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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
騒動発生、突然の襲撃!
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○○○(シャーロットとフレヤの部屋にて)
ミーシャの両親を殺した冒険者は、【オトギ・ミツルマ】さんと確定した。
ミーシャの情報と法王から添付されてきた資料から推理すると、オトギさんは、狂獣病の末期症状で苦しむミーシャの両親を哀れと思い、2人の願いを受け入れた後、一思いに殺したと考えれば辻褄も合う。
肝心のミーシャは、故郷周辺で起きた事件の真相を知らされていない。今でも、故郷を滅ぼした犯人は【デュラハン】と思い込んでいる。現在、討伐し損ねた……とされている1体のデュラハンは国名が変わっても指名手配されており、似顔絵も資料に描かれていたものの、オトギさんの人相とは全く似ていない。
この似顔絵は、ミーシャから直接聞いた内容を参考に描かられているらしいけど、どういうことかな?
「シャーロット、これって……オトギさんがスキルで、ミーシャの記憶を弄ったのかな?」
「彼女が、デュラハンの顔をど忘れしたとは思えない。多分、彼女が気絶している時、自分が指名手配されないよう、【催眠】関係のスキルを使ったのかもね」
「真相に関しては、オトギさんを問い詰めるか、構造解析をしないとダメよね? コウヤ先生に相談して、オトギさんとの会談をセッティングしてもらおうよ!」
それが一番手っ取り早いか。
今はデュラハン騒動を、一刻も早く鎮静化させないといけない。この3日間、デュラハン捜索に関しては、何の進展もないってコウヤ先生から聞いている。
そもそも、デュラハンとの戦闘自体が虚偽なら、討伐部隊のみんなは絶対に死なない。誰も死なないのは良いことだけど、このままだと完全な無駄骨状態を何日も過ごさせることになる。
特に冒険者達、デュラハンが出現したらすぐ様現地に向かう手筈となっているから、他の依頼を受けることができない。何の成果もなければ、当然報酬も出るわけがない。彼らにも生活があるのだから、早急に解決させないとね。
「フレヤ、オトギさんが私達の求める真実を話してくれたとしても、1つの問題が残る」
「え? それで全て解決でしょ?」
「デュラハン捜索部隊に、何て説明すればいいのよ? 真実を話したら、オトギさんが牢獄行きになるんだけど?」
「あ……」
狂獣病の件に関しては、絶対に話せない。
そして、彼がストレートに【デュラハンとの戦闘は嘘で~~す】なんて言ったら、捜索部隊に関わった全員が激怒して彼を訴えるだろう。
そうなったら、懲罰だけでなく莫大な迷惑料を請求されるかもしれない。
「一応、私なりの救済案を考えているの。デッドスクリームにお願いして、天然Bランクデュラハンを召喚すればいい。適当に弱らせておいて、その辺の森に捨てておけば、【野良デュラハン】になって誰かが討伐してくれるよ」
「シャーロット、それってテレビでいうところの【ヤラセ】よね?」
フレヤが目を細めて、私をじっと見つめてくる。
「デュラハン自体が虚偽の場合、冒険者達に何の報酬も支払われない。彼らの生活のことも考慮すると、最悪【ヤラセ】で解決するしかない。オトギさんが【牢獄行き】になるよりマシだと思うけど?」
「う~ん、聖女が【ヤラセ】をしても良いのかな? でも、オトギさんを牢獄に入れたくないし……正直迷うわ」
まあ、フレヤの気持ちもわかる。
「勿論、【ヤラセ】は最後の手段だよ。コウヤ先生も今日中に資料を見てくれると思うし、ここまで事が大きくなっている以上、もしかしたら明日のうちにはオトギさんを学園へ呼び出してくれるかもしれない」
明日、彼が学園に来てくれれば、事態も大きく動くだろう。
上手く解決できればいいけど、何故か一抹の不安を感じてしまう。
○○○(翌日)
現在、学園内では2限目の授業が終わり、15分の休み時間となっている。
ここでもデュラハンのニュースで持ちきりとなっており、みんなが《奴が何処に潜んでいるのか?》について話し合っている。ここまで何の進展ないせいもあって、【デュラハン自体が疲弊により、王都から遠く離れた山奥の森に逃げ込んでいるのでは?】という意見に落ち着いている。
通常、Bランク以上の魔物がそんな行為を実行してしまうと、必ず周囲の生態系に異常が起きる。おそらく、強者を恐れた低ランクの魔物達が山奥から平地へと這い出てきて、街や村を襲う事態へと発展するだろう。
2年前、私が従魔達を召喚した際、あまりの強大な存在感のせいもあって、王都周辺いや大陸中の魔物達が萎縮してしまい、2週間程山や森林に閉じ籠るという現象が発生したからね。
授業が始まる前、コウヤ先生はオトギさんの宿泊場所に行き、今日の放課後学園内で私達と会談するセッティングを整えてくれた。現在騒がれている問題も、おそらく数日中に解決する。
物思いにふけながら教室の窓ガラス越しから外を眺めていると、かなり遠方の地点で何かが光ったような気がした。
「今のは何? ……え、これは!?」
ここから10km程離れた2つの地点で、多数の魔力反応が唐突に現れた!
「シャーロット、急にどうしたの?」
私が急に声を上げ席を立ったものだから、リーラも周囲にいる皆も戸惑っている。
「強い魔力反応が、急に現れたの。しかも、王都を挟み撃ちするかのように、北と南の2つの地点にね。距離は2地点とも、ここから10km程遠方かな? CとDランクの魔物が大部分を占めているけど、Bランクも少数いると思う。みんな、今日以降誰であろうと、王都の外に出てはいけません!」
私の発言に、静けさが漂う。まだ遠方のせいもあって、クラスの皆は誰も気づいていない。でも、聖女である私が発言したせいもあって、全員が固唾を飲んでいる。
『シャーロット様、急に現れたことから《転移魔法》か《召喚魔法》によるものでしょう。我が全てを仕留めましょうか?』
今日の護衛当番は、デッドスクリームだったよね。従魔通信で話した通り、さっきの反応は唐突に現れている。魔力消費量のことも考慮すると、十中八九【召喚魔法】によるものだ。
『今は、まだダメ。高ランクの人達なら気づいていると思うから、討伐の判断に関してはその人達に委ねましょう。あなたは王都内を警戒しておいて』
『御意』
2地点からの魔物の出現、これは間違いなく人為的なものだ。
誰かが2地点で、B~Fランクの魔物を多数召喚させた。
でも、このタイミングでの召喚は何を意味しているのだろうか?
召喚者達は何者?
まさか、こいつらがデュラハンを召喚して、オトギさんが偶々そのデュラハンと戦闘したとでもいうの?
魔物達の数も、かなり多い。
召喚者は確実に複数いる。
少なくともアストレカ大陸の国々の放った刺客ではない。
全ての国々が2年前の亡者侵攻事件で、私の従魔の強さを骨身に染みるほど味わったからね。今更になって、王都だけを襲撃する馬鹿はいないだろう。
ここにきて、ランダルキア大陸側の国々が動き始めた?
私自身が全く動いていないこともあって、奴等が王都内に潜んでいるのかもわからない。国王陛下やコウヤ先生の捜索でも、奴等は尻尾を出していない。なんにせよ、北と南に現れた魔物に対して、早急に対策を練らないといけない。
「ねえシャーロット、あれって巨大な火の玉? どんどん大きくなってるような?」
リーラの言う通り、南の方角から唐突に1つの赤い点が現れたと思ったら、どんどん巨大化していき、1つの巨大な紅玉が空高くに形成された。ここからかなり離れているのに、これだけ視認できるとなると、かなりの大きさだ。
「リーラ、あれは火の最上級魔法【プロミネンスフレア】……の幻惑だよ」
「え、最上級魔法!? ……え、幻惑なの? あ……全然脅威を感じない。あの炎、ハリボテだわ。嘘、こっちに向かって来る!」
ふむ、このまま王都に直撃したら、幻惑であっても大混乱に陥るね。
それに北方からも、同じものがこっちに近づいている。
この幻惑魔法による攻撃の意図は何だろうか?
あれでは、敵の現在位置を教えているようなものだ。
このまま放置するのは、悪手か。
「デッドスクリーム、見た目が派手なだけの幻惑魔法のようだから、アレを空高く舞い上がる花火に変化させて」
「惜しい。時間帯が夜であれば、皆も喜んだでしょうに。……【幻夢】」
デッドスクリームとの会話だけを拡声魔法で、王都全土に響かせる。幻惑も通常の攻撃魔法と同じく、相手のイメージ力を上回れば、幻惑自体を支配して自分のものへと置き換えることが可能だ。
2地点から放たれた紅玉は花火へと変換され、空高くに舞い上がる。
《ドーーーーン》という音と共に、綺麗な虹色の花火がこの教室からも視認できた。
「うわあ~綺麗~」
リーラだけでなく、他のクラスメイト達も見惚れている。これで大きな混乱も未然に防げただろう。
「デッドスクリーム、今後も何らかの攻撃が王都に放たれたとしても、全て打ち消してね。敵さんに関しては、冒険者ギルド、治安ギルド、王国騎士団に任せましょう」
「御意。王都に関しては、我がお守りしましょう。冒険者や騎士達よ、聖女様の言葉を聞いたな? 今回の敵は北に43体、南に67体の魔物達だ! 場所は炎の出現地点の真下、両方における魔物の最高ランクはB! 数は各々1体ずつ! 残りはC~Fの雑魚どもだ! この2年で鍛えた己の力を試す絶好の機会だぞ! さあ、行動を開始しろ!」
さて、敵側もここからどう動くかな?
○○○ 放課後
突然の幻惑魔法による王都への攻撃、炎の現れた地点が敵の出現地点と推測される。その攻撃に対し、デッドスクリームが反撃し、私との会話が王都全土に響き渡らせたことで、住民達が混乱の渦に陥ることはない。学園の真上に巨大化したデッドスクリームが王都の守護者として浮遊していることもあり、皆が安心している。
王国側の対応は、あの攻撃以降迅速に行われた。
もともと【デュラハン討伐部隊】が、王城騎士団・冒険者ギルドの冒険者・治安ギルドの治安騎士団で編成されたばかりである。《縦》と《横》の連携がしっかりと指揮統制されていたこともあり、2地点に向かう部隊もすぐに編成されたのだ。
北方の魔物達には国王直属のガロウ隊長を含めた魔物討伐部隊33名が、南方の魔物には冒険者ギルドと治安ギルドから召集されたDランク以上の冒険者や騎士達45名とコウヤ先生が、午後2時頃になって討伐へと動き出し王都を出立した。
出立直前、国王陛下とコウヤ先生のグローバル通信機からの報告によると、皆がこれまでの鍛錬の成果を早く確認したいからか、全員が異様な覇気を纏っているらしい。王都内部にはデッドスクリームも控えているから、何の憂いもなく討伐に行けることも原因の1つだろう。
今頃、接敵し戦っている頃合いか。
多分、戦闘に関しては、日が沈むまでに終わるんじゃないかな?
私がその人達のことを思い窓の外を眺めていると、リーラとミーシャがこっちに来た。
「シャーロット、寮に帰りましょう」
「オーキスとフレヤは掃除当番。だから、先に帰ろう」
ミーシャは罪を不問にされたとはいえ、まだ教師から信頼を取り戻せていない。しばらくの間、単独行動を禁止されている。そして、この学園では身分平等である以上、教室の掃除もクラスメイト達が分担して行うことになっている。
「そうだね。帰ろうか」
敵側の意図がわからない。
敵が【シェイドアダプション】で私達の影に潜んでいる可能性も考え、定期的に光魔法【フラッシュ】で強烈な光を浴び、影を一時的になくしているのだけど、成果ゼロだ。姿を見せない以上、構造解析もできない。単独で動けば、多分すぐに解決出来る事案だけど、それだと国民全員が私の力に頼ってしまう。
ここは皆を信じるしかないのだけど、どうにも奇妙な胸騒ぎを感じる。
おそらく、今日か明日中には何かが起こる。
この私の直感は、すぐに的中することとなる。
ミーシャの両親を殺した冒険者は、【オトギ・ミツルマ】さんと確定した。
ミーシャの情報と法王から添付されてきた資料から推理すると、オトギさんは、狂獣病の末期症状で苦しむミーシャの両親を哀れと思い、2人の願いを受け入れた後、一思いに殺したと考えれば辻褄も合う。
肝心のミーシャは、故郷周辺で起きた事件の真相を知らされていない。今でも、故郷を滅ぼした犯人は【デュラハン】と思い込んでいる。現在、討伐し損ねた……とされている1体のデュラハンは国名が変わっても指名手配されており、似顔絵も資料に描かれていたものの、オトギさんの人相とは全く似ていない。
この似顔絵は、ミーシャから直接聞いた内容を参考に描かられているらしいけど、どういうことかな?
「シャーロット、これって……オトギさんがスキルで、ミーシャの記憶を弄ったのかな?」
「彼女が、デュラハンの顔をど忘れしたとは思えない。多分、彼女が気絶している時、自分が指名手配されないよう、【催眠】関係のスキルを使ったのかもね」
「真相に関しては、オトギさんを問い詰めるか、構造解析をしないとダメよね? コウヤ先生に相談して、オトギさんとの会談をセッティングしてもらおうよ!」
それが一番手っ取り早いか。
今はデュラハン騒動を、一刻も早く鎮静化させないといけない。この3日間、デュラハン捜索に関しては、何の進展もないってコウヤ先生から聞いている。
そもそも、デュラハンとの戦闘自体が虚偽なら、討伐部隊のみんなは絶対に死なない。誰も死なないのは良いことだけど、このままだと完全な無駄骨状態を何日も過ごさせることになる。
特に冒険者達、デュラハンが出現したらすぐ様現地に向かう手筈となっているから、他の依頼を受けることができない。何の成果もなければ、当然報酬も出るわけがない。彼らにも生活があるのだから、早急に解決させないとね。
「フレヤ、オトギさんが私達の求める真実を話してくれたとしても、1つの問題が残る」
「え? それで全て解決でしょ?」
「デュラハン捜索部隊に、何て説明すればいいのよ? 真実を話したら、オトギさんが牢獄行きになるんだけど?」
「あ……」
狂獣病の件に関しては、絶対に話せない。
そして、彼がストレートに【デュラハンとの戦闘は嘘で~~す】なんて言ったら、捜索部隊に関わった全員が激怒して彼を訴えるだろう。
そうなったら、懲罰だけでなく莫大な迷惑料を請求されるかもしれない。
「一応、私なりの救済案を考えているの。デッドスクリームにお願いして、天然Bランクデュラハンを召喚すればいい。適当に弱らせておいて、その辺の森に捨てておけば、【野良デュラハン】になって誰かが討伐してくれるよ」
「シャーロット、それってテレビでいうところの【ヤラセ】よね?」
フレヤが目を細めて、私をじっと見つめてくる。
「デュラハン自体が虚偽の場合、冒険者達に何の報酬も支払われない。彼らの生活のことも考慮すると、最悪【ヤラセ】で解決するしかない。オトギさんが【牢獄行き】になるよりマシだと思うけど?」
「う~ん、聖女が【ヤラセ】をしても良いのかな? でも、オトギさんを牢獄に入れたくないし……正直迷うわ」
まあ、フレヤの気持ちもわかる。
「勿論、【ヤラセ】は最後の手段だよ。コウヤ先生も今日中に資料を見てくれると思うし、ここまで事が大きくなっている以上、もしかしたら明日のうちにはオトギさんを学園へ呼び出してくれるかもしれない」
明日、彼が学園に来てくれれば、事態も大きく動くだろう。
上手く解決できればいいけど、何故か一抹の不安を感じてしまう。
○○○(翌日)
現在、学園内では2限目の授業が終わり、15分の休み時間となっている。
ここでもデュラハンのニュースで持ちきりとなっており、みんなが《奴が何処に潜んでいるのか?》について話し合っている。ここまで何の進展ないせいもあって、【デュラハン自体が疲弊により、王都から遠く離れた山奥の森に逃げ込んでいるのでは?】という意見に落ち着いている。
通常、Bランク以上の魔物がそんな行為を実行してしまうと、必ず周囲の生態系に異常が起きる。おそらく、強者を恐れた低ランクの魔物達が山奥から平地へと這い出てきて、街や村を襲う事態へと発展するだろう。
2年前、私が従魔達を召喚した際、あまりの強大な存在感のせいもあって、王都周辺いや大陸中の魔物達が萎縮してしまい、2週間程山や森林に閉じ籠るという現象が発生したからね。
授業が始まる前、コウヤ先生はオトギさんの宿泊場所に行き、今日の放課後学園内で私達と会談するセッティングを整えてくれた。現在騒がれている問題も、おそらく数日中に解決する。
物思いにふけながら教室の窓ガラス越しから外を眺めていると、かなり遠方の地点で何かが光ったような気がした。
「今のは何? ……え、これは!?」
ここから10km程離れた2つの地点で、多数の魔力反応が唐突に現れた!
「シャーロット、急にどうしたの?」
私が急に声を上げ席を立ったものだから、リーラも周囲にいる皆も戸惑っている。
「強い魔力反応が、急に現れたの。しかも、王都を挟み撃ちするかのように、北と南の2つの地点にね。距離は2地点とも、ここから10km程遠方かな? CとDランクの魔物が大部分を占めているけど、Bランクも少数いると思う。みんな、今日以降誰であろうと、王都の外に出てはいけません!」
私の発言に、静けさが漂う。まだ遠方のせいもあって、クラスの皆は誰も気づいていない。でも、聖女である私が発言したせいもあって、全員が固唾を飲んでいる。
『シャーロット様、急に現れたことから《転移魔法》か《召喚魔法》によるものでしょう。我が全てを仕留めましょうか?』
今日の護衛当番は、デッドスクリームだったよね。従魔通信で話した通り、さっきの反応は唐突に現れている。魔力消費量のことも考慮すると、十中八九【召喚魔法】によるものだ。
『今は、まだダメ。高ランクの人達なら気づいていると思うから、討伐の判断に関してはその人達に委ねましょう。あなたは王都内を警戒しておいて』
『御意』
2地点からの魔物の出現、これは間違いなく人為的なものだ。
誰かが2地点で、B~Fランクの魔物を多数召喚させた。
でも、このタイミングでの召喚は何を意味しているのだろうか?
召喚者達は何者?
まさか、こいつらがデュラハンを召喚して、オトギさんが偶々そのデュラハンと戦闘したとでもいうの?
魔物達の数も、かなり多い。
召喚者は確実に複数いる。
少なくともアストレカ大陸の国々の放った刺客ではない。
全ての国々が2年前の亡者侵攻事件で、私の従魔の強さを骨身に染みるほど味わったからね。今更になって、王都だけを襲撃する馬鹿はいないだろう。
ここにきて、ランダルキア大陸側の国々が動き始めた?
私自身が全く動いていないこともあって、奴等が王都内に潜んでいるのかもわからない。国王陛下やコウヤ先生の捜索でも、奴等は尻尾を出していない。なんにせよ、北と南に現れた魔物に対して、早急に対策を練らないといけない。
「ねえシャーロット、あれって巨大な火の玉? どんどん大きくなってるような?」
リーラの言う通り、南の方角から唐突に1つの赤い点が現れたと思ったら、どんどん巨大化していき、1つの巨大な紅玉が空高くに形成された。ここからかなり離れているのに、これだけ視認できるとなると、かなりの大きさだ。
「リーラ、あれは火の最上級魔法【プロミネンスフレア】……の幻惑だよ」
「え、最上級魔法!? ……え、幻惑なの? あ……全然脅威を感じない。あの炎、ハリボテだわ。嘘、こっちに向かって来る!」
ふむ、このまま王都に直撃したら、幻惑であっても大混乱に陥るね。
それに北方からも、同じものがこっちに近づいている。
この幻惑魔法による攻撃の意図は何だろうか?
あれでは、敵の現在位置を教えているようなものだ。
このまま放置するのは、悪手か。
「デッドスクリーム、見た目が派手なだけの幻惑魔法のようだから、アレを空高く舞い上がる花火に変化させて」
「惜しい。時間帯が夜であれば、皆も喜んだでしょうに。……【幻夢】」
デッドスクリームとの会話だけを拡声魔法で、王都全土に響かせる。幻惑も通常の攻撃魔法と同じく、相手のイメージ力を上回れば、幻惑自体を支配して自分のものへと置き換えることが可能だ。
2地点から放たれた紅玉は花火へと変換され、空高くに舞い上がる。
《ドーーーーン》という音と共に、綺麗な虹色の花火がこの教室からも視認できた。
「うわあ~綺麗~」
リーラだけでなく、他のクラスメイト達も見惚れている。これで大きな混乱も未然に防げただろう。
「デッドスクリーム、今後も何らかの攻撃が王都に放たれたとしても、全て打ち消してね。敵さんに関しては、冒険者ギルド、治安ギルド、王国騎士団に任せましょう」
「御意。王都に関しては、我がお守りしましょう。冒険者や騎士達よ、聖女様の言葉を聞いたな? 今回の敵は北に43体、南に67体の魔物達だ! 場所は炎の出現地点の真下、両方における魔物の最高ランクはB! 数は各々1体ずつ! 残りはC~Fの雑魚どもだ! この2年で鍛えた己の力を試す絶好の機会だぞ! さあ、行動を開始しろ!」
さて、敵側もここからどう動くかな?
○○○ 放課後
突然の幻惑魔法による王都への攻撃、炎の現れた地点が敵の出現地点と推測される。その攻撃に対し、デッドスクリームが反撃し、私との会話が王都全土に響き渡らせたことで、住民達が混乱の渦に陥ることはない。学園の真上に巨大化したデッドスクリームが王都の守護者として浮遊していることもあり、皆が安心している。
王国側の対応は、あの攻撃以降迅速に行われた。
もともと【デュラハン討伐部隊】が、王城騎士団・冒険者ギルドの冒険者・治安ギルドの治安騎士団で編成されたばかりである。《縦》と《横》の連携がしっかりと指揮統制されていたこともあり、2地点に向かう部隊もすぐに編成されたのだ。
北方の魔物達には国王直属のガロウ隊長を含めた魔物討伐部隊33名が、南方の魔物には冒険者ギルドと治安ギルドから召集されたDランク以上の冒険者や騎士達45名とコウヤ先生が、午後2時頃になって討伐へと動き出し王都を出立した。
出立直前、国王陛下とコウヤ先生のグローバル通信機からの報告によると、皆がこれまでの鍛錬の成果を早く確認したいからか、全員が異様な覇気を纏っているらしい。王都内部にはデッドスクリームも控えているから、何の憂いもなく討伐に行けることも原因の1つだろう。
今頃、接敵し戦っている頃合いか。
多分、戦闘に関しては、日が沈むまでに終わるんじゃないかな?
私がその人達のことを思い窓の外を眺めていると、リーラとミーシャがこっちに来た。
「シャーロット、寮に帰りましょう」
「オーキスとフレヤは掃除当番。だから、先に帰ろう」
ミーシャは罪を不問にされたとはいえ、まだ教師から信頼を取り戻せていない。しばらくの間、単独行動を禁止されている。そして、この学園では身分平等である以上、教室の掃除もクラスメイト達が分担して行うことになっている。
「そうだね。帰ろうか」
敵側の意図がわからない。
敵が【シェイドアダプション】で私達の影に潜んでいる可能性も考え、定期的に光魔法【フラッシュ】で強烈な光を浴び、影を一時的になくしているのだけど、成果ゼロだ。姿を見せない以上、構造解析もできない。単独で動けば、多分すぐに解決出来る事案だけど、それだと国民全員が私の力に頼ってしまう。
ここは皆を信じるしかないのだけど、どうにも奇妙な胸騒ぎを感じる。
おそらく、今日か明日中には何かが起こる。
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