記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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8話 地盤固めと今世の目標

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あれからブライトさんやロイドさんと話し合ったことで、2人は善行ポイントの扱い方や統括型スキルについて、色々とアドバイスを与えてくれた。

・この世界には、強さの指標となる数値は体力、魔力量、スキルのみ。攻撃や防御などにポイントを加算できないので、数値の振り分けには要注意。

体力だけがあっても、弱かったらすぐに死ぬ。
魔力だけがあっても、スキルが拙い場合は制御できない。
スキルだけがあっても、魔力や体力がなければ、使いこなせない。

私の場合、能力強化で3つの力をバランス良く鍛えていく。善行ポイントに関しては無闇に使用せず、危機的事態が発生した時のために、地道に蓄積させていく。

・統括型スキルについて
人が1つの職業に集中し、一定値以上の経験を積むと、職業に呼応する数多くのスキルが統括型としてまとめられ、ネットワークを形成させるので、発動・連動速度が大きく向上する。通常、相当な実戦実務経験を積まないと得られないので、私の場合、神様がかなり優遇してくれたってことだね。

説明を聞き終えると、ブライトさんは、棚から少し大きな機械を取り出し、テーブルに置く。

「これはね、ここの小さな楕円形の部分に右手人差し指を付け魔力を少し流すことで、持ち主の生体情報を分析して、冒険者カードを製作してくれる最新鋭の魔道具なの。さあ、やってみて」

私が人差し指を付けると、魔力が勝手に発動して、魔道具が動き出す。自動で魔力を出せるのはいいけど、私としては自分の感覚で動かしたい。落ち着いたら、ロイドさんに教えてもらおう。

「はい、完成。これが、冒険者カードよ」

ブライトさんから渡されたものは、手のひらサイズのカードで、表には私の写真と名前、それにFというマークが入っていて、裏には依頼達成数や発行場所、注意事項が記載されている。

これが現世の私……髪の毛が黄色で長さも胸付近まであり、ぱっちりお目目で前世の顔と全然違うけど、不思議と好感が持てる。

「私はランクF?」
「誰であろうと、最初は一番下のFからよ。これがあれば、身分も保証されるわ。ユイ、頑張ってね」
「はい!」

カードと一緒に従魔用の首輪を貰ったので、それをハティスに付ける。見た目は、完全に黒の子犬だ。

「可愛いよ、ハティス」
「ありがとう。僕も、ユイの従魔として頑張るからね」

ハティスは、今日から私の家族だ。
これからは2人で協力して、魔物と戦っていかないと。

「そうだ、ブライトさん。ここって討伐した魔物を買い取ってくれることも可能ですか?」
「当然可能よ。あの森の中で、何を討伐したの?」

よかった。あの魔物を食糧保管庫から出せるし、当面の生活費もなんとかなりそう。私はハティスを見て、互いにニコッと笑う。

「「フロストヴァイパー!」」
「「はあ!?」」

私たちが笑顔で言うと、2人は素っ頓狂な声をあげる。

「まさか、私たちの見たブレスは……ハティスが討伐したのか?」

あれは、ブレスっていう技なんだね。

「そうだよ、ロイド。僕がブレス1発で、奴の頭を消し飛ばしたの! その後、ユイの食糧保管庫とかいうスキルが勝手に発動して消えちゃったけどね」

ハティスは笑顔で話しているけど、ロイドさんもブライトさんも、驚いているのがわかる。

「嘘でしょ…ブラックフェンリルといえど、幼生体時はそこまで強くないわよ? もしかしたら、ハティスはとんでもない潜在能力を持っているのかもね。とりあえず、ロイドが討伐したことにしておきましょう」

「え!?」

ロイドさん、自分に振られると思わなかったのか、驚きの声をあげる。

「当たり前でしょ。真相を話したら、騒がれるもの」
「そう…ですね。ランクSの俺なら、問題ないか」

よかった、納得してくれた。

「ユイ。私と別れた後、ロイドと一緒に受付に行きなさい。フロストヴァイパー討伐はロイドの実績になっちゃうけど、その後の解体で得られる資金に関しては、ロイドの口座を経由して、ユイの口座に振り込んでおくわ」

「口座?」

ブライトさんから口座について聞くと、冒険者に関する仕組みを理解できた。世界中に存在する冒険者ギルドは、魔道具でネットワークを構築しているので、自分がどの国にいようとも、冒険者ギルドに行き、カードを見せさえすれば、身元も保証される。そして、冒険者として登録すると、報酬口座が自動的に製作され、依頼報酬に関しては、最初こそ受付で渡されるけど、その後は全額を口座に入れるか必ず問われるから、どうするかは自分で考えるように言われた。ランクの低い人たちは、少額だけ手元に残し、大半は口座に入れているみたい。

「私も必要最低限だけ手元に残して、残りは口座に入れておきます」
「それがいいわ。それと…これを渡しておくわね」

それは、1冊の本だった。

「この街の今年度のガイドブックよ。私たちで話し合っている間に、ロイドがオススメのお店にマークを入れてくれたわ」

ガイドブックには、いくつもの付箋が貼られていて、その箇所には、オススメの店がマークされているのだけど、その数が多い。

「ロイドさん、ブライトさん、ありがとうございます! これがあれば、ハティスと楽しく暮らしていけそうです」

「まずは、ロイドと一緒に受付へ行って、フロストヴァイパーを売却して、生活資金を得なさい。無駄な出費さえなければ、数ヶ月は楽に暮らせるはずよ」

「はい!」

私たちはブライトさんと別れ、1階に降りて受付へ向かう。
フロストヴァイパー、いくらで買い取ってくれるかな?


○○○ 視点《ギルドマスター・ブライト》


「ブライトさん、ありがとうございました!」

ユイが丁寧にお辞儀をして、ロイドとハティスを連れて私の部屋から出ていった。ふう、話が濃かったわね。元々、ロイドは樹海調査のために乗り出したのに、まさか自分の手で殺したブラックフェンリルの子供ハティスと11歳のユイを連れて戻ってくるとはね。

想定外もいいところだわ。
さて、これからどうしたものか。

樹海自体の騒動は数日で落ち着きを取り戻すからいいとして、問題はユイの方ね。あの子を傷つけないよう、ロイドも強奪について幾つかの重要事項を省略して説明したようね。あれは、スキルや魔法だけでなく、対象者の身体に秘めたる能力全てを強奪できる。記憶力、知力、器用性、動体視力、潜在能力、性格、その気になれば、味覚、視覚などの五感も強奪可能。

強奪率が92.5%である以上、多分ユイは殆どのものを…。

そもそも、11歳で能力を強奪されるなんて、普通ではありえない事象よ。通常、その年齢だと、スキルも魔法も未成熟だから、強奪してもメリットは低いと思われるけど、相応の力を持っていたとすれば? 11歳で強奪されるほどとなると、ユイは間違いなく神童と呼ばれる領域にいたはずよ。現在、国内において神童と呼ばれる子供たちは、3人いる。しかも、全員が貴族で王都に滞在しているわ。

今年で11歳を迎える第一王子、誰が婚約者に選ばれるのか、今王都で注目されている。3人の神童たちの年齢は12歳前後、この中のいずれかと言われているけど、そういった状況下で起きた強奪事件、念のため王都からユイの素性調査を始めるべきね。

「ブライトさん、入ります」
「ミリム、丁度いいところに来たわね。あなたに、頼みがあるのよ」

強奪者側が、ユイの存在を嗅ぎつける可能性を否定できない以上、今から調査に乗り出し、強奪者が誰なのかを特定しておく必要があるわ。あの子が記憶喪失である以上、強奪関係者とすれ違っても気づくことは絶対にないから、今後は私とロイドで色々とフォローしていきましょう。

あんな良い子を、不幸にしてはいけない。
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