元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】

フレヤ、行方不明となる

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現在の時刻は午後5時47分。
あと30分程で、日が暮れる。
フレヤの帰りが遅い。

いつも午後6時頃になって、寮内にある食堂でオーキスやリーラ達と夕食をとっている。だから遅くなる場合、必ずグローバル通信機経由で、連絡がくる。

もしかして、何かあった? 直接フレヤに連絡してもいいけど、もし事件に巻き込まれている場合、この連絡が原因で殺される場合もある。デュラハンや魔物召喚の所為もあって、私の神経も少し過敏になっている。

私がオーキスに通信しようと思った時、部屋入口のドアからノック音が聞こえた。

「シャーロット、今入っても大丈夫かな?」
この声はオーキスだ。

「オーキス、今ドアを開けるね」
ドアを開けると、オーキスが浮かない顔をしたまま立っている。
もしかして、何かが起きたの?

「シャーロット、フレヤは帰っているかな?」
「まだ、帰ってないよ。帰りが遅いから、私も心配しているんだけど……何かあったの?」

この様子から察すると、フレヤの身に何かが起きた?

「実は……掃除の最後、フレヤが《ゴミ当番》ということもあって、1人でゴミ袋を持ってゴミ集積所へ持っていったのだけど、そこから戻ってこないんだ」

私達の教室からゴミ集積所へ行くためには、一度外へ出ないといけない。といっても、学園の敷地内にあるから10分程で戻ってこれる。

「みんなで探したの?」
「勿論さ! けど、何処にもいないんだ! 掃除当番のみんなで探したけど、学園内の何処を探してもいない」

ということは誘拐? 

でも、その時間帯の学園の敷地内には学生も多く残っているし、警備としてデッドスクリームもいる。もし、異常が起これば、真っ先に私へ連絡を入れるはずだ。全員の目を掻い潜り、何の騒ぎも起こすことなく彼女を連れ去ることは可能だろうか?

このまま無闇に探すのは非効率的だし、二次被害も発生するかもしれない。

「オーキス、彼女がゴミ集積所へ向かった時間帯、何かおかしな事はなかった? どんな些細な事でもいいの」

何の手掛かりもない場合、奥の手を使うしかない。

「フレヤがオトギさんと話し合いながら、ゴミ集積所へ向かっているところを目撃されているよ」

オトギさんがここへ来たの?
魔物騒動が起きたことで、会談は中止となったはず。
まさか、彼がフレヤを誘拐した?

「彼は何処にいるの?」
「それがフレヤと同じで何処にもいないんだ。正門から出た形跡もない」

オトギさんは外部の者だから、敷地内に入る際は正門入口の警備員に訪問理由を説明して、《入場許可証》をもらわないといけない。そして帰り際、返却する手筈となっている。この手順を破った場合、その人は学園からの信頼性を失い、二度と入場できなくなる。

表向きの目的は春蘭祭のイベントに参加すること、裏ではフレヤを誘拐する算段を立てていたのだろうか?

これだけの情報だと、どうしてもオトギさんを疑ってしまう。
2人の身に、何が起きたの?

「他には、何かある?」

あれ?
何故か、オーキスは微妙な顔をしている。

「え~と、この情報が役立つかわからないけど、その時間帯……学園内にて《ほぎょえええ~~~~~~》とかいう奇妙な叫び声を聞いた人が複数いたんだ。その声の主が誰かはわからない。学園内の何処かから響いてきた叫び声は、どんどん遠ざかっていったらしい」

何、その現象? 
誰かに襲われても、普通そんな叫び声をあげないよね?

「それ以外、手掛かりらしきものはゼロ。もう、君の持つ【ポイントアイ】と【マップマッピング】スキルに頼るしかない」

クラスメイト全員で探しても見つからないということは、学園の敷地内にはいないかもしれない。そうなると、私の奥の手でもある《スキル》で彼女の現在位置を確認するしかないか。

「わかった。フレヤもスキル【ポイントアイ】に登録しているから、【マップマッピング】を起動させれば、彼女の現在位置が私のステータスに表示されるよ」

「よかった~」

オーキス、安心するのはまだ早い。デッドスクリームの警備を潜り抜け、フレヤを誘拐するとなると、相手は相当な手練れだ。対応を間違えると、彼女が殺されてしまう。

慎重に進めていこう。彼女の現在位置は……

「これは……」
「え、どうしたの?」
何故、フレヤはこんな場所にいるのだろうか?

「彼女の現在位置は、ここから80キロ程北、高度5000m付近にいるわ」
「5000mだって!?」
彼女の座標が動いていない。
ということは、そこで立ち止まっているということだ。
まさか、フレヤの周囲に誰かがいて話し合っているのだろうか?

「多分、フレヤは誘拐犯と一緒にいるわ。座標が動いていないから、そこで話し……え、何これ!?」

3点の座標のうち、1つの数値が急激に低下していく。
この箇所は……高度を示す数値だ!

まさか……フレヤが5000mから落下しているの!
でも、彼女は風魔法【フライ】を習得しているから、空を飛べるはず。
にも関わらず、高度の座標数値がどんどん低下していく。

どうする? 
ええい……迷っている暇なんてない!
ステータスを信じるしかないわ!

「オーキス、今すぐフレヤの所に行ってくる。何か緊急事態が起きたみたい」
「え!? わ、わかった! こっちは僕に任せて、シャーロットはフレヤを!」

何これ!?
私のステータスから、危機察知の警笛が鳴ってる!
急がないと!

「それじゃあ、行ってくる!」

お願い、間に合って!


○○○ フレヤ視点   《放課後、教室掃除中》


今頃、コウヤ先生は、デュラハンと戦っているのかな? 私自身、この2年間で魔力量と魔法系の数値に関してはAランクの力を身に付けたわ。でも、攻撃・防御・敏捷といった物理面の数値はC~Dランク、実戦経験も少ない。完全に、後衛タイプで近接戦闘に弱いわ。

この学園で物理面を強化したい。オーキスのようなオールラウンダータイプが望ましい。シャーロットから重力魔法を教わり、1.5Gの重力で訓練も行なっているから、少しずつ筋力も着くはず。

「フレヤ、今日のゴミ運搬は君だろ? このゴミを集積場に持って行ってくれないか? 女性だと少し重いと思うから、俺が半分持つよ」

アーバンから手渡されたゴミ袋は2つ。確かに、少し大きいし重そうだわ。

「大丈夫よ。筋力トレーニングだと思って、私1人で持って行くわ!」
アーバンが不安そうな顔をして、私を見つめてくる。

「大丈夫か?」
「ええ、それじゃあ行ってくるわね」

私は両手で2つのゴミ袋を持ち、教室を出て行く。校舎を出て集積場の方へ歩いていると、聞き覚えのある男性の声が後方から聞こえてきた。

「あ、オトギさん! どうして学園に?」

会談については中止になったはず。
う……シャーロットやオーキスがいないせいもあって、胸がドキドキしてきた。

「もうすぐ春蘭祭だろ? 俺達旅芸人が、王都でも有名な公園内で芸を披露するわけだけど、実際そこに行ってみたらかなり広いんだよ。今日予定していた話し合いも中止になったから、あの広い公園の中、どの場所で披露すれば、高い集客率を見込めるか、キョウラク先生に相談していたのさ」

オトギさんって、本業が【旅芸人】なのかしら? 少なくともBランク以上の強さなのだから、冒険者としても食べていけると思うのだけど?

この場で、彼から狂獣病やデュラハンの件を問い詰めたい。
でも、周囲には他の生徒もいるし、聞くに聞けない状態だわ。

「私達も、オトギさんの芸を見に行っていいですか?」
「お、いいとも! もし素晴らしいと思ってくれたのなら、お捻り箱にお金を入れてくれ」

一定のお金を払うのではなく、ショーの優劣で金銭的価値を客に判断させているんだわ。春蘭祭に参加する旅芸人達にとって、技も重要だけど、披露場所が1番の問題なのね。

「わかりました。楽しみにしています!」
「せっかくだから荷物を1つ持つよ。一緒にゴミ捨て場へ行こうか?」

もう少しオトギさんと話し合いたい。トイレの中で、彼は『冒険者や騎士団のみんなは、絶対に誰も死なない』と言っていた。でも、現実は違う。

王都を挟むかのように、合計100体の魔物が北と南側に突如現れた。ガロウ隊長やコウヤ先生がいるとはいえ、絶対に死なないとは言いきれないわ。

せめて、あの言葉の真意だけでも聞き出したい。

「ありがとうございます。今頃、北と南では魔物との戦闘が終わっている頃合いですよね?」

「ああ、そうだろうな。冒険者や騎士達も、日暮れまでの決着を狙っているはずだ」

オトギさんから、動揺する気配が伝わってこない。

「その中に、オトギさんと戦ったデュラハンもいるかもしれませんね」
「…そうだな。《騎士団最強》ガロウ隊長が討伐しているかも…な」

やっぱり、デュラハンの言葉を出すと、少し動揺している。
何を隠しているの?

「ここがゴミ捨て場か。ほれ、フレヤのもほらよっと!」
オトギさんが、2つのゴミ袋をゴミ捨て場へと放り投げた。
どうしよう? 今なら周囲に誰もいないし、聞いてみようかな?

私が彼に声をかけようと思ったら、ゴミ捨て場の端に生えている1本の木の根元が光った。

「フレヤ、どうした?」
「今、あの木の根元が光ったような気がして? ちょっと待っていて下さいね」

誰かが、ゴミを落としたのだろうか? 
私がその木に近づいた瞬間、真下の地面から直径50cm程の変な幾何学的紋様をしたサークルが現れた。

「え? これって何?」
「こいつは!? ヤバイ、フレヤ! そこから離れろ!」
オトギさんが、かなり動揺しているわ。これが、何かを知っているの?
私の注意がオトギさんに向いた瞬間、私の身体が宙に浮かび……

「ほぎょえええ~~~~~~~~~~~」

突然の事で、変な声を出しちゃった!
え、え、何なの!?
私の身体が、超高速でどんどん真上へと急上昇していく!
まるで、何かに引き寄せられているかのようだわ!

私、どうなるの!?
まさか、このまま成層圏を突き抜けて宇宙に行っちゃうの!?
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