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12話 ユイに必要なのは常識だ *視点-リオン
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マリアンヌさんとベイツさんは、俺と年齢の近い冒険者が宿泊するたびに、パーティーを組んではどうかと言ってくる。ソロ活動している俺のことを心配してくれているのはわかるけど、正直ありがた迷惑なんだよな。
俺の冒険者ランクはD、あと少しポイントを稼げれば、Cへのランクアップ試験を受けられる。これまで同年代の奴らと行動を共にしたことは何度もあるけど、正直強さに物足りない。皆が、俺の動きについていけないせいで、俺が逆に気遣って行動している。ムカつく奴もいれば、友人関係を築きたいと思う奴らもいたけど、パーティーを組んで共に冒険したいと思う奴はいなかった。
同格や上位魔物と戦う際、全員の動きが上手く連携していないと、些細な乱れだけで死に直結する。俺の場合、その連携が他の連中と噛み合わないんだよ。俺自身は、皆の求めている動きに合わせられるけど、その逆が無理なんだ。下手にパーティーを組んだら、俺の求める動きのせいで、仲間を死なせてしまうからな。
今回のパーティー候補は、ユイとハティス。
昨日見せてもらったユイの料理人としての腕前は申し分ないけど、俺と並んでいけるほどの体力を持っているのか、俺との掛け合いについていけるのかが問題だ。まずは、今日の新人教育訓練で、ユイの見せる特技や体力を知りたいと思っていたけど……ありえないだろ?
ユイは何の器材もなく、全ての工程で料理と何の関係もないスキルを使い、だし巻き卵を空中で作った。味は極上だけど、俺や冒険者たちは、その過程で驚いている。
スキル[抽出][撹拌]は錬金術系統。[分解][空中固定][障壁]は、どう考えても料理技術に関係しない代物で、最後の[障壁]なんて、あれって限りなく魔法に近いだろ? それだけのスキルを、何でそんな簡単にポンポン軽々と扱えるんだ?
「えへへ、料理のスキルに関しては、誰にも負けないよう練習しましたから」
「いや…そもそも百歩譲って、抽出・撹拌・加熱はわかるとして、分解・空中固定・切断・障壁って料理スキルか?」
ロイドさんが、俺たちの気持ちを代弁してくれている。
「え~~料理スキルですよ。何も器材がなかった場合、絶対に必要になりますから。だから、スキルとしてあるんじゃないですか~~」
『いやいや、違うだろ!』と、この場にいる全員がツッコミたい。もしかして、ユイはあらゆる状況を想定して、調理に必要なスキルを全部自力で取得した? あの言い方から察するに、それらを全て料理系統だと思い込んでいる。
俺や他の冒険者たちも、開いた口が塞がらない。
それは、ロイドさんも同じ気持ちだろう。
というか、ユイは冒険者として、かなりの逸材なんじゃあ?
「今の私って料理しか取り柄がないので、体力をいっぱいつけて、剣術や体術とかも覚えて、冒険者として役立てるよう頑張ります!」
やばい、ユイにとって一番身に付けなきゃいけないのは、【常識】だ。今の時点で、普通の冒険者としてありえないほどのレアスキルを持っているのに、それに全く気づいていないし、使い方も間違っている。だからと言って、大勢の人たちの前でそれを指摘したら、恥をかくのはユイだ。
ロイドさん、どうするんです?
「いや…うん…頑張れ。リオン」
ロイドさんがこっちを向いて、俺を突然名指しした。
「は…はい」
「君は、ソロで活動していたよな?」
ロイドさんと少ししか話し合った事ないのに、俺の今の状況を把握してくれている。すげ~嬉しいけど、何を言ってくるのだろう?
「そうですけど…」
何故か、俺のすぐ側までやって来る。
「ユイとパーティーを組んでみないか?(君はソロとして活動し、冒険者として幅広い知識を持っている。君ならば、ユイとハティスに常識を教えられる)」
え!? 後半から小声で言ってくれた内容、これって俺と同じ事を思い、それを俺に託してくれたのか? それって、ここにいる誰よりも、俺を認めてくれているって事だよ!?
「は…はい! ユイやハティスとなら、冒険者として楽しく活動できそうだと思いました」
「よし、パーティー結成だな」
「リオン、いいの!? やった~~~、ハティス、リオンとパーティーを組めるよ!」
「やったね!」
まずは、ユイにとって相応しい戦闘方法を考えよう。
それに、冒険者としての基礎能力を知らないといけない。
○○○
こいつ、どんな体力をしているんだよ。
あの後、ロイドさんは参加者全員の体力持久力を計るために、二つの木製ポールを設置した。
『ポール間の距離は、丁度50メートルある。君たちは、今から倒れるまで、このポール間を同時にスキルや魔法なしで全力疾走してもらう。50メートル走る度に、5分間の休憩を与えるが、最初に誰かがゴールした瞬間、休憩時間がカウントされる。つまり、着順が遅ければ遅いほど、休憩時間が少なくなると思え! また、君たちの全力を見たいので、ランクDのリオンを参加させる。リオン、最初から本気で走れ。相手が誰であろうと、絶対に躊躇するな! なお、ユイの従魔ハティスは不参加だ』
ロイドさんは俺に殺気を飛ばしてきたから、俺は本気で走った。当然、俺がぶっちぎりの1位だけど、2位は獣人のリリー、3位は意外にもユイだった。俺はこういう時の回復方法を知っているけど、参加者たちの中で、俺と同じ技術を持っているのは、リリーだけだった。だから、彼女は脱落せず、最後まで立っていられると思っていたのに、回数を重ねるたびに、俺とリリーで差が開いていき、いつの間にかユイが彼女を追い越していた。そして、参加者たちが次々と倒れていく中、ユイとリリーだけが残り、そこから2度全力疾走すると、リリーだけが力尽きた。
『そのまま続けろ!』
俺もかなりキツくなっているのに、ロイドさんはユイの限界を見たいようだ。そこからは絶対に倒れるものかとプライドを賭けて、全力で走り続け、俺もあと1回走ったら限界と思ったところで、ユイがようやく倒れてくれた。俺も倒れてこそいないけど、息がかなり乱れている。
「ユイ…どれだけの体力を持ってんだよ」
「あはは…しんど~~い。もう歩けな~~い」
体力にはかなり自信があったのに、ユイは俺に近い力量があるってことか。いや、回復方法を知らないことを考慮すると、俺と同等かそれ以上かもしれない。もしかしたら、ユイやハティスとなら、俺の求める冒険ができる?
あはは、何だろうな? 胸が凄く疼く。心がワクワクする。
俺の冒険者ランクはD、あと少しポイントを稼げれば、Cへのランクアップ試験を受けられる。これまで同年代の奴らと行動を共にしたことは何度もあるけど、正直強さに物足りない。皆が、俺の動きについていけないせいで、俺が逆に気遣って行動している。ムカつく奴もいれば、友人関係を築きたいと思う奴らもいたけど、パーティーを組んで共に冒険したいと思う奴はいなかった。
同格や上位魔物と戦う際、全員の動きが上手く連携していないと、些細な乱れだけで死に直結する。俺の場合、その連携が他の連中と噛み合わないんだよ。俺自身は、皆の求めている動きに合わせられるけど、その逆が無理なんだ。下手にパーティーを組んだら、俺の求める動きのせいで、仲間を死なせてしまうからな。
今回のパーティー候補は、ユイとハティス。
昨日見せてもらったユイの料理人としての腕前は申し分ないけど、俺と並んでいけるほどの体力を持っているのか、俺との掛け合いについていけるのかが問題だ。まずは、今日の新人教育訓練で、ユイの見せる特技や体力を知りたいと思っていたけど……ありえないだろ?
ユイは何の器材もなく、全ての工程で料理と何の関係もないスキルを使い、だし巻き卵を空中で作った。味は極上だけど、俺や冒険者たちは、その過程で驚いている。
スキル[抽出][撹拌]は錬金術系統。[分解][空中固定][障壁]は、どう考えても料理技術に関係しない代物で、最後の[障壁]なんて、あれって限りなく魔法に近いだろ? それだけのスキルを、何でそんな簡単にポンポン軽々と扱えるんだ?
「えへへ、料理のスキルに関しては、誰にも負けないよう練習しましたから」
「いや…そもそも百歩譲って、抽出・撹拌・加熱はわかるとして、分解・空中固定・切断・障壁って料理スキルか?」
ロイドさんが、俺たちの気持ちを代弁してくれている。
「え~~料理スキルですよ。何も器材がなかった場合、絶対に必要になりますから。だから、スキルとしてあるんじゃないですか~~」
『いやいや、違うだろ!』と、この場にいる全員がツッコミたい。もしかして、ユイはあらゆる状況を想定して、調理に必要なスキルを全部自力で取得した? あの言い方から察するに、それらを全て料理系統だと思い込んでいる。
俺や他の冒険者たちも、開いた口が塞がらない。
それは、ロイドさんも同じ気持ちだろう。
というか、ユイは冒険者として、かなりの逸材なんじゃあ?
「今の私って料理しか取り柄がないので、体力をいっぱいつけて、剣術や体術とかも覚えて、冒険者として役立てるよう頑張ります!」
やばい、ユイにとって一番身に付けなきゃいけないのは、【常識】だ。今の時点で、普通の冒険者としてありえないほどのレアスキルを持っているのに、それに全く気づいていないし、使い方も間違っている。だからと言って、大勢の人たちの前でそれを指摘したら、恥をかくのはユイだ。
ロイドさん、どうするんです?
「いや…うん…頑張れ。リオン」
ロイドさんがこっちを向いて、俺を突然名指しした。
「は…はい」
「君は、ソロで活動していたよな?」
ロイドさんと少ししか話し合った事ないのに、俺の今の状況を把握してくれている。すげ~嬉しいけど、何を言ってくるのだろう?
「そうですけど…」
何故か、俺のすぐ側までやって来る。
「ユイとパーティーを組んでみないか?(君はソロとして活動し、冒険者として幅広い知識を持っている。君ならば、ユイとハティスに常識を教えられる)」
え!? 後半から小声で言ってくれた内容、これって俺と同じ事を思い、それを俺に託してくれたのか? それって、ここにいる誰よりも、俺を認めてくれているって事だよ!?
「は…はい! ユイやハティスとなら、冒険者として楽しく活動できそうだと思いました」
「よし、パーティー結成だな」
「リオン、いいの!? やった~~~、ハティス、リオンとパーティーを組めるよ!」
「やったね!」
まずは、ユイにとって相応しい戦闘方法を考えよう。
それに、冒険者としての基礎能力を知らないといけない。
○○○
こいつ、どんな体力をしているんだよ。
あの後、ロイドさんは参加者全員の体力持久力を計るために、二つの木製ポールを設置した。
『ポール間の距離は、丁度50メートルある。君たちは、今から倒れるまで、このポール間を同時にスキルや魔法なしで全力疾走してもらう。50メートル走る度に、5分間の休憩を与えるが、最初に誰かがゴールした瞬間、休憩時間がカウントされる。つまり、着順が遅ければ遅いほど、休憩時間が少なくなると思え! また、君たちの全力を見たいので、ランクDのリオンを参加させる。リオン、最初から本気で走れ。相手が誰であろうと、絶対に躊躇するな! なお、ユイの従魔ハティスは不参加だ』
ロイドさんは俺に殺気を飛ばしてきたから、俺は本気で走った。当然、俺がぶっちぎりの1位だけど、2位は獣人のリリー、3位は意外にもユイだった。俺はこういう時の回復方法を知っているけど、参加者たちの中で、俺と同じ技術を持っているのは、リリーだけだった。だから、彼女は脱落せず、最後まで立っていられると思っていたのに、回数を重ねるたびに、俺とリリーで差が開いていき、いつの間にかユイが彼女を追い越していた。そして、参加者たちが次々と倒れていく中、ユイとリリーだけが残り、そこから2度全力疾走すると、リリーだけが力尽きた。
『そのまま続けろ!』
俺もかなりキツくなっているのに、ロイドさんはユイの限界を見たいようだ。そこからは絶対に倒れるものかとプライドを賭けて、全力で走り続け、俺もあと1回走ったら限界と思ったところで、ユイがようやく倒れてくれた。俺も倒れてこそいないけど、息がかなり乱れている。
「ユイ…どれだけの体力を持ってんだよ」
「あはは…しんど~~い。もう歩けな~~い」
体力にはかなり自信があったのに、ユイは俺に近い力量があるってことか。いや、回復方法を知らないことを考慮すると、俺と同等かそれ以上かもしれない。もしかしたら、ユイやハティスとなら、俺の求める冒険ができる?
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