25 / 35
24 図書館
しおりを挟む
羽根を生やした天使たちが空を優雅に舞っている。
そして優美な笑みを浮かべた女神が、青空に浮かぶ雲の合間からこちらへと手を差し伸べている。
天井一面に描かれたその色鮮やかな絵の、その下には、天井まで届く二層の本棚が立ち並んでいる。圧巻な光景だ。
「ここは元々礼拝堂であったものを改修したものです」
案内してくれた館長がそう説明した。
「見事だな」
「美しいですね……」
「ありがとうございます。それでは、次に資料として集められた絵画を飾っている部屋に案内いたしましょう」
館長に促されて、中へと進んでいく。
(本当にすごい……)
「クリスティナ。そう上を見て歩いていたら危ないから」
つい天井画に視線が惹きつけられていると、殿下に手を握られた。
今日は念願の図書館へとやってきた。
ここは収蔵されている本も貴重だが、建築物としても有名で観光客も多く来るという。そんな場所でゆっくり見るのは難しいだろうと、開館前の時間に案内してもらえることになった。
壁を埋め尽くすように絵画が並べられた部屋や、剥製などが置かれた部屋。まるで博物館のように本だけでなく様々なものが展示された図書館は、一日かけても回りきれないだろう。そんな場所を少ししか見られないのは残念だ。
(しかも、ずっと殿下が手を握ったままだし……)
手を離そうとしない殿下に気を取られていたこともあり、あっという間に開館の時間となってしまった。
一般の人が入れないエリアへと向かい、本を修復する部屋や希少本が保存された部屋などを案内してもらい、図書館に併設されたレストランで昼食を取った。
その後は殿下の希望で街で一番の公園にある温室へ向かい、散策をして屋敷へと戻ることになった。
「ラウル様はもう到着されているでしょうか」
馬車に揺られながらそう口にすると、殿下はため息をついた。
「せっかくクリスティナと二人きりだったのに」
私は二人きりじゃない方が安心ですけど!
行きも今も、馬車の中では隣同士に座っている。
お忍び用とはいえ王家の馬車、二人並んで座ってもゆとりがあるはずなのに、殿下はぴったりと私にくっつくように座り、時々手が伸びてきては髪や手に触れてくる。
(積極的になりすぎなのよね……)
殿下は変わったのかもしれないけれど、私はまだ……。
「クリスティナ」
殿下が手を握り締めてきた。そうしてもう片方の手は肩に。
顔を上げると、すぐ目の前に殿下の顔があって……唇に軽く口づけられた。
(また……!)
恥ずかしさで目を閉じると、頬に唇が触れる感触。
「……ど、どうして……キスするんですか」
「どうしてって。クリスティナが愛おしくて、可愛いからね」
何とか声を振り絞って抗議すると、もう一度頬に口づけられた。
「っだからって……」
「クリスティナは、キスされるのは嫌?」
「……嫌ではないですけれど……」
「嫌じゃないんだね」
はっとして目を開いた。
あれ……キスされるのは、嫌じゃない?
「良かった」
安堵の声と共に唇が塞がれた。
それまでは、軽く触れるだけだったのに。
隙間なく強く重ねられ……息が、できない。
「ん……」
苦しくて呻くと、ようやく殿下の顔が離れた。
「……そんな顔をされたら歯止めが効かなくなりそうだな」
私を見つめて微笑むその顔は……何というか、色気がダダ漏れで。
その色気にあてられたのと恥ずかしさで顔が上げられなくなった私を抱きしめ、背中を撫でる……その手の動きに、意味があるような気がして。
ますます恥ずかしさを感じて、早く着いてくれることをひたすら願い続けていると、ようやく馬車は屋敷へと到着した。
「もう着いたのか」
残念そうな声が聞こえると、ようやく殿下が離れた。
(やっと着いた……)
緊張と暑さで汗をかいてしまった。早くお風呂に入ってさっぱりしたい。
「クリスティナ様!」
殿下の手を借りて馬車から降りていると、思いがけない声が聞こえた。
「……サーシャ嬢?」
こちらへ駆け寄ってくるのは、確かにサーシャだ。
そしてその後ろから歩いて来るのは、ラウルと……エディー?!
「どうして二人がここへ……」
「お兄様がお仕事でこの街へ来ることになったので、私たちも来ましたの」
サーシャは笑顔でそう言った。
「お兄様?」
「はい、騎士団にいる長男ですわ」
「ダニエル・アボットか? 王都の副団長がなぜこの街に?」
殿下が硬い声色で言った。
「少し困ったことが起きまして」
ラウルの言葉に、思わず殿下と顔を見合わせた。
そして優美な笑みを浮かべた女神が、青空に浮かぶ雲の合間からこちらへと手を差し伸べている。
天井一面に描かれたその色鮮やかな絵の、その下には、天井まで届く二層の本棚が立ち並んでいる。圧巻な光景だ。
「ここは元々礼拝堂であったものを改修したものです」
案内してくれた館長がそう説明した。
「見事だな」
「美しいですね……」
「ありがとうございます。それでは、次に資料として集められた絵画を飾っている部屋に案内いたしましょう」
館長に促されて、中へと進んでいく。
(本当にすごい……)
「クリスティナ。そう上を見て歩いていたら危ないから」
つい天井画に視線が惹きつけられていると、殿下に手を握られた。
今日は念願の図書館へとやってきた。
ここは収蔵されている本も貴重だが、建築物としても有名で観光客も多く来るという。そんな場所でゆっくり見るのは難しいだろうと、開館前の時間に案内してもらえることになった。
壁を埋め尽くすように絵画が並べられた部屋や、剥製などが置かれた部屋。まるで博物館のように本だけでなく様々なものが展示された図書館は、一日かけても回りきれないだろう。そんな場所を少ししか見られないのは残念だ。
(しかも、ずっと殿下が手を握ったままだし……)
手を離そうとしない殿下に気を取られていたこともあり、あっという間に開館の時間となってしまった。
一般の人が入れないエリアへと向かい、本を修復する部屋や希少本が保存された部屋などを案内してもらい、図書館に併設されたレストランで昼食を取った。
その後は殿下の希望で街で一番の公園にある温室へ向かい、散策をして屋敷へと戻ることになった。
「ラウル様はもう到着されているでしょうか」
馬車に揺られながらそう口にすると、殿下はため息をついた。
「せっかくクリスティナと二人きりだったのに」
私は二人きりじゃない方が安心ですけど!
行きも今も、馬車の中では隣同士に座っている。
お忍び用とはいえ王家の馬車、二人並んで座ってもゆとりがあるはずなのに、殿下はぴったりと私にくっつくように座り、時々手が伸びてきては髪や手に触れてくる。
(積極的になりすぎなのよね……)
殿下は変わったのかもしれないけれど、私はまだ……。
「クリスティナ」
殿下が手を握り締めてきた。そうしてもう片方の手は肩に。
顔を上げると、すぐ目の前に殿下の顔があって……唇に軽く口づけられた。
(また……!)
恥ずかしさで目を閉じると、頬に唇が触れる感触。
「……ど、どうして……キスするんですか」
「どうしてって。クリスティナが愛おしくて、可愛いからね」
何とか声を振り絞って抗議すると、もう一度頬に口づけられた。
「っだからって……」
「クリスティナは、キスされるのは嫌?」
「……嫌ではないですけれど……」
「嫌じゃないんだね」
はっとして目を開いた。
あれ……キスされるのは、嫌じゃない?
「良かった」
安堵の声と共に唇が塞がれた。
それまでは、軽く触れるだけだったのに。
隙間なく強く重ねられ……息が、できない。
「ん……」
苦しくて呻くと、ようやく殿下の顔が離れた。
「……そんな顔をされたら歯止めが効かなくなりそうだな」
私を見つめて微笑むその顔は……何というか、色気がダダ漏れで。
その色気にあてられたのと恥ずかしさで顔が上げられなくなった私を抱きしめ、背中を撫でる……その手の動きに、意味があるような気がして。
ますます恥ずかしさを感じて、早く着いてくれることをひたすら願い続けていると、ようやく馬車は屋敷へと到着した。
「もう着いたのか」
残念そうな声が聞こえると、ようやく殿下が離れた。
(やっと着いた……)
緊張と暑さで汗をかいてしまった。早くお風呂に入ってさっぱりしたい。
「クリスティナ様!」
殿下の手を借りて馬車から降りていると、思いがけない声が聞こえた。
「……サーシャ嬢?」
こちらへ駆け寄ってくるのは、確かにサーシャだ。
そしてその後ろから歩いて来るのは、ラウルと……エディー?!
「どうして二人がここへ……」
「お兄様がお仕事でこの街へ来ることになったので、私たちも来ましたの」
サーシャは笑顔でそう言った。
「お兄様?」
「はい、騎士団にいる長男ですわ」
「ダニエル・アボットか? 王都の副団長がなぜこの街に?」
殿下が硬い声色で言った。
「少し困ったことが起きまして」
ラウルの言葉に、思わず殿下と顔を見合わせた。
93
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームに転生した悪役令嬢、断罪を避けるために王太子殿下から逃げ続けるも、王太子殿下はヒロインに目もくれず悪役令嬢を追いかける。結局断罪さ
みゅー
恋愛
乙女ゲーム内に転生していると気づいた悪役令嬢のジョゼフィーヌ。このままではどうやっても自分が断罪されてしまう立場だと知る。
それと同時に、それまで追いかけ続けた王太子殿下に対する気持ちが急速に冷めるのを感じ、王太子殿下を避けることにしたが、なぜか逆に王太子殿下から迫られることに。
それは王太子殿下が、自分をスケープゴートにしようとしているからなのだと思ったジョゼフィーヌは、焦って王太子殿下から逃げ出すが……
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
【完結】どうか、婚約破棄と言われませんように
青波鳩子
恋愛
幼き日、自分を守ってくれた男の子に恋をしたエレイン。
父から『第二王子グレイアム殿下との婚約の打診を受けた』と聞き、初恋の相手がそのグレイアムだったエレインは、喜びと不安と二つの想いを抱えた。
グレイアム殿下には幼馴染の想い人がいる──エレインやグレイアムが通う学園でそんな噂が囁かれておりエレインの耳にも届いていたからだった。
そんな折、留学先から戻った兄から目の前で起きた『婚約破棄』の話を聞いたエレインは、未来の自分の姿ではないかと慄く。
それからエレインは『婚約破棄と言われないように』細心の注意を払って過ごす。
『グレイアム殿下は政略的に決められた婚約者である自分にやはり関心がなさそうだ』と思うエレイン。
定例の月に一度のグレイアムとのお茶会、いつも通り何事もなくやり過ごしたはずが……グレイアムのエレインへの態度に変化が起き、そこから二人の目指すものが逆転をみせていく。すれ違っていく二人の想いとグレイアムと幼馴染の関係性は……。
エレインとグレイアムのハッピーエンドです。
約42,000字の中編ですが、「中編」というカテゴリがないため短編としています。
別サイト「小説家になろう」でも公開を予定しています。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。
長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
【完結】婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。
青波鳩子
恋愛
ヴェルーデ王国の第一王子アルフレッドと婚約していている公爵令嬢のアリシアは、お妃教育の最中にアルフレッドから婚約破棄を告げられた。
その僅か三時間後に失意のアリシアの元を訪れたアルフレッドから、婚約破棄は冗談だったと謝罪を受ける。
あの時のアルフレッドの目は冗談などではなかったと思いながら、アリシアは婚約破棄を撤回したいアルフレッドにとりあえず流されておくことにした。
一方のアルフレッドは、誰にも何にも特に興味がなく王に決められた婚約者という存在を自分の足枷と思っていた。
婚約破棄をして自由を得たと思った直後に父である王からの命を受け、婚約破棄を撤回する必要に迫られる。
婚約破棄の撤回からの公爵令嬢アリシアと第一王子アルフレッドの不器用な恋。
アリシアとアルフレッドのハッピーエンドです。
「小説家になろう」でも連載中です。
修正が入っている箇所もあります。
タグはこの先ふえる場合があります。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる