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空の中で暮らす
小さすぎる家
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島内を道に沿って歩いていると、豊富な樹木に遮られて意外と海が望める場所が少ない。
そんな中でふいに、崖によって開けた場所に差し掛かった。
「崖? 急に?」
唐突に思えた羽香奈は足を止める。
まるで島に裂け目が出来てしまったみたいにぱっくり割れている。
とても人の身で降りられるようには見えない急こう配。
しかし、眺望は抜群で、海がよく見える。
観光地で眺めが良いのだから当然のように、展望台としてきちんと整えられている。
羽香奈も手すりにつかまって下と、前方の海を交互に堪能する。
「山二つっていうんだ。
海の波にだんだん削られてって、崩落しちゃったんだって」
「崩落……江ノ島の他の場所って大丈夫なのかな」
「さぁ……あんまり考えたことなかったけど。
そう言われるとうちも大丈夫かなって気がしてきた。
崖の上に建ってるし、ボロいし」
せっかく受け入れてくれることになった家がなくなったら残念すぎる。
どうか崩れませんように、と羽香奈も祈った。
あ、あとでお参りする本宮さんってところで、ご挨拶のついでにそれもお願いしよう。
そう決めた。
山二つを過ぎて階段を降りた先に、潮崎家はあった。
年季が入って黒ずんだ、木造の平屋建て。
「じいちゃん、ばあちゃん、ただいま。
羽香奈を連れてきたよ」
玄関口は大きなガラス窓の引き戸だった。
元は店舗だったというのだからさもありなん。
ガラガラと、不愉快なきしみのない、耳に心地よい音を立てて葉織が開けてくれる。
元はお土産屋さんだったというスペースはがらんとしていた。
丸いテーブルとイスが二脚、皮がぼろぼろに剥がれた古い、黒いソファーが置いてある。
それらに座ると見やすいであろう位置にテレビがあり、部屋の片隅にはダイヤル式の黒電話。
食事は台所のテーブルでとるもののここは居間として扱っていて、家族で集まって寛ぐ場所になっているらしい。
電気は天井からぶら下がった白熱電球のみで、昼間だというのに少々薄暗い。
暗い室内だからこそ、四角い窓と、崖に面した庭への出入り口から覗く青い海と空が際立って見える。
「おかえり、葉織、羽香奈ちゃん……ん?
葉織や、まぁたケガして帰ってきたんかねぇ?」
腰の曲がった老婆が体を震わせながら、歩くのもやっとといった体で出迎えてくれた。
葉織の頬の不自然な赤らみにすぐ気が付く。
「せっかく羽香奈ちゃんにはじめましての挨拶をしようっていうのに、おまえが水を差すようなことをしちゃあ駄目じゃないか」
「ごめん……」
「謝らないでよ、葉織くんが悪いんじゃないもん。
あの、わたしはいいですから、葉織くんの手当てを……」
そんな中でふいに、崖によって開けた場所に差し掛かった。
「崖? 急に?」
唐突に思えた羽香奈は足を止める。
まるで島に裂け目が出来てしまったみたいにぱっくり割れている。
とても人の身で降りられるようには見えない急こう配。
しかし、眺望は抜群で、海がよく見える。
観光地で眺めが良いのだから当然のように、展望台としてきちんと整えられている。
羽香奈も手すりにつかまって下と、前方の海を交互に堪能する。
「山二つっていうんだ。
海の波にだんだん削られてって、崩落しちゃったんだって」
「崩落……江ノ島の他の場所って大丈夫なのかな」
「さぁ……あんまり考えたことなかったけど。
そう言われるとうちも大丈夫かなって気がしてきた。
崖の上に建ってるし、ボロいし」
せっかく受け入れてくれることになった家がなくなったら残念すぎる。
どうか崩れませんように、と羽香奈も祈った。
あ、あとでお参りする本宮さんってところで、ご挨拶のついでにそれもお願いしよう。
そう決めた。
山二つを過ぎて階段を降りた先に、潮崎家はあった。
年季が入って黒ずんだ、木造の平屋建て。
「じいちゃん、ばあちゃん、ただいま。
羽香奈を連れてきたよ」
玄関口は大きなガラス窓の引き戸だった。
元は店舗だったというのだからさもありなん。
ガラガラと、不愉快なきしみのない、耳に心地よい音を立てて葉織が開けてくれる。
元はお土産屋さんだったというスペースはがらんとしていた。
丸いテーブルとイスが二脚、皮がぼろぼろに剥がれた古い、黒いソファーが置いてある。
それらに座ると見やすいであろう位置にテレビがあり、部屋の片隅にはダイヤル式の黒電話。
食事は台所のテーブルでとるもののここは居間として扱っていて、家族で集まって寛ぐ場所になっているらしい。
電気は天井からぶら下がった白熱電球のみで、昼間だというのに少々薄暗い。
暗い室内だからこそ、四角い窓と、崖に面した庭への出入り口から覗く青い海と空が際立って見える。
「おかえり、葉織、羽香奈ちゃん……ん?
葉織や、まぁたケガして帰ってきたんかねぇ?」
腰の曲がった老婆が体を震わせながら、歩くのもやっとといった体で出迎えてくれた。
葉織の頬の不自然な赤らみにすぐ気が付く。
「せっかく羽香奈ちゃんにはじめましての挨拶をしようっていうのに、おまえが水を差すようなことをしちゃあ駄目じゃないか」
「ごめん……」
「謝らないでよ、葉織くんが悪いんじゃないもん。
あの、わたしはいいですから、葉織くんの手当てを……」
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