58 / 83
本編
56話 学会、終わった〜。王都を散策しよう
しおりを挟む
あれれ~。
ここって、宿泊先のお部屋にある寝室だ。
夕方のはずが、朝になってるよ。
懇親会は、どうなったの?
「ユミル、おはよう」
「おはよう。シャワーを浴びてたの?」
トーイが下着姿のままでソファーに座っていて、少し湯気が立っている。
「朝にシャワーを浴びたら、全身が刺激されて、目が一気に醒めるとアイリスから聞いて試したのさ。この刺激は、いいね。気に入ったよ」
カーバンクルの状態なら、シャワーという選択肢自体がないもんね。
「懇親会ってどうなったの? 途中から、記憶がないんだけど?」
何故か、トーイは押し黙る。
「あ~、どこまで覚えているのかな?」
「う~んと、サイモン・ヴァリモンド様に何か言われたような気がするんだけど、その後から記憶がないの」
あの時、何を言われて、なんて返したのだろう?
全然、覚えていないよ。
「うっわ……一番肝心なところからか~」
え、それって、私が何か言ったってこと?
「あのね、ユミルが核心を突く言葉を言い放ったせいで、あの人たちはあれから4時間くらいぶっ通しで、空魔石再充填に関わる話し合いを続けていたよ」
「4時間!? 私、何か言ったっけ? あの時は…大気中の魔素を空魔石に充填させることをぼんやりと考えていたような? もしかして…それ?」
「ビンゴ! 参加者たちは、大気から魔素を空魔石へ充填させる発想を持っていなかった。だから、皆はユミルから得た発想を基に、新規魔道回路を実現させるため、討論を続けながら設計図を考えていき、その原型が出来上がるまで、ず~っと話し合っていたのさ」
研究者たちの執念って凄い。参加者たちが協力して作り上げていけば、皆の求める理想のシステムが完成する日も近いかもしれない。
「今、アイリス様たちは?」
「レパード以外、疲れて寝ているよ。深夜に寝たはずだから、今はゆっくりと寝かせてあげよう。街への帰還日程だけど、学会での事故もあって、当面の間未定だってさ」
当初、王都の滞在期間は6日と聞いている。今は3日目だから、あと3日は自由行動の予定だったけど、未定になった以上、行動範囲を少しだけ広げてもいいかもしれない。
「それと、もう一つ大事なお知らせがあるんだ」
「大事なお知らせ?」
トーイ、いつになく真剣だ。
「2日前、僕たちはこちら側の現状況を、長に報告した際、選別で抱えている悩みを打ち明けた」
悩み? カーバンクルを奴隷化させた人間の血縁者とその関係者たちの選別、スキルと魔法が封印されている状況下で、相手の心が善か悪、どちらであるのかを判断して、その後に制裁を与えるって言ってたけど、何か問題が起きたってことか。
「悩みって?」
「血縁者たちを調査した結果、善と悪に明確な偏りがあるとわかったのさ」
「偏り?」
そりゃあ、善と悪は両極端だから、偏りもあると思うけど、何が問題なの?
「僕たちは長に悩みを打ち明け、長が先代長に話したことで、先代長は悩みを解消させるため、ある提案を精霊王様に打診すると、状況が一変した。《元凶となった貴族の制裁を、この国の王家に託す》、これが正式に決定したんだ」
「え!? 皆の反応は?」
当初はカーバンクルだけで、『元凶たちに制裁を!!』と意気込んでいたのに、それでいいの? 最悪、この国の王家が元凶の貴族と裏で結託していたら、大した罰を与えないのでは?
「先代長の語ってくれた内容を聞いて、皆もその決定に賛成したよ。ただ、王家の下す制裁があまりにも納得いくものでない場合……精霊王様が国に制裁を下す。詳しく言うと、国民全員に対して、ステータスを半減させた上で、そこからスキル、魔法、加護、全てを没収するのさ。勿論、ユミルはその対象に入ってないし、王族に説明する際も、名前を伏せるから安心して」
なるほど、そういった内容であれば、私も納得できる。もし、精霊王様が国自体に制裁を与えてしまうと、精霊から見限られたってことになるから、後々大問題に発展して、最悪滅びる。王族にとって、それは自分たちの死を意味するのだから、真剣に取り組んでくれるはずだ。
「全快した先代は既に国王と王妃に接触し、事情を説明済み。王族が元凶に制裁を与えやすいよう、僕たちが元凶となった男の血縁者、その関係者たちの選別を行い、悪と判断した者には、あらゆる証拠を提出する手筈になってる。今は、その証拠集めの段階だね」
スキル《反射》を応用すれば、脳内の記憶をこちら側に反射させて、覗くことも可能だから、証拠も集めやすいし、善か悪の判断も可能だ。それに、元凶の貴族が国の中枢に入り込んでいる以上、王族も限られた臣下の人たちにしか話せないから、カーバンクルによる選別と証拠集めという行動に関しては、嬉しいはずだ。
「元凶が王都に潜んでいる以上、私は迷惑をかけちゃいけないね。まだ、その貴族の名前だって知らないから、普通に観光を楽しんでいいよね?」
アイリス様の方は、まだ完全に沈静化したわけじゃないけど、犯人は牢屋に入っている。データを盗んだ二人組に関しては逃げられたけど、それは彼女だって納得しているから、今後私が必要とされる場面なんてないと思う。
「うん。ユミルは、僕と一緒に観光を楽しもう。出かける際は、ホテルフロントにいる受付に伝言を残しておけば、マーカスたちに心配かけることもない。それで、ユミルはどこに行きたいの?」
アイリス様とカーバンクル、全て解決したわけじゃないけど、私の役目はここまで。気分を切り替えて、ここからは観光だ!
「こういう時のために、事前にガイドブックを購入しておいたの。ようやく、役立てる時がきた! まずは、本に載っている店に行って、ショッピングだよ!」
「了解。今日は気兼ねすることなく、王都を散策しよう」
やった!
今日は、朝からショッピングだ!
研究のことやカーバンクルの件を忘れて、久々に楽しもう!
○○○
第1部、これにて終了です。
第2部は鋭意制作中で、更新日は10月上旬を予定しています。
25周年カップにエントリーしたいので、主人公の前世の没年齢を25歳に引き上げます。
それに伴い、前世に関わる箇所を改稿していく予定です。
犬社護
ここって、宿泊先のお部屋にある寝室だ。
夕方のはずが、朝になってるよ。
懇親会は、どうなったの?
「ユミル、おはよう」
「おはよう。シャワーを浴びてたの?」
トーイが下着姿のままでソファーに座っていて、少し湯気が立っている。
「朝にシャワーを浴びたら、全身が刺激されて、目が一気に醒めるとアイリスから聞いて試したのさ。この刺激は、いいね。気に入ったよ」
カーバンクルの状態なら、シャワーという選択肢自体がないもんね。
「懇親会ってどうなったの? 途中から、記憶がないんだけど?」
何故か、トーイは押し黙る。
「あ~、どこまで覚えているのかな?」
「う~んと、サイモン・ヴァリモンド様に何か言われたような気がするんだけど、その後から記憶がないの」
あの時、何を言われて、なんて返したのだろう?
全然、覚えていないよ。
「うっわ……一番肝心なところからか~」
え、それって、私が何か言ったってこと?
「あのね、ユミルが核心を突く言葉を言い放ったせいで、あの人たちはあれから4時間くらいぶっ通しで、空魔石再充填に関わる話し合いを続けていたよ」
「4時間!? 私、何か言ったっけ? あの時は…大気中の魔素を空魔石に充填させることをぼんやりと考えていたような? もしかして…それ?」
「ビンゴ! 参加者たちは、大気から魔素を空魔石へ充填させる発想を持っていなかった。だから、皆はユミルから得た発想を基に、新規魔道回路を実現させるため、討論を続けながら設計図を考えていき、その原型が出来上がるまで、ず~っと話し合っていたのさ」
研究者たちの執念って凄い。参加者たちが協力して作り上げていけば、皆の求める理想のシステムが完成する日も近いかもしれない。
「今、アイリス様たちは?」
「レパード以外、疲れて寝ているよ。深夜に寝たはずだから、今はゆっくりと寝かせてあげよう。街への帰還日程だけど、学会での事故もあって、当面の間未定だってさ」
当初、王都の滞在期間は6日と聞いている。今は3日目だから、あと3日は自由行動の予定だったけど、未定になった以上、行動範囲を少しだけ広げてもいいかもしれない。
「それと、もう一つ大事なお知らせがあるんだ」
「大事なお知らせ?」
トーイ、いつになく真剣だ。
「2日前、僕たちはこちら側の現状況を、長に報告した際、選別で抱えている悩みを打ち明けた」
悩み? カーバンクルを奴隷化させた人間の血縁者とその関係者たちの選別、スキルと魔法が封印されている状況下で、相手の心が善か悪、どちらであるのかを判断して、その後に制裁を与えるって言ってたけど、何か問題が起きたってことか。
「悩みって?」
「血縁者たちを調査した結果、善と悪に明確な偏りがあるとわかったのさ」
「偏り?」
そりゃあ、善と悪は両極端だから、偏りもあると思うけど、何が問題なの?
「僕たちは長に悩みを打ち明け、長が先代長に話したことで、先代長は悩みを解消させるため、ある提案を精霊王様に打診すると、状況が一変した。《元凶となった貴族の制裁を、この国の王家に託す》、これが正式に決定したんだ」
「え!? 皆の反応は?」
当初はカーバンクルだけで、『元凶たちに制裁を!!』と意気込んでいたのに、それでいいの? 最悪、この国の王家が元凶の貴族と裏で結託していたら、大した罰を与えないのでは?
「先代長の語ってくれた内容を聞いて、皆もその決定に賛成したよ。ただ、王家の下す制裁があまりにも納得いくものでない場合……精霊王様が国に制裁を下す。詳しく言うと、国民全員に対して、ステータスを半減させた上で、そこからスキル、魔法、加護、全てを没収するのさ。勿論、ユミルはその対象に入ってないし、王族に説明する際も、名前を伏せるから安心して」
なるほど、そういった内容であれば、私も納得できる。もし、精霊王様が国自体に制裁を与えてしまうと、精霊から見限られたってことになるから、後々大問題に発展して、最悪滅びる。王族にとって、それは自分たちの死を意味するのだから、真剣に取り組んでくれるはずだ。
「全快した先代は既に国王と王妃に接触し、事情を説明済み。王族が元凶に制裁を与えやすいよう、僕たちが元凶となった男の血縁者、その関係者たちの選別を行い、悪と判断した者には、あらゆる証拠を提出する手筈になってる。今は、その証拠集めの段階だね」
スキル《反射》を応用すれば、脳内の記憶をこちら側に反射させて、覗くことも可能だから、証拠も集めやすいし、善か悪の判断も可能だ。それに、元凶の貴族が国の中枢に入り込んでいる以上、王族も限られた臣下の人たちにしか話せないから、カーバンクルによる選別と証拠集めという行動に関しては、嬉しいはずだ。
「元凶が王都に潜んでいる以上、私は迷惑をかけちゃいけないね。まだ、その貴族の名前だって知らないから、普通に観光を楽しんでいいよね?」
アイリス様の方は、まだ完全に沈静化したわけじゃないけど、犯人は牢屋に入っている。データを盗んだ二人組に関しては逃げられたけど、それは彼女だって納得しているから、今後私が必要とされる場面なんてないと思う。
「うん。ユミルは、僕と一緒に観光を楽しもう。出かける際は、ホテルフロントにいる受付に伝言を残しておけば、マーカスたちに心配かけることもない。それで、ユミルはどこに行きたいの?」
アイリス様とカーバンクル、全て解決したわけじゃないけど、私の役目はここまで。気分を切り替えて、ここからは観光だ!
「こういう時のために、事前にガイドブックを購入しておいたの。ようやく、役立てる時がきた! まずは、本に載っている店に行って、ショッピングだよ!」
「了解。今日は気兼ねすることなく、王都を散策しよう」
やった!
今日は、朝からショッピングだ!
研究のことやカーバンクルの件を忘れて、久々に楽しもう!
○○○
第1部、これにて終了です。
第2部は鋭意制作中で、更新日は10月上旬を予定しています。
25周年カップにエントリーしたいので、主人公の前世の没年齢を25歳に引き上げます。
それに伴い、前世に関わる箇所を改稿していく予定です。
犬社護
288
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる