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7話
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リリ・マドラ伯爵令嬢は今親友マリエンザ・ムリエルガに手紙を書いているところだ。
ツィータードとダーマを見て泣きながら帰ったあの日以来、領地に戻ってしまって会えなくなった。みんなで応援し、元気づけてやりたいと思っていたのだが。
学内ではツィータードとダーマの噂が嵐のように吹き荒れているが、それは書かない。
ただ親友に会えなくてさみしいということ、試験のスケジュールが発表されたからそれまでに帰ってきてと。
リリ・マドラから届いた手紙を読んだマリエンザは、友人に会いたい気持ちより、領地の暮らしが楽しいことに罪悪感を覚えていた。
「マリ様、また遠乗りですか?」
「ええ!オーロラ、いいわよね?」
キュロットを履いて厩舎に現れたマリエンザに馬房のカンドが訊ねると、代わりに答えるように青鹿毛の牝馬がブルブルっと体を震わせる。
その首をやさしく叩いて、鞍を乗せ鐙をかけ、準備を整えると、マリエンザはいかにも慣れたように飛び乗った。
「マリ様、私も参りますのでお待ちを」
護衛のドランは大きな体の鹿毛の牡馬、ラスを引いてきた。
「さすがにもう一人で行くのはお止めくださいよ、万一のことがあったら私がガンザル様に・・・」
ぶるりと大袈裟にドランが震えて見せたので、馬房で馬の世話をしているものたちも一斉に笑い声をあげる。
マリエンザも一緒に。
「行くわよ、はっ」
風を切るように低い体勢で馬を走らせると、ドランも遅れずについてくる。
なだらかな坂を下り、目の前に立ちはだかる丘を一気に駆け上がると領地が遠くまで見渡せる絶景が広がり、馬の息を整えるようにゆっくり歩かせながら、景色と頬を撫でる風を堪能した。
「素晴らしいわね、王都にはないものだわ」
風がマリエンザの赤い髪をなびかせると日の光が透けて一層鮮やかにきらめき、神々しいほどの美しさだ。
「炎の女神のようだ・・・」
小さなドランの声は風に消された。
「ねえ、ドラン」
「はい?なんですか」
「私ね、王都にいたとき、まるで自分じゃないみたいだった」
気丈な娘だが王都で深く傷つくことがあり、急遽戻られたらしいと聞いている。
マリエンザから話さない限り、何も訊くなと。
静かに頷いて、次の言葉を待った。
「ツィータード様に気に入ってほしくて。それで馬に乗ったり弓を引く私を隠していたの」
「ツィータード様は、素敵な方でしたか?」
少し間があいて。
「ええ」とだけ答えた。
「いつも彼の顔色をうかがって、嫌われないように、失敗しないように、びくびくしていた気がするわ」
オーロラに足で合図をすると、気持ち良い速さで駆け始める。
突然マリエンザが叫んだ。
「これがーっほんとのっわたしなのにーっ!わすれてたーっ!」
いきなり駆け出したオーロラを追ってドランはラスを駆る。
「あーっ、きもちいいぃーっ」
鐙の上に立ち上がったマリエンザは全身で風を受けている。
(あのスピードであんな乗り方をして落馬しないんだから、凄まじいな)
しばらくそうやって走っていたマリエンザが腰を下ろすと、ドランはほっと息を吐いてゆっくり屋敷までついていった。
オーロラを馬房に戻すと、そのまま弓道場へ向かう。もちろんドランもついてくる。
「弓の練習ですか?」
「ええ。何かに集中してるとイヤなこと思い出さずにいられるし。弓道場に居る間は護衛はいらないわ、ひとりにして」
一瞬悩んで、ドランは頭を下げた。
ツィータードとダーマを見て泣きながら帰ったあの日以来、領地に戻ってしまって会えなくなった。みんなで応援し、元気づけてやりたいと思っていたのだが。
学内ではツィータードとダーマの噂が嵐のように吹き荒れているが、それは書かない。
ただ親友に会えなくてさみしいということ、試験のスケジュールが発表されたからそれまでに帰ってきてと。
リリ・マドラから届いた手紙を読んだマリエンザは、友人に会いたい気持ちより、領地の暮らしが楽しいことに罪悪感を覚えていた。
「マリ様、また遠乗りですか?」
「ええ!オーロラ、いいわよね?」
キュロットを履いて厩舎に現れたマリエンザに馬房のカンドが訊ねると、代わりに答えるように青鹿毛の牝馬がブルブルっと体を震わせる。
その首をやさしく叩いて、鞍を乗せ鐙をかけ、準備を整えると、マリエンザはいかにも慣れたように飛び乗った。
「マリ様、私も参りますのでお待ちを」
護衛のドランは大きな体の鹿毛の牡馬、ラスを引いてきた。
「さすがにもう一人で行くのはお止めくださいよ、万一のことがあったら私がガンザル様に・・・」
ぶるりと大袈裟にドランが震えて見せたので、馬房で馬の世話をしているものたちも一斉に笑い声をあげる。
マリエンザも一緒に。
「行くわよ、はっ」
風を切るように低い体勢で馬を走らせると、ドランも遅れずについてくる。
なだらかな坂を下り、目の前に立ちはだかる丘を一気に駆け上がると領地が遠くまで見渡せる絶景が広がり、馬の息を整えるようにゆっくり歩かせながら、景色と頬を撫でる風を堪能した。
「素晴らしいわね、王都にはないものだわ」
風がマリエンザの赤い髪をなびかせると日の光が透けて一層鮮やかにきらめき、神々しいほどの美しさだ。
「炎の女神のようだ・・・」
小さなドランの声は風に消された。
「ねえ、ドラン」
「はい?なんですか」
「私ね、王都にいたとき、まるで自分じゃないみたいだった」
気丈な娘だが王都で深く傷つくことがあり、急遽戻られたらしいと聞いている。
マリエンザから話さない限り、何も訊くなと。
静かに頷いて、次の言葉を待った。
「ツィータード様に気に入ってほしくて。それで馬に乗ったり弓を引く私を隠していたの」
「ツィータード様は、素敵な方でしたか?」
少し間があいて。
「ええ」とだけ答えた。
「いつも彼の顔色をうかがって、嫌われないように、失敗しないように、びくびくしていた気がするわ」
オーロラに足で合図をすると、気持ち良い速さで駆け始める。
突然マリエンザが叫んだ。
「これがーっほんとのっわたしなのにーっ!わすれてたーっ!」
いきなり駆け出したオーロラを追ってドランはラスを駆る。
「あーっ、きもちいいぃーっ」
鐙の上に立ち上がったマリエンザは全身で風を受けている。
(あのスピードであんな乗り方をして落馬しないんだから、凄まじいな)
しばらくそうやって走っていたマリエンザが腰を下ろすと、ドランはほっと息を吐いてゆっくり屋敷までついていった。
オーロラを馬房に戻すと、そのまま弓道場へ向かう。もちろんドランもついてくる。
「弓の練習ですか?」
「ええ。何かに集中してるとイヤなこと思い出さずにいられるし。弓道場に居る間は護衛はいらないわ、ひとりにして」
一瞬悩んで、ドランは頭を下げた。
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