転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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6話 言葉選びを間違えた、恥ずかしいよ〜

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私たちは、冒険者ギルドに到着する。

私は意を決してギルドの中に入ると、事前に通達されていた事もあってか、1階には大勢の冒険者が私たちを待ち構えており、真っ先にハミングバードのルウリに視線を移し、その後は私に向けられる。でも、そこには悪意の視線はなく、どちらかと言うと、物珍しく、尊敬の眼差しに近いものを感じる。私たちは受付嬢のお姉さんに1階へ奥へと連れられ、そこは倉庫なのか、色々な物品が置かれており、ベイツさんはこの区画で、落雷による脱線事故の遺品や残骸を全て提出した。多くの職員さんからお礼を言われた後、さっきの受付嬢の獣人さんが私たちを2階へのギルドマスターのいる部屋へと案内され、私は緊張した面持ちで、ギルドマスターに異世界転生者とギフトだけを伏せて、ここまでの経緯を話す。

話している間、生きた心地がしませんでした。

ここのギルドマスター・ガジェットさんは狼型獣人さんで、古傷のある顔の迫力が凄いし、終始私を睨んでいる(*ただ、静かに聞いているだけ)せいで、物凄い圧迫感と緊張感が私を覆っていたもの。

「なるほど、事情はわかった。当日の山の天候を考えても、脱線事故は自然の落雷によるもので間違いない。ベイツ、遺品や残骸の一部を回収してくれたことは、御礼を言わせてくれ」

ガジェットさんが、私たちに頭を下げてくれた。顔は怖いけど、優しく誠実な獣人さんなんだね。

「アヤナ嬢ちゃんも気の毒な身の上なのは理解したが、問題はそっちのフェアリーバードだ」

ベイツさんもだけど、この人にもわかるんだ。

「やっぱり、わかる? 一応、擬態中なんだけど?」
「お前、フェアリーバードになって、日が浅いだろ?」

日が浅い? そんな事もわかるの?
というか、ガジェットさんは、ルウリを見ても拝んだりしないんだ。

「あはは、当たり。ただ、日じゃなくて年が浅いの。まだ、生後16年なんだよね」
「「「16年!?」」」

それは初耳!? ていうか、私が貴族の時、精霊は世界を支える崇拝的存在と教えられたから、ルウリも数百年は生きていると思ってたよ。

「だからか。神聖な気配が、少し漏れているぞ。ルウリは、この街で自身の制御訓練に励め。ハミングバードでも目立つんだからな」

「もとより、そのつもりさ。これまで身体を鍛えまくり、制御訓練だって怠ってはいないけど、まだこの力を十全に扱えていない。僕のせいで、アヤナに迷惑かけたくないよ」

「全く、変な精霊だ。お前ら神鳥族は1度、人間族に盛大に裏切られたのに、何故アヤナに懐くんだ? スキルの影響だけじゃないだろ?」

ハミングバードやフェアリーバードには、そんな歴史があったの? 家族に蔑まされて以降、学業が疎かになっていて、そこまで知らなかったよ。ここに来るまで、多くの人々が私とルウリを見ていたけど、そんな裏事情が隠されていたんだ。

ガジェットさんの言う通り、ルウリは初対面の段階から、まるで私を知っているかのように、いきなり契約を結ぼうと提案してきた。裏切られたのなら、人間族をよく思っていないはず。

なんでだろう?

「ふふふ、いずれわかるさ」

「まあ、いい。ベイツ、お前は責任を持って、アヤナの生活基盤を整えろ。中途半端な状況で捨てるなよ。あの裏切り以降、人族に懐くことはないと言われているハミング…いやフェアリーバードと友達、いずれは契約者となる女の子だ。そんな事をすれば、全ての獣人を敵に回すぞ。この国の殆どの奴らが、精霊を異様に崇拝しているからな」

あ、獣人全員じゃないんだ。

「わかっているさ。俺の身の上を知っているお前さんなら、俺がそんな愚行を犯さないことを理解しているだろ」

「念のためだよ」

ベイツさんの身の上? 彼も、私のように何かあったのかな?

「ガジェットさん。色々と配慮していただき、ありがとうございます」

私が事故について説明している間、受付嬢さんが鑑定型魔道具の水晶を持って来て、私の冒険者登録をやってくれた。登録はすぐに終了し、私はランクFの冒険者となり、身分証明書となる冒険者カードを貰った。

私の能力も鑑定されたけど、神様との繋がりが深いギフトだけは、誰であっても阻害されるため、ばれていない。称号の転生者については明るみになったけど、そっちは少し珍しいだけのようで、特に何も言われなかった。多分、そこに『異世界』と付けば、色々と追求されていたかもしれない。

「アヤナはランクFだから、7日に1度は必ず依頼を受けろ。何もしなければ、冒険者としての身分や実績が全て剥奪されるから注意しろ」

「はい」

冒険者、ギルドに貼り出されている依頼をこなしていき、実績を上げていく事で、F→E→D→C→B→Aとランクアップして、最高位はSだ。まずは、頑張ってEに上げないとね。

私たちは1階に戻ると、またもや視線がルウリに集中する。左肩に留まっているルウリが突然飛んだので、皆が少し驚く。

「こんにちは。僕はハミングバードのルウリ。ここにいるアヤナは僕の友達で、今ランクF冒険者になったばかりなんだ。皆、宜しくね。彼女と仲良くしてくれるのなら、僕も君たちにできる範囲内でサービスしてあげる。こんな感じにね」

ルウリから何か放たれ、1階にいる全員の身体が淡く輝くと、皆が驚いたように自身の身体を触っていく。どうやら、広範囲の回復魔法を使ったようで、皆が喜びの声を上げる。

「そうそう、これは忠告。僕たちは、180年前に起きた人間族の盛大な裏切りを、今も鮮明に覚えている。君たち獣人族が、僕やアヤナにそういった行為をしようものなら、あの時と似た惨劇がこの国に訪れることを言っておく」

ルウリが周囲を威圧したせいか、皆、その惨劇を知っているせいなのか、歓喜の声が途端に消える。

「まあ、僕たちを優しく見守ってくれるのなら、滞在期間中は、この街を守護すると誓おう」

嬉しいことを言っているのに、誰も素直にその言葉を受け取れない。

「お前ら、気楽に考えろ。欲をかかず、普通に活動すれば、言葉通りの幸せが訪れる。180年前に起きた悲劇に関しては、人間の国でも語り継がれている。今、俺らは試されているんだ。ルウリから認められれば、獣人の国の平野部でも、昔のようにハミングバードやフェアリーバードが舞い降りてくるかもしれない。今こそ、心根を精霊に披露する時だ!」

ベイツさんがルウリの言葉を上手く利用して語るものだから、多くの獣人さんたちが彼の意見に賛同し、再び活気が舞い戻ってくる。

「皆さん、私はアヤナと言います。ふ、不束者ですが、よ…宜しくお願いします!」
「アヤナ、それは結婚するときの返事だぞ」
「え……」

緊張していたせいで、言葉選びを間違えた!? そのせいか、みんなが大笑いして、私の元へ来て慰めてくれている。

めっちゃ、恥ずかしいよ~~~。
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