記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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24話 戦闘の神童、別の異名を…  *視点-ロイド

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私は、この街リリザハットで生まれ育った。

両親はランクAの冒険者で、前領主とパーティーを組み、ネルヘン樹海のバランス維持と街の安寧に力を注いでいたが、私が7歳の時、樹海内での戦闘で領主を庇い死亡した。領主様は両親の遺体を持ち帰ってくれたが、魔物に噛みつかれ砕かれたのか、酷い有様だった。

私は日頃から両親に樹海内での状況を聞かされ、死ぬとすれば、人ではなく魔物に殺されるだろうとも言われていたが、ここまで酷いとは予想していなかったこともあり、怒りに身を任せ、領主様を罵った。あの方はそんな私に怒ることなく、右手を私の頭上にポンと優しく置き、『誇れ、君の両親は立派に生きた』と言い、私はその言葉を聞き泣きじゃくってしまった。

あの時の喪失感は、16年経過した今でもはっきりと覚えている。 

天涯孤独となって以降、私は領主様に弟子入り志願して鍛えてもらい、冒険者となってからは国内を渡り歩き、多種多様な依頼をこなすことで強くなっていき、国に災厄を齎すドラゴンゾンビを討伐したことで、ランクSへと昇格、称号【ドラゴンスレイヤー】、【ドライトーク】という子爵位を陛下から戴いた。そして、あの方からも実力を認められ、今は領主として、ネルヘン樹海のバランス維持や領内の治安維持に尽くしている。

災害、災厄というものは、唐突に起こる。それ故、私は被害を最小限に抑えるため、領内の村や街との連携を強化し続けている。そのおかげもあって、今はどの街や村に行っても、皆に歓迎されている。

私にとって守るべきものは、子供達の笑顔だ。
私のような辛い思いを、子供たちに味わってほしくない。

ユイのおかげでセリーナ様に新たな光が差し込んだことは私としても嬉しいが、その御礼で望んだものが、戦闘の神童をここへ招待すること……正直憂鬱さしか感じない。

何故なら、戦闘の神童[ウィステリット・ヴァンカース]は、超問題児だからだ。ヴァンカース伯爵家は王国の軍事面で、大きな力を持っている。現伯爵様は王国騎士団の団長、あの人と知り合って以降、私は一時期伯爵家に出入りし、ウィステリット嬢に戦闘方法を教えていたほどに、縁が深い。当時から才能があると思っていたが、まさか11歳でワイバーンを倒せる器になるとは驚きだ。表向きの実績に関してはランクBとして申し分ないのだが、彼女は強さを追い求めるあまり、その裏にはとんでもない実績がある。ああなったのは、伯爵家自体が脳筋家族故だろう。とにかく、ブライトさんのもとへ行き、今後のことで大至急話し合う必要がある。


○○○


「なんですって! 戦闘の神童[ウィステリット・ヴァンカース]が、この街に訪れるですって! セリーナ様は、ウィステ嬢のことをユイたちにきちんと伝えたの?」

翌朝、私はブライトさんのもとへ赴き、昨日の病室での一件を全て話すと、彼も顔色を悪くし狼狽える。

「セリーナ様は問題児であることを伝えましたが、ユイの笑顔を見て、その先を言えなくなりましたよ。私も、人のことを言えませんが」

セリーナ様の行動は、実に迅速だった。彼女のために設置された魔道通信機を使い、その場でヴァンカース伯爵に連絡、私の名前を出した上で、ウィステ嬢への講義を願い出たのだから。

話し相手が私に変更となると、伯爵様はより饒舌となり…

『今でも、ウィステはロイドのことを師として仰いでいるぞ。実に、2年ぶりの再会となるのか。君の滞在するリリザハットには、行ったこともないから大層喜ぶだろう。娘と相談して訪問日を決め、再度連絡を入れる』

ここまでは良かったんだ。

『そうそう…ロイドに一つ頼みがある。君も、娘の評判を聞いているな?』
『ええ…まあ…』

正直、どう答えればいいのか迷った。

『あの子はワイバーンを倒したことで、【戦闘の神童】と呼ばれ、天狗になっている。元を正せば、あの子に対する私や妻の行き過ぎた戦闘教育が原因なのだろう。これでも、反省しているんだ』

もっと早くに気づいてほしかったと、心底思う。

『娘の今後の教育について悩んでいる時、娘は訓練中に3つの新規スキルを取得した。現在、それらのスキルに振り回され弱体化している。そこで…だ。今回は冒険者ギルドの方から、あの子に挑戦状を叩きつけてほしい』

『挑戦状…ですか?』

『そうだ。戦闘形式はバトルロイヤル戦、負けず嫌いのあの子なら、必ず受けて立つ。ランクC以下の冒険者たちから参加者を募り、そこで敗北を与えてほしい』

『敗北? 弱体化しているとはいえ、皆が彼女に勝てるかは正直わかりませんよ?』

『いいや、勝てるさ。私が、あの子の弱点を教える。それを知った上で、冒険者たちには、その箇所をとことん突いてもらいたい』

『大の大人が、11歳の子供にする仕打ちとは思えませんね。皆、いい顔をしないと思うのですが?』

『承知の上だ。あの子には、挫折が必要なんだよ。成功失敗に関係なく、私の求める結果が得られたのなら、50万ゴルドの報酬を支払う。頼む、引き受けてくれないか?』

私はブライトさんと相談してから、後日連絡しますと言い、通信機を切った。

「ヴァンカース伯爵らしい依頼ね。いいわ、引き受けましょう。今、ランクAとBが丁度街内にいないから、伯爵の言葉通り、C以下から有志を募りましょう。そして、参加者全員に伯爵の依頼を話し、成功した暁には50万ゴルドを進呈し、皆で山分けすればいい」

「俺の方から別口で、最後の1人になった者には、賞金10万ゴルドを進呈します」

「はあ!? いいの?」

「構いません。その方が、やる気も出るでしょう」

「まあ、あなたがそう言うのなら…それで、その3つのスキルの名称や弱点については聞いたの?」

「さらっと私に、彼女の得た新規スキルと弱点を全て暴露してくれましたよ」

私は、その情報を全てブライトさんに話す。

「そこまで詳しく話すなんてね、本気で娘に敗北を味わせろってことか。とりあえず、訪問日程が決まったら教えてちょうだい」

「わかりました」

ウィステのことだから、調子を落としていようとも、強者と戦いたいという欲求には勝てないだろう。今のうちに、あの子の戦闘データを伯爵からより深く聞き出し、参加者たちと入念な打ち合わせをしておくべきだな。

「それにしても、成人した奴らが、11歳の女の子に敗北を与えるという絵面も……新聞記事の一面に載りそうな騒ぎにならないかしら?」

「一面にはなるでしょうが、国民達も納得しますよ。なんせ、彼女は行く先々の冒険者ギルドで、歳上連中を襲撃してはバトルロイヤル状態となり、数多くを病院送りにしていますから。その際、2つの街では、彼女自身も病院のお世話になっています。そうして冒険者間で付いた異名が、【冒険者ギルド破り】」

「11歳の子供だから、新聞では名前も伏せられているわね。その影響で、《戦闘の神童》と《冒険者ギルド破り》は、個々で有名になってしまい、この2人が同一人物と、一般人は知らない。高位貴族が関わっているせいで、真実を知る者も口を噤んでいる始末」

「伯爵も、『圧力をかけてもいないのに、2人が同一人物であることを、何故誰も広めないんだ?』と本気で言ってましたよ」

「阿呆か! 家名だけで、圧力かかってんのよ! まあ、いいわ。皆には[戦闘の神童=冒険者破り]を堂々と告げて、参加者を募りましょう。そして、参加者にだけウィステ嬢の弱点を明かし、作戦を立てて戦いに臨んでもらいましょう」

正直、損な役回りだと思うが、強さに溺れているウィステにはこういった手痛い敗北も、時には必要だ。性格が歪まないよう、私が勝負後にフォローを入れておこう。

「ロイド、間違っても実戦経験ゼロのユイを参加させちゃダメよ」
「彼女の性格上、志願しませんよ」

彼女の持つスキル料理道[極み]には、分解といった殺傷能力の高いものが数多くあり、全てがレベルMAXだ。いかに、ユイ自身が常識人であったとしても、敵によって感情を乱され、魔力暴走を起こしたら、敵味方もろとも塵になるだろう。

全く、このスキルを授けた神にも困ったものだ。
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