転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

文字の大きさ
27 / 123
第一章

26

しおりを挟む
「い、イザベラ様っ!」
「……。」

 いつの間にかメイカに手を握られているミナは涙目で私の名前を呼ぶ。

「……。」
「……。」

 私はミナを見てニッコリと微笑み、手を振る。
 彼女は驚愕の表情を浮かべる。

「…いいのか?」
「彼のあの表情を見て引きはがす事が出来る?」
「……。」

 アルファードは分身であるメイカの表情を見て、げんなりとした顔を浮かべる。

「無理やり剥がせば、不機嫌になるな。」
「次に会う時にミナが泣かされるわね。」
「だな…。」

 メイカの表情を見れば一通りして落ち着けば自ら離すだろう、だけど、今引き離すと確実面倒な事になる。

 それは私の経験だ。

 普段の彼は頼りになるし、カッコいいし、素敵だし、頭も良いし、私にはもったいない程の人だけど、一度箍が外れてしまうと、それはもう、面倒なのだ。

 付き合う前は普通だったのに、付き合い出してからそれは現れた。

 でも、よくよく考えればそれは今までの反動だったし、私の自業自得の部分もあったので、諦めもついている。

 ミナには申し訳ないけれども、それでも、こちらの面倒を考えると、そのままでいてもらうしかなかった。

「イザベラ。」
「ええ。」

 私たちは二人を無視して、お茶をする事にした。
 哀れなミナの声が聞こえるが、私たちは助ける事はしなかった。
 そして、メイカが落ち着き、ようやく私たちは自己紹介をする。

「はじめまして。」
「はじめまして、主たち。」

 礼儀正しい彼に私たちは苦笑する。

「……。」

 一方ミナはジト目でメイカを睨んでいる。
 それもそうだろう、嫌がっているのにもかかわらず決して手を離さず、むしろ、何の許可もなく抱きしめて来たのだから、彼女としてはいい迷惑だったのだろう。

「メイカ。」
「…それがオレの名ですか?」
「ああ。」
「承知しました。」

 アルファードが名を呼べば、彼は最初怪訝な顔をしたが、すぐに、問題はないかと思ったのか、頷いた。

「オレは何方に身を置ければよろしいのでしょうか?」
「アルファードに。」
「……。」
「……。」
「畏まりました。」

 私の即答にアルファードとミナは私をじっと見つめ、そして、メイカは分かっていたのか頭を下げる。

「……イザベラ様。」
「何かしら?」
「何故、彼はこれほど板についているのでしょうか?」

 ジッとメイカを見ているミナに私は苦笑する。

「メイカ。」
「はい。」
「貴方は彼の記憶があるの?」
「記録としては把握しております。」
「……。」

 やはりと、私は心の中で呟く。
 最初の彼は私の従者だった。
 だから、彼の知識の中には主従の心得とかあるのだろう、だから、彼だしな、と私は思ってしまうのだ。

「釈然としません。」
「……。」

 ミナの言葉に私は苦笑する。

「彼だしね。」
「まあ、俺だしな。」
「……。」
「……答えになっておりません。」

 私はアルファードと顔を見合わせ、同時に肩を竦める。

「こればっかりはね。」
「なー。」
「そろそろ、イザベラ様はお時間ではありませんか?」

 いつの間にか懐中時計を見ながらそう言うメイカに私も置時計を見れば確かに時間が迫っている。

「そうね。」
「……。」
「イザベラ。」
「そろそろ、お暇するわね。」
「ああ。」
「また、明日学校で。」
「そうだな。」

 私たちは名残惜しそうにするが、部屋の隅にいるミナが咳払いをする。

「…………早く、一緒の家に住みたいわ。」
「ああ、どんなに小さくともいいから住みたいな。」

 私たちは苦笑しながら、私は外へ、彼はそのまま部屋に残った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...