転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第一章

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「あっ…。」

 私は小さく声を上げてしまったが、目だけを動かし周りを見るが、幸いにも他の人は気づいていなかったのか、特に私が注目される事はなかった。

 先ほど疑問に思っていた事を思い出した。

 そうだ、「前」の親友の彼女がライトノベルとかネット小説とかで乙女ゲームとかそういう小説とかの世界に転生する話や、異世界転移とかの物語があるとか、言っていたのを思い出し。
 そして、今自分の先輩に当たる方も、元々は乙女ゲームに酷似した世界に行くと言っていた。

 本来あまり担当のイレギュラー内容とかは担当者だけしか知らない事だが、先輩は今回の私たちの任務を聞いて特別に教えてくれたのだ。
 その先輩はある人物の大切な人が無くなったため、その人物が無気力になってしまい、本来の歯車が狂う恐れがあるからと、二人の人間の魂をその人物の近くに転生させる事になった。
 しかし、その人物と言うのが厄介な人物らしくて、暴走しないように見張る事になったそうで、本来ならそのくらいの任務なら私たち新人でもよかったのだが、不幸にも別の地区の担当の神が一人の人物を逆行させてしまい、あまつさえ、その人物が性転換をしての逆行になってしまったので、今回のついでにその人たちを見る事になった。
 あまりも神の介入がありすぎると変なイレギュラーが起こる恐れがあるので、私たち新人では手に負えない可能性があるらしいのだ。

「……ふぅ。」

 あの少女を見れば何とも厄介な性格を持っていそうな人だと若干顔を顰める。

「明日から授業を開始するからな。」

 いつの間にか担任の説明が終わり、生徒たちは思い思いの行動に出る。
 私も帰り支度をする為に鞄に手を伸ばした時。

「イザベラ、時間あるか?」
「アルファード。」

 愛おしいと語る瞳に私は嬉しくなる。

「ええ、大丈夫よ。」
「そうか、なら、鞄を持ってついてきてくれないか?」
「ええ。」

 私は鞄を掴み、アルファードの傍に駆け寄る。

「何処に行くの?」
「秘密だ。」

 唇に人差し指を押さえるアルファードにはどこか独特な色気みたいなものがあり、ドキリと胸が高鳴る。

「ずるい。」
「何がだ?」
「私ばかりが貴方の事を好いているようだわ。」
「そんな事はない。」
「そうかしら。」

 僅かに唇を尖らせる私にアルファードは苦笑する。
 アルファードは私の腕を掴み、目的の部屋に入り込み、扉に鍵をかける。

「俺は何度だってお前しか見ていないからな。」
「……。」

 狂気に満ちた瞳に私はハッとする。

 嗚呼、そうだった。

 彼はいつだって「私」を一番に想ってくれていた。

 その度、彼は魂を削ってくれた。

 報われなかったのに、「私」は三度、貴方を想わなかったになのに貴方は四度も…ううん、違うわ。

 何度も「私」を愛してくれているわ。

 彼の瞳に映る私もいつの間にか狂気に満ちている目をしている。

 くっと喉を鳴らす彼に私は目を閉じる。

 奪うような荒々しい口づけに、やっと私は帰って来れたのだと安心する。

 口づけの時間は私にとって短いが、実際の時間は結構立っており、まだ学生の身である私たちにはもうあまり時間が残っていない。

「イザベラ。」
「今回のターゲットは貴方に近づいたあの女性ね。」
「やはりか。」
「あの女生徒、名前はチューベローズ・ホリアムット、ホリアムット男爵の庶子。
 聖なる力を宿しており、男爵は上の階級の物との婚姻か、それか、教会に娘をやりたいと考えているよう。
 チューベローズ嬢本人は貴方様の妃になると周りに言っているそうですが、その言葉は全くの戯言だと皆が思っているようね。」
「……短時間で良く調べたな。」
「あら、貴方に付きまとう女狐がどんなものかと見てみましたが、まったくの小物ですね。」
「そうか。」
「ねぇ、アルファード。」
「何だ?」
「……どうして私を見つけてくれなかったの?」
「……お前がうまく隠れていたからだろうが。」
「……。」

 思い当たるものがありすぎて私は黙り込む。

「でも、悪かった、遅くなって。」

 何処までも私に甘い彼に私はちょっと拗ねる。

「本当に遅いわ。」
「悪かったって。」
「……。」
「なあ、イザベラ、どうすれば機嫌を直してくれる?」
「……わ。」
「ん?」

 私が呟いた言葉を聞き漏らしたのか、それとも私の口からもう一度その言葉を言わせたいのか分からないがアルファードは催促する。

「指輪が欲しいわ。」
「…指輪?」
「ええ、貴方が私の物だという印が欲しい。」
「……。」
「駄目かしら?」

 不安になって首を傾げ、アルファードを見上げる。

「~~~っ。」

 口元を隠して悶えている彼にフッと「前」の彼の弟の言葉を思い出す。

『メイヤって本当にルナが好きなんだな。』

 呆れたような、でも、どこか羨ましそうな顔をしていた彼を思い出し、もう、彼には会えないんだったと思い出す。

「イザベラ……。」

 地を這うまではいかないが冷たく低い声に私は仕舞ったと苦笑いを浮かべる。

「何かしら?」
「今何を考えていたのかな?」
「……。」

 ここは正直に言うしか道がないと思い私は重い口を開く。

「昔、貴方が同じような反応をして「マヒル」が貴方が本当に私の事が好きなのだと言っていたのを思い出したのよ。」
「……。」

 弾かれたような顔をした彼はどこか泣きそうな顔をする。

「ごめんなさい、昔の事は思い出さないようにと、私決めていたのに…。」
「いや。」
「アルファード?」
「思い出してもいいと思うぞ。」

 アルファードの森のような緑色には慈愛が浮かんでいた。

「でも……。」
「お前にとってはつらい事が多かったと思う……だけど、俺は……この記憶を持っている事を今までだったて辛いと思っても後悔はないだ。」
「アルファード。」
「お前を守れなかった記憶はつらいし、その時を思い出せば何度だって自分を責める。だけど……。」

 スッと伸びて来た手は私の頬を優しく包み込む。

「その記憶があったから俺は同じ間違いをしないでおこうと思った、まあ、実際は何度も失敗したけどな。」
「そんな事はないわ。」

 私が否定の言葉を言えばアルファードは苦笑する。

「そう言ってくれるのはお前だけだ。」
「……。」
「それにな、同じ記憶を共有しているから話せる話題もあるしな、だから、思い出してもお前はいいんだ。」
「うん。」

 私は頷き、胸に手を当てる。

 楽しかった記憶。

 悲しかった記憶。

 辛かった記憶。

 恥ずかしかった記憶。

 愛おしい記憶。

 慈しんだ記憶。

 どれも大切な記憶で、どれも彼との大切な絆のあかしだった。

「ありがとう。」
「ん。」

 そっと私の頬に手を当てるのは彼の昔からの癖だった。
 それを受け入れるのは当たり前で、そして、心地よくなり私は目を細める。

「大好きよ。」
「俺は愛している。」

 まるで張り合うように言う彼に私はクスクスと笑った。
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