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17.お前が来るんかい!
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今日はきらきら金曜日~! ということで、夜はまたフェリクスに召喚されて異世界へ行く日だ。
一週間の疲れはあるものの気分はるんるん。仕事もはかどり定時で会社を飛び出した。
帰宅後、俺はすぐに動きやすい服へと着替える。持っていく荷物の確認もすると時間は七時十分前。毎回夜七時に召喚されるからいつよばれてもいいようにと、ガスの元栓を閉めたり鍵をかけたりして回った。
そして夜の七時。いつもの時間に俺の足元に見慣れた魔法陣が現われる。魔法陣がぐるぐると周り、段々と光も強くなる。最後にピカッ! と一際強く輝く直前ぎゅっと目を瞑った。
『ソウタ! 会いたかった!』
俺が目を開ける前にぎゅっとフェリクスに抱きしめられる。これも毎回おなじみの光景だ。なのだがとてつもない違和感に襲われる。
「フェリクス、だよな……ってあれ? ん?」
目を開けると目の前にはフェリクスの顔。これもいつもの召喚と変わらないのだが何がおかしい。
っていうか、俺転移してない! ここって俺の部屋じゃん!?
『うわぁ、ここがソウタが住んでいる家なんだね! すごい! こちらの世界は何もかもが違う!』
「え? え!? はぁ!? ちょ、なっ、フェリクス!? お前がこっちに来たのか!?」
『あ、そうか。ニホンゴ!』
嘘だろ!? 予想外のことが起こって俺はパニックだ!
「えーと、こんばんはソウタ。私のニホンゴはどう?」
「……大変お上手です」
「よかった! ソウタがこちらの世界に来る時は言語翻訳機能があったから会話に不便はなかったけど、私がこの世界に来た時にその保証がないかもと思ってニホンゴを勉強していて正解だったね!」
「……は? はぁぁぁぁぁ!?」
そういうこと!? フェリクスは最初からこっちに来るつもりで日本語を勉強していたのか! そりゃ必死になって勉強するよな!? 言葉が通じないんじゃ困るに決まってるんだから!
「勘違いしないでね、ソウタ。私がソウタの大切な故郷について知りたいと言ったのは嘘偽りない本心だよ。ソウタがどんなところでどんな風に生活しているのか。それを知りたくてこっちに来たんだから」
ふふっとフェリクスは大層嬉しそうに笑った。そんな風に言われたら信じるしかないじゃないか。
フェリクスの手には大きな鞄が二つ。何を持ってきたのかと聞くと、自分の着替えと俺へのお土産だそうだ。だがそのお土産というのは宝石と金塊。え、一体これをどうしろと?
「だってアーマンド王国の通貨は使えないだろう? これなら換金できるんじゃないかと思って」
「……いや、確かにそうなんだけど、だからってこんなにたくさんいらないって!」
「受け取ってもらわないと困るよ。だって私はしばらくここでお世話になるつもりなんだから」
「……は? はぁぁぁぁぁ!?」
再度パニックになる俺をよそに、フェリクスは家の中をいろいろと見て回る。といっても1LDKの小さな部屋だからあっという間に終わるけど。
冷蔵庫を開けて「冷たい!」と驚いていたり、風呂やトイレを覗いて「狭いね」と言ったり、煌々と灯る電灯を見て「明るいね」と言ったり。ひとりできゃっきゃとはしゃいでいる。
「あのさ、フェリクス。お前こっちに来て大丈夫なのか? 前にも言ったけど、こっちの世界じゃ魔法は使えないんだぞ? どうやって帰るつもりだ?」
「……本当だ。魔法が使えない! こんな世界が本当にあるんだ!」
俺がそう言えばフェリクスは掌を上に向けて数秒。その後、嬉しそうにそう言った。いやいやいや、だから魔法が使えないってことは向こうの世界に帰れないってことだぞ!?
「大丈夫だよ。ダグラスや宮廷魔導士が魔法陣を起動できるようになっているから。それにね」
フェリクスは持ってきた鞄からとある道具を取り出す。それは手のひらサイズの小さな箱に赤い宝石のようなものが嵌められていた。
「実はこれ、私が作った魔道具なんだけど、向こうの世界と会話ができるんだ」
「は?」
俺がその言葉を理解する前に、その魔道具の宝石部分がピカピカと点滅する。そしてそのすぐあとに『殿下! 聞こえますか?』と俺たち以外の声がした。
「え!? その声はダグラスか!?」
『ソウタ殿!? ああ、よかった。無事に殿下はそちらへと渡ったようだな』
「うん、ちゃんと言語翻訳機能もばっちり発動してるね」
フェリクスはこの通信機に言語翻訳機能まで付与していたらしい。いつの間にそんなことまでできるようになったんだ、とフェリクスを凝視していたら「だって魔法は想像力なんでしょう?」と実にいい笑顔だった。
確かにそうなのだが、ここまでいろいろとやれるようになっていることが信じられない。だってそんなこと今まで教えてくれなかったし!
「ダグラス、この会話の魔道具の性能の確認が取れた。ではひと月後、召喚魔法を発動してほしい」
『承知いたしました。ではしばらくの間、異世界を楽しまれてください。こちらのことはご心配なさらずに』
「ああ、ありがとう。もし何かあれば遠慮なく連絡を」
『はい。それでは失礼いたします』
その言葉を最後に通信は切れたようだ。
いろいろありすぎて思考が追い付かない。ぼーっとフェリクスの顔を見ていたら、「あまり可愛い顔をすると何をするかわからないよ?」と俺の頬をするりと撫でた。それにドキッと心臓が跳ね、俺の意識が戻る。
「フェ、フェリクス……お前、こんなことまでできるようになったのか」
「ふふ。びっくりした? 私はソウタのその顔を見たかったんだ」
もうこっちに来てしまったのなら仕方ない。とりあえずフェリクスをソファに座らせると冷蔵庫から冷えたお茶を出した。フェリクスは初めて飲むウーロン茶に「美味しい」と感動する。
俺も隣に座るとフェリクスから種明かしが始まった。
どうやらフェリクスは俺が向こうにいない間、ひたすら魔法の研究を行っていたそうだ。
魔法はイメージ。どんな魔法をどんな風に使いたいか。俺が教えたことをよく考えて試行錯誤を繰り返した。そして同時に俺の世界へ行ってみたいと思うようになり、召喚の魔法陣の研究も進めていく。
魔王討伐に成功し、俺がこの世界へ帰る時にフェリクスは俺の額にキスをして印をつけた。最初はそれを追いかけることができるかどうかも賭けだったそうだ。
だが俺につけた印を追うことに成功。その時にあちらの世界でつけた魔法はこの世界でもなんなく働いていることがわかった。
召喚魔法も必ず俺を召喚できるよう、俺の印を元に位置を指定。魔法陣にそのことを書きこむことで必ず俺が召喚されるようになった。
今回は、さっきの通信の魔道具とフェリクスが身につけている宝石に印をつけているそうだ。
王太子としての仕事も弟のスウェインに引き継ぎ。スウェインもとても優秀だからフェリクスがいなくても大丈夫らしい。
魔力量の多いダグラスと、宮廷魔導士を巻き込み召喚魔法を扱えるように指導。宮廷魔導士ってほとんど関わったことはなかったが、俺が最初に召喚された時にいたフードを被った人が宮廷魔導士なんだそうだ。
宮廷魔導士というのは騎士団の団員と違い、武器を扱うことはできないが魔法に関してのエキスパートなんだそう。
「そんな人たちがいたことすら知らなかった」
「うん。だって私が教えないようにしていたからね」
「なんで?」
「だってそんなことをしたら、ソウタはもっと多くの人と関わりを持ってしまう。私じゃない誰かを好きになるかも、と不安だったんだ……」
フェリクスは眉尻を下げ俺の手をそっと握る。それにまた心臓がドキッと跳ねるが、おいて行かないで、と縋るように感じて振りほどくことはできなかった。
「ふふ。でもこれからは誰にも邪魔されずにソウタと過ごせるね。とても楽しみだ!」
「……ソウデスネ」
フェリクスはにっこり笑って俺を抱きしめた。
どうしよう……さっきの話だと一か月はこっちにいるってことだよな? もしかして俺、段々と囲まれてる?
一週間の疲れはあるものの気分はるんるん。仕事もはかどり定時で会社を飛び出した。
帰宅後、俺はすぐに動きやすい服へと着替える。持っていく荷物の確認もすると時間は七時十分前。毎回夜七時に召喚されるからいつよばれてもいいようにと、ガスの元栓を閉めたり鍵をかけたりして回った。
そして夜の七時。いつもの時間に俺の足元に見慣れた魔法陣が現われる。魔法陣がぐるぐると周り、段々と光も強くなる。最後にピカッ! と一際強く輝く直前ぎゅっと目を瞑った。
『ソウタ! 会いたかった!』
俺が目を開ける前にぎゅっとフェリクスに抱きしめられる。これも毎回おなじみの光景だ。なのだがとてつもない違和感に襲われる。
「フェリクス、だよな……ってあれ? ん?」
目を開けると目の前にはフェリクスの顔。これもいつもの召喚と変わらないのだが何がおかしい。
っていうか、俺転移してない! ここって俺の部屋じゃん!?
『うわぁ、ここがソウタが住んでいる家なんだね! すごい! こちらの世界は何もかもが違う!』
「え? え!? はぁ!? ちょ、なっ、フェリクス!? お前がこっちに来たのか!?」
『あ、そうか。ニホンゴ!』
嘘だろ!? 予想外のことが起こって俺はパニックだ!
「えーと、こんばんはソウタ。私のニホンゴはどう?」
「……大変お上手です」
「よかった! ソウタがこちらの世界に来る時は言語翻訳機能があったから会話に不便はなかったけど、私がこの世界に来た時にその保証がないかもと思ってニホンゴを勉強していて正解だったね!」
「……は? はぁぁぁぁぁ!?」
そういうこと!? フェリクスは最初からこっちに来るつもりで日本語を勉強していたのか! そりゃ必死になって勉強するよな!? 言葉が通じないんじゃ困るに決まってるんだから!
「勘違いしないでね、ソウタ。私がソウタの大切な故郷について知りたいと言ったのは嘘偽りない本心だよ。ソウタがどんなところでどんな風に生活しているのか。それを知りたくてこっちに来たんだから」
ふふっとフェリクスは大層嬉しそうに笑った。そんな風に言われたら信じるしかないじゃないか。
フェリクスの手には大きな鞄が二つ。何を持ってきたのかと聞くと、自分の着替えと俺へのお土産だそうだ。だがそのお土産というのは宝石と金塊。え、一体これをどうしろと?
「だってアーマンド王国の通貨は使えないだろう? これなら換金できるんじゃないかと思って」
「……いや、確かにそうなんだけど、だからってこんなにたくさんいらないって!」
「受け取ってもらわないと困るよ。だって私はしばらくここでお世話になるつもりなんだから」
「……は? はぁぁぁぁぁ!?」
再度パニックになる俺をよそに、フェリクスは家の中をいろいろと見て回る。といっても1LDKの小さな部屋だからあっという間に終わるけど。
冷蔵庫を開けて「冷たい!」と驚いていたり、風呂やトイレを覗いて「狭いね」と言ったり、煌々と灯る電灯を見て「明るいね」と言ったり。ひとりできゃっきゃとはしゃいでいる。
「あのさ、フェリクス。お前こっちに来て大丈夫なのか? 前にも言ったけど、こっちの世界じゃ魔法は使えないんだぞ? どうやって帰るつもりだ?」
「……本当だ。魔法が使えない! こんな世界が本当にあるんだ!」
俺がそう言えばフェリクスは掌を上に向けて数秒。その後、嬉しそうにそう言った。いやいやいや、だから魔法が使えないってことは向こうの世界に帰れないってことだぞ!?
「大丈夫だよ。ダグラスや宮廷魔導士が魔法陣を起動できるようになっているから。それにね」
フェリクスは持ってきた鞄からとある道具を取り出す。それは手のひらサイズの小さな箱に赤い宝石のようなものが嵌められていた。
「実はこれ、私が作った魔道具なんだけど、向こうの世界と会話ができるんだ」
「は?」
俺がその言葉を理解する前に、その魔道具の宝石部分がピカピカと点滅する。そしてそのすぐあとに『殿下! 聞こえますか?』と俺たち以外の声がした。
「え!? その声はダグラスか!?」
『ソウタ殿!? ああ、よかった。無事に殿下はそちらへと渡ったようだな』
「うん、ちゃんと言語翻訳機能もばっちり発動してるね」
フェリクスはこの通信機に言語翻訳機能まで付与していたらしい。いつの間にそんなことまでできるようになったんだ、とフェリクスを凝視していたら「だって魔法は想像力なんでしょう?」と実にいい笑顔だった。
確かにそうなのだが、ここまでいろいろとやれるようになっていることが信じられない。だってそんなこと今まで教えてくれなかったし!
「ダグラス、この会話の魔道具の性能の確認が取れた。ではひと月後、召喚魔法を発動してほしい」
『承知いたしました。ではしばらくの間、異世界を楽しまれてください。こちらのことはご心配なさらずに』
「ああ、ありがとう。もし何かあれば遠慮なく連絡を」
『はい。それでは失礼いたします』
その言葉を最後に通信は切れたようだ。
いろいろありすぎて思考が追い付かない。ぼーっとフェリクスの顔を見ていたら、「あまり可愛い顔をすると何をするかわからないよ?」と俺の頬をするりと撫でた。それにドキッと心臓が跳ね、俺の意識が戻る。
「フェ、フェリクス……お前、こんなことまでできるようになったのか」
「ふふ。びっくりした? 私はソウタのその顔を見たかったんだ」
もうこっちに来てしまったのなら仕方ない。とりあえずフェリクスをソファに座らせると冷蔵庫から冷えたお茶を出した。フェリクスは初めて飲むウーロン茶に「美味しい」と感動する。
俺も隣に座るとフェリクスから種明かしが始まった。
どうやらフェリクスは俺が向こうにいない間、ひたすら魔法の研究を行っていたそうだ。
魔法はイメージ。どんな魔法をどんな風に使いたいか。俺が教えたことをよく考えて試行錯誤を繰り返した。そして同時に俺の世界へ行ってみたいと思うようになり、召喚の魔法陣の研究も進めていく。
魔王討伐に成功し、俺がこの世界へ帰る時にフェリクスは俺の額にキスをして印をつけた。最初はそれを追いかけることができるかどうかも賭けだったそうだ。
だが俺につけた印を追うことに成功。その時にあちらの世界でつけた魔法はこの世界でもなんなく働いていることがわかった。
召喚魔法も必ず俺を召喚できるよう、俺の印を元に位置を指定。魔法陣にそのことを書きこむことで必ず俺が召喚されるようになった。
今回は、さっきの通信の魔道具とフェリクスが身につけている宝石に印をつけているそうだ。
王太子としての仕事も弟のスウェインに引き継ぎ。スウェインもとても優秀だからフェリクスがいなくても大丈夫らしい。
魔力量の多いダグラスと、宮廷魔導士を巻き込み召喚魔法を扱えるように指導。宮廷魔導士ってほとんど関わったことはなかったが、俺が最初に召喚された時にいたフードを被った人が宮廷魔導士なんだそうだ。
宮廷魔導士というのは騎士団の団員と違い、武器を扱うことはできないが魔法に関してのエキスパートなんだそう。
「そんな人たちがいたことすら知らなかった」
「うん。だって私が教えないようにしていたからね」
「なんで?」
「だってそんなことをしたら、ソウタはもっと多くの人と関わりを持ってしまう。私じゃない誰かを好きになるかも、と不安だったんだ……」
フェリクスは眉尻を下げ俺の手をそっと握る。それにまた心臓がドキッと跳ねるが、おいて行かないで、と縋るように感じて振りほどくことはできなかった。
「ふふ。でもこれからは誰にも邪魔されずにソウタと過ごせるね。とても楽しみだ!」
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