【完結】「お前を愛することはない」と言われましたが借金返済の為にクズな旦那様に嫁ぎました

華抹茶

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 そして案の定というかなんというか。エリオットがドレスなどの購入を控えるよう言ったが全く聞き入れないという。

「若旦那様が『買ったドレスや宝石が沢山あるんだから、しばらく買わなくてもいいだろう?』と言ったら『酷い! 私、あの人にいじめられているのにエリオットまでそんなこと言うの!?』と泣いて泣いて大変だったみたいですよ」

 はぁ…。全くため息しか出てこない。

 私がいつ、どこであの愛人をいじめたというのか。むしろ関わりたくないと思っているのに。

「若奥様、本日の夜、若旦那様が夕食を一緒にとられるとのことです」

 侍女の愚痴を聞いていたら執事長から爆弾発言が飛び出した。

「え? 夕食を一緒にとるですって!?」

 それを聞いた侍女からは「やりましたね、若奥様!」と拍手喝采だが、私は処刑台に乗せられた咎人の気分だ。…嫌だ。物凄く嫌だ…。あいつと一緒になんか食べたくない。

 だけど私にそれを断る権利なんてあるわけはなく。とぼとぼと足取り重く食堂へ向かえばエリオットは先に待っていた。

「…アメリア。よく来てくれた」

「……いえ。夕食を共に、と伺いましたので」

 この人今私のこと名前で呼んだ!? 嘘でしょ!? 最初っから散々お前呼ばわりされていたのに!?

 内心かなり動揺しているが、顔には出さず(出さなかったはず)大人しく席に着き食事をとることにした。
 

「……………」

 …なんで何もしゃべらないのか。ただただ無言で食事をとるだけになっている。何か話があるから一緒に食事をとっているんじゃないのか。

 気まずい。非常に気まずい。

「……その。今までジェニーが済まなかった」

「え?」

 ただフォークを口に運ぶ作業をせっせと行っていたら、重い口を開いてエリオットがいきなり話しかけてきた。しかも謝罪を。

「私は今までジェニーの話だけを信じていたんだが、執事長をはじめ周りの人間に聞けば今までかなり酷い態度をとっていたらしいな」

「…一体どうされましたの? 急にそんなことを仰るなんて」

「領地に戻っていただろう? その時に執事長から手紙が送られてきて――」

 愛人が本館へ侵入し、暴言を吐き執事長をクビにするだの騒いだあの一件について執事長が知らせると言っていた通り、伯爵家当主にその話が無事伝わったらしい。その時の当主はかなり怒り心頭だったという。そしてエリオットの愛人に対する管理が不十分だとしてお叱りを受けたそうだ。

 当主はかなり傲慢な貴族の考え方を持っていて、平民の扱いは良いものではない。平民ごときが本館へ足を踏み入れたことが許せなかったらしく、今では別館にいることすら許せないらしい。今すぐ追い出せと言われエリオットが何とかするからと宥めている最中だそうだ。

 そしてエメラルドが採れなくなっている今、ここへ送られてくる資金もかなり減ることを知り愛人に無駄な買い物を控えるように伝えたが泣き喚くしかせず、ほとほと困り果てているらしい。

「聞けば君は一切自分の物を購入せず、館の維持費のみに使っていると聞いた。そして宛がわれた資金もしっかりと残し、最悪な状況を考えて対策もしていると。…そして自分の食事まで使用人と同じものを食べているとか」

「…執事長から聞きましたのね」

 彼の方へ非難するような目線を向ければただにっこりと微笑み返された。そんなこと別に言わなくてもいいのに余計なことを。
 だから今日はエリオットと同じ食事で用意してもらったというのに。

「…それなのにジェニーは高価な物を買うことを止めようとはせず、この前は勝手に商人を呼び寄せ宝石を購入していたらしい。もう二度と勝手にそんなことをさせるつもりはないが、しっかりした君からだったら聞いてくれると思うんだ。だから君からもジェニーに話をしてもらえないか?」

「はい? なんて仰いまして? なぜ私が彼女と話をしなければなりませんの? 以前あちらから接触された際、私の言うことを全く聞きませんでしたわ。むしろ私がいじめているだなんて言っているそうですね。
 そもそも私は契約通り彼女との接触は致しません。彼女への説明に関してはエリオット様がなさると仰ったのですから責任を持っていただきたいですわ。私はお飾りとはいえ、正妻としての働きはしていると思っております。エリオット様が付けられた条件なのですから、ご自分でなんとかなさってくださいまし」

 あまりにも自分勝手な発言に顎が外れるかと思った。自分で何ともならなかったから私に話をしろだなんて自分勝手すぎる。

「だが君は正妻だろう? 正妻だったら愛人の管理もするべきだ。夫が頼んでいるんだから君はそれに従うべきだろう。それにリンジー領の借金返済が出来たのも私のお陰だ。君は私の言うことに従うべきではないのか?」

「な…」

 なんですって!? じゃああの契約書は一体何の意味があるっていうの!? 信じられない…。

 だけど悔しいけれど借金返済が出来たのは紛れもなくこの人のお陰だ。不服だけども従うしかないのかもしれない。従わずにいて「金を返せ!」なんて言われたら私の家族にも迷惑が掛かってしまう。

「ではジェニーのことは頼んだからな。しっかりと話をするように」

 そう言い捨ててエリオットは食堂を出ていった。

 クズだとは思っていたけどここまでだとは思わなかった。だけど借金返済のために条件を呑んだのは私だ。怒りを呑み込むしか方法はない。これは家族とリンジー領の為だもの。

 部屋に戻ると侍女も「若旦那様には呆れました! なんて酷いことを仰るのか!」とカンカンに怒っていた。私が何とかやっていけているのも使用人たちが私に対して寄り添ってくれるからだ。本当に感謝しかない。
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