上 下
211 / 277
10歳〜アストレカ大陸編【戴冠式と入学試験】

皆さん、間違い通信には注意しましょう

しおりを挟む
リリヤさんを召喚した後、マデリンさんとカルシュナ王女を除く5人が、私の国賓クラスともいえる超豪華なお部屋へと入ってもらい、アッシュさんが彼女にクックイスクイズに起きた出来事を、私がアストレカ大陸全土で起きた事件や、神ガーランドの暴走と、代理神ミスラテル様のことを話すと、内容が大きすぎるためか、彼女は両手で頭を押さえ出した。

「あ…ああ…トキワさんがガーランド法王国を滅ぼして、亡者達の大群がアストレカ大陸全土を壊滅しようと一気に押し寄せてきて、それをシャーロットの従魔達が大陸全土を蹂躙して殲滅させた。おまけに、ガーランド様が暴走して、上位の神にお仕置きされて、惑星管理を10年間外されて、代理の神様が来た。……うう、頭が混乱してきた」

リリヤさんはこの事件に一切関わっていないから、混乱するのも無理ない。あと、神様関係の話は、彼女に話しても問題ない。ミスラテル様から言われた《シャーロットの仲間かつ、厄浄禍津金剛の件を知っている者に限り、話しても可》の条件を満たしている。

「全て解決済なので、気にしてはいけません。それより、明日私の故郷であるエルディア王国へ行きましょう。今回の件で、魔人族の誤解も解けました。エルディア王国王都に関しては、私が逸早く皆に知らせているので、魔人族達への忌避感も薄れていますから、ギルドで冒険者登録もできますよ」

私の言葉が弱いのか、彼女の心に届いていない。ずっと、両手で頭を抑え考え込んでいる。

「リリヤ、頭を切り替えるんだ。君は何も悪くない。いきなりアストレカ大陸に召喚されて、この話を聞けば、僕だってそうなる。僕と二人で《ここまで旅行》に来たと思い込むんだ。フランジュ帝国の戴冠式まで、まだ日がある。それまで、エルディア王国の王都を二人だけで観光しよう」

アッシュさんが言った途端、リリヤさんはガバッと顔を上げた。

「アッシュと二人だけで婚前旅行!」
どう聞き間違えたら、【ここまで旅行】が婚前旅行となるのだろうか? ある意味、二人だけの旅行と考えれば、あながち間違いではないけどさ。

「え…あ…いや…うん」
リリヤさんが両手を合わせ、目が輝かせながらアッシュさんを見ている。まあ、これでいいか。次の話を進めていこう。

「リリヤさん、エルディア王国のルルリア王妃様が、あなたと是非2人だけでお話ししたい重要案件があると言ってました」

「私と!? なんで! 平民だし、魔鬼族だよ!」
理由は、1つしかない。

私は、ネルエルさんを尋問した時の内容を伝え、ルルリア様が【鳥啄み地獄】を習得したいので、あなたを【《王妃様の客人》兼《指導教師》】という形で王城に招待したいことを伝えると……

「私が先生になって、王妃様にアレを教えるの!」
「ルルリア様は、リリヤさんの発想に共感を覚えたそうです。自分も習得して、王…ゴホン…犯罪者達に地獄の苦しみを味わせたいそうです」

危ない危ない。あの人の本音は、王と息子達がヘマをやらかした時、罰としてアレを与えると豪語していたのだけど、言わない方がいい。

「シャーロット、お前の故郷の王妃様は変態なのか?」
トキワさんめ、私が王と言いかけたから、何をしたいのか察したようだ。

「シャーロット、僕もトキワさんと同じ意見なんだけど? 別に、王妃様がアレを習得する必要性ないよね?」
アッシュさん、それを言わないでください。

「それ以上、突っ込まないで頂けると助かります」
「君も…違う意味で大変だね」
アッシュさん、相手は王妃だよ。逆らえませんよ。

「とりあえず、エルディア王国に戻った際、私も王城に行って、国王陛下と王妃陛下と謁見して、ここの状況を報告しないといけません。その時に、アッシュさんも連れて一緒に行きましょう。トキワさんはダメです」

ガーランド法王国の一件で、トキワさんの顔は貴族陣営にも伝えられている。ただ、どこの国にも、愚かな貴族というものはいる。そいつがトキワさんを怒らせると、ガーランド法王国の二の舞になる。だから、国王陛下から

《アッシュという男の子に関しては王城に招待しても構わないが、トキワ・ミカイツだけは、絶対に連れてこないように》

ときつく厳命されている。

「まあ…察しはつく。1人で観光…はまずいから、別邸で待機しておく」
トキワさん、ごめんね。

「そうそう、リリヤさん、こちらの簡易神具【グローバル通信機】をお渡ししておきます」
「え、簡易神具? グローバル通信機?」
彼女が聞き慣れない言葉だからか、首をちょこんと傾ける。

「トキワさん、アッシュさん、私の父エルバラン公爵、エルディア王国の国王陛下、アドルフ教皇には、既にお渡ししています。これは……」

使い方を言い終えると、彼女はマジマジと、グローバル通信機の画面を見つめていた。画面に映っている人は、現在のところ7人いる。7人の顔の下には、名前も表示されている。

「うわあ~、みんなの顔が表示されてる。手に無属性の魔力を纏わせて、この画面の顔にタップしたら、相手が何処にいようとも、連絡がとれるんだ。あれ? ねえシャーロット、このダークエルフの【ユリリアス】っていう女性は誰なの?」

リリヤさんの指差す顔は、隠れ魔人族の長だ。

「その方は隠れ魔人族の長です。皆さんの移住方針が、まだ決まっていません。状況が整い次第、私かアッシュさんかトキワさんに、連絡が来るはずです」

皆をハーモニック大陸やエルディア王国へと連れて行く際、必ず隠れ魔人族の誰かと連絡を取り合わないといけない。候補として、ベルナデットさん、ネルエルさん、ユリリアスさん、マデリンさんの4名がいるのだけど、トップの方に渡しておくのが最善だと思い、ユリリアスさんに渡しておいた。

「この人が隠れ魔人族の長なんだね。シャーロットの友達には、これを渡していないの?」

「この国へ向かう際、まだ台数が少なかったこともあって渡していません。明日帰還したら、1人の友達には渡しておこうと思っています」

私の裏事情を知っているのは、フレヤだけだ。彼女だけには渡しておきたい。

「ということは、この画面に映る人が、これからどんどん増えていくの?」
「はい。必要最低限の人達に渡し終わったら、少し改良を加えようと思っています。簡易神具なので、私の持つ通信機を改良すれば、自動的に他の物も同じように改良されます」

「簡易神具だから出来る芸当だよね」

戴冠式が終わったら、私と懇意にしているクロイス王女にも渡しておこう。サーベント王国にいるメンバーの誰かにも、1台だけ渡しておきたい。無難なところで、ベアトリスさんかシンシアさんかな。

《エルディア国王陛下から通信だよ、エルディア国王陛下から通信だよ》

私の声がグローバル通信機から聞こえる。通信相手は国王陛下か。

「あれ? 私の通信機からではありませんね」
ということは、私以外? 現状、みんなの通信機の声も、私に設定している。ややこしくなるから、持ち主の声に変更しておこう。

「俺の通信機だな」
「え、トキワさんですか!?」「どうして、エルディア王国の国王様がトキワさんに!?」
アッシュさんもリリヤさんも、そりゃあ驚くよね。

「とりあえず、受けるぞ。初めまして……エルディア王国の国王陛下。トキワ・ミカイツ…」
「あ!?」《ブチ》

……え?

「俺の顔を見た途端、切りやがった。相手を間違えて通信したことはわかるんだが、この行為は喧嘩を売られたように感じるんだが?」

周囲に、沈黙が流れる。国王陛下、まさかとは思うけど、間違え電話ならぬ間違え通信をしたの?

《ブライアン国王陛下から通信だよ、ブライアン国王陛下から通信だよ》

「今度は、私の通信機ですね……国王陛下、シャーロット・エルバランです」
画面に映されたブライアン国王陛下の顔色は、真っ青だった。

「シャーロット、どうしよう? 間違えて、トキワ・ミカイツに通信して、驚いた拍子に切ってしまった」
やっぱり、間違え通信か。

「国王様、安心してください。トキワさんなら、私の目の前にいます」
「本当か!? それなら、喧嘩を売った行為ではないことを伝えておいてくれ!」
ガーランド法王国の件もあるから、かなり焦っている。

「大丈夫です。トキワさん本人もわかっています。ただ、間違えた場合でも、すぐに切る行為だけは控えてください」
「つい切ってしまったが、かなり失礼な行為に値するな。以後、気をつける」

日本でも友達にすぐ電話を切られたら、ちょっと気分を害してしまうし、何のために電話したのか気になるからね。

「ところで御用件は?」
「大した用件ではないのだが、貴族のお仕置きに使用した拷問具、初めに試した相手は誰なのかと思ってな。明日聞いても良かったんだが、どうしても気になる」

あの件の詳細は、まだ話していない。法王から聞いたのかな? 

「申し訳ありません。ある条件を満たしていないので、その質問にはお答えできません。でも、どうして気になるのですか?」
ハンマーヘッド金的地獄の初の犠牲者はガーランド様だけど、そこまで気にすることかな?

「うん…まあ…法王がね、初めの犠牲者を私だと思っていたようなんだ」

ああ、あの言い方なら、そう誤解してもおかしくない。

「《私やお父様でも逆らえないお方》と言葉を濁して言いましたから、誤解したんですね」

「なるほど…それでか。実はね、法王が私を英雄扱いしちゃって気分も良かったから、つい……黙認しちゃったんだよ」

え? なんで黙認したの? そんなことしたら……

「そちらで、何かあったのですか?」
「あのじじい…ゴホン…法王はその内容を各国に伝えてしまったんだ。その後、各国の国王達が私の玉を気にしたのか、通信が頻繁にきて、その内容をルルリアに知られてしまってね。彼女を通して、息子達や高位貴族達に伝わちゃったんだな~。私が気づいた時には、もう手遅れ。国内の者達には真実を伝えているが、各国の王達には今更訂正もできない。私の面子は急降下だ。あはははははは」

黙認した国王陛下が悪いのだけど、悲惨な末路だ。ルルリア王妃様も、なんで高位貴族に教えるかな。王族の権威低下に関わるのでは? 

「え~と、私がきちんと法王様達に答えなかったせいですね。申し訳ありません」
「いや、いいんだ。黙認した私が悪い。今後、シャーロットが国内の貴族や、各国の王達と会った際、必ずこの件について質問されるだろうから、優しく真実を伝えておいてくれ」
「わかりました」

私が通信機を切ると、3人が私をジト~っと見つめている。現状の通信機の機能では、会話自体も周囲に聞こえてしまうから、当然あの会話も聞いているよね。

「私が悪いんですかね?」
「事情もあるからなんとも言えないけど、ある意味、一番の犠牲者はエルディア王国の国王様だね」

アッシュさんの言葉に対し、トキワさんもリリヤさんも頷いた。

○○○

翌朝、私達5人は、法王とアドルフ教皇、隠れ魔人族の長ユリリアスさんとマデリンさんに別れを告げてから、エルディア王国王都別邸上空50m付近へと転移した。転移直後、ウィンドシールドで周囲を囲い空中に浮遊している状態で、皆が初めてのエルディア王国を見渡す。

「ここが…エルディア王国、シャーロットの故郷」
「アッシュさん、ここが王都となります。真下にあるのが、家族の住む別邸です」

ガーランド法王国では、アッシュさんも隠れ魔人族の人達や法王と話し合ってばかりで、碌に観光も出来なかった。この国では、リリヤさんと楽しんで観光してほしい。

「なにか…空気が違うね。昨日のガーランド法王国よりも、湿度が低いのかな? ジストニス王国の王都とも違う」
リリヤさんは、昨日転移したばかりで、まだ環境に慣れていない。だからこそ、違いを認識できるのかもしれない。

「シャーロット、ここは王都なんだろ? 強い力を持った奴等が少なくないか? ここから感じ取れる1番強い奴は、Aランクの力量を保持していて、この真下の別邸内にいる。だが、あの王城から感じ取れる力は、Bランクだ。しかも、2人だけだぞ」

トキワさん、早速そこに気づきますか。彼の言うAランクの人間は、私の専属メイド、マリルだ。

「アストレカ大陸において、250という能力限界値を超えた人間は、少数しかいません」

ガーランド法王国の王都では、隠れ魔人族も含めると、Bランクの力量を持つ人々も多少いた。この国ではBランク以上となると、数人しかしかいない。

「おいおい、Cランク程度の強さしかなくて、よく魔物達に滅ぼされないな」
「そこは、魔導具でカバーしているんです」

帰還してから、私もアストレカ大陸の国々について勉強したけど、魔導具の技術が各国共に、ハーモニック大陸のサーベント王国並みか、それ以上なのだ。人間の能力限界に関しても、魔導具の力を借りることで、力を底上げしている。

「皆さん、地上に下りて、別邸に入りましょう。私のお兄様は王都の学園にいますので不在となっていますが、父と母がいます」

お父様達には、仲間達を連れて行くことを事前に言ってあるので、マリルを含めた使用人達も、私達を快く出迎えてくれた。使用人達は、私がSランクの従魔達を従えていることを知っているから、こんなに早く帰還しても驚くことはない。ベルナデットさんとネルエルさんを宿泊させていたこともあり、トキワさん達を見ても驚くことはない。私達がリビングに入り、1分も経過しないうちに、お父様とお母様が入口から現れた。私の仲間達もいるので、正装スタイルだ。

「お父様、お母様、ガーランド法王国も落ち着いたので、一時帰還しました。その際、ハーモニック大陸でお世話になったアッシュさん、リリヤさん、トキワさんとも再会したのでお連れしました」

お父様とお母様、2人ともかなり緊張している。
2人の視線は、明らかにトキワさんへと向いている。

「初めまして、トキワ・ミカイツと申します。お招きいただきありがとうございます。俺達は平民なので、時に失礼な物言いをするかもしれませんが御容赦を。ガーランド法王国の件を聞いていると思いますが、あれは例外中の例外です。普段は俺も温厚なので、この国に危害を加えるつもりはありません」

トキワさんは、多くの貴族達と邂逅していることもあり、全く隙がなく、堂々とした雰囲気で貴族風の挨拶をした。そして、お父様とお母様が気にしていることをピシャリと言ってくれた。

「は、はじめまして。アッシュ・パートンと言います。この度は、お招きいただき…ありがとうございます。シャーロット…様とは、彼女がケルビウム山山頂に転移されて1ヶ月ほどで知り合いました。以降、彼女と共にずっと旅を続けています」

「リリヤ・マッケンジーです。シャーロット…様とはアッシュと同じで、ジストニス王国の王都で知り合いました」

アッシュさんとリリヤさんは、これまでの旅の過程で、王族貴族達と話し合っているおかげか、以前ほどの緊張は見られない。

「私がシャーロットの父、ジーク・エルバランだ。君達のことは、娘やカムイから聞いている。トキワくん、アッシュくん、リリヤさん、娘の旅に尽力してくれて感謝する」

「シャーロットの母、エルサ・エルバランよ。皆さん、娘を見守ってくれてありがとうございます。あなた達がいなかったら……多分ハーモニック大陸全国家に大迷惑を掛けていたと思うわ。ほらほら、立ったままだと話し辛いだろうから、そこのソファーに座ってね」

お母様、ハッキリ言うな~。【娘を見守る】の意味は、多分本来のものとは違うよね。私達がソファーに座った後、ハーモニック大陸での私の貢献度について話し合った。ネーベリック、料理、温泉兵器、魔鬼族の禿げ、タライの呪い、クックイスクイズ(神除く)……今の私にとっては懐かしい思い出ばかりだ。私のことばかり話しているからか、いつのまにかアッシュさんとリリヤさんの口調も、普段通りに近い感じとなり、お父様とお母様も、身体の緊張感が消え、トキワさんに対して普通に接してくれている。

「あの…エルサ様、王妃様が私の考案した【鳥啄み地獄】を習得したがっていると伺っているのですが…本当ですか?」

リリヤさんの質問に、お父様も母様も苦笑いを浮かべる。

「ええ、本当よ。あの方は、元冒険者ということもあって、自分の気に入ったものは何でも貪欲に吸収したがるのよ。ネルエルを聴取して以降、自分で鳥達を掌握しようとしているの。臣下の人達も困り果てているわ」

あの人、まさかとは思うけど、公務を放り出して鳥達と遊んでいるの?

「ということは……」
「ええ、この後、シャーロットと共に、王城に行ってもらうわ。宰相や他の人達とも話し合ったのだけど、おかしな噂が広まる前に、王妃様に教えてあげて欲しいの」

鳥達と戯れる王妃、通常であれば微笑ましい光景なんだろうけど、鳥達を掌握して、犯罪者達に拷問を与えるよう仕向けようとしているのだから恐ろしいよね。

「リリヤさん、多分王城内にて、【鳥啄み地獄】を見せることになるかと」
「やっていいの?」
「いいんです」

王妃様は牢獄にいる犯罪者の中でも、一際性根の腐った2人を選別し、既に準備を整えているようなので、私達が登城次第、今日実行される予定のようだ。心待ちにしているようなので、ここでの話を早く切り上げよう。

「エルバラン公爵様、僕とリリヤはフランジュ帝国の戴冠式の後、エルディア王国で冒険活動を行いたいと思っているんですが可能でしょうか?」

昨日の夜、私はこの話を聞いた。戴冠式が終われば、学園に戻ることも可能だけど、グレンさんと約束を交わしてから一年も経過していない。だから、数年間、2人はエルディア王国王都で活動することを決意したんだ。クロイス女王も、魔鬼族の視点で捉えたアストレカ大陸の実態を知りたいだろうから、多分許可してくれるはずだ。

「可能だ。ただ、初めのうちは、王都を拠点として活動した方がいい。この近辺ならば、現時点で魔人族への差別もかなり薄まっているし問題ないだろう。トキワくんはどうする?」

私が帰還して、まだ1ヶ月しか経過していない。ガーランド法王国の件や隠れ魔人族については、辺境部まで詳細に知れ渡っていないと思う。王国全土に広まるまでは、もう少し時間がかかる。

「俺は、一度ハーモニック大陸に戻ります。しばらくの間、冒険活動を休止して、恋人のスミレとデートをするつもりです。十分に休息をとったら、俺もエルディア王国王都を拠点にして、依頼をこなすか、ダンジョンに潜ってみようと思っています」

トキワさんの目的は、長距離転移魔法を習得し、使用可能にさせることだ。戴冠式以降、十分な休息をとったら、霊宝樹のもとへ行き、魔法を習得する。その後、私の力を借りて、エルディア王国に戻り、王都で活動しながら愛着度を高めていく。

スミレさんの拠点となる場所と、王都の愛着度を100%にすれば、トキワさん1人の力で両大陸間の転移が可能となるのだけど、1人の力だけでは不可能だ。理想的なことをいえば、恋人のスミレさんや従業員のアヤメさんを連れて、この王都で生活し、愛着度を高めたいことを望んでいる。

理想を実現させる場合、私の力が必要不可欠だ。

でも、タダで利用されるのはごめんだ。私を足として利用する場合、ランダルキア大陸の情報を随時貰える契約を結んでおいた。当然、情報の価値次第で迎えに行かない場合もある。

「なるほど、それなら今から渡す品も役立つだろう。君達3人には、我が公爵家の家紋の入ったメダルを進呈しよう。これをギルドや各店で見せれば、《エルバラン公爵家の後ろ盾あり》と判断され、差別もされないだろうし動きやすくなる」

お父様が500円硬貨の2倍程ある青白いメダル3枚を3人に渡した。サーベント王国で貰った物と似ており、御礼の品として3人も喜んでくれるだろう。

「エルバラン公爵、感謝します。これがあれば、エルディア王国だけでなく、周辺国家でも行動しやすい」
トキワさんの場合、現時点で法王が【トキワ・ミカイツ→要注意人物! 絶対に怒らせるな!】という触れ込みで、各国の王族貴族に似顔絵付きの手紙を送っているような気がする。

「エルバラン公爵家様、ありがとうございます! これがあれば、僕もリリヤも行動しやすいです!」
「公爵様、ありがとうございます!」

アッシュさんもリリヤさんも、このメダルがあれば、余計な諍いを回避できるだろう。私も、カムイに一言言っておこう。

「カムイ、昨日言った通り、あなたもアッシュさんとリリヤさんについて行っていいよ」
「本当に良いの? シャーロットの護衛役がいなくなるよ?」

今回、あの事件もあって、カムイのストレスも大幅に解消したけど、ああいった大きな事件は早々起こるものではない。0歳のカムイには、もっと多くの経験を積ませないといけない。それなら、私とばかりいるより、アッシュさん達といた方が有意義に過ごせるはずだ。

「ふふふ、大丈夫。みんなを召喚した時、デッドスクリームやドール軍団達がこの大陸に興味を持ってくれたから、交代で私の護衛に付くことになったの」

「あ、それなら安心だね!」

アッシュさん、リリヤさん、トキワさんの生活基盤が、着々と整いつつある。後は、私の身分をどう扱うか、ここで皆と相談した結果、やはり成人となる15歳までは【公爵令嬢】、成人以降は【フランジュ帝国の帝王】という案が、1番妥当という意見に落ち着いた。







○○○ 作者からの一言

次回更新日は、2/2(土)10時40分予定です。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【助けて! ナギア君】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:344

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:440pt お気に入り:134

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,190pt お気に入り:2,186

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,074pt お気に入り:3,568

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,916pt お気に入り:1,963

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。