魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十三章

『戦いの残り香』

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 何度目かの、そして最大最後の輸送任務が行われた。
部隊は休息明けの出戻り組でしかなかったが、上位ゴーレムを含む何機かのゴーレムが加わっているのが特徴だ。これまでこちらに持ってきていなかった百足ゴーレムによる物資や人員の輸送力強化も重要なファクターであろう。

その威容を見た一同は、援軍の安心感よりも『締め』の重要さに襟を正す。

「本国配備のゴーレムを持って来たのか。いよいよ本気と言うか、さっさと方を付けろと言う事かな?」
「そうでしょうね。このままズルズルと派遣するのは上手くありませんから」
「なら私も休息を取りやめて付き合う事にしよう」
 アンドリオ副団長たちはローテーションで休息するはずだった。
彼らは精鋭部隊の為に入れ替わるのが難しかったのだが、坑道で進み難くなったために逆説的に余裕が出来たのだ。敵の本拠地も攻略中で、強力な敵が居なさそうだというのも大きい。坑道側の人員を三つに分け、諸島群で休息する者と砦で待機しつつ休息する者に分ける予定であった。だが、ここにきて締めの段階に来たことで、彼らも意識を変えたようだ。まあ今更クライマックスに参加できないというのもつらいだろう。

そして増援と休息の取りやめという、大規模な戦力増強が戦線の押し上げに有効打となった。

「では、あえて元の坑道ではなく本拠地制圧に注力しましょう。幸いにもインフラを並行したので、整備した道を使って敵の裏手に出れます。攻略を完遂する必要はありませんので圧力を与えてください」
「なるほど。相手の防備を分散させるのだね? 任せてもらおうか」
 戦力と言う物は集中して運用した方が良いのは戦争の鉄則である。
ただし厚みばかり増しても耐久力のみが増すばかりで、攻撃力を増すためには多面的に動かなければならない。遊撃隊を作る事はしてもそれはイザという時の為であり、無駄に遊兵を作っても良い事は無いのだ。坑道側の場合は休息スケジュールを組んだため、一時的に余裕がある。ならば敵の本拠地を攻める事に使った方が良いだろう。

そして敵の本拠地で有利に戦うための前条件は揃っている。

「問題点として攻め難い理由ですが山奥の拠点というのが半分、残り半分は普通の人間よりも強い魔族という事が要因です。隘路に籠られたら突破し難いという意味では行動と同じですね。それを何とかする為、投石器を回そうと道を作っていたことが幸いしました」
「馬が使えないのは痛いが、それでも我ら騎士団ならば問題ないよ」
 騎士の本領は馬の衝突力を加えた突撃にこそある。
だが、魔族の島討伐では地形が分からなかったので最初から多くを用意していない。馬を扱うのが巧い騎士や、騎乗戦闘の戦技を多く持つ者のみに帯同を許可していた(加えて一部の突撃専門小隊)。なのでそれほどショックという訳でもないのだろう。アンドリオ副団長は素早く戦術を考え始めたようだ。とはいえ言質を見てないので狭い道に斬り込んで数体を倒し、裏手に戦力を引き付けて敵を消耗させるのはどうすべきか……くらいの思案だろう。

ともあれ、これで本拠地側に強力な魔族が残っていても何とかなるのが大きい。加えて敵を表と裏から攻め立てれば、勝利できる公算は高くなる。場合によってはゴブリンなどの雑魚は逃げようとする可能性すらあるだろう。

「しかし、随分とゴーレムが増えたね。見せ金も含めて必要だとは思うが」
「不要に成ったら旧型は整えて公式的に売りに出しますよ。遠征軍の出費を回収するの都合もありますしね。それを買うも買わないも、何に使うかも諸国の都合です。少なくとも社会主義共和国は買うでしょう」
 ゴーレムは『それなり』の戦力であり労働力である。
保有し過ぎれば他国の警戒を買うし、この島に多数配備し過ぎても本国から警戒されてしまう。同時に少人数でもこの島を守る事が出来る上、労働力になるのだ。他国が攻めて来る可能性がある間は置いて置いて、労働力として使用。不要に成ったら急造品は解体しつつ、形がソrなりに整っている旧型は売りに出す事になるだろう。もちろん、社会主義をでっちあげた新興国に購入できる余裕がある筈は無い。将来の物資を見返りに表向きは『販売した』事にする流れになるだろう。

戦力があるからイル・カナンやプロシャに攻められる可能性が減り、開拓する労働力に回す事が出来るのだ。まず受け入れるだろう。

「なるほど。そういうのも合わせて本国は許可したのかな。では、準備が出来次第に出撃するとしよう」
「それまでは休んでいてください。本来は休息の期間の筈でしたしね」
 面倒なので、この後の結果を先に説明しておく事にしよう。
予備戦力が増えて、それをそのまま包囲網に使ったのだ。相手を両側から挟み込む形で一気に勝負が付き、指揮していた魔将を『一応』は倒す事にまで成功した。だが、問題はそこからで倒しはしたが『滅ぼす』までは行けなかったのだ。魔将が上級アンデットである事までは理解していたが、死霊魔法以外の分野に関して見誤っていたのである。それこそが容易く本拠地を落せた遠因であり、同時に逃げ延びられた原因でもある。

そう、奴は東部沿岸でキメラを研究していた魔術師でもあったのだ。

(まさか研究職二つとは思わなかったな。まあ魔法系数人も要らんか)
(賢者と呪文を撃ち合った魔将が攻撃型で、留守居役が研究職として)
(表に出て来るイメージのアンデットとしての部分が後付けなのかもな)
(キメラを研究するのに時間が足りなくて、その頃にはあった死霊魔法で延命した。ワザと体をスライムと合体させることで不死性を強化して……いや、それとも研究に失敗して融合し始めたからアンデット化することで魔法能力を保った? まあ、どんな理由があるにせよ対処する必要があるのは同じだな)
 本拠地を落したが、敵がスライムになって逃走したという。
魔法系統を二つ持っているるのは以前から予想していたが、キメラ研究の奴だったようだ。死霊魔術師になる呪文と、スライムの体を組み合わせることで、まるでリットと吸血鬼の能力を兼ね備えているかのような存在になったのだろう。死ににくいし魔力があるし、豊富な魔力で後方支援が出来る。だが、戦闘力がそれほど高くないから、魔法が侵攻した序盤のみしか活躍できなかったのではないだろうか? そして不要になった時期にこの島に戻されたとか?

いずれにせよ、敵が東部沿岸の研究所の周囲なり、あるいは他の場所に逃げ場を作っているのかもしれない。これを放置するわけにはいかないだろう。死霊魔法とキメラの創造魔法、その二つがあれば一人でも戦力を増やせるのだから。
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