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第6章 秘密の特技
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「ふう……もう少しのはず」
それにしても暗いわね。
私は頭を上げると小さな明かり取りを見上げた。
細くて暗い通路を一人で歩くのは心細い。
でも、私の読みが合っていればこの先を曲がって……。
「あったわ」
予想通り、目の前に現れた扉にほっと息をつく。
でも問題はここからなのよ。
扉を開けたその先に誰かがいたら……。
重い扉に少しずつ力をかけていく。
使われてはいないだろうけれど、手入れはされているらしい。
以外と滑らかに扉は開いた。
目の前に現れたのは大きな樹々、人影はなさそうだ。
慎重に周囲を見渡しながら外へ出る。
思った通りここは庭園のようだ。
「ふふ、脱出成功だわ」
思わず笑みが溢れてしまう。
「さて、どうしようかしら」
今回はとりあえずあの場所から抜け出すのが目的であって、この王宮の外へ出たいわけではない。
私が脱走したと気づかれるにはまだ時間がかかるかもしれないから……とりあえずここで時間潰しでもしようかしら。
「マリアンヌ様?」
寒さを凌げる場所を探そうと視線を巡らせていると、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「セベリノさん」
「どうしてこんな場所に……」
振り返ると不思議そうな顔で私を見つめているセベリノさんが立っていた。
「セベリノさんはお散歩ですか?」
「いえ、薬草茶に使う葉を貰いに温室へ行ってきた帰りです」
「そうでしたの」
「それで、マリアンヌ様はどうしてここへ? ここは我々が借りている宮の庭で部外者が入れる所ではないはずですが」
「私は脱走してきましたの」
「脱走?」
「フレデリク殿下があまりにも我儘を言うものですから。腹いせですわ」
眉をひそめたセベリノさんに、私はにっこりと笑顔でそう答えた。
発端は、昨日の新年のパーティーだった。
私は殿下の婚約者として王族が並ぶ末端に立ち、殿下とともに貴族たちの挨拶を受けていた。
そこへミジャンの正装をまとったアドリアン殿下とセベリノさんが現れたのだ。
白地に金糸の刺繍が施された、足首が隠れるくらいの長さのワンピースのような服に、頭にかぶった白くて長い布を複雑に首に巻きつけた民族衣装は、褐色の肌と相まってエキゾチックでとてもかっこいい。
ゲームでもキャラクター紹介のイラストで見た装束で、すごくいい! と思ったのだ。
前世からこういう民族衣装系に弱いのよね。
「素敵……」
思わず漏らしてしまった声をフレデリク殿下はしっかり聞いていたようだった。
ダンスの時間となり、殿下と二曲踊った後、家族の元へ行き話をしていたら級友たちにダンスを申し込まれ、三人と踊った。
それは夜会では普通のことなのだけれど、三人目が終わり、フロアから戻ってきた私は待ち構えていた不機嫌そうな殿下に会場から連れ出され、そのまま殿下の部屋に連れて行かれたのだ。
「僕以外の男と踊らないで。褒めたりもしないで」
ソファに腰を下ろし、私を抱きしめて殿下は言った。
「僕だけを見ていてよ」
「フレデリク様……それは無理です」
社交は貴族にとって欠かせないものだ。
ダンスも大切な社交の道具であり、夜会で誰とも踊らないことは不名誉とされる。
いくら殿下の独占欲が強いからといっても、踊らないわけにはいかないものだ。
「じゃあもうパーティーや夜会には出ないで」
「フレデリク様……」
本当に、どうして殿下はそんなに私を縛りたがるのだろう。
それはまるで子供が母親を独占したがるようで。
でも殿下はもう十六歳、私は殿下だけのものではないと、分かってくれてもいいのに。
それにしても暗いわね。
私は頭を上げると小さな明かり取りを見上げた。
細くて暗い通路を一人で歩くのは心細い。
でも、私の読みが合っていればこの先を曲がって……。
「あったわ」
予想通り、目の前に現れた扉にほっと息をつく。
でも問題はここからなのよ。
扉を開けたその先に誰かがいたら……。
重い扉に少しずつ力をかけていく。
使われてはいないだろうけれど、手入れはされているらしい。
以外と滑らかに扉は開いた。
目の前に現れたのは大きな樹々、人影はなさそうだ。
慎重に周囲を見渡しながら外へ出る。
思った通りここは庭園のようだ。
「ふふ、脱出成功だわ」
思わず笑みが溢れてしまう。
「さて、どうしようかしら」
今回はとりあえずあの場所から抜け出すのが目的であって、この王宮の外へ出たいわけではない。
私が脱走したと気づかれるにはまだ時間がかかるかもしれないから……とりあえずここで時間潰しでもしようかしら。
「マリアンヌ様?」
寒さを凌げる場所を探そうと視線を巡らせていると、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「セベリノさん」
「どうしてこんな場所に……」
振り返ると不思議そうな顔で私を見つめているセベリノさんが立っていた。
「セベリノさんはお散歩ですか?」
「いえ、薬草茶に使う葉を貰いに温室へ行ってきた帰りです」
「そうでしたの」
「それで、マリアンヌ様はどうしてここへ? ここは我々が借りている宮の庭で部外者が入れる所ではないはずですが」
「私は脱走してきましたの」
「脱走?」
「フレデリク殿下があまりにも我儘を言うものですから。腹いせですわ」
眉をひそめたセベリノさんに、私はにっこりと笑顔でそう答えた。
発端は、昨日の新年のパーティーだった。
私は殿下の婚約者として王族が並ぶ末端に立ち、殿下とともに貴族たちの挨拶を受けていた。
そこへミジャンの正装をまとったアドリアン殿下とセベリノさんが現れたのだ。
白地に金糸の刺繍が施された、足首が隠れるくらいの長さのワンピースのような服に、頭にかぶった白くて長い布を複雑に首に巻きつけた民族衣装は、褐色の肌と相まってエキゾチックでとてもかっこいい。
ゲームでもキャラクター紹介のイラストで見た装束で、すごくいい! と思ったのだ。
前世からこういう民族衣装系に弱いのよね。
「素敵……」
思わず漏らしてしまった声をフレデリク殿下はしっかり聞いていたようだった。
ダンスの時間となり、殿下と二曲踊った後、家族の元へ行き話をしていたら級友たちにダンスを申し込まれ、三人と踊った。
それは夜会では普通のことなのだけれど、三人目が終わり、フロアから戻ってきた私は待ち構えていた不機嫌そうな殿下に会場から連れ出され、そのまま殿下の部屋に連れて行かれたのだ。
「僕以外の男と踊らないで。褒めたりもしないで」
ソファに腰を下ろし、私を抱きしめて殿下は言った。
「僕だけを見ていてよ」
「フレデリク様……それは無理です」
社交は貴族にとって欠かせないものだ。
ダンスも大切な社交の道具であり、夜会で誰とも踊らないことは不名誉とされる。
いくら殿下の独占欲が強いからといっても、踊らないわけにはいかないものだ。
「じゃあもうパーティーや夜会には出ないで」
「フレデリク様……」
本当に、どうして殿下はそんなに私を縛りたがるのだろう。
それはまるで子供が母親を独占したがるようで。
でも殿下はもう十六歳、私は殿下だけのものではないと、分かってくれてもいいのに。
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