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しおりを挟むコンラート様と婚約を無事に結び、めでたく『婚約者』となった。
婚約を結ぶ時、コンラート様のお父様、お母様、お兄様にもお会いした。
皆様、想像どうりの美形一家で目が潰れるかと思った。私と父の平凡顔2人はまるで場違いだった…。
ブランディス家は私の事を歓迎してくれたようで、その時はただただ嬉しい気持ちだった。
今でも夢なんじゃないのかと思う今日この頃。
だけど…。
しばらくすれば学院でも私とコンラート様が婚約したという話は広がってしまっていて、さらに輪をかけてご令嬢たちから目の敵にされてしまっている。女の嫉妬のなんと怖いことか…。
ただ、コンラート様は第二王子殿下の側近候補でもあり、私と殿下もその繋がりで知り合いだから何かをされる、といったことは今のところないのが救いだけども。
まあそれからの私の生きにくさったらありゃしない。元々ボッチで友達なんかいない私だけど、学院では更に浮いてしまっていた。
これはもうしょうがないこと、と諦めている。そりゃあの見目麗しきコンラート様と婚約したいご令嬢はそこら中にいたのだから。それをぽっと出の貧乏男爵家の平凡顔にかっさわれたんだから面白くないわよね。
コンラート様や殿下が近くに居ない時は、敢えて聞こえるように私の批判を話している。
『どうやら頭だけは切れるようだから、あの女に脅されて婚約してしまったお可哀そうなコンラート様』とか
『媚薬を無理やり飲ませて既成事実を作った娼婦のような女』とか
『暗殺者を雇って家族を人質にとり無理やり婚約を迫った』とか
それ以外にも、それはもう酷い捏造話が繰り広げられていた。
どれもこれも、かなり無理がある設定なんですけどねー…。
本当にそれが出来るかどうかは関係なく、とにかく私の評判を落としコンラート様から婚約破棄されることを期待している感じだ。
だけど当のコンラート様はそんな話を知ってか知らずか、特段の予定がなければ週末は我が家にきて、質素な食事を嬉しそうに食べていく。
「ベティーナの料理を食べていると幸せな気持ちになります」と、本当に嬉しそうなのだ。
最近は一緒に畑仕事なんかもするようになってしまって、ブランディス家の皆様が怒っていらっしゃるんじゃないかと、最近は気が気じゃない。
「え? 侯爵邸へ行く?」
「はい。2週間後の休日に私の家へと行きますので予定を空けておいてもらえますか?」
そんな中、ブランディス家へと招待されてしまった。
……私、殺されるんじゃないだろうか。
「難しく考えなくても大丈夫ですよ。婚約が成立したあの日以来、お会いできていませんから貴女に会いたいと懇願されているんですよ。
私も貴女も一心不乱に勉強してますからね。忙しいからと伝えてはいたんですがいい加減に連れて来いとうるさくて……。どうも貴女のことが気に入ったらしく次はいつ会える? と最近はこればっかりです」
「はぁ…わかりました。2週間後、死ぬ覚悟をしておきます」
「私の話聞いてます? 気楽でいいですからね? 大丈夫ですか?」
大丈夫なわけないです。私の命日となるかもしれないのに……。
そして死ぬ覚悟もできないままあっという間に2週間が過ぎ、侯爵家へ伺う時がやってきてしまった。
ああ…なんだか胃のあたりがしくしく痛む気がする…。
コンラート様のお迎えにより、馬車へ乗り込み侯爵邸へとずんずん進んでいく。前に一度、侯爵邸へと行ったことがあるけどあの時はあまりにも現実味がなさ過ぎて、頭がぽわぽわしていたから余計なことは考えられなかった。だけどあれからしばらく日が経った今は恐怖しか感じていない。
「大丈夫ですか? 顔色があまりよくありませんが」
「は、はい。あの…緊張しておりまして……」
「私が側にいますから安心してください」
そう言ってカチカチに固まる私の手を優しく握ってくださった。その手の温かさに少しだけ力を抜くことができた。様な気がする。
こんな平凡顔の貧乏男爵家の私が婚約者だなんて、本当はブランディス家だって嫌なんじゃないだろうか。
美しいご令嬢たちを差し置いて、私がコンラート様の婚約者で本当にいいのだろうか。
こんな風に最近は悩むようになった。
コンラート様から婚約の打診を受けたあの時は『きっと大丈夫』だなんて能天気な事を考えていたけれど。
時間が経つにつれ、本当にこれでいいのか、もっと相応しい方がいるのではないのか、とそればっかりが頭の中を占めている。
もしかしたら今日は婚約を解消される可能性もあるだろう。そうなったらコンラート様のためにも受け入れた方がいい。
コンラート様も私のことを好きだと言ってくださっているけど、私なんかよりもっと相応しい方がいらっしゃるのは間違いないのだから。
「……また変なことを考えているような気がする」
ぼそりと呟いたコンラート様の声は私の耳には届かなった。
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