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第3章 惹かれる心
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「それじゃあロゼ、俺は戻らないとならないから」
「はい、ありがとうございました」
ロゼはヴァイスに笑顔を向けた。
その笑顔が名残惜しくて、ヴァイスは足を止めた。
「ロゼ、明後日は空いている?」
「明後日…ですか」
「休みなんだ、街へ行こう。まだ行った事がないのだろう」
ヴァイスの言葉にロゼは目を見開いた。
先日王妃の元への行き帰りにちょこっとそんな事を言ったのを、覚えていていてくれたのか。
「街…ですか」
「俺と出かけるのは嫌か?」
「い、いいえ」
ふるふると首を振ったロゼにヴァイスは目を細めた。
「では昼前に迎えに行く」
「…はい…」
そっとロゼの髪を撫でると、ヴァイスは部屋から出て行った。
「———あいつ、女を口説けたんだな」
ランドが呟いた。
「え…?」
「ヴァイスは女嫌いなんじゃないかって噂があるくらい多くの令嬢からの誘いを無視してきたんだ。それがあんな、にやけた顔までして」
そう言ってランドはまじまじとロゼを見つめた。
「君たち、どこまでの関係なの?」
「どこ…までって」
ロゼの顔が赤くなった。
「…お会いしたのは…今日が二回目です」
「二回目?それでもうハンカチを贈ったの?」
「あれは…ヴァイス様から花束を頂いたお礼です」
「花束?あいつが?」
ランドは思わず声が裏返った。
壁際に控えていたルーチェも目を見開いた。
「もしかして紫色?」
「…はい」
———狙った獲物は逃さない気だな。
家柄の事があるとはいえあの歳で騎士団長に上り詰めたヴァイスの行動力は流石というべきか。
ランドは内心感心した。
「ちなみに、その事をフェールは知っているの?」
「…いえ…」
ロゼは目を伏せた。
「母が…父と兄に知られると煩いから黙っていた方がいいと」
「なるほどね」
母親はヴァイスの味方か。
ランドは察した。
あのフェールのロゼへの溺愛ぶりを見る限り、相手が誰でも反対するだろう。
「じゃあ明後日の事も夫人にだけ伝えた方がいいな。騎士団長と一緒ならば街に出ても安全だろうが、宰相とフェールはきっと反対するだろうから」
「…はい」
ロゼは頷いた。
「ところでロゼ。ヴァイスは君の事をどこまで知っている?」
「どこまで…とは?」
「君の魔力の事はさっき知ったようだけれど。この十三年間どうしていたかは?」
「…いいえ…何も言っていません」
ロゼは首を振った。
「まだそんなに…お話をしていないですし…」
「そうか。まだ二回しか会っていなかったな」
「———お話した方がいいのでしょうか」
「君が彼との将来を考えるならばすべきだろうね」
ランドは言った。
「この間も言ったように、君の魔力には分からない部分が多いし、今後何が起きるか分からない。互いに覚悟が必要だよ」
「———はい」
ランドを真っ直ぐに見上げて答えると、ロゼは首を傾げた。
「あの…そもそも魔力とはどういうものなのでしょう」
「そうだな。王家と公爵家の色持ちが、それぞれ固有の魔法を使えるというのは知っているね」
「はい」
例えばロゼ達ノワール家の魔法は水であり、水を操ることが出来る。
そしてユークならば火、オリエンスは風。
だがその魔法を活用している様子はみられなかった。
「これは伝説なんだけれど、この力は女神から与えられたものらしい」
「女神…?」
「この国は長く戦争が続いていてね、それを終わらせるために選ばれた五家にそれぞれの魔法を与えたんだ。それでも戦争が終わるまでには五十年以上かかった。ようやく終えたのがこの間説明した二百年前」
「…あの渡り人の…」
「そう。戦争中は魔法も必要だったんだろうけれど、平和な今の時代には無用の長物だ」
「……兄も言っていました。過去の遺産だと」
「今役に立っているとすれば、平和を維持するための抑止力としてかな。魔力を持つのは五家だけだからね」
「そういう効果もあるんですね…」
「そう、魔力を持つのは五家の中でも限られた人間だけだ」
ふいにランドはロゼから離れた。
そのまま壁際へと向かい———ルーチェの前へと立った。
「それなのに君から魔力を感じるんだよね」
ルーチェの瞳を覗き込んでランドは言った。
「君は何者かな?」
「はい、ありがとうございました」
ロゼはヴァイスに笑顔を向けた。
その笑顔が名残惜しくて、ヴァイスは足を止めた。
「ロゼ、明後日は空いている?」
「明後日…ですか」
「休みなんだ、街へ行こう。まだ行った事がないのだろう」
ヴァイスの言葉にロゼは目を見開いた。
先日王妃の元への行き帰りにちょこっとそんな事を言ったのを、覚えていていてくれたのか。
「街…ですか」
「俺と出かけるのは嫌か?」
「い、いいえ」
ふるふると首を振ったロゼにヴァイスは目を細めた。
「では昼前に迎えに行く」
「…はい…」
そっとロゼの髪を撫でると、ヴァイスは部屋から出て行った。
「———あいつ、女を口説けたんだな」
ランドが呟いた。
「え…?」
「ヴァイスは女嫌いなんじゃないかって噂があるくらい多くの令嬢からの誘いを無視してきたんだ。それがあんな、にやけた顔までして」
そう言ってランドはまじまじとロゼを見つめた。
「君たち、どこまでの関係なの?」
「どこ…までって」
ロゼの顔が赤くなった。
「…お会いしたのは…今日が二回目です」
「二回目?それでもうハンカチを贈ったの?」
「あれは…ヴァイス様から花束を頂いたお礼です」
「花束?あいつが?」
ランドは思わず声が裏返った。
壁際に控えていたルーチェも目を見開いた。
「もしかして紫色?」
「…はい」
———狙った獲物は逃さない気だな。
家柄の事があるとはいえあの歳で騎士団長に上り詰めたヴァイスの行動力は流石というべきか。
ランドは内心感心した。
「ちなみに、その事をフェールは知っているの?」
「…いえ…」
ロゼは目を伏せた。
「母が…父と兄に知られると煩いから黙っていた方がいいと」
「なるほどね」
母親はヴァイスの味方か。
ランドは察した。
あのフェールのロゼへの溺愛ぶりを見る限り、相手が誰でも反対するだろう。
「じゃあ明後日の事も夫人にだけ伝えた方がいいな。騎士団長と一緒ならば街に出ても安全だろうが、宰相とフェールはきっと反対するだろうから」
「…はい」
ロゼは頷いた。
「ところでロゼ。ヴァイスは君の事をどこまで知っている?」
「どこまで…とは?」
「君の魔力の事はさっき知ったようだけれど。この十三年間どうしていたかは?」
「…いいえ…何も言っていません」
ロゼは首を振った。
「まだそんなに…お話をしていないですし…」
「そうか。まだ二回しか会っていなかったな」
「———お話した方がいいのでしょうか」
「君が彼との将来を考えるならばすべきだろうね」
ランドは言った。
「この間も言ったように、君の魔力には分からない部分が多いし、今後何が起きるか分からない。互いに覚悟が必要だよ」
「———はい」
ランドを真っ直ぐに見上げて答えると、ロゼは首を傾げた。
「あの…そもそも魔力とはどういうものなのでしょう」
「そうだな。王家と公爵家の色持ちが、それぞれ固有の魔法を使えるというのは知っているね」
「はい」
例えばロゼ達ノワール家の魔法は水であり、水を操ることが出来る。
そしてユークならば火、オリエンスは風。
だがその魔法を活用している様子はみられなかった。
「これは伝説なんだけれど、この力は女神から与えられたものらしい」
「女神…?」
「この国は長く戦争が続いていてね、それを終わらせるために選ばれた五家にそれぞれの魔法を与えたんだ。それでも戦争が終わるまでには五十年以上かかった。ようやく終えたのがこの間説明した二百年前」
「…あの渡り人の…」
「そう。戦争中は魔法も必要だったんだろうけれど、平和な今の時代には無用の長物だ」
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「今役に立っているとすれば、平和を維持するための抑止力としてかな。魔力を持つのは五家だけだからね」
「そういう効果もあるんですね…」
「そう、魔力を持つのは五家の中でも限られた人間だけだ」
ふいにランドはロゼから離れた。
そのまま壁際へと向かい———ルーチェの前へと立った。
「それなのに君から魔力を感じるんだよね」
ルーチェの瞳を覗き込んでランドは言った。
「君は何者かな?」
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