転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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8話 光希との幸せな時間

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お姉ちゃんと言われ、急に抱きしめられたせいで、現在混乱中です。

「え~と、あなたのお名前は?」
「私は光希!! あれ? あの世から、私たち家族のことを見守ってないの?」

この子は私の妹なんだから、異世界について話していいけど、ここは外で、誰が聞き耳を立てているか不明だから、家の中に入ろう。

「詳しくは、家の中でね」
「あ、そっか。入って入って」

私は家の中に入り、リビングに通されると、内装が色々と変化していることに気づく。以前よりも、住みやすくオシャレな環境になっている。

妹がいるってことは、両親はあの災害から生き残れたってことだけど、お盆の時期なのに、光希1人しかいないのは何故?

「あ、私の写真がある!‼️ しかも、死ぬ前に行った家族旅行で撮ったものだ」

大きなテレビの横に、私の写真が飾られていて、なんだがむず痒いけど、みんなが私のことを覚えてくれていて嬉しい。

「和室には、お姉ちゃんの仏壇があるよ」
「え!?」

飲み物を用意してくれている光希に言われ、私は慌てて隣の和室に行くと、私の仏壇が間違いなく飾られている。

「自分で自分の仏壇を眺める日がくるなんて…」

この世界での私が、あの日に死んでいることを痛感する。私の写真の横には、マメリルハインコのルリルリの写真もある。

「飲み物、準備できたよ~~~」
「ありがとう~」

私たちはソファーに座って、飲み物を飲み一息つく。

「美味しい~。生身の身体があるおかげで、美味しさを実感できる」 

24時間限定だけど、充分堪能させてもらおう。

「それだよ!! 死んでいるのに、どうして身体があるの?」

興味があるのか、身体を前のめりにして、光希は理由を聞いてくる。家族のことは気掛かりだけど、今は私の事情について説明してあげよう。

「実はね、私は死んでから2年くらい何処かで眠っていて、家族の状況を何も知らないまま、異世界に転生していたの」

異世界転生と知ると、光希は途端に目を輝かせる。生前、異世界系のネット小説が流行っていたけど、それは今も続いているんだね。

「異世界転生!! その話、もっと詳しく!!」
「あはは、あまり面白くない話だけど…」

ギフトの話をする前に、私は自分の記憶のある限りを光希に話す。落雷による脱線事故が起きて、死ぬ寸前になって前世の記憶が蘇ったことを話す頃になると、彼女は顔を真っ赤に、怒り心頭になっていた。

「最低だよ!! ギフトがないせいで、お姉ちゃんを王都から追放って!!」
「でもね、ベイツていう冒険者に助けられ、そこから私の人生が一変したの」

ベイツさんに助けられ、ルウリと知り合い、ギフト《異世界交流》の件を話す。

「それじゃあ、今はこっちの世界と交流するための相手を探すために、24時間限定で帰ってきたってこと?」

こういう話って、普通信じてもらえないのがセオリーだけど、光希は私のことをなんの疑いもなく、お姉ちゃんと理解してくれたし、家の中に入れてくれた。それはそれで嬉しいのだけど、なんか知らない男の子に騙されないか不安だよ。

「その通り。まさか、妹が産まれていたなんて驚きだよ。今の私は13歳だけど、光希は?」

「私も今日で13歳、中学1年生だよ」 

え……今日で13歳? 
つまり……今日が誕生日!!

「今日誕生日なのに、なんで朝から誰もいないの!!」

お願い、みんな、生きていて!!

「そう、それ、聞いてよ、お姉ちゃん!! みんな、最低なんだよ!!」

光希が怒り心頭のまま、自分の受けた仕打ちを話す。

当初の予定では、今日家族全員で旅行に行く手筈を整えていたけど、2日前の昼になって、お父さんの会社から連絡があり、お父さんは急遽呼び出された。なんでも、契約先の企業の機器が突然壊れてしまい、お盆期間中にどうしても修理して欲しいとの依頼が舞い込んでしまったこと。ず~っとお世話になっている企業のため、機器やそれに直結するパソコンのシステムに超詳しいお父さんがへ出張に行く羽目になったとのこと。いつ帰ってくるかは未定。

優斗は優秀な医学生、師事している外科の先生が、海外出張の準備のため、急遽家に来て欲しいと招集され、早朝に出かけた。帰りは、夕方になるとのこと。お母さんはラノベ作家、知り合いの有名作家との集まりが日程変更により、急遽今日になったとのこと。こちらも、帰りは夕方以降。

良かった~、3人とも生きている。
今は、それを聞けただけで一安心。

「理不尽だよ!! 誕生日の2日前に、急遽連絡が来るっておかしいよ!! 1人だけならまだしも、3人全員がお出かけで、帰りも遅いって…ありえないよ!!」

光希が怒るのも無理ないよね。まるで結託しているかのような都合の悪い展開、そのせいで朝から1人ぼっちなのだから。

「あまりにも理不尽だから、お姉ちゃんの仏壇の前で、ルリルリとお姉ちゃんに祈ったの。《誕生日に、1人ぼっちは寂しいです。お盆期間中、御先祖様が現世に戻ってこられるのなら、お姉ちゃん、ルリルリ、どちらでもいいから、私に会いに来て下さい》って祈ったら、突然インターホンが鳴るものだから驚いた。誰が尋ねてきたのか、恐る恐る画面を覗いたらお姉ちゃんだったから、急いで玄関に向かったの」

あまりにも、都合の良い展開だ。
あれ? 

ルウリって、この気の毒な展開に気づいて、私をここへ送ったの?
まさかね、ルウリがこちら側の状況なんて知るわけないよね。

「それは、3人が悪いね」
「でしょ~~。文句も少し言ったけど、大人の都合だし仕方ないと思い、笑顔でいってらっしゃいしたけど……やっぱり、許せない」

光希は13歳、1人でお留守番できる年齢だけど、それでも3人は誕生日ということで、罪悪感を感じているはず。これは、罰を与えないといけませんね。

「良いこと思いついた」
「え、なに?」
「あのね…」

私が3人に仕出かす行為を話すと、光希も面白いと思ったのか、目を輝かせる。

「それ、いい、最高!!」
「でしょ~。さあ、準備を始めよう~」
「は~い」

誕生日に、光希を1人ぼっちにさせるなんて許せません。
3人には、罰を与えましょう。
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