元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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10歳〜アストレカ大陸編【戴冠式と入学試験】

拷問対決《リリヤ VS ルルリア》

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私、アッシュさん、リリヤさん、カムイの4人は、お父様やお母様と共に公爵家の馬車を使って、王城へ向かっている。城の正門を通り抜け、王城入口から程近い場所で、馬車から下りると、30歳くらいの騎士の男性が、国王陛下や王妃様のいる場所へと私達を案内してくれているのだけど、何故か王城内に入らず、迂回するかの様に、正面入口から遠ざかってゆく。私とリリヤさんが前に出て、少し後方にお父様達がいる配置となっている。

今日の私達の服装は、冒険者服やホワイトメタルの簡易着物とかではない。私は水色をベースとしたカジュアルドレス、リリヤさんは薄紫をベースとしたカジュアルドレス、アッシュさんはお父様が子供の頃に着用していたフォーマルスーツを着ている。2人とも、『平民だから、冒険者服にして下さい』と別邸のメイド達に訴えていたけど、王妃様の客人である以上、正装が必須とされるため、訴えは即座に却下された。そのため、現在の2人は高位貴族の令嬢と令息のような印象を受ける。

「あ、あそこ、大勢の人達がいるよ」
リリヤさんの指差す先には、王族、貴族、騎士、メイドといった方々が勢揃いしている。どうやら、オーキスとフレヤはいないようだ。彼らのすぐ近くには、とある1つの横長の直方体が鎮座されている。縦5m・横8m・高さ4mと、かなり大きい。全てが薄青色の布で覆われており、中身が見えない。

「リリヤさん、あの巨大な箱の中身が気になりますね」
「そうだね。箱のすぐ近くに、綺麗な女性がみんなに何かを話しているけど、あの人が王妃様かな?」

間違いなく、その女性はルルリア王妃様だ。隣には国王陛下もいるのだけど、ルルリア様以外の人達の顔色が、何処と無く悪い。

「お父様は、箱の中身を知っていますか?」
「いや、聞いていない。妙だな、リリヤさんから聞いた限り、鳥の啄み地獄にああいった巨大な箱は必要ないはずだが?」

お父様も知らないのか。……なんか嫌な予感がする。ルルリア王妃様が私達に気づき、満面の笑みを浮かべ手を振ってくれている。それに対し、周囲の人達は顔色が1段階悪くなり、私達に何かを訴えかけてくるような眼差しをしている。一体、何が始まるの?

「シャーロット、待っていたわ! あなたがリリヤさんね」
いきなり名指しされたせいか、リリヤさんが固まった。

「は…はじめまして。リリヤ・マッケンジーと…申します。お招き…して頂きありがとうございます」
う~ん、ガチガチに緊張している。

「ふふふ、そう固くならないの。今回は、リリヤさんの【鳥啄み地獄】を見せてもらう予定だったのだけど、ちょっと趣向を変えようと思って、急遽コレを用意したの」

王妃様の笑顔が怖い。何か、子供が悪戯を思いついたかのような奇妙な笑顔だ。国王陛下や臣下の人達を見ると、なんか絶望したかのような表情となっている。私と視線が合うと、皆が揃って顔を背けた。

「え…と、何をするのでしょうか?」
周囲に、重苦しい雰囲気が漂う。ルルリア様は何をさせるつもりなのかな?

「リリヤさん…私と勝負しましょう」
え、勝負!? なんで、そこに行き着くの!

「ふ……えええ!? しょ、勝負ですか!?」
リリヤさんも、慌てふためいている。王妃様相手に、模擬戦なんか出来るわけない。

「勝負と言っても、私とリリヤさんが戦うわけではないの。ほら、あそこに囚人服を着た2人の男がいるでしょ?」
うん、騎士団に拘束された2人組の男達が、王妃様の指差す方向にいる。ただ、1人だけ、明らかに様子がおかしい。1人は、薄汚い囚人服を着ているけど、残る1人は囚人服だけでなく、頭にヘルメットの様な物をかぶっているのだ。2つの長細いケーブルが頭の天辺付近に接続されており、それぞれのケーブルとヘルメットの接続部分には、魔石が付いている。おそらく、何らかの魔導具なのだろう。

「はい。犯罪者ですか?」
「そう、奴隷販売を裏で行なっていた組織のリーダー的存在が、あの2人組よ。私が騎士団を率い、奴等の隠れ家を襲撃して、潜んでいる悪者全員を逮捕したの」

それって王妃の仕事なの!? どう考えても違うよね!?

「ただ、逮捕出来たのはいいけど、隠れ家のどこを探しても、肝心の取引き相手の資料が見つからないのよ。部下共を拷問しても、《何も知らない》の一点張り。おそらく、この2人自身が、重大な物的証拠を何処かに隠している。こいつらは、組織のリーダーだけあって、拷問にかけても、中々口を割らないしぶとい野郎でね。お姉さん、ちょっと困っていたの」

王妃様、多分ここにいる全員が、『お姉さんという年齢を超えているだろ!』と思っています。まあ、誰1人、口に出さないけどね。それに囚人達の情報も、私が構造解析すれば1発でわかるんだけど、言える雰囲気ではない。リリヤさんも私をチラッと見てわかっているようだ。

「リリヤさんの鳥啄み地獄のことを聞いて、次の拷問は『これだ!』と思ったわ。私1人で再現しようと思ったのだけど、鳥達が見向きもしないのよ。そこで、鳥達に代わる1つの地獄を思いついたわけ。それが、この箱よ!」

ルルリア様、相当な自信があるのだろう。どうだと言わんばかりに背筋を伸ばし、右手で巨大な箱を指す。この箱の中に、鳥の代わりとなる何かを用意したということか。

「中身をお見せしましょう。私の考案したのはコレよ!」
騎士達が、箱に被されていた布を綺麗に流れるような動作で取り払う。そこには……

「「「「「「魚!?」」」」」」
この箱…生け簀だったの! 水槽の中には、数百匹の多種多様な魚達がいる! 鳥の代わりに、魚を選んだの! ていうか、どうやって内陸部にまで運んだのよ!

「そう、魚こそが鳥に代わる新たな拷問となる! 私が従魔ロードグリフォンに乗り、海の街ベルンに行って採ってきたのよ!」

自分で行って採ってきたの! ということは、魚の入ったあの大きな生簀をロードグリフォンの背中に括り付けて、ここまで来たということか。ロードグリフォンは、グリフォンの上位種で、通常の奴に比べて2回り程大きい。ライダードラゴンのガイよりも、少し大きいんじゃないかな? それでも、結構な重さのはず、ルルリア様の従魔が気の毒に思えてきた。

「王妃様…まさか勝負の内容って…」
「リリヤ、あなたの思っている通り拷問対決よ! あの2人を、鳥と魚で拷問して、どちらが先に口を割るのか競争するのよ!」
「ええ!?」

あまりの内容のためか、誰一人突っ込もうとしない。お父様もお母様も、生け簀にいる魚群を見て、口を開けたまま固まっている。ルルリア様だけが、目を輝かせ、リリヤさんに勝負を挑んでいる。これって逆らえないよね? という、本来ならば勝負する必要性ないよね? 誰か突っ込んでよ! あれ!? リリヤさんの身体が、震えている?

「お…お…面白そう! その勝負、お受けします!」
「「はあ!?」」
私とアッシュさんが、同時にハモって叫ぶ。リリヤさんの目が輝いている? え、本当に面白そうだと思っているの!? 

「リリヤ、本気か!?」
「アッシュ、勝負を申し込まれた以上、私は逃げたくない。それに……面白そうだから!」
うわあ~、晴れやかな笑顔で、そんな言葉をいいますか。どちらも、同じ系統の拷問だ。異なるのは、鳥と魚による攻撃だけ。鳥は啄み、魚はパクパク? でも、リリヤさんのアイデアを盗んでいるから…

「鳥啄み地獄VS魚群パクリ地獄と言えばいいのかな?」
「あら、その名前、良いわね! その名称でいきましょう」
ルルリア様、マジですか? 適当に言っただけなんですけど?

「さあリリヤ、鳥と魚の餌をあの二人にぶっかけるわよ!」
「はい王妃様! ぶっかけましょう!」
ルルリア様とリリヤさん、完全に意気投合している。もう誰も止められない。2人が拘束されている2人組の囚人の方へ向かう。

「国王陛下、止めないんですか? 多分、悲惨な事態になりますよ」
国王陛下は、何もかも諦めたかのような目をして、こちらを見た。

「シャーロット、ルルリアの鬼気迫る目を見たろ? あれは、もう止められんよ。それに止めたら、私も奴等と同じ目に遭いそうだ」
「あ…はは、まさか」
国王陛下の言葉に、臣下の人達も頷いている。そこには、王太子様や王太子妃様もいる。

「アッシュさん、リリヤさんを止めないんですか?」
「はは、不思議なんだ。国王陛下と全く同じことを思ったよ。止めたら、多分…やられる」

彼も、国王陛下と同じ目をしている。リリヤさんの裏の顔は白狐童子なんだけど、もしかしたら表も裏も、ああいった狂気に囚われた顔をするのかな。

「アッシュ君、君はリリヤの恋人と聞いているが?」
国王陛下が、アッシュさんに話しかけてくるとは意外だ。

「あ、はい。その通りです」
「彼女は…ルルリアと似ている。私は彼女の裏の顔を知っていたが…制御できなかった。君は今のうちに、しっかりとリリヤを教育しておきなさい。今なら、まだ間に合う」

言葉が重い。ズシリと心に響いてくる。なんで、遠い目をして話すかな? これまで、どんな目に遭ってきたの?

「国王陛下、御助言ありがとうございます。リリヤが狂気に狂わないよう、しっかりと彼女を教育しておきます」

アッシュさんの言葉にも、深みがある。これから拷問対決が始まる。一体、どうなるのよ?

○○○

「うぷ! 王妃が、こんな真似をして許されると思っているのか!」
2人の囚人服が脱がされ、下着一枚となっている。そこに、鳥と魚用の餌が身体中へ塗りたくられていく。水の中で拷問されるため、魚用の餌だけは、かなりの粘性を帯びている。さっきから喚いている30代の男は、【鳥啄み地獄】が待ち受けている。もう1人の男は、潜水用の魔導具ヘルメットが装着されており、あのケーブルは空気を循環させるためのもので、本人の声も外に聞こえるよう整備されているのだけど、煩いから切っているとのこと。

「ババア…ゴ!」
「ババア? せめて、お姉様とお呼び! 王妃はこの国のトップの妻なの。何をしても許されるのよ! 弱者は黙りな!」
「そうよ、黙れ悪党! 捕まったアンタラの運命を呪いな!」

これじゃあ、どっちが悪党なのかわからない。

ルルリア様とリリヤさんの性格が豹変している。そして、誰も彼女の言葉を咎めようとしない。国王陛下を見ても、顔をゆっくり横にプルプルと振るだけ。鳥啄み用の男は、高さ1m程の台に地面と平行して載せられ、大の字で拘束される。魚群パクリ地獄の男は、生簀の横に縦長の滑車が用意され、水面よりも1m程高く、両手足が拘束されたまま、逆さ吊り状態となっている。この滑車の紐を使って、落としたり、上げたりするのだろう。ああ、全ての用意が整ってしまった。

「王妃様、全力で拷問をかけます」
「リリヤちゃん、良い心がけよ。どちらの拷問が優秀なのか勝負よ!」
「はい、負けません!」

今、勝負の火蓋が切って落とされた。公平を期するため、召喚された鳥達の数は魚群と同じで142羽、その全てが囚人に襲いかかる。それと同時に、もう1人の囚人が生簀の中に落とされ、声が魔導具により外へと響き渡る。

『チクチクチク…ブニュブニュ…ブチブチブチ…チクチクチクチク…』
「あはははは…や…やめ~~~ゴポ…口が~~あははは……玉が~~ぎょほほほほ~痛ええ~~アタタタタ…俺の毛が~~~~~~」

『パクパクパクパク…グニュグニュ…ツルツルツル…パクパクパクパク…』
「ハハハハハ…マジ…脇が~~ノオオオオーーーー首が~~ヒヒヒヒヒヒヒ~ゲ! あはははは肛門だけは~~~~~イヤ~~~~~」

酷い、酷すぎる。悍ましい光景だ。鳥があらゆるところを啄み、魚が下着の中に入り、あらゆるところをパクパクしている。私は見慣れたせいもあって平気だけど、王妃様とリリヤ様を除く女性陣が、あまりの醜悪さに目を背けている。ここに、オーキスとフレヤがいなくて良かった。というか、この光景を見せたら、2人がおかしくなるかもしれない。騎士や教会関係者の人達も予想して、2人を連れて来なかったんだ。

「さあ、物的証拠の場所を吐きなさい!」
王妃様、容赦ないね!

「悪人共、吐きなさい! あなた達が吐露するまで、この拷問は永遠に続くの!」
リリヤさんも容赦ない。【これ、永遠に続くの?】と周囲の人達も思っているだろう。

「あははははは…お前ら…おぶ……あははは(ふざけるな! この状況で吐露できるか!鳥が口の中にまで入ってくるんだぞ! 王妃もあのガキも、目がマジだ。俺達が吐露するまで、この地獄は永遠に続く……相棒に任せるしかねえ、もう全部吐いちまえ!)」

「おほほほほほ、や…っははっは…め…んおののおの…て……だから…肛門は……(小魚が俺の下着に入り込んで、気持ち悪いぃぃぃぃ~~~。暴れても暴れても、下着の中に入り込んでいるから出て行かねえ。俺、小魚に襲われてショック死するかも。口は自由だが、味わったことのない感覚のせいで、頭が働かない)」

構造解析スキルで、この人達の心の声が丸わかりだ。ほんと、いつまで続くの?


……5分後


「(もう…やめて…全てを吐きたい。口に隙間が、これなら!)……わかった! 全部…」
「鳥~~口がお留守になってるよ~~~~」
「ぽっぽ~~~~《姉御、わかったぜ~~~~》」

うそ~ん、リリヤさんのステータス欄に、ノーマルスキル《鳥語Lv4》がある。いつの間に覚えたのよ。鳥達とある程度会話できることもあって、この地獄をわざと終わらせないようにしている。

「オゴ! オゴオゴ!(この女、俺に吐露させない気か! 勝負なんだろ? このままじゃあ、マジで永遠に続いちまう!誰か~聖女様~~~助けてくれ~~)」

やめてよ! 私に助けを求めないでよ! あ、魚群の人も、私にウルウル目で訴えている。怖いから助けないよ! カムイだって、この状況を見て、私にしがみついて震えているんだからね!

「だ…か…ら…物的…証拠は…王都の…地下…誰か聞いてよ」

ルルリア様の顔がニヤついている。魚群の人、さっきから物的証拠の場所を喋っているのに、魔導具の機能をオフにしているから、ここまで聞こえてこない。王妃様は、この地獄の快感をもう少し味わいたいと思い、吐露する瞬間、わざとオフにしている。

「リリヤ、あなたのことを気に入ったわ。こんな面白い勝負、すぐに終わらせたくないもの」
「王妃様と同意見です。鳥達も、久しぶりの私の餌に嬉しいのか、【まだ終わらせないで】と訴えています。だから……もっと続けましょう!」

リリヤさんとルルリア様、性格が本当に似ている。


……【この拷問対決、結果は引き分けである】……


拷問を10分程続けると、両方の餌が少なってきたので、囚人達を鳥と魚から一時引き離した。リリヤさんは鳥と会話し引き下がらせ、ルルリア様は騎士に命令し、滑車で囚人を引き上げた。囚人2人組は息も絶え絶え状態であったため、暴露できないだろうとリリヤさん達も思っていたようだけど、その目論見が甘かった。2人の精神にも、僅かながらの思考力と判断力が残されていたのだ。

囚人達にとっては、このインターバルこそが最大の勝機だと思い、2人同時に物的証拠のある場所を吐露した。ルルリア様も油断して、魔導具の機能をオフにしていなかったため、両者引き分けという形で幕を下ろした。でも、ルルリア様もリリヤさんも、まだやり足りないと思っているのか、囚人2人に対し、憎しみを込めた目で睨んだ。それに対し、囚人2人組は何故か勝ち誇る笑みを浮かべた。構図がおかしくない?

もう完全に、勝負の趣旨が訳分からなくなっている。

このままでは、腹いせで再戦する可能性もあったので、私が間に入ったことで、拷問対決を強制的に終わらせ、やっと平穏が城内に訪れる。この時、囚人も騎士もメイドもお父様もお母様もカムイも、私に感謝の念を送ってくれた。リリヤさんとルルリア様は、そんなことお構いないしに自分達の世界に入り込み、互いの健闘を称えあっている。

「リリヤ、私のことはルルリアでいいわよ。あなたとなら、上手くやっていけるわ。鳥啄み地獄の真髄を教えてね」
「ルルリア様、私の鳥に対する思いを全てお伝えします!」
あら~~、握手まで交わしている。互いの拷問をぶつけ合うことで、自分達は同類だと認識したようだ。


《これらの拷問、もう2度と見たくない》と、皆が思っているだろう。


○○○


騎士達が、肉体的にも精神的にもボロボロとなった囚人2人組を取調室に移動させ、リリヤさんは鳥を元の場所へと送還した。残るのは、生け簀の中の魚達となる。これだけの魚群、どうするのだろうか?

「ルルリア様、この魚達はどうするのですか?」
「何を言っているの? 今晩、食べるに決まってるでしょ? 騎士やメイド達の食事に加えたら、あっという間に無くなるわ」

その言葉に、ここに残って掃除を続けているいるメイド達と私達は、一斉にルルリア様を見る。

「あら? みんな、どうしたの?」
「あの…魚達は、餌だけでなく、囚人に付いている垢や汚れなども少量食べているのですが?」
皆が、私達の会話を真剣に聞いている。
「それらは、全部内蔵の中でしょ? 私達が食べるのは身なのだから、全く問題ないわ」

その通りなんだけど、あの拷問を直に見た私としては、心理的に食べたくない。どうする? ルルリア様の機嫌を損ねるわけにもいかない。ああ~、皆の視線が突き刺さる。

「ルルリア様は、魚を揚げた【天麩羅】という料理をご存知ですか?」
「知らない料理名ね。海の街ベルンでも聞いたことないわ」
よし、それならイケル!

「魚の身を油で揚げることで、食感がサクサクホクホクとなり、物凄く美味しい料理に生まれ変わるのです。せっかくなので、私がこれらの魚を使って、調理しましょうか? 高温で揚げますから、熱くて美味しいですよ~~」

【高温】という言葉を強調しておいた。本来であれば、衛生面的にも問題ないと思うけど、活け造りとかは、皆が心理的に嫌がると思う。私が周囲を見回すと、メイドさん達は顔の表情だけで、【聖女様、ありがとうございます! それなら食べれそうです!】と、私へ訴えている。

「魚を油で揚げる発想はなかったわ。天麩羅か、美味しそうね。それじゃあ、今日の夕食はそれに決まりね。シャーロット、早速準備してちょうだい」

ほ、良かった~~~、案が通った~~~~。


……王族の方々が王城内へと戻ると、貴族やメイドさん達が一斉に私のもとへ訪れ、拷問や魚のことで、御礼の言葉を貰った。そして、《【天麩羅】、楽しみにしています》とも言われた。

○○○

この日、リリヤとルルリアによる【鳥啄み地獄】と【魚群パクリ地獄】というおぞましい光景を見た者達の大半が気分を悪くし、その日の仕事が捗らなかった。しかし、その日の夜に食べた新料理【天麩羅】が、その光景を浄化させる程の絶品であった! 王城内の者達にとって、この日に味わった地獄と天国は強く印象に残り、【拷問と天麩羅】の話がセットとなって王都中に広まり、【揚げ料理】という新ジャンルが、王都の民衆達の心に深く刻み込まれることとなる。






○○○作者からの一言

次回更新予定日は、2/9(土)10時40分となります。
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