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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
旅芸人との出会い
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○○○ シャーロット視点
学園長室での話し合いを終えた後、私達はミーシャを連れて、私とフレヤの部屋へと戻ってきた。部屋内を【ダーククレイドル】で囲い誰にも入れないよう完全密閉した後、私達はミーシャから、村で起きた凄惨な事件を詳しく聞いた。
私の思った以上に、彼女はリリヤさんと同じか、それ以上の重い枷を背負っている。
デュラハンが村を滅ぼした。
これは、確定事項だろう。
でも、いくつか引っかかることがある。
1) 彼女の両親が絶命する直前、デュラハンに対して何かを口走っていたこと。
2) デュラハン自体が、両親に何故か謝罪していたこと。
3) 村人達の死体には無数の咬み傷や食いちぎられた跡があること。
4) 誰が気絶したミーシャを助けたのか?
Bランク以上で知能の高いデュラハンが犯人であるのなら、村人達を斬り殺すだけで十分だ。それに、他の村や街も似た感じであることも気にかかる。
「あいつだけは、絶対に殺す!」
「ミーシャ、デュラハンは君の両親にどうして謝罪してから殺したんだ?」
オーキスが私の疑問を口にしてくれた。
「わからない。魔物にも、色々な性格があると聞いた。あいつなりの流儀なのかもしれない」
そんな魔物がいるかな?
これは、何か裏がありそうだ。事件の起きた時期はガーランド法王国となっているから、元法王でもあるあの人に聞いてみよう。私か国王陛下が通信すれば、真実を教えてくれるはず。
「そういえば……今日の昼2時、旅芸人の男性が学園に来る」
え、なんで学園に来るの?
「私が治安ギルドの留置場に滞在していた時、学園長が旅芸人さんと話し合っていて、【謝罪以外にも、我々に何か出来ることはないか?】て聞いていた」
うんうん、それで。
「そしたら、彼が【それでは、フラマリオン学園を見学しても宜しいでしょうか? 恥ずかしながら、自分は学園に通ったことがないのです】と返答したから、学園長はこの要求を即決で許可したの」
ああ、そういう理由なら納得だよ。
案内人はキョウラク先生か学園長がやってくれるんじゃないかな?
「彼に、もう1回会って謝罪したい。……シャーロットが一緒に行ってくれると嬉しい」
まあ、1人では行きにくいよね。それに旅芸人さんも学園見学に来るのだから、《【聖女】や【聖女代理】と偶然出会えるかも》という下心もあるかもしれない。友達が迷惑をかけてしまったし、私も会っておこうか。
「いいよ。一緒に会いに行こう」
「やった! ありがとう!」
ミーシャの笑顔が凄く可愛い。過去の凄惨な事件のせいもあって、感情を表に出しにくくなっていると言っていたから勿体ないよね。
「あと、私自身がデュラハンと遭遇する危険性もあるから、絶対に逃げられるような魔法を教えてほしい」
王都近辺にいるのなら、デュラハン自体がミーシャのことを思い出して会いに来る危険性もあるか。
「ミーシャは、光属性を持っているの?」
「私の適性は、光・闇・空間・風・水の5つ」
デュラハン自身も光属性を所持しているけど、回復魔法などの浄化攻撃に弱い。
絶対に強者から逃げられる魔法というのなら……
「《フラッシュ》による目眩し、《幻夢》による幻を利用すれば逃げられると思うけど、相手がデュラハンである以上通用しないかもしれない。意表を突き、相手にダメージを与えている間に逃走する魔法を使用すればいいかな。《フラッシュ》と併用すれば、かなりの確率で逃げられると思う」
私は、ミーシャ・オーキス・フレヤの3人に《とある技》を教えた。【魔力具現化】スキルを必要とするため、せっかくなので3人に習得方法を教えておこう。
○○○
現在の時刻は昼1時。
昼食前、リーラにもミーシャの過去を話し、デュラハンが近辺に潜んでいること、遭遇した時の逃走方法を教えておいた。そして昼食を食べ終えた後、その方法を伝授すべく訓練場へと移動した。ここでずっと訓練を続けていれば、旅芸人さんと必ず会えるはずだ。
「シャーロット、私にも使えるかな?」
リーラの適性は、光・水・風・土の4つ。
「大丈夫、使用可能だよ。《バケツ》は魔力で具現化しやすいから、リーラもすぐに習得できる。さあ、始めよう」
製作してもらうバケツは、【底の直径40cm・最大直径50cm・深さ40cm】と大型なものとなっている。私の予想通り、訓練を始めてから30分程で、皆が【魔力具現化】スキルを習得できた。スキルレベルは4人ともLv1だけど、オーキスとリーラは比較的形態も綺麗だ。その反面、ミーシャとフレヤの具現化した物は、やや歪なものとなっている。
「むう、悔しい。同じスキルレベルなのに、オーキスとリーラの方が綺麗。この差は何? フレヤもそう思うよね?」
「ええ、悔しいわ。簡単な構造なのに、どうしてこんなに差が出るのかしら?」
原因は、単純に想像力の差かな?
オーキスは漁師の息子でもあるから、頻繁にバケツを使用している。リーラは好奇心旺盛だから、オーキスの使用する物の中でも、見慣れない物に関しては自分から触っていく。そのため、イメージする力も強い。
フレヤの場合、ここ最近自分でバケツを使用していないこともあって、イメージする力が弱まっている。ミーシャは、物質の具現化に不慣れなだけだろう。
「僕は漁師の息子で、普段から使っているんだ」
「私は、オーキス達の作業をずっと見ていたからイメージしやすいの」
うんうん、その通りだね。
更に30分程練習を重ねたことで、4人全員が比較的綺麗なバケツとタライを具現化できるようになってきた。これなら、次の段階に移行できる。
「よし、次の段階に進もう。今から説明するよ」
私はタバケツを具現化させ、どういった方法でデュラハンから逃走するかを皆に伝える。
1) 光魔法《フラッシュ》で強烈な光を、デュラハンのすぐ側で発生させる。
2) 相手の頭上十メートル付近にて、バケツを具現化させる。
【魔力自体が1つの物質として変換されているため、具現化された物体からは、魔力を感じ取れない】
3) バケツ内に、聖氷水(光属性《リフレッシュ》を付与させた氷水)を投入する。
【盗賊などの犯罪者用の対策として、氷を入れる】
4) 魔力で相手に感知されないよう、厚さ3cm程の氷で蓋をする。
【自分の魔力で具現化した物体で聖氷水を覆えば、魔力を遮蔽することが可能】
【出来れば、2)~4)の工程を素早く出来るようにすること!】
5) バケツを逆さま(氷の蓋を地面の方向へ)にし、相手に……叩き落とす!
【風魔法の操作が重要!】
「どうかな? 具現化した物体で聖氷水の魔力を遮蔽させるから、感知されにくくなると思う。ただ、太陽の光でできる物体の影には注意だね」
「デュラハンを影のある位置に誘い込んでから、アレを落とす。意表も突けるし、光と聖氷水でダメージを与えられるから怯んでいる隙に逃走できると思う! シャーロット、凄い」
ミーシャからお褒めの言葉を頂きました。
「みんな、練習開始だよ!」
4人全員がバケツを製作した後、氷水を作製していき、習得したばかりの光魔法《リフレッシュ》を付与させていく。
「シャーロット、これ…バケツの状態を維持させるのが難しいわ」
初めに完成させたのは、フレヤだ。《聖氷水入りバケツ》を宙に浮かせることで、天然の風の影響をもろに受けてしまうから、状態維持も当然困難となる。魔力操作を失敗すると、最悪バケツ自体も消滅してしまうだろう。
「初めての作業だから仕方ないよ。ここからは、練習あるのみ!」
4人の中でも、フレヤの基礎スキルの能力が1番高いこともあって、フラつきながらも徐々に高度を上げていく。オーキス、リーラ、ミーシャの順番で完成させていき、こちらも同じく高度を上げていく。あくまで練習なので、高度も5m程に抑えている。
20分程の練習で慣れてきたのか、【聖氷水入りバケツ】も安定に維持しており、高度も10mを保っている。この技を発動させる際、決してバケツのある場所を見つめてはいけない。だから、バケツの状態を維持しつつ、私を含めた5人のうちの誰かに視線を合わせながら軽く世間話をすることにした。5分程話してみたものの、私の思った通り、4人はバケツの状態維持に精一杯なのか、話し方が辿々しく表情も固い。
《この訓練を乗り切れば、【並列思考】のスキルを習得できるし、既に持っているフレヤだってスキルレベルが上がるよ!》
と応援すると、4人全員がやる気を取り戻した。そして、更に10分経過したところで、何処からかキョウラク先生の声が聞こえてきた。
「あれ~? みんな、何の訓練をしているのかな?」
声のした方向を見ると、そこにはキョウラク先生だけでなく、見知らぬ18歳くらいの男性がいた。私以外の4人も反応しているものの、バケツの状態を維持させるため、あえて先生達を見ていない。
ここは、私が今の状況を説明しておこう。
「キョウラク先生、これは《対デュラハン》用の逃走訓練です」
「「逃走訓練?」」
2人が私の言葉に首を傾げる。
側から見れば、ただじっと佇んでいるだけだから不思議に思って当然だ。
「よ! ミーシャ!」
あ、見知らぬ男性が、ミーシャとリーラの視界に入っていった!
「オトギさん!」
ミーシャが驚きの声を上げたことで、見知らぬ男性の名前が判明した。
オトギさんか。
身長180cm程、茶髪のショート、精悍な顔立ちをしている。。
「オーキスとフレヤも、なにやら真剣になって同じ1点を見ているね~」
「「あ」」
キョウラク先生が、オーキスとフレヤの視界に入っていった!
不意に、4つの小さな影が私のすぐ近くを二手に分かれて通り過ぎていく。
ミーシャとリーラのバケツが【オトギさん】と呼ばれた16歳くらいの男性へ
オーキスとフレヤのバケツが【キョウラク先生】のもとへ
やばい!
4人の意識がオトギさんとキョウラク先生のところへ向いている。
ガシャ!
「「「「「あ!?」」」」」
私が声をかける前に、二手に別れた各バケツが空中衝突し制御不能になってしまった!!
そして……真下へと落下していく。
「うん、どうし……」
ガラ~~~~ン
キョウラク先生が言い切る前に、2つのうち1つのバケツが先生の頭にすっぽりとピンポイントにハマり、全身に【聖氷水】を浴びた。オトギさんと呼ばれる男性の頭にも、同じ現象が起きた。そして……
「ぬおおぉぉぉ~~~冷た~~~~!!!!」
「こおおおぉぉぉぉーーーーー!!!!」
2人の男性が雄叫びをあげる。
う~ん、悲惨な形で旅芸人さんと出会ってしまったよ。
学園長室での話し合いを終えた後、私達はミーシャを連れて、私とフレヤの部屋へと戻ってきた。部屋内を【ダーククレイドル】で囲い誰にも入れないよう完全密閉した後、私達はミーシャから、村で起きた凄惨な事件を詳しく聞いた。
私の思った以上に、彼女はリリヤさんと同じか、それ以上の重い枷を背負っている。
デュラハンが村を滅ぼした。
これは、確定事項だろう。
でも、いくつか引っかかることがある。
1) 彼女の両親が絶命する直前、デュラハンに対して何かを口走っていたこと。
2) デュラハン自体が、両親に何故か謝罪していたこと。
3) 村人達の死体には無数の咬み傷や食いちぎられた跡があること。
4) 誰が気絶したミーシャを助けたのか?
Bランク以上で知能の高いデュラハンが犯人であるのなら、村人達を斬り殺すだけで十分だ。それに、他の村や街も似た感じであることも気にかかる。
「あいつだけは、絶対に殺す!」
「ミーシャ、デュラハンは君の両親にどうして謝罪してから殺したんだ?」
オーキスが私の疑問を口にしてくれた。
「わからない。魔物にも、色々な性格があると聞いた。あいつなりの流儀なのかもしれない」
そんな魔物がいるかな?
これは、何か裏がありそうだ。事件の起きた時期はガーランド法王国となっているから、元法王でもあるあの人に聞いてみよう。私か国王陛下が通信すれば、真実を教えてくれるはず。
「そういえば……今日の昼2時、旅芸人の男性が学園に来る」
え、なんで学園に来るの?
「私が治安ギルドの留置場に滞在していた時、学園長が旅芸人さんと話し合っていて、【謝罪以外にも、我々に何か出来ることはないか?】て聞いていた」
うんうん、それで。
「そしたら、彼が【それでは、フラマリオン学園を見学しても宜しいでしょうか? 恥ずかしながら、自分は学園に通ったことがないのです】と返答したから、学園長はこの要求を即決で許可したの」
ああ、そういう理由なら納得だよ。
案内人はキョウラク先生か学園長がやってくれるんじゃないかな?
「彼に、もう1回会って謝罪したい。……シャーロットが一緒に行ってくれると嬉しい」
まあ、1人では行きにくいよね。それに旅芸人さんも学園見学に来るのだから、《【聖女】や【聖女代理】と偶然出会えるかも》という下心もあるかもしれない。友達が迷惑をかけてしまったし、私も会っておこうか。
「いいよ。一緒に会いに行こう」
「やった! ありがとう!」
ミーシャの笑顔が凄く可愛い。過去の凄惨な事件のせいもあって、感情を表に出しにくくなっていると言っていたから勿体ないよね。
「あと、私自身がデュラハンと遭遇する危険性もあるから、絶対に逃げられるような魔法を教えてほしい」
王都近辺にいるのなら、デュラハン自体がミーシャのことを思い出して会いに来る危険性もあるか。
「ミーシャは、光属性を持っているの?」
「私の適性は、光・闇・空間・風・水の5つ」
デュラハン自身も光属性を所持しているけど、回復魔法などの浄化攻撃に弱い。
絶対に強者から逃げられる魔法というのなら……
「《フラッシュ》による目眩し、《幻夢》による幻を利用すれば逃げられると思うけど、相手がデュラハンである以上通用しないかもしれない。意表を突き、相手にダメージを与えている間に逃走する魔法を使用すればいいかな。《フラッシュ》と併用すれば、かなりの確率で逃げられると思う」
私は、ミーシャ・オーキス・フレヤの3人に《とある技》を教えた。【魔力具現化】スキルを必要とするため、せっかくなので3人に習得方法を教えておこう。
○○○
現在の時刻は昼1時。
昼食前、リーラにもミーシャの過去を話し、デュラハンが近辺に潜んでいること、遭遇した時の逃走方法を教えておいた。そして昼食を食べ終えた後、その方法を伝授すべく訓練場へと移動した。ここでずっと訓練を続けていれば、旅芸人さんと必ず会えるはずだ。
「シャーロット、私にも使えるかな?」
リーラの適性は、光・水・風・土の4つ。
「大丈夫、使用可能だよ。《バケツ》は魔力で具現化しやすいから、リーラもすぐに習得できる。さあ、始めよう」
製作してもらうバケツは、【底の直径40cm・最大直径50cm・深さ40cm】と大型なものとなっている。私の予想通り、訓練を始めてから30分程で、皆が【魔力具現化】スキルを習得できた。スキルレベルは4人ともLv1だけど、オーキスとリーラは比較的形態も綺麗だ。その反面、ミーシャとフレヤの具現化した物は、やや歪なものとなっている。
「むう、悔しい。同じスキルレベルなのに、オーキスとリーラの方が綺麗。この差は何? フレヤもそう思うよね?」
「ええ、悔しいわ。簡単な構造なのに、どうしてこんなに差が出るのかしら?」
原因は、単純に想像力の差かな?
オーキスは漁師の息子でもあるから、頻繁にバケツを使用している。リーラは好奇心旺盛だから、オーキスの使用する物の中でも、見慣れない物に関しては自分から触っていく。そのため、イメージする力も強い。
フレヤの場合、ここ最近自分でバケツを使用していないこともあって、イメージする力が弱まっている。ミーシャは、物質の具現化に不慣れなだけだろう。
「僕は漁師の息子で、普段から使っているんだ」
「私は、オーキス達の作業をずっと見ていたからイメージしやすいの」
うんうん、その通りだね。
更に30分程練習を重ねたことで、4人全員が比較的綺麗なバケツとタライを具現化できるようになってきた。これなら、次の段階に移行できる。
「よし、次の段階に進もう。今から説明するよ」
私はタバケツを具現化させ、どういった方法でデュラハンから逃走するかを皆に伝える。
1) 光魔法《フラッシュ》で強烈な光を、デュラハンのすぐ側で発生させる。
2) 相手の頭上十メートル付近にて、バケツを具現化させる。
【魔力自体が1つの物質として変換されているため、具現化された物体からは、魔力を感じ取れない】
3) バケツ内に、聖氷水(光属性《リフレッシュ》を付与させた氷水)を投入する。
【盗賊などの犯罪者用の対策として、氷を入れる】
4) 魔力で相手に感知されないよう、厚さ3cm程の氷で蓋をする。
【自分の魔力で具現化した物体で聖氷水を覆えば、魔力を遮蔽することが可能】
【出来れば、2)~4)の工程を素早く出来るようにすること!】
5) バケツを逆さま(氷の蓋を地面の方向へ)にし、相手に……叩き落とす!
【風魔法の操作が重要!】
「どうかな? 具現化した物体で聖氷水の魔力を遮蔽させるから、感知されにくくなると思う。ただ、太陽の光でできる物体の影には注意だね」
「デュラハンを影のある位置に誘い込んでから、アレを落とす。意表も突けるし、光と聖氷水でダメージを与えられるから怯んでいる隙に逃走できると思う! シャーロット、凄い」
ミーシャからお褒めの言葉を頂きました。
「みんな、練習開始だよ!」
4人全員がバケツを製作した後、氷水を作製していき、習得したばかりの光魔法《リフレッシュ》を付与させていく。
「シャーロット、これ…バケツの状態を維持させるのが難しいわ」
初めに完成させたのは、フレヤだ。《聖氷水入りバケツ》を宙に浮かせることで、天然の風の影響をもろに受けてしまうから、状態維持も当然困難となる。魔力操作を失敗すると、最悪バケツ自体も消滅してしまうだろう。
「初めての作業だから仕方ないよ。ここからは、練習あるのみ!」
4人の中でも、フレヤの基礎スキルの能力が1番高いこともあって、フラつきながらも徐々に高度を上げていく。オーキス、リーラ、ミーシャの順番で完成させていき、こちらも同じく高度を上げていく。あくまで練習なので、高度も5m程に抑えている。
20分程の練習で慣れてきたのか、【聖氷水入りバケツ】も安定に維持しており、高度も10mを保っている。この技を発動させる際、決してバケツのある場所を見つめてはいけない。だから、バケツの状態を維持しつつ、私を含めた5人のうちの誰かに視線を合わせながら軽く世間話をすることにした。5分程話してみたものの、私の思った通り、4人はバケツの状態維持に精一杯なのか、話し方が辿々しく表情も固い。
《この訓練を乗り切れば、【並列思考】のスキルを習得できるし、既に持っているフレヤだってスキルレベルが上がるよ!》
と応援すると、4人全員がやる気を取り戻した。そして、更に10分経過したところで、何処からかキョウラク先生の声が聞こえてきた。
「あれ~? みんな、何の訓練をしているのかな?」
声のした方向を見ると、そこにはキョウラク先生だけでなく、見知らぬ18歳くらいの男性がいた。私以外の4人も反応しているものの、バケツの状態を維持させるため、あえて先生達を見ていない。
ここは、私が今の状況を説明しておこう。
「キョウラク先生、これは《対デュラハン》用の逃走訓練です」
「「逃走訓練?」」
2人が私の言葉に首を傾げる。
側から見れば、ただじっと佇んでいるだけだから不思議に思って当然だ。
「よ! ミーシャ!」
あ、見知らぬ男性が、ミーシャとリーラの視界に入っていった!
「オトギさん!」
ミーシャが驚きの声を上げたことで、見知らぬ男性の名前が判明した。
オトギさんか。
身長180cm程、茶髪のショート、精悍な顔立ちをしている。。
「オーキスとフレヤも、なにやら真剣になって同じ1点を見ているね~」
「「あ」」
キョウラク先生が、オーキスとフレヤの視界に入っていった!
不意に、4つの小さな影が私のすぐ近くを二手に分かれて通り過ぎていく。
ミーシャとリーラのバケツが【オトギさん】と呼ばれた16歳くらいの男性へ
オーキスとフレヤのバケツが【キョウラク先生】のもとへ
やばい!
4人の意識がオトギさんとキョウラク先生のところへ向いている。
ガシャ!
「「「「「あ!?」」」」」
私が声をかける前に、二手に別れた各バケツが空中衝突し制御不能になってしまった!!
そして……真下へと落下していく。
「うん、どうし……」
ガラ~~~~ン
キョウラク先生が言い切る前に、2つのうち1つのバケツが先生の頭にすっぽりとピンポイントにハマり、全身に【聖氷水】を浴びた。オトギさんと呼ばれる男性の頭にも、同じ現象が起きた。そして……
「ぬおおぉぉぉ~~~冷た~~~~!!!!」
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