29 / 76
2章 家族との別離(今世)
28話 フェルデナンド家の末路
しおりを挟む
お父さん、お母さん、悠太、光希。
騒動終息直後、私は色々と悩みました。
【実の父に対して、あの処置は正しかったのか?】
【もっと真剣に話し合えば、違う解決の仕方があったのでは?】
私は自問自答しながら悩んだ末、騒動の翌日にルウリに打ち明けました。
「ルウリ、伯爵自身が父親か母親にスキル[コントラクト]で縛られているのだから、伯爵の束縛をあの場で打ち消せば、話し合いに持っていけたんじゃないの?」
すると、ルウリから意外な返答が来ました。
「咲耶、そもそも前提が間違っているんだよ。奴の魂は、スキルによる束縛を受けていない」
「え!? ということは、あれが伯爵の素の性格なの?」
「そうだよ。奴は5歳の頃から英才教育を受けていて、父親のスキル[コントラクト][暗示]の使い方をずっと間近で見ていたんだ。そのせいで、人を操作するという行為に対して、愉悦を感じていたのさ。だから、君はあの末路を辿った父親に同情する必要はない」
それを聞いて、私の蟠りが消えました。ルウリとフリードはそれを知っていたからこそ、人に操作される行為がどれだけ愚かなのかを伯爵に解らせるため、あえてあんな厳しい制約を課したのかもしれません。
自分の中に芽生えた蟠りが消えたせいなのか、その日以降、私の中にあるリリーアナは何も語ろうとしなかった。なんとなくだけど、彼女と私の心が一つになったような気がします。
○○○
猫たちの溜まり場で起きた騒動から、1週間が経過しました。
あの騒動から5日後、内部告発とされる証拠資料が、遂に公のもと新聞の一面にて公開されました。それと同時に、クザンの全店舗にて、食品偽装と魔物養殖も明らかになり、国をあげての大騒動へと発展しました。
クザンだけでなく、オーナーで金銭面の大部分を出資しているフェルデナンド家にも治安騎士たちのガサ入れがあり、[食品偽装][魔物養殖]に関わる証拠が次々と押収されていくと同時に、その犯罪に関わる各地の貴族たちも続々と逮捕されていきました。それを王都の記者会見場にて発表した際には、あまりにも鮮やかで用意周到な捜査であったことから、出席している新聞記者たち全員が驚いたそうです。
ここまでの大規模捜査になると、下準備だけでもかなりの期間を要します。本来であれば、新聞記者の人たちはそういった期間中にスクープのネタを察知するそうですが、そういった気配を一切見せる事なく、下準備・証拠品の押収・一斉捜査・容疑者逮捕に至ったので、『誰が陣頭指揮をとったのか?』『フェルデナンド家の誰が内部告発したのか?』などで、今でも話題に上がっています。新聞の朝刊夕刊には、そういった内容が毎日掲載されているため、新聞だけでなく、貴族関連の雑誌が国内全都市で飛ぶように売れているようです。
私とユウキは、まるで他人事であるかのように、ベイツさんの家でゆっくりと朝食を食べながら、その記事を読んでいます。
「ふふ、誰が内部告発者かだって? クククク、『フェルデナンド家当主のフェルデナンド伯爵だよ』と言っても、誰も信じないだろうさ」
ユウキの言う通り、この犯罪の頂点にいる人物が、全てを吐露しているなんて、誰も思わないよね。
「私もルウリから聞いているけど、伯爵はフェルデナンド家だけでなく、自国や他国の貴族に関わる情報を沢山溜め込んでいるから、今の事件が落ち着き次第、少しずつそういった情報も聞き出していくんだって」
一体、どれだけの情報を隠し持っているのかな?
ベイツさんは魔物養殖の件もあって、今も大忙しだし、この騒ぎは当分続きそう。
「私も、途中経過をフリードから聞いたよ。既に、街の領主様は国王陛下とも連絡を取り合っていて、陛下の指揮のもと、機密情報を伯爵から聞き出しているそうだ」
今回の騒動、私も大きく関わっているので、ベイツさんはリリアムの街を治める領主の辺境伯様と国王陛下にだけ、私の正体と抱える事情を明かしている。そうしないと、伯爵がここへ来た意味を説明できないからだ。私を狙う暗殺者に関しては、伯爵家暗部に存在するユウキとは異なる人物の名を出し、既に処分済みということになっている。詳しく聞くと、その男性は根っからの快楽殺人者で、元々の人格にも大きく問題があるので、ユウキの代わりとしてうってつけの人材だった。実行者はフリードで、コントラクトによる上書きに関しても、全部フリードがやったことになっている。
領主様の邸でどんな話し合いが行われたのか不明だけど、現在王都の方でもフェルデナンド家の中で内乱が起こっているらしく、多くの死傷者が発生している。騎士たちが騒動を終息させるべく、関係者全員を捕縛して事情聴取を行っている。まだ決定じゃないけど、フェルデナンド家そのものが取り潰しになる可能性が非常に高いみたい。
そして、私にとって一番重要なのは[リリアーナ・フェルデナンド]の存在だ。
クザンの件が落ち着き次第、国王陛下はリリアーナに起きた件を全て国中に公表する計画を現在立てている。リリアーナ伯爵令嬢は無能者であったため、伯爵の手で貴族籍からも抹消され、霊峰スムレットへと転移追放された。捜索の結果、リリアーナは魔物に食い殺されており、一部の服と遺体の一部が見つかり、スキル[解析]でも証明されたので、死亡扱いとなった。
この内容を国中に公表すると、ベイツさんや領主様たちに断言した…らしい。
行方不明よりも死亡扱いの方が、私としてもありがたいわ。知り合いが私を見つけても、ただのそっくりさんで押し通せるもの。記憶も一部しか戻っていないし、貴族の礼儀作法なんて知らないから、相手の方も信用してくれると思う。
「コントラクトから解放された連中を気の毒に思うが、奴らも伯爵に性格を歪まされていたとはいえ、レアスキルをとことん利用することで自分達の欲を満たしてきたから、一部の連中は牢獄行きになる。王族がそういった連中の情報を全て把握した後、利用価値の有無を判断して、今後の行き先を決めるかもしれない」
その人たちは、絶対伯爵を恨んでいるよね。今後、フェルデナンド伯爵をどうするのかは不明だけど、王族たちが絶対放っておかないはずだ。
あの時に見えた記憶の断片には、リリアーナの父・母・兄2人・祖父母らしき人々がいたわ。
祖父母は殺されているから、残るは母と兄2人だ。
あの人たちは、今頃どうしているのかな?
解放されたことで、価値観も少しは変化しているといいのだけど。
もう、あの人たちとは2度と関わりたくない。
私-咲耶とリリアーナは、フェルデナンド家と訣別する。
(それでいい。奴らの行く末は、もう既に決まっているのだから)
今、ユウキの心の声が聞こえたわ!!
彼女はスキル[同調]を所持していて、その効果は自分の波長を相手の波長と一致させることで、心の声を聞いたり、動きの先読みが可能となるのだけど、その効果時間は10分だけ。デメリットとして、一度使用すると、1時間のインターバルが必要となる。ユウキは[同調]を使うことで、動物たちと意思疎通できるし、私の記憶が一部だけ復帰し、怒りに身を投じようとした時も、的確な言葉で、私の心を冷やしてくれた。ユウキのおかげで、私はここにいられる。あの時、スキルを使って伯爵を殺してしまったら、多分取り返しのつかないミスを犯し、私は私でいられなくなっただろう。
「騒動が大きくなり過ぎて、私たちの手に負えない事態になったね。そういえば、定食屋ガブリで起きた襲撃事件も2日連続で掲載されてはいたけど、あの騒動以降、物凄く小さな扱いになったわ」
リットたちも少し怒っていたけど、大犯罪となる[魔物養殖]の方が危険度もかなり大きいこともあり、3人とも納得していたわ。近所の人々は襲撃に全然気づけなったから、皆がアルドさんたちに謝罪していた。ベイツさんとルウリのおかげで助かったことを知ると、私にも注目が集まってしまった。
リットたち家族には、私の事情を全て話しているけど、街のみんなはまだ何も知らない。リリアーナの件が明るみになれば、私の正体にきっと気づくと人もいるだろうけど、たとえ気付いたとしても、この人たちはいつも通りに接してくれると思う。
「クザンも営業停止になったから、これでリットたちも安心して店を営業できるな」
今頃、この支店の支店長たちも尋問されて、精神的にボロボロになっている頃合いかな。クザンの営業再開は不可能だから、襲撃される恐れもゼロになったから安心だわ。
「ユウキ、飲み物が空だよ。はい、どうぞ」
「咲耶、ありがとう」
あの騒動以降、私たちの関係にも変化が起きた。
獣人のユウキさんが10歳に戻ったことで、私やリットと同い年となってしまった。当然、話し方も[ユウキさん]だとおかしいので、[ユウキ]になった。彼女は物事をハキハキと話す性格で、とても明るい。今では、ユウキが私とリットに半生を語ってくれたり、私がリットとユウキに前世のことを話し合える程の仲となっている。互いが大親友と言える程の仲に進展したこともあり、私たちは3人で猫カフェ用の【チェロチュール】【キャットフード】【高級猫缶】の開発に携わっている。
「フリードたちの言った通り、この1週間、私にもユウキにも何も起こらないね」
この1週間、ユウキは冒険者登録を行い、Fランクとなって、私とパーティーを組んだ。子供になったことで、身体的強さがかなり弱体化したらしいけど、これまでに培ってきた技術と経験に関しては失っていないから、本気になればCランクの力を発揮できたらしいけど、私と行動を共にしたいから、わざと手加減したんだよね。ベイツさんが彼女の教育者になってくれたこともあり、私と一緒の居候状態となっても何の問題も問われなかった。
「まだ、油断できないぞ。騒ぎが沈静化してからが問題だ。これまで通り、周辺に気を配りながら、街内の依頼や採取依頼をこなしていこう」
リリアーナの件が明るみになったとしても、まだ安心できない。私の死を不審に思い、ここへ訪れる人だって、きっといるはずだ。ボロが出ないよう、私も警戒を解かないでおこう。
「そうだね」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
これからは猫カフェ開店のために、お父さんのくれた猫用食料品の再現に力を入れていきます。日本と違い、建築速度が速い以上、私たちに用意されている時間は少ないと思った方がいい。全ての食料品を再現させ、猫カフェを開店し、猫たちに幸せな生活を送らせていこうと思います。
○○○
これにて、第2章終了です。
登場人物リストをUPしてから、第3章をUPしますね( ◠‿◠ )
騒動終息直後、私は色々と悩みました。
【実の父に対して、あの処置は正しかったのか?】
【もっと真剣に話し合えば、違う解決の仕方があったのでは?】
私は自問自答しながら悩んだ末、騒動の翌日にルウリに打ち明けました。
「ルウリ、伯爵自身が父親か母親にスキル[コントラクト]で縛られているのだから、伯爵の束縛をあの場で打ち消せば、話し合いに持っていけたんじゃないの?」
すると、ルウリから意外な返答が来ました。
「咲耶、そもそも前提が間違っているんだよ。奴の魂は、スキルによる束縛を受けていない」
「え!? ということは、あれが伯爵の素の性格なの?」
「そうだよ。奴は5歳の頃から英才教育を受けていて、父親のスキル[コントラクト][暗示]の使い方をずっと間近で見ていたんだ。そのせいで、人を操作するという行為に対して、愉悦を感じていたのさ。だから、君はあの末路を辿った父親に同情する必要はない」
それを聞いて、私の蟠りが消えました。ルウリとフリードはそれを知っていたからこそ、人に操作される行為がどれだけ愚かなのかを伯爵に解らせるため、あえてあんな厳しい制約を課したのかもしれません。
自分の中に芽生えた蟠りが消えたせいなのか、その日以降、私の中にあるリリーアナは何も語ろうとしなかった。なんとなくだけど、彼女と私の心が一つになったような気がします。
○○○
猫たちの溜まり場で起きた騒動から、1週間が経過しました。
あの騒動から5日後、内部告発とされる証拠資料が、遂に公のもと新聞の一面にて公開されました。それと同時に、クザンの全店舗にて、食品偽装と魔物養殖も明らかになり、国をあげての大騒動へと発展しました。
クザンだけでなく、オーナーで金銭面の大部分を出資しているフェルデナンド家にも治安騎士たちのガサ入れがあり、[食品偽装][魔物養殖]に関わる証拠が次々と押収されていくと同時に、その犯罪に関わる各地の貴族たちも続々と逮捕されていきました。それを王都の記者会見場にて発表した際には、あまりにも鮮やかで用意周到な捜査であったことから、出席している新聞記者たち全員が驚いたそうです。
ここまでの大規模捜査になると、下準備だけでもかなりの期間を要します。本来であれば、新聞記者の人たちはそういった期間中にスクープのネタを察知するそうですが、そういった気配を一切見せる事なく、下準備・証拠品の押収・一斉捜査・容疑者逮捕に至ったので、『誰が陣頭指揮をとったのか?』『フェルデナンド家の誰が内部告発したのか?』などで、今でも話題に上がっています。新聞の朝刊夕刊には、そういった内容が毎日掲載されているため、新聞だけでなく、貴族関連の雑誌が国内全都市で飛ぶように売れているようです。
私とユウキは、まるで他人事であるかのように、ベイツさんの家でゆっくりと朝食を食べながら、その記事を読んでいます。
「ふふ、誰が内部告発者かだって? クククク、『フェルデナンド家当主のフェルデナンド伯爵だよ』と言っても、誰も信じないだろうさ」
ユウキの言う通り、この犯罪の頂点にいる人物が、全てを吐露しているなんて、誰も思わないよね。
「私もルウリから聞いているけど、伯爵はフェルデナンド家だけでなく、自国や他国の貴族に関わる情報を沢山溜め込んでいるから、今の事件が落ち着き次第、少しずつそういった情報も聞き出していくんだって」
一体、どれだけの情報を隠し持っているのかな?
ベイツさんは魔物養殖の件もあって、今も大忙しだし、この騒ぎは当分続きそう。
「私も、途中経過をフリードから聞いたよ。既に、街の領主様は国王陛下とも連絡を取り合っていて、陛下の指揮のもと、機密情報を伯爵から聞き出しているそうだ」
今回の騒動、私も大きく関わっているので、ベイツさんはリリアムの街を治める領主の辺境伯様と国王陛下にだけ、私の正体と抱える事情を明かしている。そうしないと、伯爵がここへ来た意味を説明できないからだ。私を狙う暗殺者に関しては、伯爵家暗部に存在するユウキとは異なる人物の名を出し、既に処分済みということになっている。詳しく聞くと、その男性は根っからの快楽殺人者で、元々の人格にも大きく問題があるので、ユウキの代わりとしてうってつけの人材だった。実行者はフリードで、コントラクトによる上書きに関しても、全部フリードがやったことになっている。
領主様の邸でどんな話し合いが行われたのか不明だけど、現在王都の方でもフェルデナンド家の中で内乱が起こっているらしく、多くの死傷者が発生している。騎士たちが騒動を終息させるべく、関係者全員を捕縛して事情聴取を行っている。まだ決定じゃないけど、フェルデナンド家そのものが取り潰しになる可能性が非常に高いみたい。
そして、私にとって一番重要なのは[リリアーナ・フェルデナンド]の存在だ。
クザンの件が落ち着き次第、国王陛下はリリアーナに起きた件を全て国中に公表する計画を現在立てている。リリアーナ伯爵令嬢は無能者であったため、伯爵の手で貴族籍からも抹消され、霊峰スムレットへと転移追放された。捜索の結果、リリアーナは魔物に食い殺されており、一部の服と遺体の一部が見つかり、スキル[解析]でも証明されたので、死亡扱いとなった。
この内容を国中に公表すると、ベイツさんや領主様たちに断言した…らしい。
行方不明よりも死亡扱いの方が、私としてもありがたいわ。知り合いが私を見つけても、ただのそっくりさんで押し通せるもの。記憶も一部しか戻っていないし、貴族の礼儀作法なんて知らないから、相手の方も信用してくれると思う。
「コントラクトから解放された連中を気の毒に思うが、奴らも伯爵に性格を歪まされていたとはいえ、レアスキルをとことん利用することで自分達の欲を満たしてきたから、一部の連中は牢獄行きになる。王族がそういった連中の情報を全て把握した後、利用価値の有無を判断して、今後の行き先を決めるかもしれない」
その人たちは、絶対伯爵を恨んでいるよね。今後、フェルデナンド伯爵をどうするのかは不明だけど、王族たちが絶対放っておかないはずだ。
あの時に見えた記憶の断片には、リリアーナの父・母・兄2人・祖父母らしき人々がいたわ。
祖父母は殺されているから、残るは母と兄2人だ。
あの人たちは、今頃どうしているのかな?
解放されたことで、価値観も少しは変化しているといいのだけど。
もう、あの人たちとは2度と関わりたくない。
私-咲耶とリリアーナは、フェルデナンド家と訣別する。
(それでいい。奴らの行く末は、もう既に決まっているのだから)
今、ユウキの心の声が聞こえたわ!!
彼女はスキル[同調]を所持していて、その効果は自分の波長を相手の波長と一致させることで、心の声を聞いたり、動きの先読みが可能となるのだけど、その効果時間は10分だけ。デメリットとして、一度使用すると、1時間のインターバルが必要となる。ユウキは[同調]を使うことで、動物たちと意思疎通できるし、私の記憶が一部だけ復帰し、怒りに身を投じようとした時も、的確な言葉で、私の心を冷やしてくれた。ユウキのおかげで、私はここにいられる。あの時、スキルを使って伯爵を殺してしまったら、多分取り返しのつかないミスを犯し、私は私でいられなくなっただろう。
「騒動が大きくなり過ぎて、私たちの手に負えない事態になったね。そういえば、定食屋ガブリで起きた襲撃事件も2日連続で掲載されてはいたけど、あの騒動以降、物凄く小さな扱いになったわ」
リットたちも少し怒っていたけど、大犯罪となる[魔物養殖]の方が危険度もかなり大きいこともあり、3人とも納得していたわ。近所の人々は襲撃に全然気づけなったから、皆がアルドさんたちに謝罪していた。ベイツさんとルウリのおかげで助かったことを知ると、私にも注目が集まってしまった。
リットたち家族には、私の事情を全て話しているけど、街のみんなはまだ何も知らない。リリアーナの件が明るみになれば、私の正体にきっと気づくと人もいるだろうけど、たとえ気付いたとしても、この人たちはいつも通りに接してくれると思う。
「クザンも営業停止になったから、これでリットたちも安心して店を営業できるな」
今頃、この支店の支店長たちも尋問されて、精神的にボロボロになっている頃合いかな。クザンの営業再開は不可能だから、襲撃される恐れもゼロになったから安心だわ。
「ユウキ、飲み物が空だよ。はい、どうぞ」
「咲耶、ありがとう」
あの騒動以降、私たちの関係にも変化が起きた。
獣人のユウキさんが10歳に戻ったことで、私やリットと同い年となってしまった。当然、話し方も[ユウキさん]だとおかしいので、[ユウキ]になった。彼女は物事をハキハキと話す性格で、とても明るい。今では、ユウキが私とリットに半生を語ってくれたり、私がリットとユウキに前世のことを話し合える程の仲となっている。互いが大親友と言える程の仲に進展したこともあり、私たちは3人で猫カフェ用の【チェロチュール】【キャットフード】【高級猫缶】の開発に携わっている。
「フリードたちの言った通り、この1週間、私にもユウキにも何も起こらないね」
この1週間、ユウキは冒険者登録を行い、Fランクとなって、私とパーティーを組んだ。子供になったことで、身体的強さがかなり弱体化したらしいけど、これまでに培ってきた技術と経験に関しては失っていないから、本気になればCランクの力を発揮できたらしいけど、私と行動を共にしたいから、わざと手加減したんだよね。ベイツさんが彼女の教育者になってくれたこともあり、私と一緒の居候状態となっても何の問題も問われなかった。
「まだ、油断できないぞ。騒ぎが沈静化してからが問題だ。これまで通り、周辺に気を配りながら、街内の依頼や採取依頼をこなしていこう」
リリアーナの件が明るみになったとしても、まだ安心できない。私の死を不審に思い、ここへ訪れる人だって、きっといるはずだ。ボロが出ないよう、私も警戒を解かないでおこう。
「そうだね」
お父さん、お母さん、悠太、光希。
これからは猫カフェ開店のために、お父さんのくれた猫用食料品の再現に力を入れていきます。日本と違い、建築速度が速い以上、私たちに用意されている時間は少ないと思った方がいい。全ての食料品を再現させ、猫カフェを開店し、猫たちに幸せな生活を送らせていこうと思います。
○○○
これにて、第2章終了です。
登場人物リストをUPしてから、第3章をUPしますね( ◠‿◠ )
188
あなたにおすすめの小説
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』
miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。
そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。
……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。
貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅――
「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。
相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。
季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、
気づけばちょっぴり評判に。
できれば平和に暮らしたいのに、
なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん――
……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?!
静かに暮らしたい元病弱転生モブと、
彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
ギルド受付嬢は今日も見送る~平凡な私がのんびりと暮らす街にやってきた、少し不思議な魔術師との日常~
弥生紗和
ファンタジー
【完結】私はギルド受付嬢のエルナ。魔物を倒す「討伐者」に依頼を紹介し、彼らを見送る毎日だ。最近ギルドにやってきたアレイスさんという魔術師は、綺麗な顔をした素敵な男性でとても優しい。平凡で代わり映えのしない毎日が、彼のおかげでとても楽しい。でもアレイスさんには何か秘密がありそうだ。
一方のアレイスは、真っすぐで優しいエルナに次第に重い感情を抱き始める――
恋愛はゆっくりと進展しつつ、アレイスの激重愛がチラチラと。大きな事件やバトルは起こりません。こんな街で暮らしたい、と思えるような素敵な街「ミルデン」の日常と、小さな事件を描きます。
大人女性向けの異世界スローライフをお楽しみください。
西洋風異世界ですが、実際のヨーロッパとは異なります。魔法が当たり前にある世界です。食べ物とかファッションとか、かなり自由に書いてます。あくまで「こんな世界があったらいいな」ということで、ご容赦ください。
※サブタイトルで「魔術師アレイス~」となっているエピソードは、アレイス側から見たお話となります。
この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる