かる奴の様で、貴族の前で物怖じしない所を見ると並の騎士隊長以上か、貴族出身の騎士隊長だろう。貴族の方は伯爵だがオロシャの貴族は伯爵が基本単位だし、勇ましい事を言っているが意見を言って居ないも同じだ。味方を鼓舞するつもりならば良いのだが、俺のことを批判したいだけならば微妙である。自ら前線に立つとも言って居ないので、猛将とは呼びようもなかった。

ともあれ質問には答えておこう。

「結論から言うとマンティコアやキマイラが怪しいな」
「リザードマンの目撃例がイル・カナン方面ではこれまで無かった」
「ということは今までは逃げ出す必要は無かったということだ」
「それを踏まえるとリザードマンの中にも強者が居たのだろう。三体から四体の強者が居て、その内の一人は騎士隊長以上であったとする。そんな彼らを蹴散らし、追い出すことの出来る存在はそう居ない。少なく見積もって俺のゴーレムでは無理だし、オーガやトロルの強者でも無理だろう。かといって下級のドラゴンの場合は、目撃例がそれなりにある筈だからな」
 ひとまずリザードマンの構成を騎士大隊くらいとしておく。
一人の団長格に率いられ、三・四名の騎士隊長を連れて行くわけだ。そいつらが個別に五名前後の部下を連れているとして、二十名~三十名程度の騎士集団くらいであると見込んでおく。このくらいの集団になるとオーガやトロルの強者では勝てず、ヘルハウンドなりラミア級の魔物でも勝てなくなる。となるとそれ以上の存在が想像できるが、アースドラゴンやウォタードラゴンが居るならば、流石に水棲種族たちが用意する脅威のリストに入っているだろう。

その上で、中間以上の魔物であるか、中間ではあるが空を飛べるマンティコアやキメラが怪しくなってくるという訳だ。

「司令部を押し上げて我々も上陸し、目撃情報に合わせて必要と思われる能力を持ったマジックアイテムの持ち出しを解禁する。イザとなれば俺と青三条女史で支援用の呪文を使うから、情報を持ち帰れば必勝だ。確実に情報を持ち帰る事を前提にしてくれるならば、交戦の許可も出そう。どうだ、やれるか?」
「そこまで用意していただけるならば私に言葉はありません。勝てとおっしゃってください、方針通りに情報を、その次は勝利をもぎ取って参りましょう」
 俺がおおよその流れを説明すると、その騎士は状況を算定したようだ。
自分が率いる騎士隊で何とかなるかどうか? 情報ならば確定で、その果てに魔法の装備込みで用意すれば勝ち切れると判断したのだろう。俺に推測を聞いたのは、想定が甘いならば控えめに申し出て、相手の戦力以上の準備があるならば手を挙げるつもりだったと思われる。抜け目はないが、情報ちゃ対抗策を重視する人物は嫌いじゃない。

後は俺やこいつの見立てが正しいかどうかだが、それはこれから判るだろう。少なくともゴーレムを盾にすれば、何もできずに敗北などあり得ないのだから。

「そうだ、君の名前を聞いておきたいな。もちろん名簿を見ればヤコブ騎士団の騎士隊長とは判るがね?」
「ジャコビニアスです。ジャコビニアス・ジェイスと申します」
「ではこれから一緒に仕事をしようじゃないか、ジャコビニアス隊長」
 俺は資料を見ずに彼の名前を聞いた。もちろん軽く名前は暗記している。
だが、彼のプロフィールと個性は別物だし、ここで認識を一致しておくことに意味がある。そして何より、並みいる貴族や騎士の前で自分の名前を告げるチャンスというのは早々ないのだ。俺が彼に名前を聞いたことで、彼は名前を売る事が出来たという訳だ。前報酬には到底足りないが、俺の案に乗ってくれたご褒美としては十分だろう。

もちろんだが彼にだけ功績を稼がせる訳にはいかないので、他の騎士たちも我も我もと手を挙げる事になった。

「なんか安い報酬どすなあ? 腰が軽いんちゃいます?」
「同格が多数並ぶ中で名前を売るのは重要らしいですよ。まあ彼は嬉しそうだったんで良いんじゃないですか? どの道、後払いの報酬は確実に支払いますしね」
 そういう訳で会議は無事に終わったわけだが、青三条の視線が痛い。
まあ気持ちは分からないでもない。彼女の立場としては本部付きの魔樹脂であり、西部諸侯の陣営から派遣された監視要員でしかないのだ。それが実戦に必要かもしれないと、勝手に前線に出るとか言われても困るのだろう。

仕方が無いので彼女にも報酬を出す事にしておく。

「そういえば水棲種族からこの辺りで屑で良ければ真珠が採れるそうですよ。酢で溶かして飲むと健康に良いとか。もしかしたら、屑真珠の中に良いモノが混じって居るかもしれませんね」
「女が美容と宝石で靡く思うたらあきまへんよ。無報酬よりはええですけど」
 断るかのように見せて意外とすんなり了承の言葉が返って来た。
満更でもないのか、それとも機会があれば実力を見せておけと言われたのか? もし包集を払ったら協力してくれるなら、マジックアイテムの製造に協力して欲しいものである。

それはそれとして、今までとは違うメンバーでの戦闘が本格的に始まる。
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