【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶

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6.告白とその返事

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 魔王を倒したあと、みんなの余力があったので森を浄化しながらまだまだたくさんいる魔物を討伐することになった。
 フェリクスもシャノンもダグラスも、魔王を倒せたことでテンションも高く、今までにないスピードで魔物を討伐していった。
 すべての魔物を倒すことはできなかったものの、数はだいぶ減らせただろう。
 
 日が暮れたところで馬車のところへ戻り、その日は飲んで騒いで楽しい夜だった。
 次の日には馬車ごと転移でアーマンド王国へと戻ると、いきなり現れた俺たちに城は大混乱。転移魔法が使えるなんて誰にも言ってなかったからな。
 無事に魔王を倒せたことを知らせるとまたまた大混乱でしばらく城の中が大変なことになった。

 俺たちは魔王を倒した英雄となり、城の中でとんでもないもてなしを受けることに。シャノンなんて平民出身だから、豪華すぎる歓待にちょっと目を回してて面白かった。まぁ俺もそうなんだけど。
 しかも一か月後には魔王討伐の祝勝パーティーが開かれることにもなった。今はその準備で城の中がごった返している。もう十分すぎるくらいもてなしてもらったし別にしなくていいのにな。

「そういうわけにはいかないよ。ソウタがいてくれたから魔王を倒せたのだから」
「……で、フェリクスは一体いつになったら俺の世話係をやめるの?」
 
 俺の言葉ににっこりと笑うだけのフェリクス。帰還して数日はさすがにフェリクスもいろいろと忙しかったらしく、世話係として側にいなかったものの今ではずーっと俺と一緒にいる。仕事はどうした。
 
「それより私も空間魔法を会得したんだ。ほら」

 フェリクスは嬉しそうに会得したという空間魔法を見せてくれた。俺が作ったインベントリのように、何もないところから次々と品物が飛び出してくる。

「おお! ついにできたのか! やっぱりフェリクスはすごいな。完璧じゃないか。だけどどうして服やら靴やら宝石ばっかり出てくるんだ?」
「ん? なぜってこれはソウタに贈る品物だからだよ」
「はい?」

 目の前には山と積まれた豪華な品物。これが全部俺への贈り物……?

「これは私からのほんのささやかな気持ちだよ。ソウタ、受け取ってほしい」
「いやいやいや! 待て待て待て! こんなにもたくさん豪華なものを受け取れないって! 今までにも十分いろいろたくさん貰ったから!」
「それは勝手に異世界からソウタを召喚したことと、危険な魔王討伐をお願いしたんだから当然だよ。この品々は私個人からのものだから気にしないでほしい」
 
 受け取れない、受け取って、としばらく押し問答をした結果、俺が折れることになった。フェリクスは絶対に折れる様子がなかったことと、フェリクスが段々と悲しい表情になっていって心が痛くなったから。

「ソウタ、あなたがいてくれなかったらこの世界はいつか破滅していただろう。この世界のために尽力してくれて、本当にありがとう」
「お、おうっ……」

 もう何度もお礼を言われたし十分なのに、フェリクスは毎日のようにこうしてお礼を伝えてくれる。しかも俺の右手をそっと持ち上げて指先にキスをするというおまけつき。
 とんでもないイケメン王子様にこんなことされて恥ずかし過ぎるなんてもんじゃない。

 それになんだかフェリクスからのスキンシップが増えたような気がする。討伐の旅に出る前からちょくちょくあったのだが、旅に出てから段々増えていった。
 今ではもっと遠慮なく触れられている気がする。
 今だってソファに座っているが隣にぴったりとくっついて座っているし、フェリクスの手は俺の腰に回されている。俺が女の子だったら間違いなくドキドキするところだ。……男でもドキドキしてるんだけどな。

 俺を勝手に異世界召喚した悔恨と、魔王を討伐したという恩義を感じてここまでしているんだろうと思っているのだが。
 ――ちょっといきすぎてるような気がするのは間違ってないよな? 異世界ではこれが普通なのか?
 
「ねぇソウタ。魔王を倒した時に見せてくれた浄化魔法の具現化、あれはどうやったの?」
「え? ああ、あれは――」

 フェリクスは魔王を討伐したあともこうして俺に魔法についていろいろと質問をしてくる。魔法にいろんな可能性があることが楽しくて、俺に教わっては練習してたくさん新しい魔法を身につけている。
 俺もこいつとの魔法談義は楽しいし、フェリクスは頭も柔軟だからこの世界になかったことでもすんなりと受け入れて吸収する。それが面白くて話に花が咲き、気が付けば夜中だったなんてこともザラだ。

 ダグラスやシャノンも部屋に遊びに来てくれるし、城の中にある訓練場で一緒に魔法を開発して遊ぶこともある。
 フェリクスの距離感が近いことは気になるが、それ以上のことはないためあまり気にすることはしなくなった。

 そしてついに俺が元の世界へ帰れる目途が付いた。祝勝パーティーの翌日に。
 しかも俺が召喚された日、その時間で戻れるらしいのだ。おかげで俺は無断欠勤したり浦島太郎化する心配はなくなった。

 祝勝パーティーはもう二度と拝めないだろうなというくらい豪華絢爛だった。
 王族の方々と同じような扱いを受け、各国から代表者もたくさん来てくれて感謝とお祝いをこれでもかと貰った。
 討伐メンバーは見るからにお金がかかっていそうな豪華な衣装に身を包み、とにかくひっきりなしに挨拶にくる人の対応が大変だった。

 俺やシャノンは着慣れない正装にそわそわしていたし、他国の王族に会うたびに「ひえっ」と慌ててばかりだった。一方ダグラスやフェリクスはさすがの一言で、慌てる様子もなくにこやかに会話をしていた。さすが貴族と王族。場慣れ感がすごかった。

「ソウタ、私と一曲踊ってくれますか?」

 フェリクスは美しい所作で俺に片手を差し出す。その様になった姿にぽかんと見惚れて間抜け面を曝け出す俺。

「いや、俺、ダンスなんて踊ったことないんだが?」
「大丈夫。楽しめばいいんだよ」
「って、おい!」

 フェリクスは俺の手を取ると無理やりダンスホールへ連れて行った。動画なんかで観た社交ダンスのように俺の腰に手を回すと、流れる音楽に乗ってステップを踏み出す。
 だが運動神経がない俺が、軽快にステップを踏むなんてことはできず、あわあわと縺れる足をなんとかしようと藻掻くだけ。ちゃんと踊れてはいないのにそれでもフェリクスは楽しそうで笑っていた。
 俺もそれにつられて笑ってしまい、二人で「あはは」と声を上げながらただぐるぐると回るめちゃくちゃなダンスを踊った。それが楽しくて三曲も続けて踊ったくらいだ。
 
 たくさん踊ったことで喉が渇き、フェリクスと一緒にドリンク片手にバルコニーへ。俺たちのあとをついてこようとする人が多かったが、王族専用スペースだったために途中で足止めを喰らっていた。おかげで少し静かになってほっとする。

「ソウタ、初めてのパーティーはどう?」
「ああ、人が多くてあいさつ回りも大変だったし、何がなんだかよくわからないけど楽しんでるよ」

 こんな経験は向こうの世界に戻ったら二度とできないことだ。大変なことも楽しいことも、ひっくるめて俺にはいい経験となった。
 シュワシュワと炭酸が弾けるお酒も美味しい。少し甘いがダンスを踊ったあとだからこの甘みが体に沁みわたるようだ。

「……ねぇソウタ。明日、あなたは元の世界に戻るんだよね?」
「……ああ」

 フェリクスは声のトーンを落とし、真剣な表情でそう聞いてきた。それに合わせて俺も真剣に返事をする。
 ギュッと眉間に皺を寄せたフェリクスは、俺の左手をそっと握る。

「ソウタ、私はあなたにこの世界にずっと残ってほしいと強く思っている。私は……私はあなたのことが好きだ。愛している」
「…………は?」

 フェリクスの突然の告白に頭の中がフリーズした。冗談言うなって! と笑い飛ばしたいのにフェリクスの顔は真剣そのもので、嘘や冗談を言っているようにはまったく見えない。
 こいつは本気で俺のことが好きだと言っているのか? こんななんの取柄もないサラリーマンである俺を? 顔も平凡で女子にモテたことがないこの俺を?

「魔王を倒せたからじゃない。魔法がすごいからじゃない。ソウタが、こんな世界のために命を懸けて尽力してくれたその優しさ、真面目さ、実直さ、すべてが愛しい。王太子の私に『無理をするな』と言ってくれたことも、旅の中で気遣ってくれたことも、全部、全部が嬉しくて日々想いは募るばかりだった」

 フェリクスの情熱的な告白を受けて、俺の顔は段々と熱くなる。真剣な告白をされるって恥ずかしくもあるが、こんなに嬉しいことでもあるんだな。

「ソウタ、私の気持ちを受け取ってくれないか? 私はあなたがいてくれるなら、どんなことだってやれる。あなたを幸せにすると誓う。だからどうか、どうか私の気持ちを受け取ってください」
 
 そう言ってフェリクスは俺の指先にキスをする。今までにも何度かこうしてキスをされた。王子様だったから当たり前の行動かと思っていたが、そうじゃなくて俺を好きだと表す行動だったんだと今になって気が付いた。
 一体いつからこいつは俺のことを好きだったんだろうか。世話係をやめなかったことも、俺のことが好きだったから続けてくれたのだろうか。
 
「……ありがとうフェリクス。お前の気持ちはすごく伝わった。ここまで想われて俺は幸せ者だと思うよ。本当にありがとう」

 真っすぐ過ぎるほどの気持ちは痛いほどに伝わった。だから俺も真剣に答えを返すよ。

「でもごめん。俺はお前の気持ちを受け取れない。俺はこの世界の人間じゃない。明日、俺は元の世界に帰るよ。だけどお前と、お前たちと過ごせた時間はずっと俺の大切な宝物だ。本当に楽しかった。フェリクスと出会えたことも本当によかったと思ってる。だからどうか、他の人と幸せになってくれ」

 告白を断るってこんなにもつらいものなんだな。真剣な想いだったらなおさら。
 受け取れないと断られたフェリクスは泣きそうな表情を浮かべる。ごめん。気持ちに応えられなくて。
 フェリクスは本当にいい男だと思う。見た目だけじゃなくて中身もすべて。短い時間だったけどそれは嫌というほどわかっている。

 だけど俺は駄目なんだ。フェリクスを恋愛対象として見ることができない。だって俺は異性愛者だから。
 ――それに俺は恋愛自体を諦めている。

「……はは。断られるのはわかっていたけど、こうしてはっきり言われると胸にくるものがあるね。でもありがとう。真剣に答えてくれて。私もあなたと一緒に過ごせた時間は何よりの宝物だ。本当に今までありがとう。最後にあなたの幸福を願わせてほしい」

 フェリクスはそう言うと、俺のおでこにキスをした。少し長いキスだったが、きっとフェリクスの中で折り合いを付けようとしているのだろう。
 その後、フェリクスは俺をそっと抱きしめた。キスも抱擁も嫌なものではなく、まるで想いを断ち切るための儀式のようだ。
 俺もフェリクスの背中に腕を回し抱きしめ返す。今までありがとうの気持ちを込めて。

 そして翌日、俺は召喚魔法の魔法陣の中に立った。俺が元の世界に帰るとあって、王族の方々に討伐メンバーのみんなが見送りに来てくれた。
 フェリクスと最後に笑顔で「ありがとう」と握手をして、俺は元の世界に転移した。
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