【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ

やまぐちこはる

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外伝 ダーマ

ダーマ1

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 夜風が流れるようなさらさらの黒髪と黒い瞳を持ち、神秘的な美少女と呼ばれる私はダーマ・エスカ男爵令嬢。

 この美貌に目を惹かれて、次から次から様々な貴族の令息たちから声をかけられるから、出会いの機会は大切にと思って、広く浅くお付き合いをしてみているの。

 でも男爵より子爵がいいし、子爵よりは伯爵がいい。男爵家出身だと、狙えるとしてもぎりぎり伯爵くらいまでかしら。
 できればうるさい親は近くにいなくて、結婚したらふたりで贅沢できるような家がいいと思うと、なかなかこれという人は現れないもの。

 そう思っていたのだけど。

 同じクラスのドロレスト侯爵家のご嫡男、ツィータード様!
キラキラ輝く金髪に、濃い青い瞳の、男性なのにとても美しい人。
 クラスの令嬢たちが私の美しさを妬んでつまらない文句を言ってくるから困り果てていたら、ツィータード様がお声をかけてくださるようになったわ。

 侯爵家と聞いて、最初こちらからはお声を掛けづらかったのだけど、とてもやさしくて気さくに私の話しを聞いてくださるの。たくさんいろいろなお話しをしたわ。

 ツィータード様には親に決められた婚約者がいらっしゃって。でもその方、いつもびくびくめそめそしてみっともないったら。
ツィータード様の隣に並んでも、全然似合わない方。
 いつもランチをともにされていらっしゃるけど、ツィータード様も鬱陶しそうに彼女をみていらっしゃるから、私助けて差し上げたくなって。

 ある日思い切って、ランチタイムにご相談があるとお声をかけたら、婚約者より私を優先してくださったわ。とっても楽しくて、いつもと同じものを食べているのに美味しく頂けたの。

 しかもしかも!
 その日の授業が終わったあと、車寄せでツィータード様が馬車に置いていかれたとお困りだったから、私の馬車にふたりで乗って、送って差し上げたのだけど。
 ドロレスト侯爵家に着いたら、私を侯爵邸に招待して案内したいとおっしゃって!恭しく腕を差し出してエスコートしてくださったのよ。
 お屋敷はとても広くて、隅々まで豪華で、私の男爵家とはケタ違い。お庭も素晴らしくて、二人だけの四阿で高級なお茶を頂いて。
夢のような時間だったわ。
 別れ際、ツィータード様が私の目を見て、「また遊びに来てほしい」って懇願されたの。

 これって、私を愛おしいって思っていらっしゃるってことかしら。

 こんなに素敵な方だもの。親の決めた彼の婚約者もきっと、美しくやさしいツィータード様に執着しているに違いないわ。
 でも、彼は私を想ってくださっているの。もうじき私に求婚するために、ご令嬢に別れを告げることでしょう。
お気の毒だけど愛のなせる技ですもの、しかたのないことと諦めてね。ツィータード様は私が幸せにして差し上げるから。

 婚約者の方が急に領地に戻られたらしく、それからは私とランチをともにしたいとおっしゃられて、毎日楽しい時間を過ごしたわ。
 そんな中、私の馬車の車輪が壊れて困っていたところ、ドロレスト侯爵家の立派な馬車で送ってくださって。
 私の家もご覧になりたいと仰るから、侯爵家に比べたら狭くて恥ずかしかったけど、ご案内して母にも紹介したの。これって、もうそういうことよね!
 母がちょっとしつこくし過ぎて、ご気分を害され、すぐお帰りになってしまったけど。でもやっぱり私たちは想い合っていると確信したわ。
 母も一緒に、侯爵家へご挨拶に伺いたいですってお伝えしたら、うれしそうに微笑んでくださった!

 そのあと、なかなか侯爵家に連れて行って頂く機会がなくて、かわいくおねだりしてみたら、なんと執事が警備の問題でだめって言うのですって。
 ご嫡男ツィータード様の想い人の私は、つまらない客よりずっと大切にされるべきなのに。
 ツィータード様にそんな執事辞めさせたらってお勧めしたら、お優しいからお困りになっていらしたけど。
 私が侯爵夫人になったら、そんな主の大切な人もわからないような執事はすぐ馘首にしてあげるのに。そう、やさしいツィータード様の言うことを聞かない使用人は、私が辞めさせて、私が居心地よくさせてあげる!

 ところで最近、私とツィータード様の恋が学内で噂になっているみたい!羨ましくて仕方ないのね、皆さん妬ましそうな目で私を見ているわ。
 彼の婚約者がいないうちに、もっと私たちの絆を深めたい。でも焦ってちょっとやりすぎちゃったみたい。クラスメイトの前で、ふたりでどんな風に過ごしているか、どれほどツィータード様に大切にされているかを話したら、恥ずかしかったみたいで、触らないでなんておっしゃるの。照れているツィータード様も素敵だけど、素直に私の手を引いてくださるほうが、私もっと幸せですわ。

 その日の午後、急に侯爵家からお迎えがいらして早退されたきり、ずっとおやすみされている。何かあったのかしら?心配だわ!

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