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第5章 繋がる過去
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オレオール王国やその周辺国まで巻き込んで繰り広げられ続けた戦乱によって国は荒れ果てていた。
このままでは国が滅んでしまう、そう危惧した幾つかの貴族が集まり話し合ったが、なかなか解決策が見つからなかった。
集まった貴族の一つ、ノワール家の当主は思い出した。
———過去、魔女と呼ばれ封印された、不思議な力を持つ娘が一族にいた事を。
その力を使う事は出来ないだろうか…藁にもすがる思いで当主はそう考えた。
記録を元に探し当てた、その封印された洞窟は無数の石で埋め尽くされ、中へ入る事が出来なかった。
だがその時、同行していた娘のカレンに異変が起きた。
突然意識を失い…やがて目を覚ました娘は、自分をかつてこの地に封印されたセレネだと名乗った。
セレネの肉体は既に朽ちていたが、その魂と力は残り続け、同じ一族の血を引くカレンに憑依したのだという。
当主は過去の行いを詫び、国の現状を訴え力を貸して欲しいとセレネに頼み込んだ。
しばらくの沈黙の後———セレネは当主の頼みを受け入れた。
そうしてノワール家と、協力関係にあった四家の嫡男たちに特別な力———それはセレネが持っていた力を分けたもので、それぞれの家に一種類の力を与えられた。
だが身体が耐えきれなかったのか、力を分け与えた直後にカレンは倒れ、そのまま息を引き取ってしまった。
力を与えられたノワール家の嫡男は姉の死を嘆き悲しみ、父親や他の四家たちを憎んだ。
———彼らはこの力を〝女神〟から与えられたものとし、セレネやカレンの名前と彼女たちの犠牲を隠匿したからだ。
「そして力を与えられてから五十年後…戦乱が終わった後に彼は事実を記し、この箱に封印したのだな」
フェールは本を閉じた。
「そのカフリンクスは、カレンが婚約者の誕生日に贈ろうと用意していたもので、彼女の形見として一緒に箱に入れたらしい」
「婚約者への贈り物…」
ロゼはカフリンクスを見つめた。
———彼女は自分の瞳の色と同じ石を嵌め込んだこの品物を、きっと幸せな気持ちで選んだのだろう。
それを贈る事も叶わないまま亡くなってしまったなんて…。
思わず涙が滲んたロゼの手をヴァイスがそっと握りしめた。
「何故セレネたちの事を隠匿したのだ?」
ヴァイスはフェールを見た。
「力を与えたのが魔女と呼ばれた人間よりも女神とした方が、五家を特別視させ他の貴族と差を付けられるからな」
「ふん———お貴族様の都合か」
ヴァイスは鼻を鳴らした。
「いつの時代も貴族は自分たちの事しか考えないのだな」
「ヴァイス…お前の貴族嫌いは変わらないな」
宰相は苦笑した。
「だが為政とはそういうものだ。正義だけでは国を治められないし、国益を考えれば何かを犠牲にする事もあろう」
「それがご自身の娘であっても?」
ヴァイスは宰相を見据えた。
「あなたは…国のためにロゼを犠牲に出来るのか」
「———父親としては無理だが、宰相としては…他に道がないとなったら出来るかもしれないな」
ヴァイスを真っ直ぐに見つめ返して宰相は答えた。
「お前も将軍職を継ぐ身なのだからその覚悟を持っておけ」
「その時はロゼを連れてこの国を出て行きますよ」
ロゼを引き寄せながらヴァイスは言った。
「俺はロゼを一番に守りますから」
「そんな事認める訳ないだろう」
「異国など、ロゼに苦労をさせる気か」
「犠牲になるよりよっぽどましです」
「———その件は後でやってくれ」
宰相親子とヴァイスの言い合いを制するようにランドが口を開いた。
「その手記に書いてある事が真実ならば…これまで伝えられてきた事は真実を歪めていた事になるな」
「フラーウム家当主としては複雑か」
「…まあ、意図があって故意に歪めていた訳ですから。真実を伝えるだけが歴史でもありませんし」
宰相の言葉にランドは苦笑した。
「———それで、魔力を与えた時はカレンの身体を使ったようだが…それ以降はそういった事は起きていないようだな」
ランドはルーチェに向いた。
「ルーチェ。君が声を聞いた相手は人ではなかったのだな」
「はい…人の形はしていましたけれど、光の塊のようでした」
「会ったのは一度だけ?」
「はい」
「ロゼは?セレネらしき者と会った事は?」
「———いいえ…」
ロゼは首を振った。
「夢で見るだけです」
「そうか…まだ彼女が存在するのなら接触したい所だが」
「接触などしてどうするんだ」
フェールが尋ねた。
「まさかロゼに憑依させようと思っていないだろうな」
「ロゼの魔力について知りたいんだろう」
ランドは一同を見渡した。
「これまでの事から考えて、セレネが鍵となっているのは確かだ。だが肝心のロゼの魔力を安定させる方法はまだ分かっていない。ルーチェがいれば抑えられるが、常に一緒という訳にもいかないからな」
セレネとカレン、そしてロゼ。
二百五十年ごとに生まれた彼女たちの関係や、二百年前に現れた光の乙女と今のルーチェの存在。
分からない事はたくさんある。
「本人に聞く事が出来れば手っ取り早いのだがな」
全ての始まり———魔女であり女神であるセレネに。
このままでは国が滅んでしまう、そう危惧した幾つかの貴族が集まり話し合ったが、なかなか解決策が見つからなかった。
集まった貴族の一つ、ノワール家の当主は思い出した。
———過去、魔女と呼ばれ封印された、不思議な力を持つ娘が一族にいた事を。
その力を使う事は出来ないだろうか…藁にもすがる思いで当主はそう考えた。
記録を元に探し当てた、その封印された洞窟は無数の石で埋め尽くされ、中へ入る事が出来なかった。
だがその時、同行していた娘のカレンに異変が起きた。
突然意識を失い…やがて目を覚ました娘は、自分をかつてこの地に封印されたセレネだと名乗った。
セレネの肉体は既に朽ちていたが、その魂と力は残り続け、同じ一族の血を引くカレンに憑依したのだという。
当主は過去の行いを詫び、国の現状を訴え力を貸して欲しいとセレネに頼み込んだ。
しばらくの沈黙の後———セレネは当主の頼みを受け入れた。
そうしてノワール家と、協力関係にあった四家の嫡男たちに特別な力———それはセレネが持っていた力を分けたもので、それぞれの家に一種類の力を与えられた。
だが身体が耐えきれなかったのか、力を分け与えた直後にカレンは倒れ、そのまま息を引き取ってしまった。
力を与えられたノワール家の嫡男は姉の死を嘆き悲しみ、父親や他の四家たちを憎んだ。
———彼らはこの力を〝女神〟から与えられたものとし、セレネやカレンの名前と彼女たちの犠牲を隠匿したからだ。
「そして力を与えられてから五十年後…戦乱が終わった後に彼は事実を記し、この箱に封印したのだな」
フェールは本を閉じた。
「そのカフリンクスは、カレンが婚約者の誕生日に贈ろうと用意していたもので、彼女の形見として一緒に箱に入れたらしい」
「婚約者への贈り物…」
ロゼはカフリンクスを見つめた。
———彼女は自分の瞳の色と同じ石を嵌め込んだこの品物を、きっと幸せな気持ちで選んだのだろう。
それを贈る事も叶わないまま亡くなってしまったなんて…。
思わず涙が滲んたロゼの手をヴァイスがそっと握りしめた。
「何故セレネたちの事を隠匿したのだ?」
ヴァイスはフェールを見た。
「力を与えたのが魔女と呼ばれた人間よりも女神とした方が、五家を特別視させ他の貴族と差を付けられるからな」
「ふん———お貴族様の都合か」
ヴァイスは鼻を鳴らした。
「いつの時代も貴族は自分たちの事しか考えないのだな」
「ヴァイス…お前の貴族嫌いは変わらないな」
宰相は苦笑した。
「だが為政とはそういうものだ。正義だけでは国を治められないし、国益を考えれば何かを犠牲にする事もあろう」
「それがご自身の娘であっても?」
ヴァイスは宰相を見据えた。
「あなたは…国のためにロゼを犠牲に出来るのか」
「———父親としては無理だが、宰相としては…他に道がないとなったら出来るかもしれないな」
ヴァイスを真っ直ぐに見つめ返して宰相は答えた。
「お前も将軍職を継ぐ身なのだからその覚悟を持っておけ」
「その時はロゼを連れてこの国を出て行きますよ」
ロゼを引き寄せながらヴァイスは言った。
「俺はロゼを一番に守りますから」
「そんな事認める訳ないだろう」
「異国など、ロゼに苦労をさせる気か」
「犠牲になるよりよっぽどましです」
「———その件は後でやってくれ」
宰相親子とヴァイスの言い合いを制するようにランドが口を開いた。
「その手記に書いてある事が真実ならば…これまで伝えられてきた事は真実を歪めていた事になるな」
「フラーウム家当主としては複雑か」
「…まあ、意図があって故意に歪めていた訳ですから。真実を伝えるだけが歴史でもありませんし」
宰相の言葉にランドは苦笑した。
「———それで、魔力を与えた時はカレンの身体を使ったようだが…それ以降はそういった事は起きていないようだな」
ランドはルーチェに向いた。
「ルーチェ。君が声を聞いた相手は人ではなかったのだな」
「はい…人の形はしていましたけれど、光の塊のようでした」
「会ったのは一度だけ?」
「はい」
「ロゼは?セレネらしき者と会った事は?」
「———いいえ…」
ロゼは首を振った。
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「接触などしてどうするんだ」
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ランドは一同を見渡した。
「これまでの事から考えて、セレネが鍵となっているのは確かだ。だが肝心のロゼの魔力を安定させる方法はまだ分かっていない。ルーチェがいれば抑えられるが、常に一緒という訳にもいかないからな」
セレネとカレン、そしてロゼ。
二百五十年ごとに生まれた彼女たちの関係や、二百年前に現れた光の乙女と今のルーチェの存在。
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