記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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27話 冒険者ギルド破りVS冒険者たち[前編]

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*ロイド視点

「師匠~~~お久しぶりなので~~す」

冒険者ギルド入口の扉が開くと、ウィステが満面な笑みを浮かべて、私のところへやって来る。何故ユイが彼女と一緒にいるのか疑問に思えたが、私は笑顔で出迎える。

「ウィステ、久しぶりだな……護衛は、やはりいないようだな」
「今回、私が我儘を言ったせいで、護衛はいないのです。でも、次から遠方に出掛けるときは、必ず護衛を付けて行動するのです」

やけに、素直だな。
ヴァンカース伯爵から聞いていた内容と違うが?

「ここに来る道中で、ユイが色々と教えてくれたのです。『護衛には強さも必要だけど、主人が災難に遭わないよう、常に周囲に気を配って行動しているんだよ。もし、きちんと護衛を付けていたら、全財産を盗まれることはなかったね』って」

つまり、この街に来て全財産を盗まれて途方に暮れていたところを、ユイに助けられたわけか。ユイが護衛の意味を教えてくれたことで、ウィステも素直に謝ったと。

「その通りだ。家に帰還したら、両親に謝罪しておくんだぞ」

「わかったのです! 全財産を無くしたから、今回の戦いで冒険者全員を破って、賞金を持ち帰るので~す。というか、それがないと帰れないので~す」

建物内には見学者や記者たちが大勢いるというのに、この子は悪気もなく、無邪気に冒険者たちへ喧嘩を売っている。

「ここの冒険者たちを、甘く見るな。皆、君の戦闘を分析し、今回のバトルロイヤルに挑む。舐めてかかると、痛い目に遭うぞ」

ヴァンカース伯爵から君の弱点を教えられ、参加者全員が結託して、君に敗北を味合わせようとしている。どうやって挫折を与えるのかは、参加者たちだけで考え、その方法だけは今日になって聞いて、我々も許可を出している。相手が子供である以上、心に傷を与えてはいけないから、参加者たちも弱点を突く攻撃の際は、少し手加減するだろうが、戦闘に対する気迫は本物だ。その気迫に耐えられるのか、しっかりと見させてもらおう。

「大丈夫、舐めてないのです! 私だって、昨日までの私じゃない。今回、それを証明するのです!」

力強い目だ、その自信はどこからくる? 昨日聞いた時点では、彼女は3つの新規スキルに振り回され、以前の力を取り戻していないはずだ。昨日の今日で制御することは、いくらウィステでも不可能だが、目に恐れや迷いがないのも気にかかる。

「ならば、証明してもらおうか。参加者たちは、室外訓練場にいる。私についてこい」
「はい、なのです!」

この子なりに努力したのならば、それを見届けさせてもらおう。


○○○


室外訓練場、ハティスを含めた21人の参加者とウィステが、既に互いを意識し、戦闘態勢に入っている。

「ルールは簡単だ。殺人行為は禁止、建物損壊を防ぐため、魔法の行使も禁止とする。刃のない訓練用の武器を使い、近接戦のみで戦うこと。敗北条件は、『気絶』か『両手をあげての降参宣言』の2つ。勝利条件は、最後の1人になること!」

緊迫した空気が、私にも伝わってくる。
全員が頷き、私の合図を待っている。

「バトルロイヤル開始!」

開始の合図と共に、冒険者たちはウィステを睨む。

「……」

妙だな。情報通りであれば、ウィステはペース配分を考えることなく、初めにターゲットとなる体格の大きな相手を探し、見つけたら全力で突っ込み、攻撃することなく、持ち前の敏捷性を活かして、周囲にいる者たちを翻弄して怒りを誘おうとするはずなんだが、彼女は動くことなく、参加者全員を見定めている。

「成る程なのです。こういう使い方もあるのですね。あの子は、やっぱり凄いのです。もう、弱者だからと決めつけて、他者を侮ったりしないのです」

あの子?

「見定めも終わったし、あとは……」

ターゲットを決めたのか急加速するも、相手の目の前で止まっては、別の相手へと移動して、同じ行為を繰り返し、皆の感情を逆立てていく。

「どうしたのです? みんな、私を捕まえないのですか?」

予想通りの行動なんだが、細部が違うな。接近した全ての相手に対して、何故か握手し、爪を立てているのか、皆が軽く出血している。まあ、動きが事前情報と同じであるのなら、そこの弱点を突かせてもらおう。皆も、理解しているようだ。

「痛! おい、なんの真似だよ!」

リオンもやられたのか、やや感情を乱している。

「ちょっとした実験なのです」
「実験? あ、俺の血を舐めんな!」
「舐めた方が、私の服に付かないです」
「なんだよ、それ…あんた、本当に貴族なのか?」
「私は貴族であって、貴族ではないのです」
「はあ?」

ヴァンカース伯爵家は、王国の剣としての役割を持ち、戦闘に特化しており、他の貴族のような支配欲や野心を持っていない。淑女教育も必要最低限に留め、子供の頃から武術や武器を扱う戦闘教育を受けており、この子の性格を顧みれば、父親の影響を大きく受けているのがわかる。

「ふ~ん、大体わかったのです。あとは…精度を確認するだけです!」
「な、動きが!」

ウィステの雰囲気が、急激に変わった!? 彼女の武器は【拳】、身体強化で身体を強化し、近接格闘で相手を叩きのめす。リオンは彼女の拳を右手に持つ木刀ではなく、咄嗟に左腕で払いのける。

「お前…潜在能力がかなり高い。お前と横にいるブラックフェンリルとは、最後に戦うのです」

潜在能力が高い? まだ、戦ってもいないのに、何故わかる?

「まずは…あいつです!」
「あ…おい!」

この訓練場は、そこまで広くない。しかも、20人程いる手狭な空間の中で、もうトップスピードに乗っている。おまけに、動きが事前に聞いたスキル【縮地】による直線的なものでなく、柔軟な曲線を描けるようになっている。

「俺かよ…こい!」

駄目だな…参加者の中で最も強いとされるランクCのウィルの言葉を聞いた瞬間、ウィステの動きが直線的なものへと変化した。

あれなら、予定通りの弱点を突ける。
ターゲットとなるウィルの目の前で急停止すれば、我々の勝ち…え?

「なんで、停止しない? うわ、ぶつかる…すり抜け…た?」
「まずは1人目です」

ランクCの中でも、頑強な守りで定評のあるウィル目掛けて直線的に突っ込んだはずが、その彼の前で急停止することなく、彼を基点に見事な足捌きで高速回転し、彼の後方3メートル程離れた位置にいる同じくランクCのケインに対して、肘鉄を鳩尾に与えた。

「急停止するより、こっちの方が足への負担も軽い。これなら思う存分、暴れられるのです!」

妙だ。

ウィステは人の外見だけで強弱を判断し、ランクに関係なく、体格の大きな者から攻撃していく傾向がある。それなのに、先程からCばかりを的確に攻撃していき、1人また1人と最小限の動きで気絶させていく。

残り13名となったところで、参加者たちは次の作戦のため、行動を起こす。

ランクDの3人が陽動となってウィステに徒手格闘で挑み、彼女はそれを難なく受け流し、攻撃を与えていく。3人が必死に戦っている間に、ランクFの4人が気配を隠しながら、後方からウィステに接近していく。

「動きが、バレバレなのです!」

ウィステが4人に注意を払った瞬間、戦闘中の3人は後方に下がる。ウィステはそれに釣られ、視線を移した瞬間、4人が距離を詰めて囲み、魔力で強化した雄叫びをあげる。予想出来ない意外性のある攻撃、絶対聴覚を持つ彼女であれば……。

「腹が隙だらけなのです!」

雄叫びをあげている最中に、素早い動きで4人の腹に重い一撃を与えた!? 
4人は痛みで悶絶し、地面にうずくまる。

なんだ、あの機敏な反応は!? 

「あはははは、私のことをよく研究しているのがわかる。1時間前の私なら、今ので間違いなくやられていたのです」

何がどうなっている?
あれは、本当にウィステなのか?

次々と参加者たちがやられていく中、残ったEとFランクたちが覚悟を決めたのか、絶対嗅覚の力を逆手にとった作戦のため動く。自分たちの力量だけで勝利したかっただろうが、ウィステリアに敗北を与えないといけない以上、卑怯と言われようと、背に腹はかえられない。
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