4 / 122
第一章
3
しおりを挟む
「姉さん。」
自宅に帰って来た私は弟に呼び止められた。
「何かしら?」
「あの腐れ王子と本当に婚約する気なのか?」
彼の言葉に私は苦笑する。
「ええ、しきたりですもの。」
「……しきたりだから……か。」
「ヒース?」
「姉さんは本当にしきたりだからって思っているの?」
「……。」
ヒースの言葉に私は諦めたように笑う。
「ヒース、私はお父様と約束していました。」
「父上と?」
「ええ、私は愛する方としか結婚はしない、もし、学園を卒業するまで見つからなければ私は修道女となりますと。」
「――っ!」
彼は初めて聞いたのか目を見開いていた。
「嘘だろう。」
「本当の事よ。」
「何で。」
「私のこの身はあの人の物、だから、それ以外の方とは死んでも添い遂げるつもりはないからよ。」
「何でだよ。」
「それは……秘密よ。」
人差し指を唇に押し当てる私にヒースは顔を顰める。
「それにしても、貴方の「姉さん」呼びは家だけなのね。」
「当たり前です。」
「ふふふ、貴方がしっかりとして嬉しいわ。」
「……姉さんははぐらかすんですね。」
「何をかしら?」
ヒースは私をじっと見て溜息を零す。
「分かりました、姉さんはあの方が良いんですね。」
「ええ。」
「あの方は王位継承権が低いのですが、良いのですか?」
「……。」
弟の言葉に私の周りの気温が下がる。
「――っ!」
「あの方が王族だろうが、貴族だろうが、平民だろが私には関係ありません、あの方があの方だから私は決めたのです。」
「何で…。」
「何ででしょうね、貴方には分からない理由よ。」
「……。」
私は縮こまっている弟にフッと笑う。
「貴方が私を心配してくれているのは十分に分かっているわ、でもね、私はあの方じゃないと駄目なの。」
「姉さん。」
「あの人と出会う為に私は生まれて来たようなもの、だから、誰が何と言おうと私はあの方の一番の味方であり、寄り添う半身でいたいのです。」
「……。」
「お嬢様、お坊ちゃま、お話しの所大変申し訳ございませんが、旦那様がおよびです。」
私たちの家に長く使えている執事のセルドニックスが私たちの話に割り込む。
普通ならば有り得ないのだが、事が事だからだろう。
「分かりましたわ、お父様が呼んでいるのは私だけですよね?」
「はい。」
「分かりました、お父様はどちらに?」
「書斎にいらっしゃいます。」
「分かったわ。」
私は一つ頷くと、書斎の方に体を向ける。
「ヒース。」
立ち去る前に私は弟に話しかける。
「愚かな姉でごめんなさいね、本当ならばもっと周りを見なくてはならなかったでしょう。
でも、私たちはああするしかなかったのよ。」
「姉さま?」
「分かって欲しいとは言わないわ。」
でも、そう言って私は彼に微笑む。
「私は幸せなの、だから、私の為に貴方が色々と気に病む事はないわ。」
「姉さん……。」
「セルドニックス。」
「御意。」
私はセルドニックスを連れてお父様の元に向かう。
本当ならば私たちは正式な手順を踏んで婚約をすればよかった。
でも、そんな時間が私たちには残されていなかった。
物語(ゲーム)が始まってしまっていたのだから、もし、あの時無理やりに婚約をしていなければ、アルファードは下手をすればあの女の物になっていたかもしれない。
「そんなのは許しはしないわ……。」
ギリっと歯を噛み締める。
婚約よりも重い風習と言う名の契約で私たちは結ばれなければならなかった。その訳、それはあの女狐が私のアルファードに色目を使っていたから、それを分かっていたからアルファードは私に触れたのだ。
まあ、彼が触れなければその手袋を剥いででも私に触れさせていたのかもしれないけど……。
「お嬢様何かおっしゃりましたか?」
「いえ、何でもありません。」
「さようですか。」
私は今から目の前で起こる事に意識を戻す事にした。
自宅に帰って来た私は弟に呼び止められた。
「何かしら?」
「あの腐れ王子と本当に婚約する気なのか?」
彼の言葉に私は苦笑する。
「ええ、しきたりですもの。」
「……しきたりだから……か。」
「ヒース?」
「姉さんは本当にしきたりだからって思っているの?」
「……。」
ヒースの言葉に私は諦めたように笑う。
「ヒース、私はお父様と約束していました。」
「父上と?」
「ええ、私は愛する方としか結婚はしない、もし、学園を卒業するまで見つからなければ私は修道女となりますと。」
「――っ!」
彼は初めて聞いたのか目を見開いていた。
「嘘だろう。」
「本当の事よ。」
「何で。」
「私のこの身はあの人の物、だから、それ以外の方とは死んでも添い遂げるつもりはないからよ。」
「何でだよ。」
「それは……秘密よ。」
人差し指を唇に押し当てる私にヒースは顔を顰める。
「それにしても、貴方の「姉さん」呼びは家だけなのね。」
「当たり前です。」
「ふふふ、貴方がしっかりとして嬉しいわ。」
「……姉さんははぐらかすんですね。」
「何をかしら?」
ヒースは私をじっと見て溜息を零す。
「分かりました、姉さんはあの方が良いんですね。」
「ええ。」
「あの方は王位継承権が低いのですが、良いのですか?」
「……。」
弟の言葉に私の周りの気温が下がる。
「――っ!」
「あの方が王族だろうが、貴族だろうが、平民だろが私には関係ありません、あの方があの方だから私は決めたのです。」
「何で…。」
「何ででしょうね、貴方には分からない理由よ。」
「……。」
私は縮こまっている弟にフッと笑う。
「貴方が私を心配してくれているのは十分に分かっているわ、でもね、私はあの方じゃないと駄目なの。」
「姉さん。」
「あの人と出会う為に私は生まれて来たようなもの、だから、誰が何と言おうと私はあの方の一番の味方であり、寄り添う半身でいたいのです。」
「……。」
「お嬢様、お坊ちゃま、お話しの所大変申し訳ございませんが、旦那様がおよびです。」
私たちの家に長く使えている執事のセルドニックスが私たちの話に割り込む。
普通ならば有り得ないのだが、事が事だからだろう。
「分かりましたわ、お父様が呼んでいるのは私だけですよね?」
「はい。」
「分かりました、お父様はどちらに?」
「書斎にいらっしゃいます。」
「分かったわ。」
私は一つ頷くと、書斎の方に体を向ける。
「ヒース。」
立ち去る前に私は弟に話しかける。
「愚かな姉でごめんなさいね、本当ならばもっと周りを見なくてはならなかったでしょう。
でも、私たちはああするしかなかったのよ。」
「姉さま?」
「分かって欲しいとは言わないわ。」
でも、そう言って私は彼に微笑む。
「私は幸せなの、だから、私の為に貴方が色々と気に病む事はないわ。」
「姉さん……。」
「セルドニックス。」
「御意。」
私はセルドニックスを連れてお父様の元に向かう。
本当ならば私たちは正式な手順を踏んで婚約をすればよかった。
でも、そんな時間が私たちには残されていなかった。
物語(ゲーム)が始まってしまっていたのだから、もし、あの時無理やりに婚約をしていなければ、アルファードは下手をすればあの女の物になっていたかもしれない。
「そんなのは許しはしないわ……。」
ギリっと歯を噛み締める。
婚約よりも重い風習と言う名の契約で私たちは結ばれなければならなかった。その訳、それはあの女狐が私のアルファードに色目を使っていたから、それを分かっていたからアルファードは私に触れたのだ。
まあ、彼が触れなければその手袋を剥いででも私に触れさせていたのかもしれないけど……。
「お嬢様何かおっしゃりましたか?」
「いえ、何でもありません。」
「さようですか。」
私は今から目の前で起こる事に意識を戻す事にした。
10
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる