江ノ島の小さな人形師

sohko3

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いつか静寂だった島

洞窟風呂

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 プールの後は入浴だ。その時間は男性が洞窟風呂、女性がローマ風呂の時間だった。のれんのところで別れて、それぞれ中に入る。

 先に体を綺麗に流すため、葉織は洞窟風呂の洗い場へ向かったのだが。

「うわぁ……」

 奥の方に積まれた木製の風呂椅子と洗面器を取るためそちらへ行くと、細く小さい鳥居が十基以上? 連なって、最奥に弁天様の像が鎮座している。

 洞窟風呂自体が窓も一切なく薄暗い、通路も狭い。

 そんな中で、女性の神様である弁天様に見守られて全裸で体を洗う……どことない不気味さがある。

 そそくさと体を洗って湯船に浸かるが、葉織は心置きなく楽しめたかというと、ちょっと微妙だった。


 浴場の近くには岩本院資料室という、江ノ島の歴史に触れられる展示室がある。

 先に出た方がそちらで待っているという約束だったので、葉織は資料を眺めながら待っていた。

「お待たせしました!」

「どうだった? ローマ風呂」

「イメージしていたより小ぢんまりとしてたけど、綺麗だったよ。
葉織くんは?」

「洞窟風呂……なんか怖かった」

「そうなの? どんな感じか楽しみ!」



 夕食は部屋に運んでもらえる。

 日頃、小さな台所の小さなテーブルで食事をしているふたりなので、広い座卓いっぱいに次から次へと運ばれてくる海鮮料理はあまりに豪華だった。

 足を伸ばして、時間も食後の片付けも気にせず味わえるのが最高だ。

 自分達も片瀬漁港から食材を買っているのだが、同じ仕入でも旅館でプロの料理人が作っているとなると趣が全く違うというのも興味深かった。

 ひとつひとつは小皿料理の集合だと言うのに、全て食べ終わる頃にはお腹が膨れるほどのボリュームで苦しいくらいだった。

 当然ながら自宅で見るのと全く変わらないテレビ番組を眺めてしばらく食休みをしてから、二度目の入浴に出かけた。

 入れ替え制なので、今日中にもう一度行っておかないと葉織はローマ風呂を、羽香奈は洞窟風呂を体験出来ないから。


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