記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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35話 ユリネアの抱える違和感 *視点-ユリネア

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独特な揺れと音、窓から見える景色は壮大……ここは列車の中なのだから、当然よね。あの日、私が体調を崩したせいで、両親はアリエスに病気を移してはいけないと思い、家へと帰らせた。その選択が、最悪の結果を招いてしまい、彼女は馬車での帰り道に賊の襲撃に遭い、誘拐されてしまった。

私がその件を聞かされたのは、眠りから醒めた2日後の昼だった。
私にとって、唯一無二の親友アリエス。
あの子になら、弱音を全部打ち明けられる。
それは、アリエスも同じ。
それだけ、私たちの絆は深い。

命の恩人でもあるアリエスを何としても探し出したいと思っても、私にできることは、彼女の無事を神に祈るだけ…ずっと歯痒い気分だったけど、今日朝食時刻の2時間も前に目覚めてしまい、暇だから1人で着替えて1階の家族の集まるリビングへ行くと、誰もいない部屋には、テーブルの上に新聞だけが置かれていた。何気なく一面を開き読んだら、身体に衝撃が走ったわ。一面の見出しには【戦闘の神童=冒険者破り!?】、バトルロイヤル戦で勝利したウィステリット嬢が正面、参加者21人がその周囲に立つ写真も掲載されていて、どんな戦いだったのかも詳しく書かれていたわ。写真も4点あって、そのうちの1点だけ何故か気になった。遠くにいるせいで、少しピンぼけしていたけど、そこに写る1人の女の子を見て、この子は間違いなくアリエスだと直感で理解できた。

お父様やお母様に、アリエス捜索で100kmも離れた街へ行きたいとお願いしても、許可は絶対に下りない。仮に、彼女かどうかを確認するだけでもとお願いしても、きっと彼女の父親クォンタム子爵に話すだけで終わってしまう。あの夫妻の目からはアリエスへの愛情を感じ取れないこともあって、私はあの人たちを嫌っている。彼女だって私に、『両親がごめんね。あの人たちって、家の資産が少ないことに僻んでいて、今はお金儲けのことしか考えてないんだよね』と言ってたわね。

あの新聞記事を読んだことで、私の心は親友を助けることでいっぱいになってしまい、衝動的に動いてしまった。自分の部屋に入り、すぐに平民用の衣服に着替え、ベレー帽を深くかぶり、伊達眼鏡をかけ、ウォークインクローゼットから旅行用鞄を出し、そこに控えめなお洋服や下着類を入れ、貯金しておいたお小遣いを財布に入れ、机に一枚の置き手紙だけを残して、誰にも見つからないよう1人で駅へと向かい、リリザハット行きの切符を購入して、特急列車に乗り、対面で向かい合う4人掛けの席に着いて、今に至るのだけど…今更になって、自分の行動に疑問を感じてしまう。

私…どうしちゃったの?
アリエスが誘拐されて以降、私の中の何かがおかしい。
こんな突発的行動を起こしたことなんて、今までなかったのに。

あの事件以降、敷地内の人間であれば、なんとか話し合えるようにはなったけど、赤の他人となると、あの時の光景がフラッシュバックしてしまい、身体が震えて上手く話せなかったのに、アリエスが誘拐されて以降、それが全く無くなったわ。

1人で外に出るなんて初めてなのに、見知らぬ人を怖がるどころか、自分から駅への行き道を聞いていた。やっぱり、寝込んでいる最中に取得したスキルや魔法が関係しているのかしら? お父様は、『これまでの訓練の成果が、一気に覚醒する時も、稀にだがある。その場合、自分の性格や言動、行動に変化が生じることもあるから、身体に馴染み制御できるまで、決して無理はするな』と言っていたけど……不安になっていても仕方ないわね。

まずリリザハットに到着したら、駅員室にある魔道通信機をお借りして、両親に私の無事を知らせましょう。


○○○


リリザハットから4キロ程離れた場所に、[ネルヘン樹海]というダンジョンが存在する。ユーゴニック王国とソルトレイユ王国を挟む位置に佇むダンジョン、ランクAやBの魔物がゴロゴロいるけど、こんな大規模だからこそ、貴重な金属や宝石などが産出されるので、両国にとって重要な交易資源にもなっている。だからこそ、あの街は、ユーゴニック王国にとって国防の要とされている。

『リリザハット駅に到着です。こちらでの停車時間は、5分となります』

私は覚悟を決めてホームに降り、周囲を見渡すと、4つのホームがある。この街は、ランクS冒険者ロイド様に守護されているおかげで、比較的治安もいい。とはいえ、私の正体を知る悪人だって潜んでいるかもしれないから、ここからは帽子を深く被って歩いていきましょう。

大勢の人々に紛れながら改札口を目指し歩いていると、改札口入口付近で話し合っている3人の女の子と1人の男の子が見える。遠いから誰かわからないけど、何故か身体が身震いしている。視線が向かないよう、注意しながら歩いていくと、4人の姿がはっきりとわかる距離になったことで、私は声をあげそうになる。

あれは……アリステア様とウィステだわ。

アリステア様はワンピースを着て麦わら帽子をかぶり、普段の装いとかけ離れているけど間違いない。

え…あれは…間違いない…アリエスだ!
やっぱり、見間違いなんかじゃなかった。

……あれ?

彼女のもとへ向かおうと思ったのに、急に眩暈がして、何故か足も動かない。

「痛…え?」

頭の中に、2つの考えが浮かんでくる。

① このまま彼女のもとへ行き、声をかけて抱きしめる。
② この街にいるのは確定したから、急がず焦らず、まずは駅員室に向かい、魔道通信機で両親に事情を説明する。

どうして、こんな真逆な考えが浮かぶのかしら?
何か……変。
この感覚は、何なの?
後者なら頭痛や眩暈もマシになるから、そっちを選んだ方が良さそうね。
駅員室に行き、身分を明かし魔道通信機を借りて、家に通信しましょう。

「すいません」

駅員室に到着すると、1人の年配の男性が寄ってきた。

「はい、何でしょうか?」
「私は、こういう者です。諸事情で、名前を口にしないで頂けると助かります」

私は自身の身分を証明させるため、貴族カードを提示する。こういった場所だと、身分を詐称する人もいるから、偽造不可能と言われている貴族専用[貴族カード]を出せば、相手も安心してくれる。

「これは!? 少々お待ちを。確認してまいります」

駅員さんがカードを専用機器に通したことで、私の情報が開示される。彼はすぐに本物と察せたようで、私のもとへ戻ってくる。

「何を、お求めなのでしょう?」
「家に連絡を入れたいの。魔道通信機をお借りしても?」

不便ね…通信手段があるとはいえ、魔道通信機は高価のせいで、平民にまでは広まっていないのよね。

「こちらへ」

私は部屋と入り、奥に置かれている魔道通信機をお借りして、邸に通信する。

「ユリネアですけど…」

お母様がいきなり出る場合もあるから、つい小声で言ってしまう。

「ユリネア様!? 少々お待ちを!」

メイドが出たせいか、彼女は焦って受話器を置いたままお母様を呼びにいったせいで、『奥様~~~』という声が響いてくる。

「ユリネア! ユリネアなの!?」
「お母様、勝手な行動をとって申し訳ありません」
「その声、間違いないわ。……あなたが無事でよかったけど、どうして1人で行ったの!」

「勝手なことをしてごめんなさい…信じてもらえないと思って…でも、私の直感は正しかった」
「え?」
「アリエスは、この街にいます。今も、この駅内にいるんです。アリステア様やウィステと楽しく会話していたの」
「なんですって!?」

彼女のことを話したせいか、会いたい気持ちが、どんどん募ってくる。
痛!?
どうして、頭痛が起きるの?
ダメだ、衝動が抑えきれない。

「ユリネア?」
「今からアリエスのもとに行ってきます。それでは」
「ちょ…待ちな…」

想いが強すぎて、途中で切ってしまった。
こんな行為、生まれて初めてだわ。
とりあえず、両親には私の無事を知らせたし、アリエスに会いに行きましょう。
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