記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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1話 水先案内人との面談、そして異世界転生へ

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頭がぼ~っとする。
ここは、何処だろう?

「次の方~、部屋へお入り下さ~い」

女性の声が聞こえてくる。身体が勝手に動いて扉を開けると、そこは14畳くらいの洋風の部屋となっていて、黒留袖を着た綺麗な女性がいる。

着物が左前になっているけど、何で?

「私は、水先案内人の鈴。貴方は竜胆唯ちゃん・11歳、死因は妹を庇っての交通事故死。突然の死だったから、精神にフィルターがかかっているのね。ほら、これでどうかしら?」

さっきまで靄がかかっていたような感覚だったのに、頭の中が晴れ渡り、どんどん冴えていく。え…と、信号無視の車が妹に襲ってきて、私は慌てて妹を突き飛ばして……気づいたら、ここにいた。

そっか、私…車に轢かれて死んじゃったんだ。

「精神強化もしておいたから、物事を冷静に考えることができるはずよ。自分の死を、受け入れられるようになったかな?」
 
そういえば、自分が死んでいるのに、なんでこんなに平然としているの?
これが精神強化?

「成功しているようね。そこのソファーに座って話し合いましょう」
「は、はい」

鈴さんは、水先案内人と言ったよね。
もしかして、死神様?

「貴方は、竜胆唯としての生を終えました。本来、この地球の天界にて、転生への準備期間に入るのだけど、人助けによる死を迎えてしまったので、すぐに転生することが可能です。ただ、ここで選択権が発生します」

「選択権?」

和やかな笑みを浮かべる鈴さん、どんな選択権があるの?

「転生先の種族は人間の女の子と決まっているけど、転生先を選んで欲しいの。1つ目は地球-アメリカ合衆国、2つ目は異世界バレンシア-ユーゴニック王国」

「異世界!?」

それって、小説に出てくる用語だよ。

「貴方は、どちらを選びますか?」

転生したら、今の記憶は無くなるはず…それなら…。

「幽霊として残れませんか?」

言った瞬間、鈴さんが怖い顔をする。

「妹さんが気になるの?」
「はい。何も言わないまま死んじゃったから…」

優奈は9歳、私が目の前で死んだことを絶対後悔してる。せめて5分でもあれば、あの子に別れの言葉を告げられる。

「その手段を取ったら、貴方は最悪永久に現世を彷徨うことになる。そこまで家族のことが気になるのなら、異世界に転生するべきね」

え、どうして異世界? 

「異世界バレンシアは地球と異なり、スキルと魔法が存在しています。この世界を創った神様は地球の神々より寛容で、清き心の持ち主であれば、記憶を保ったまま転生させてくれるの。そして、転生時にお願い事を神様に祈願し、それが認められたら善行を重ねていき、一定のポイント値に到達すれば、願いが成就される」

地球に転生したら、記憶を消されちゃうから優奈と出会っても気づけない。でも、異世界に転生したら、記憶を保持したまま優奈や両親ともう一度会えるかもしれない。

「そして、ここからが重要。地球と異世界バレンシアの時間の流れは同じ、貴方は11歳で死んでいるから、規約上、前世記憶の覚醒は11歳からとなる」

そうなると覚醒した時点で、優奈は少なくとも20歳になってる。両親や祖父母、親戚だっているから、私の死を乗り越えていると思うけど、それでも死んじゃったことへのお詫びとお別れの言葉を言いたい。

「異世界転生でお願いします!!」
「いいのね?」
「はい!!」

私が覚悟を決めた時、何処からか着信音が聞こえてくる。

「このタイミングで電話? もしもし…え!? あ、申し訳ございません。なにぶん、初めてのことなので……」

電話相手が偉い人なのか、急に畏まった話し方になってる。

「……え、記憶が? スキルと魔法も!? ……なんてこと」

なんだか気の毒そうな顔で、私の方をチラチラと見る。
人様の電話だけど、ちゃんと聞いておいた方が良さそう。

「この一覧から、好きなスキルを1個選べばいいのですね? これは…なるほど、かなりの優遇措置ですね。 ……え、善行ポイントが多過ぎませんか? …なるほど、そういった配慮が…わかりました、あの子を信じることにします」

スマホを切った鈴さんが、真剣な表情で私を見る。

「何かあったんですか?」

「ええ…あちらの神様が貴方を覚醒させる手続きをしていたら、未来がすぐに消えてしまうから妙だと思い詳しく調査したら、貴方は覚醒してから4日後にある事件に巻き込まれ、そこから2日後に死んでしまうことが発覚したの」

「転生して6日で死亡なんて嫌です! 未然に防げませんか?」

いきなりの衝撃発言だから、私はつい叫んでしまう。

「無理よ。神様は、地上への干渉を原則として禁じているの。ただ、あの方も流石に気の毒すぎると思い、貴方が死なない未来となるよう、当初予定していた時期より少し遅らせて覚醒させることにしたそうよ」

「それだと、事件後で死ぬ直前になりますけど?」

「覚醒時期も早めたとしても、貴方は事件に巻き込まれ、必ず死んでしまう。事件後であれば、死を回避できるルートがいくつかあるわ。状況を簡潔に言うと、あなたは深く眠らされた後、魔法の影響で記憶喪失となり、魂も傷ついてしまい、習得したスキルと魔法を全て失ってしまうのよ。神様はその状態の貴方の魂を修繕して、前世記憶を覚醒させることにしたの」

言われたことは理解できたけど、どんな事件に巻き込まれるのかはわからないままだ。

「逆境からの超絶スタートだけど、あなたには転生特典として、スキルを1つ進呈することにしたわ。先程教えてもらった統合型スキルリストから1つ選べば、あなたは確実に生き残れる」

「それって、干渉に入るのでは?」

「ええ、その通り。干渉する理由はただ一つ、魂の損傷が激し過ぎて、元の状態に修繕出来ないからよ。修繕後の貴方の身体は、1つのスキルもしくは魔法しか取得出来ないの。それ以降、どれだけ努力しても、器が限界で習得できないわ」

つまり、今から貰う転生特典だけで生きていけってことか。死ぬ運命だった私を生存させてくれるのだから、スキル1個貰えるだけでも嬉しい。

「大丈夫です。私は、スキル1個だけで生きていきます。ところで、どんなスキルを貰えるのですか?」

「そこは、唯ちゃんの特技に合わせるわ」

「特技? え~と、お料理を作る事です。私は人と人を結ばせるような、悲しみを笑顔に変えるような料理を作りたいと思い、ずっと勉強を重ねてきました。将来…料理人になりたいなと…」

話していくうちに、声のトーンが落ちていき、私の心が悲しみに染まる。
それは、もう叶わない夢だから。

「そう…料理ね」

鈴さんがスマホをいじって、何かを確認している。

「ふふ、これなら。ユイちゃんには、統括型スキル【料理道[極み]】を授けます。これには、料理に関わるあらゆるスキルが統合されているの」

統括型?
料理に関わるものなら私も嬉しいけど、それで生き残れるの?

「不安なのもわかるけど、異世界の神様を信じてあげて」

鈴さんがそういうのだから、ここは信じよう。

「ここからは、転生直後の注意事項を伝えるわね。1つ目、覚醒後すぐに、混乱する事態が発生するけど、必ず深呼吸して落ち着くこと。2つ目、落ち着いたらステータスと念じて、自分の状況を把握すること。3つ目、善行ポイントの扱い方を間違えないこと」

目覚めたら、今言ったアドバイスを必ず実行しよう。

「注意事項、ありがとうございます」

鈴さんが、ニコッと笑う。

「準備完了ね。さあ、あの扉を開けて、先に進みなさい」

鈴さんの指さす方向には、1つの立派な扉がある。
あの先に、異世界バレンシアがある。

私の願い事は、『もう一度だけ日本に戻って、両親や妹に何らかの形でお詫びとお別れの言葉を告げること』。善行ポイントを重ねていって、絶対成就させるんだ。

「鈴さん、行ってきます!!」
「いってらっしゃい」

私は覚悟を決めて扉を開けると、突然光に覆われる。
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