記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

文字の大きさ
12 / 42

12話 ユイに必要なのは常識だ *視点-リオン

しおりを挟む
マリアンヌさんとベイツさんは、俺と年齢の近い冒険者が宿泊するたびに、パーティーを組んではどうかと言ってくる。ソロ活動している俺のことを心配してくれているのはわかるけど、正直ありがた迷惑なんだよな。

俺の冒険者ランクはD、あと少しポイントを稼げれば、Cへのランクアップ試験を受けられる。これまで同年代の奴らと行動を共にしたことは何度もあるけど、正直強さに物足りない。皆が、俺の動きについていけないせいで、俺が逆に気遣って行動している。ムカつく奴もいれば、友人関係を築きたいと思う奴らもいたけど、パーティーを組んで共に冒険したいと思う奴はいなかった。

同格や上位魔物と戦う際、全員の動きが上手く連携していないと、些細な乱れだけで死に直結する。俺の場合、その連携が他の連中と噛み合わないんだよ。俺自身は、皆の求めている動きに合わせられるけど、その逆が無理なんだ。下手にパーティーを組んだら、俺の求める動きのせいで、仲間を死なせてしまうからな。

今回のパーティー候補は、ユイとハティス。

昨日見せてもらったユイの料理人としての腕前は申し分ないけど、俺と並んでいけるほどの体力を持っているのか、俺との掛け合いについていけるのかが問題だ。まずは、今日の新人教育訓練で、ユイの見せる特技や体力を知りたいと思っていたけど……ありえないだろ?

ユイは何の器材もなく、全ての工程で料理と何の関係もないスキルを使い、だし巻き卵を空中で作った。味は極上だけど、俺や冒険者たちは、その過程で驚いている。

スキル[抽出][撹拌]は錬金術系統。[分解][空中固定][障壁]は、どう考えても料理技術に関係しない代物で、最後の[障壁]なんて、あれって限りなく魔法に近いだろ? それだけのスキルを、何でそんな簡単にポンポン軽々と扱えるんだ?

「えへへ、料理のスキルに関しては、誰にも負けないよう練習しましたから」
「いや…そもそも百歩譲って、抽出・撹拌・加熱はわかるとして、分解・空中固定・切断・障壁って料理スキルか?」

ロイドさんが、俺たちの気持ちを代弁してくれている。

「え~~料理スキルですよ。何も器材がなかった場合、絶対に必要になりますから。だから、スキルとしてあるんじゃないですか~~」

『いやいや、違うだろ!』と、この場にいる全員がツッコミたい。もしかして、ユイはあらゆる状況を想定して、調理に必要なスキルを全部自力で取得した? あの言い方から察するに、それらを全て料理系統だと思い込んでいる。

俺や他の冒険者たちも、開いた口が塞がらない。
それは、ロイドさんも同じ気持ちだろう。
というか、ユイは冒険者として、かなりの逸材なんじゃあ?

「今の私って料理しか取り柄がないので、体力をいっぱいつけて、剣術や体術とかも覚えて、冒険者として役立てるよう頑張ります!」

やばい、ユイにとって一番身に付けなきゃいけないのは、【常識】だ。今の時点で、普通の冒険者としてありえないほどのレアスキルを持っているのに、それに全く気づいていないし、使い方も間違っている。だからと言って、大勢の人たちの前でそれを指摘したら、恥をかくのはユイだ。

ロイドさん、どうするんです?

「いや…うん…頑張れ。リオン」

ロイドさんがこっちを向いて、俺を突然名指しした。

「は…はい」
「君は、ソロで活動していたよな?」

ロイドさんと少ししか話し合った事ないのに、俺の今の状況を把握してくれている。すげ~嬉しいけど、何を言ってくるのだろう?

「そうですけど…」

何故か、俺のすぐ側までやって来る。

「ユイとパーティーを組んでみないか?(君はソロとして活動し、冒険者として幅広い知識を持っている。君ならば、ユイとハティスに常識を教えられる)」

え!? 後半から小声で言ってくれた内容、これって俺と同じ事を思い、それを俺に託してくれたのか? それって、ここにいる誰よりも、俺を認めてくれているって事だよ!?

「は…はい! ユイやハティスとなら、冒険者として楽しく活動できそうだと思いました」
「よし、パーティー結成だな」

「リオン、いいの!? やった~~~、ハティス、リオンとパーティーを組めるよ!」
「やったね!」

まずは、ユイにとって相応しい戦闘方法を考えよう。
それに、冒険者としての基礎能力を知らないといけない。


○○○


こいつ、どんな体力をしているんだよ。

あの後、ロイドさんは参加者全員の体力持久力を計るために、二つの木製ポールを設置した。

『ポール間の距離は、丁度50メートルある。君たちは、今から倒れるまで、このポール間を同時にスキルや魔法なしで全力疾走してもらう。50メートル走る度に、5分間の休憩を与えるが、最初に誰かがゴールした瞬間、休憩時間がカウントされる。つまり、着順が遅ければ遅いほど、休憩時間が少なくなると思え! また、君たちの全力を見たいので、ランクDのリオンを参加させる。リオン、最初から本気で走れ。相手が誰であろうと、絶対に躊躇するな! なお、ユイの従魔ハティスは不参加だ』

ロイドさんは俺に殺気を飛ばしてきたから、俺は本気で走った。当然、俺がぶっちぎりの1位だけど、2位は獣人のリリー、3位は意外にもユイだった。俺はこういう時の回復方法を知っているけど、参加者たちの中で、俺と同じ技術を持っているのは、リリーだけだった。だから、彼女は脱落せず、最後まで立っていられると思っていたのに、回数を重ねるたびに、俺とリリーで差が開いていき、いつの間にかユイが彼女を追い越していた。そして、参加者たちが次々と倒れていく中、ユイとリリーだけが残り、そこから2度全力疾走すると、リリーだけが力尽きた。

『そのまま続けろ!』

俺もかなりキツくなっているのに、ロイドさんはユイの限界を見たいようだ。そこからは絶対に倒れるものかとプライドを賭けて、全力で走り続け、俺もあと1回走ったら限界と思ったところで、ユイがようやく倒れてくれた。俺も倒れてこそいないけど、息がかなり乱れている。

「ユイ…どれだけの体力を持ってんだよ」
「あはは…しんど~~い。もう歩けな~~い」

体力にはかなり自信があったのに、ユイは俺に近い力量があるってことか。いや、回復方法を知らないことを考慮すると、俺と同等かそれ以上かもしれない。もしかしたら、ユイやハティスとなら、俺の求める冒険ができる? 

あはは、何だろうな? 胸が凄く疼く。心がワクワクする。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。 真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。 気付いたら知らない所にいたの。 とてもこまったの。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...