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ハニートラップ①
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その後、完全に殿下になつかれた。そのお陰で俺は毎日のようにお父様といっしょに登城する羽目になってしまった。
そしてそのたびに、子犬系王子様が尻尾を振って俺の元へとやって来るのである。言っておくが、俺はノーマルである。偏見は無いが、そっち系に興味はない。
俺がしつけたこともあって、殿下は馬の前に飛び出さなくなったし、三人の護衛を常につけるようになってくれた。
今では俺は「王子を矯正した人物」として一目をおかれている。何でじゃい。
「フェルナンド、内緒の話があるんだ」
「何でしょうか、レオン様?」
近づいてきた殿下が耳元でコソコソと小声で話しかけてきた。
「今度、密かに城を抜け出して、城下町に行ってみないか?」
何考えているんだ、この王子! そんな危険なことできるわけなかろう!
「分かりました、レオン様。私にお任せ下さい」
「おお、さすがフェルナンド! 我が友よ!」
さて、早いところお父様と護衛に相談して計画を立てないとな。殿下にバレないように「監視付き城下町視察計画」を練らねばならん。こうして俺は暗躍するのであった。
殿下が無茶振りをしてくることは頻繁にある。だがすべてをダメだと断るといつ爆発するか分からない。そんな不発弾のような殿下を制御するためには、たまにガス抜きが必要である。
なのでこうやって、殿下の役に立ちそうな計画には乗るようにしている。今回の城下町に行くことについても、「社会科見学」と思えばやる価値は十分にある。
城下町はこの国で一番治安が良い場所だ。しっかりと前準備しておけば何とかなるはずだ。そして殿下にとって、それが必要なことは国王陛下も理解している。「爆発するよりかはずっとまし」だそうである。
そして今回も何とか乗り切った。外で買い食いをしたり、雑貨店で買い物したり、本屋でエロ本を探したりした。もちろん店も料理も店員も、あらかじめこちらが用意しておいたものである。料理も城の専属シェフが作ったものであり、裏でしっかりと毒味も行われている。手抜かりはない。
何も知らない殿下は俺の指示に素直に従ってくれた。何もかも計画通り。
「今日は楽しかったぞ、フェルナンド。ありがとう」
幻覚なのか、耳と尻尾が見える。もちろん尻尾は全力で左右に振られている。ズキッ。何だ、胸が痛んだような気が……いや、そんなことはあり得ない。この日まで俺がどれだけ胃を痛めたと思っているんだ。もう二度とやりたくないぞ。
「礼にはおよびません。しかし、疑わしく思われているかも知れません。しばらくは大人しくしておいた方がいいでしょう」
俺は神妙につぶやいた。殿下がそれもそうかと深くうなずきを返してくれた。素直か!
だがこれで、しばらくは無茶を言ってくることはないだろう。やれやれ、これで一息つけそうだ。
そんなある日、王城の中でも、一、二を争う人気のサロンに、しょんぼりと耳が垂れ下がった殿下がいた。どうした、一体何があったんだ? ああ、なるほど。そういえば、昨日お妃様候補と会うって言っていたな。おそらくそれ関連だろう。
もしかして、お妃様候補がゴリラだったのかな? いやいや、それはないだろう。将来国民の前に立つことになるのだ。ゴリラなわけがない。
「レオン様、どうされたのですか? 婚約者候補の方と何か問題があったのですか?」
殿下はどんよりとした薄暗い雲のような虚ろな顔をこちらに向けた。
「さすがはフェルナンド、分かるか」
「ええ、何となく……」
うわ、こんな顔をした殿下、初めて見た。いつも「元気ハツラツ、ビタミンC!」みたいな顔をしているのに。今は「人生終わった」みたいな顔になってる。
「フェルナンド、エロ同人雑誌のようにはいかないな」
「はい?」
そしてそのたびに、子犬系王子様が尻尾を振って俺の元へとやって来るのである。言っておくが、俺はノーマルである。偏見は無いが、そっち系に興味はない。
俺がしつけたこともあって、殿下は馬の前に飛び出さなくなったし、三人の護衛を常につけるようになってくれた。
今では俺は「王子を矯正した人物」として一目をおかれている。何でじゃい。
「フェルナンド、内緒の話があるんだ」
「何でしょうか、レオン様?」
近づいてきた殿下が耳元でコソコソと小声で話しかけてきた。
「今度、密かに城を抜け出して、城下町に行ってみないか?」
何考えているんだ、この王子! そんな危険なことできるわけなかろう!
「分かりました、レオン様。私にお任せ下さい」
「おお、さすがフェルナンド! 我が友よ!」
さて、早いところお父様と護衛に相談して計画を立てないとな。殿下にバレないように「監視付き城下町視察計画」を練らねばならん。こうして俺は暗躍するのであった。
殿下が無茶振りをしてくることは頻繁にある。だがすべてをダメだと断るといつ爆発するか分からない。そんな不発弾のような殿下を制御するためには、たまにガス抜きが必要である。
なのでこうやって、殿下の役に立ちそうな計画には乗るようにしている。今回の城下町に行くことについても、「社会科見学」と思えばやる価値は十分にある。
城下町はこの国で一番治安が良い場所だ。しっかりと前準備しておけば何とかなるはずだ。そして殿下にとって、それが必要なことは国王陛下も理解している。「爆発するよりかはずっとまし」だそうである。
そして今回も何とか乗り切った。外で買い食いをしたり、雑貨店で買い物したり、本屋でエロ本を探したりした。もちろん店も料理も店員も、あらかじめこちらが用意しておいたものである。料理も城の専属シェフが作ったものであり、裏でしっかりと毒味も行われている。手抜かりはない。
何も知らない殿下は俺の指示に素直に従ってくれた。何もかも計画通り。
「今日は楽しかったぞ、フェルナンド。ありがとう」
幻覚なのか、耳と尻尾が見える。もちろん尻尾は全力で左右に振られている。ズキッ。何だ、胸が痛んだような気が……いや、そんなことはあり得ない。この日まで俺がどれだけ胃を痛めたと思っているんだ。もう二度とやりたくないぞ。
「礼にはおよびません。しかし、疑わしく思われているかも知れません。しばらくは大人しくしておいた方がいいでしょう」
俺は神妙につぶやいた。殿下がそれもそうかと深くうなずきを返してくれた。素直か!
だがこれで、しばらくは無茶を言ってくることはないだろう。やれやれ、これで一息つけそうだ。
そんなある日、王城の中でも、一、二を争う人気のサロンに、しょんぼりと耳が垂れ下がった殿下がいた。どうした、一体何があったんだ? ああ、なるほど。そういえば、昨日お妃様候補と会うって言っていたな。おそらくそれ関連だろう。
もしかして、お妃様候補がゴリラだったのかな? いやいや、それはないだろう。将来国民の前に立つことになるのだ。ゴリラなわけがない。
「レオン様、どうされたのですか? 婚約者候補の方と何か問題があったのですか?」
殿下はどんよりとした薄暗い雲のような虚ろな顔をこちらに向けた。
「さすがはフェルナンド、分かるか」
「ええ、何となく……」
うわ、こんな顔をした殿下、初めて見た。いつも「元気ハツラツ、ビタミンC!」みたいな顔をしているのに。今は「人生終わった」みたいな顔になってる。
「フェルナンド、エロ同人雑誌のようにはいかないな」
「はい?」
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