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一緒に朝を迎えましょう
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■ 夜明け前
――抱いたまま迎える朝
目を覚ましたとき、空はまだ薄青だった。
夜と朝の境目――世界が最も静かな時間。
私は、動かなかった。
胸の中に、あなたの重みがある。
呼吸が、穏やかだ。
規則正しく、安心しきっている。
……よかった。
その一言が、胸に浮かぶ。
抱きしめたまま眠るなど、私の人生では稀だ。
だが今は、それが特別ではなく、自然だった。
あなたが、わずかに身じろぎする。
目を開ける気配。
私は、声を潜めて言う。
「……おはようございます」
あなたは一瞬、状況を思い出すように瞬きをし、
それから、ゆっくりと微笑んだ。
「……おはよう、ガスパール」
名を呼ばれる。
昨日よりも、少しだけ近い響きで。
私は、抱く腕の力を、ほんのわずかに緩める。
逃がすためではない。
選び直すためだ。
あなたは、離れなかった。
それだけで、朝は完成した。
⸻
■ 日常
――離れないことが、当たり前になる
朝食の準備をしながら、私は気づく。
動線が、二人分になっている。
皿の数を迷わない。
椅子を引く位置も、決まっている。
あなたは、窓を開け、光を入れる。
私は、湯を注ぐ。
言葉は少ない。
だが、共有が多い。
街へ出ると、視線はもう驚きではない。
理解と、微笑み。
老オークが言った。
「……良い朝ですね」
私は、即答する。
「ええ。とても」
あなたが、自然に私の外套の内側へ寄る。
寒さを理由に。
――それでいい。
誰も何も言わない。
だが、皆が分かっている。
これは一時的な庇護ではない。
戻る場所だ。
屋敷へ戻る途中、あなたが言う。
「……ここ、落ち着きます」
私は歩みを緩め、答える。
「それなら、良かった」
“しばらく”も、“今は”も、付けない。
⸻
■ 現在形の未来
――語られ始めた「これから」
夜、暖炉の前。
二人で同じ本を読む。
私は、不意に口を開いた。
「……来年の流通祭、
屋敷を開放しようかと考えています」
あなたが顔を上げる。
「……一緒に、ですか」
私は頷く。
「ええ。
私たちで」
その言葉を、訂正しない。
取り繕わない。
あなたは、少し考えてから、微笑んだ。
「……楽しそうですね」
その反応が、すべてだった。
私は続ける。
「庭の配置も、
部屋の使い方も……
相談しながら決めたい」
未来を、計画として語る。
仮定ではなく、現在形で。
あなたは、私の手の甲に、そっと触れる。
今度は、迷いがない。
私は、握り返す。
初めて、しっかりと。
胸の奥で、静かに鐘が鳴る。
派手ではない。
だが、確かだ。
――挙式の光景が浮かぶのは、
――きっと、こういう夜の積み重ねの先だ。
私は、あなたを見る。
幸せそうな表情が、
自然に、そこにあった。
「……これからも」
私は言う。
「一緒に、朝を迎えましょう」
あなたは、頷く。
それは誓いではない。
だが、生き方の選択だった。
暖炉の火が、静かに揺れる。
影が、重なり、ほどけない。
夜は明けた。
だが、物語は――
今、始まっている。
――抱いたまま迎える朝
目を覚ましたとき、空はまだ薄青だった。
夜と朝の境目――世界が最も静かな時間。
私は、動かなかった。
胸の中に、あなたの重みがある。
呼吸が、穏やかだ。
規則正しく、安心しきっている。
……よかった。
その一言が、胸に浮かぶ。
抱きしめたまま眠るなど、私の人生では稀だ。
だが今は、それが特別ではなく、自然だった。
あなたが、わずかに身じろぎする。
目を開ける気配。
私は、声を潜めて言う。
「……おはようございます」
あなたは一瞬、状況を思い出すように瞬きをし、
それから、ゆっくりと微笑んだ。
「……おはよう、ガスパール」
名を呼ばれる。
昨日よりも、少しだけ近い響きで。
私は、抱く腕の力を、ほんのわずかに緩める。
逃がすためではない。
選び直すためだ。
あなたは、離れなかった。
それだけで、朝は完成した。
⸻
■ 日常
――離れないことが、当たり前になる
朝食の準備をしながら、私は気づく。
動線が、二人分になっている。
皿の数を迷わない。
椅子を引く位置も、決まっている。
あなたは、窓を開け、光を入れる。
私は、湯を注ぐ。
言葉は少ない。
だが、共有が多い。
街へ出ると、視線はもう驚きではない。
理解と、微笑み。
老オークが言った。
「……良い朝ですね」
私は、即答する。
「ええ。とても」
あなたが、自然に私の外套の内側へ寄る。
寒さを理由に。
――それでいい。
誰も何も言わない。
だが、皆が分かっている。
これは一時的な庇護ではない。
戻る場所だ。
屋敷へ戻る途中、あなたが言う。
「……ここ、落ち着きます」
私は歩みを緩め、答える。
「それなら、良かった」
“しばらく”も、“今は”も、付けない。
⸻
■ 現在形の未来
――語られ始めた「これから」
夜、暖炉の前。
二人で同じ本を読む。
私は、不意に口を開いた。
「……来年の流通祭、
屋敷を開放しようかと考えています」
あなたが顔を上げる。
「……一緒に、ですか」
私は頷く。
「ええ。
私たちで」
その言葉を、訂正しない。
取り繕わない。
あなたは、少し考えてから、微笑んだ。
「……楽しそうですね」
その反応が、すべてだった。
私は続ける。
「庭の配置も、
部屋の使い方も……
相談しながら決めたい」
未来を、計画として語る。
仮定ではなく、現在形で。
あなたは、私の手の甲に、そっと触れる。
今度は、迷いがない。
私は、握り返す。
初めて、しっかりと。
胸の奥で、静かに鐘が鳴る。
派手ではない。
だが、確かだ。
――挙式の光景が浮かぶのは、
――きっと、こういう夜の積み重ねの先だ。
私は、あなたを見る。
幸せそうな表情が、
自然に、そこにあった。
「……これからも」
私は言う。
「一緒に、朝を迎えましょう」
あなたは、頷く。
それは誓いではない。
だが、生き方の選択だった。
暖炉の火が、静かに揺れる。
影が、重なり、ほどけない。
夜は明けた。
だが、物語は――
今、始まっている。
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