元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

文字の大きさ
241 / 277
10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】

フレヤの戸惑い

しおりを挟む
○○○ フレヤ視点

私とシャーロットがミーシャのいる部屋に到着すると、部屋内には彼女1人しかいなかった。私としては、あまりルームメイトに聞かれたくない話でもあるので好都合だわ。

「フレヤ、シャーロット、どうしたの?」

さっき別れたばかりだもの、疑問に思って当然よね。
私のワガママでもあるから、ミーシャには私から伝えよう。

「訓練場では他の生徒もいたから言えなかったけど、デュラハン捜索に何かお手伝いできないかと思って、今からオトギさん達のいる職員室に向かうの。ミーシャはどうする?」

「私も行く! オトギさんに沢山迷惑をかけた。その償いをしたい!」

え、即答!?
ミーシャも私と同じで、オトギさんのことを気にかけているの?

「フレヤ、ミーシャ、ごめんね。私は急用で、とある貴族の屋敷に行くことになっているの。先生達との話し合いに関しては、フレヤとミーシャに任せます」

ええ~聞いてないわ!
ついさっき、一緒に行ってくれるって言ったじゃない!
突然の話で、私はシャーロットをガン見した。
ミーシャがいる手前、口に出せないから【テレパス】で言わないと。

『シャーロット、どういうこと!? 一緒に来てくれないの?』

『私が行ったら、私が主導となって先生達と話すことになる。それじゃあ意味ないでしょ? オトギさんと話し合いたいのなら、フレヤが主導でないとね』

う、ごもっともです。

訓練場でのバケツダイブ事件の際、聖女であるシャーロットが前面に出てオトギさんやキョウラク先生と話し合い謝罪していたわ。私は、それについていっただけ。それだと、私の印象度は低いわ。

『それに、急用が出来たというのは本当よ。再度クディッチス家に行って、デュラハンのことを直接言っておきたいの。ネルマが何かやらかす前にね』

あ、彼女なら何かやらかしそう。

『わかったわ。私とミーシャで頑張る』

「それじゃあ、私は行くね。フレヤとミーシャも頑張ってね」

シャーロットが言い出したことなのに、当の本人があっさりと私を見放してクディッチス家に向かってしまった。

「フレヤ、私達も行こう」
「ええ……そうね」

私がオトギさんに話す。
なんで、胸の動悸が収まらないの?
この正体が何であるかのか薄々わかってはいるけど、どう対処したらいいの?

ああ、ぼんやりと考えているうちに彼のいる本校舎職員室へ到着してしまった。

「ミ、ミーシャ、私…ちょっとお手洗いに行ってくるわ!」
「わかった。職員室に入らずに、ここで待ってる」

うう、ドキドキが止まらないから、つい嘘をついてしまった。
とりあえず、お手洗いに行こう。


……はあ~どうしよう。職員室に入るだけで、ここまで緊張するなんて。これでオトギさんに直視されたら、私は平常心を保てるかな?


『はあ~まずった。まさか、ここまで大事になるとは』

え、この声の主はオトギさん?
場所は男性用トイレ?
いけない! 聴覚拡大スキルをONにしたままだわ!?
この廊下だと鉢合わせするから、私も女性用トイレに入ろう。
何を呟いているのかな?

『全ての発端は、ミーシャとの再会だ。あの子があそこまで強くなり、デュラハンに執着しているとは誤算だった』

え、どういうこと? 
オトギさんとミーシャは初見じゃないの? 

『ミーシャは、国が拡散させたデマ情報を信じ切っている。まあ、俺が彼女の両親や村人達の一部を殺しているから似たようなものだが、真実を話しておいた方が良さそうだな。幸い、シャーロットやフレヤもいるから、彼女達があの子を助けてくれるだろう』

嘘!
ミーシャの両親は、オトギさんに殺されていたの!?
でも、彼の言い方が気になるわ。
《国が拡散させたデマ情報》って何のことかしら?

『はあ~どうすっかな~。最終目的地に到着した途端、問題発生かよ~。今後のためにも、《あの子》には俺への印象を低下させたくない。はあ~、俺の目標達成は当分お預けだな。先に、ミーシャの両親との約束を果たすか。このまま放置すると、彼女は一生復讐に囚われたままとなっちまう』

《あの子》って誰を指しているの? 
両親との約束?

『このままグダグダ考えていても仕方ねえ。冒険者や騎士の人達には迷惑をかけてしまうが、絶対に人死には起こらない。とりあえず、このまま《流れ》に身を任せるか』

あ、声が聞こえなくなった。
聞いてはいけないことを聞いたような気がする。

オトギさんが、ミーシャの両親と村人の一部を殺したの?
ミーシャの両親との約束って何?
《あの子》って誰を指しているの?
誰も死なないって、どうして言い切れるの?

……わからない。

今の話、私の心の中に留めておこう。
ミーシャのいる場所へ戻ると、オトギさんが彼女と話し合っている。

「あ……オトギさん」

あんな話を聞いたせいもあって、胸の動悸は収まっているものの、彼と話しにくいわ。

「フレヤ、ミーシャから聞いたよ。君達の申し出は嬉しいけど、さすがに討伐部隊には入れられないな」

「あ…あの……それでも何かしたくて…」
どうしよう、言葉が出てこない。

「う~ん、きつい言い方になるけど、子供にはまだ早い。たとえ、君達が強くても、強者との実戦経験がない以上、今は迂闊な行動を控えてほしい。強いて挙げるなら、今後生徒達を王都外に行かないよう、学内に注意を向けてもらいたい」

確かに厳しい言い方だけど、オトギさんは私達のことを思って答えてくれている。私のことも聖女代理とかではなく、1人の10歳の子供として見てくれているわ。



この言葉が喉に詰まる。男子トイレから聞こえてきたあの呟き、この人は何かを隠している。ミーシャを見ると、彼女も悔しそうにしているけど、オトギさんの言葉を受け入れようとしている。

「わかりました。討伐部隊の人達に迷惑をかけないよう、学園内で待機しています。ただ、私は《聖女代理》です。緊急事態が発生したら、そちらに向かいます!」

「ああ、それでいいよ」

彼は魅惑的な笑顔で、私の頭を撫でてくれている。たったこれだけの短いやりとりで、自分が子供扱いされていることを、私は心から自覚した。


○○○


私達は職員室に入らず寮へと戻ってきた。ミーシャと別れた後、私は自室へ戻ったのだけど、緊張の糸が切れたのか、そのままベッドに仰向けとなって寝転がる。

「はあ~、自分が10歳であることを痛感したわ。普通、同年代か歳上の女性に対して、頭を撫でたりしないわよね」

身体と心の年齢差を初めて憎く感じるわ。こればかりは、どうしようもないもの。

「あ~あ、シャーロットにどう言おうか? オトギさん自身も決して悪い人ではないけど、何かを隠している。《ミーシャのこと》、《デュラハンのこと》。彼女の【構造解析】スキルに頼れば全て解決するけど、彼のプライバシーを無断で覗き見するのも悪いし、どうしようか?」

私…何をやっているんだろう?
誰だって、隠しごとの1つや2つはあるわ。
今回、偶々それを聞いてしまっただけ。
オトギさんも、何か事情があってミーシャに打ち明けていないのかな?

私が2人の事情に参入したら、余計拗れてしまう。
流れに身を任せる……か。

「とりあえず、私からは何もしないでおこうかな」
「え、何もしないの?」
「ええ、だって……みゃあああ~~~~、シャーロット~~~!!!!!」
突然声が聞こえたから反射的に答えたけど、いつの間にか私のすぐ横にいた。

「あはは、驚かせてごめんね。用事も済んだから、転移魔法で戻ってきたの」
え、転移魔法!?

「転移魔法でクディッチス家に行ったの?」
「そうだよ。早いうちに言っておいた方がいいからね。勿論、周囲にはバレてないよ」

あはは……そういえば私の独り言をどこまで聞いていたのかな?

「オトギさんとは上手くいかなかったの?」
その様子だと、彼の秘密のことを聞かれたわけじゃないのね。

「《子供にはまだ早い》だって。最後に、頭を撫でられたわ」
シャーロットも苦笑いか。

「私達は10歳だから、子供扱いされても仕方ないよ。見た目は子供、頭脳は大人ていう状態だね」

そのフレーズ、何処かで聞いたような?

「はあ~私だって予想していたけど、直で子供扱いされると傷つく。冒険者ギルドから正式に聖女出動要請が来ない限り協力できそうにないわ」

これが……初恋なのかな?
《初恋は実らない》って言うけど、真実になりそうだわ。

しおりを挟む
感想 1,911

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。