記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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11話 新人教育訓練

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2日後、私はハティスとリオンを連れて、冒険者ギルドに向かっているのだけど、昨日までの段階で、私やハティスの特技を彼に教えている。私の特技は料理だから、冒険者としてガッカリされると思ったけど…。

『何、言ってんだ? 新人冒険者の言う特技なんて、素人に毛が生えたレベルだから、戦闘系スキルの剣術や体術を言っても、誰も驚かない。見栄を張っている可能性もあるしな。昨日の段階で、ユイの料理の腕前を見たけど、あれはかなりのレベルだと思う。後方支援としては最適だと思うけど、問題は冒険者としての基礎能力かな』

リオンは贔屓目とかなく、冒険者としての私の能力をきちんと見てくれている。昨日、厨房を借りて、残り物を使わせてもらい、炒飯を作ったら、ベイツさん、マリアンネさんレイナちゃん、リオンも絶賛してくれた。ただ、特技としての料理を褒めてくれたけど、それが冒険者として通じるのかは別の話。今日の新人訓練の結果次第で、冒険者としての資質が問われる。

冒険者ギルドに到着して、受付のミリムさんに室外の訓練場に案内されると、私と同じランクFの人たちが7名いた。今回の教師は領主でランクSのロイドさんのせいか、見学者も多い。

「ユイ、俺は見学者のいる端っこで見ているから、現時点の能力を見て、パーティーを結成するか判断させてもらうけど構わないか?」

「うん、当初の予定通りのままでいいよ。ハティス、頑張ろうね」
「うん、みんなを驚かせよう!」

驚かせる必要性はないんだけど。

参加者たちは、有名なパーティーから勧誘されたいと必死にアピールすると思うけど、私の場合、料理しかないから、どうリオンにアピールしよう?

「よし、これで全員だな。私は、ランクSのロイドだ。今日以降、不定期ではあるが、私も訓練教官として参加させてもらう。まずは、私や見学者たちに、自己紹介も兼ねて、特技を披露してもらい、現時点の能力を測らせてもらう」

う、今更になって緊張してきたよ。

「ユイ、どうする?」
「ハティスは戦闘や闇魔法で、私は料理になるけど…」
「それだったらさ、樹海の時のように、この場で何かを調理すればいい。スキルだけで調理できれば、リオンだってユイの力を認めてくれるさ」

もう、その手しか思い浮かばない。
うん、やるしかない!

私と同じ新人さんたちが、次々と特技を披露していく。
私以外の6人の参加者の中で目立ったのは、3人の特技。

獣人の女の子で13歳、名前はリリーさん。

この子の特技は、敏捷性を活かした爪術、術の意味がわからなかったけど、実際に披露してくれたことで理解できた。自分の両腕を黒く硬化させて、爪を長く伸ばし、鍵爪のような形態で攻撃していく術、斬れ味もよさそうだけど、爪がなくとも、拳だけで叩かれても、かなりの打撃力があると思う。

ハーフエルフで10歳の男の子、名前はアルトリウス。
ハーフエルフで10歳の女の子、名前はエルーザ。

2人の特技は合体魔法。アルトリウスとエルーザが協力することで、魔法による花火を打ち上げたり、虹を作ったりもして、皆を驚かせる。10歳でここまでの技量を持つ者は、この街だけでなく、王都でもかなり珍しく、見学者たちも興味津々だった。

そして……最後の自己紹介が私とハティス。
なんで、最後かな?
あの3人のような凄い特技なんて持ち合わせていないのに。
とにかく、しらける空気になっちゃうかもだけど、やるしかない!

「ハティス、行こう!」
「うん」

覚悟を決めて、私は訓練場中央へと歩いていき、ロイドさんや見学者たちの方へと向く。

「皆さん、初めまして! 私の名前はユイ、11歳です」
「僕は、ユイの従魔ブラックフェンリルのハティス。まずは僕の特技、こんな感じで闇魔法を使えるよ」

そう言った瞬間、訓練場全てが闇に覆われ、皆が慌てふためく。中には、光を照らそうと魔法を放つ人たちもいたけど、それらはすぐに闇に吸収されてしまう。10秒程経過したところで、いつもの光景に戻る。

「どう、驚いた? 光と闇は真逆の属性で、闇は光より弱いと言われているけど、実際は違う。闇の力が強ければ、光すら飲み込めるのさ。まあ、その逆もあるけどね。だから、稀少な光魔法の使い手だからといって怠けていると、闇に食われちゃうよ。これ以外にも、戦闘が得意で、さっき披露してくれたリリーの戦術に近いかな。次は、僕の主人ユイの番だ」

ハティス~~~~、物凄く目立ってるよ~~~~。
私の特技って料理なんだよ~~~。
闇魔法の後に料理って……披露しても絶対に白けちゃうよ。
あ~もうヤケクソ!

「え~と、私の特技は後方支援の料理です。こんな風に、何の器材が無くても、色んな物を調理できます。とくと、ご覧あれ」

ここは、シンプルにだし巻き卵を作ろう。昨日までの段階で、ちゃんと料理道[極み]内にどれだけのスキルがあるのか調査して、[自動制御]をオフにしてから自分で扱えるよう、ブライトさんに操作方法を教えてもらいながら練習もした。

その成果を見せないとね。
まずは、食糧保管庫から卵を取り出す。

「抽出」
卵を割らずに、中身だけを抽出する。
いらない殻は邪魔だから排除。
「分解」
ここからは、適度に調味料を加えつつ、混合だ。
「撹拌」
次は油を敷いて、そこに卵を乗せる。
まずは、そのための下拵え。
「空間固定と加熱」
固定した空間を加熱で熱して、そこに卵を乗せる。
機材なしだと全方位から炒め具合を確認できるから便利だよね。
さあ、ここからはイメージが重要。
「回転」
適度なとろみ具合を確認してから、回転させていく。
「はい、だし巻き卵の完成です!」
せっかくだから、ロイドさん、リオン、参加者たちに食べてもらおう。
私がスキル名を言おうとすると、軽い風が吹いて、砂が舞い上がる。
「あ、駄目! 障壁!」
よし、料理の周りに結界を張ったから、砂埃もついてない。
ってあれ? なんか、さっきから異様に静かな気が?
よくわかんないけど、とりあえず食べてもらおう。
「切断、8分割。移動」
だし巻き玉を8個に分割して、それらを参加者、ロイドさん、リオンに口の前に持っていく。
「皆さん、口を開けてください。ホクホクのなのでご注意を」
私の言葉に従い、8人は自然に口を開けてくれたので、そっと入れていく。さて、お味はどうかな?

「卵がふわふわだ!」「美味しい~~」「ふわふわで美味しい!」「器材なしで、この味…」「「「「……」」」」

表情だけで、みんなが美味しいと言ってくれているのがわかるよ。
やったね…ってあれ?
何で、誰もそれ以外の言葉を発しないの?

「ユイ、質問だがいいか?」
「何ですか、ロイドさん」

ロイドさんが、やっと動いてくれた。

「さっきの調理は、全てスキルによるものか?」

皆の前で私の事情を話せないから、余計なことを言わないようにしよう。

「はい、その通りです。料理が得意なので、習得しているスキルも料理系ばかりなんです」

私が断言すると、多くの人々が一斉に驚きの声をあげる。
何で、みんな驚いているの?
あ、私が料理関係のスキルしか持っていないからだ!
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