転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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20話 テイマーギルドへ

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「テイマーギルドに登録ですか?」

フリードを新たな従魔として契約してから、4日が経過した。子猫にまで弱体化したので健康面を心配したけど、体調を崩すことなく生活できているので、ベイツさんは私にテイマーギルドへの登録を勧めてきた。

「ハミングバードと猫又はどちらも知能が高く気難しく、どの種族に対しても、従魔になりにくい精霊や魔物と言われている。13歳のアヤナがその2体を従魔にして、街中での行動を共にしている以上、今後テイマーギルド側からも、期待の星として勧誘してくる可能性が極めて高い。テイマーギルド側からの勧誘行為は、極めて珍しいから、実現した場合、注目度が飛躍的に高まる」

それは、ちょっとまずい。

ここに来たばかりの私が目立ってしまったら、せっかく仲良くなった同ランクの冒険者さんたちも面白くないと感じるんじゃないかな? 

嫉妬や嫉みで、虐められるのも勘弁してほしい。
注目度を上げたくないから、ここは自分から登録に行っておこう。

「注目は私としても避けたいので、ルウリとフリードを連れて行ってきます。アニマルセラピーのことは、言っておいた方がいいですか? レアスキルなら黙っておくべきでしょうか?」

動物たちの言葉を理解できるアニマルセラピー、テイマーなら誰しもが持っているような気もするけど、実際のところはどうなの?

「それに関しては、俺もわからん。フリードは俺以上に経験豊富だから、そのスキルの存在を知っているんじゃないか?」

今、子猫のフリードは、テーブルの上にいる。
ベイツさんの質問に対して、口を開く。

「アニマルセラピーというスキル自体を、初めて聞きましたよ。十中八九、レアスキルの部類でしょうね。今は、自分から言わない方がいいでしょう。ルウリは、どう思います?」

「フリードの意見に賛成。僕自身、経験が浅いし、スキルの存在だって全てを知っているわけじゃない。テイマーギルドの出方を窺ってから、明かすか決めるべきだね」

うん、方針は決まった。とりあえず、今は登録だけしておいて、アニマルセラピーについて明かすかは保留、ギルド側の出方を見て考えよう。


○○○


テイマーギルドへは、私、ルウリ、フリードだけで行くことになった。ベイツさんがいてくれると心強いけど、独り立ちしないと行けないのだから、頼ってちゃダメだよね。フリードは子猫だから、私が抱っこしており、ルウリは私の右肩に留まっている。

「目立ってるね」
「ハミングバードの僕と子猫とはいえ、猫又を連れているからね」
『まあ、慣れるしかありません』

私たちは色々と注目されながら、テイマーギルドに到着する。
出発前、ベイツさんからギルドについて詳しい説明を聞いている。

冒険者ギルドの主な業務は、人々に仇なす魔物たちを討伐すること。

テイマーギルドの主な業務は、人々に協力してくれる魔物を勧誘し、惹かれ合う者たちに引き渡すこと。

そのため、ギルド内で魔物を飼う必要性があるので、敷地面積だけで言えば、冒険者ギルドより広い。ただし、その分、広い土地が必要となるので、国内の支部数は少ない。テイマーギルドの依頼を引き受けてくれるのは、テイマーが主なんだけど、冒険者と違って、数が少ない。

何故かというと、テイマーという名称は職種で、そこから派生した職種はない。冒険者は総合職種と言えばいいのかな? そこから派生した職種には、戦士系、武闘家系、魔法系といった様々な系統があるので、その人口はテイマーの100倍以上だ。

私たちの見据えるテイマーギルド、冒険者ギルドと同規模の建物で、私は緊張した面持ちで正面玄関となる扉を開ける。

『主人よ、小さい棘が脇腹に刺さっているんだ! 早く抜いてくれよ!』

入った瞬間、ピギ~~~という大声が響き渡る。そっちを向くと、1人の獣人の男性が困り顔で、大きな猪の魔物の身体を触っている。

『背中じゃねえよ。腹だよ、腹!』

声が大きいこともあり、周囲の人たちもかなり迷惑な顔をしている。なんで、早く取ってあげないの?

『アヤナ、言っておきますが、テイマーであっても、魔物と会話できませんからね』

「え、そうなの!?」

『知能の高い私のような魔物クラスなら別ですが、あそこのボア系魔物は話せません。仲間の獣人に対しても、[波長の合う気さくな友達]と思っている程度でしょう』

「フリード、言葉が足りないよ。その波長にも、きちんとした意味がある。同調率が90%を超えていれば、会話も成立するんだ。アヤナの場合、波長に関係なく、スキルの影響で、会話が成立しているわけ」

ルウリが、フリードの足りない箇所をカバーしてくれた。

『うん? お、玄関で子猫を抱いてるちっこい女!』

なんか、ボアが私を見ているような? 
ていうか、主人の獣人さんを無視して、こっちへ歩いてくる。

「もしかして、私のこと?」

『そう、バードとチビ猫又を連れている人間族の女! あんたから、いい匂いが…もしかして、俺の言葉がわかる?』

「うん。そういうスキル持ちなので」

『だったら、話が早い! 少し前の戦闘で、小さな木片が俺の左脇腹に刺さって痛いんだ。取ってくれ』

まさかの私に頼み事をするの? 
まあ、いいけど。

「脇腹なのに、毛が多いね」
『俺は、そういうタイプなの。あ、その辺!!』

私が手を硬そうな毛の中に入れ、ゆっくりと探っていくと、明らかに感触が周囲の毛と異なるものを感じた。

「これ?」
『それ!』
「えい!」
『痛!』
「アクアヒール」
『あ、気持ちいい』

すぐに回復魔法を放ったおかげか、出血することなく、傷口も塞がってくれた。

『いや~助かったぜ! 今の主人は察しが悪くて、いつもこうなんだ。あ、でも良い奴だから』

「治って良かったけど、ここギルド内だから、もう少し静かにね。みんな、こっち見てるよ」

どちらかというと、周囲にいる獣人さんたちよりも、皆の連れている魔物たちからの視線が痛いんだけど。

『みんな、迷惑かけてすまん。でもよ、この女の子は間違いなく、俺の言葉がわかるぜ。従魔がバードと猫又だから、きっと魔物全般の言葉を理解出来るぜ。な!』

「うん、そういうスキルを所持しているから」
『おまけに、心を癒す良い匂いを放ってるぞ』

匂い? 
私には感じないけど、魔物たちにはわかるってこと? 

「このボア、余計なことを」
『やれやれ、一波乱起きそうですね』

なんか、視線がどんどん集まってくる。周囲にいる魔物たちが、一斉に私の方へ向かってくるんですけど!?
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