江ノ島の小さな人形師

sohko3

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いつか静寂だった島

誕生日プレゼント

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 文化財に指定された風呂や部屋出しの豪華な料理が目当てでの宿泊だったが、

「あ~……天井が高い! 足伸ばして眠れる!」

 葉織は部屋の広さに思いがけず感動を覚えていた。

 様々な思い出も現在の暮らしも支えてくれる愛すべき我が家ではあるが、いかんせん小振りに過ぎる。

 しかも、子供の頃から変わらず二段ベッドで寝ている。

 大部屋ではなくごく標準的な部屋に泊まっているというのに、葉織にとっては大広間のように思えた。

「ほんとだね~。
ふかふかのお布団で寝るのって気持ちいい」

「……前から考えてたんだけどさ。
このまま一生二段ベッドで寝るっていうのもなんだし。
俺達もこれからはじいちゃん達が使ってた部屋で寝ようか」

「え……ふたりで、一緒に?」

「うん……羽香奈が嫌じゃなかったら」

 半蔵とハツはふたり用の布団で一緒に寝ていた。

 二段ベッドよりはマシだろうが、旅館に比べたらそれでも窮屈なことに変わりはないのだけど。

「嫌なわけないよ。嬉しい……」

 布団は二枚敷かれていたが、羽香奈はもぞもぞと動いて、葉織の布団に入り込んだ。

 葉織も拒まず、やって来た羽香奈を優しく抱き寄せる。

「ありがとう。こんなに嬉しい誕生日プレゼント、他にない……」

「来年からのハードル上がっちゃったなぁ」

「そんなことないよ。
誕生日に葉織くんと一緒にいられるだけで、他に何もいらないもん」

 それが羽香奈の偽りない本心であるとわかっているけど、祝う側としてはそうもいかないんだよなぁと葉織は胸中でぼやく。

 まぁいいか、来年のことなんか今は考えないで、目の前の温かな幸せを堪能しようと思った。
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