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外伝 ダーマ
ダーマ4
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「すごい!すごいわ!ドロレスト侯爵家なんて目じゃないくらいよ、おかあさま!」
「ええ、本当に素晴らしいわ。モローダも良くやってくれたわね」
「ええ、本当に。そういえば迎えが来ないわね」
「屋敷が大きすぎて、気づかないのかもしれないわ。私が女主人になったら使用人たちを厳しく躾け直さなくてはいけないわね」
ふふふっと笑ってダーマが言うと、フェリが門扉のベルを鳴らした。
お付きも護衛もなく、到着に先駆けも出さずにふたりだけで来たダーマが下に見られても仕方ないとは気づかない。
「はい」門番が奥から走ってきた。
「ちょっとあなた!門番とは、門の表に立って番をする者ではなくて?なっていないわね」
ダーマがいきなり叱咤すると、あからさまにムッとした顔を見せて訊ねてきた。
「お前は誰だ?」
「まあ、おまえですって?無礼な!私はこちらの女主人となるダーマ・エスカ男爵令嬢ですわ。覚えておきなさい」
「はあ?女主人だと?おまえ頭がおかしいんじゃないか?」
門番が下卑た表情を浮かべて嘲笑う。
かあっと頭に血が上ったダーマが
「無礼者っ!」
手を振り上げた。
「何しやがる!おまえこそ狼藉者だ!」
騒ぎを聞きつけ、駆けつけた他の門番たちに取り押さえられて屋敷の主の元へと連れて行かれる。
「そなたらは何者ぞ?我が手の者に狼藉を働いたと聞いたが」
ダーマと同じ黒髪と黒い瞳を持ち、美しく整った男が現れて訊ねたので、ダーマは身を乗りだして一気に話した。
「わたくしは、貴方様の花嫁になるため遠路をやって来たジャン・エスカ男爵が娘、ダーマでございます。お見知りおきくださいませ。狼藉を働いたのは私ではございませんわ。門番が私に無礼を働いたのです。しかし私が女主人となった暁には、あのような者も躾け直して差し上げますのでご安心くださいませ」
黒髪の男は、ただじっとダーマを見つめている。
─私の美しさに見惚れていらっしゃるのね─
ダーマが蕩けるような視線を男に送ったところ、突然不快そうに眉を寄せて立ち上がった。
「なんだ、この無礼な女は!何が私の花嫁だ!当家の女主人になるだと?私にはおとなしく従順で花のように美しい妻がおるわ。このような下賤な女は側妻にもいらん!送りつけてきた者には厳罰を与え、この女たちを叩き出せ!」
ダーマたちがのんびり旅をしている間に、既に到着した令嬢の中から花嫁は選ばれていた。
ハラ国で面倒見てもらえるからと、着替えも路銀も少ししか持たずに送られて来たので、このまま追い出されたら国にも戻れない。
それに気づいたフェリが屋敷の主に追い縋った。
「お待ちください、どうかどうか!今追い出されては、国に戻ることもできません。何卒路銀をお助けいただけませんでしょうか?」
「そうだわ!こんな遠くまで呼び寄せておいて、そのくらい出してもバチは当たらないわ」
顔色を窺うように言ったフェリはまだしも、ダーマの言動に男は完全に切れた。
「なんだ、今度は物乞いか?無礼な物言いに狼藉を働いた上、金をよこせとは恐るべき女どもだ!」
ジロっと睨まれるとフェリの足が竦む。
「あっ、あの、いえ、も、申し訳ございません。あの路銀はけっこうですので」
そう下がろうとしたが、主の怒りはおさまらない。
「この女どもを不敬罪で捉えて鞭打ちの刑に処したあと・・・そうだな。奴隷商人に売り払え」
にやにやと美しい顔を歪めて笑った。
「ちょっ!ふざけないでよ」怒鳴るダーマ。
「お許しを、どうか!謝りますからそれだけはお許しを」
ぺこぺこと頭を下げるフェリだったが、言い渡した屋敷の主は興味を失ったように手で追い払うジェスチャーを見せ、奥へと引っ込んでしまった。
あのあと、ダーマとフェリはたんまりと鞭で打たれて牢に転がされている。
フェリは黙りこくってひたすら涙を流しているが、ダーマは口汚く何かを罵り続けて。
翌日、奴隷商人が呼ばれて二人を引き取りに来た。
「若い方はまあまあ見られるから買うものがいるかもしれん。年のいった方は、掃除婦を探しているところがあるからそっちになら売れるかもしれんな」
その後、ダーマとフェリの行方を知る者は誰もいない。
完
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
新作『貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ!』もよろしくお願い致します。
「ええ、本当に素晴らしいわ。モローダも良くやってくれたわね」
「ええ、本当に。そういえば迎えが来ないわね」
「屋敷が大きすぎて、気づかないのかもしれないわ。私が女主人になったら使用人たちを厳しく躾け直さなくてはいけないわね」
ふふふっと笑ってダーマが言うと、フェリが門扉のベルを鳴らした。
お付きも護衛もなく、到着に先駆けも出さずにふたりだけで来たダーマが下に見られても仕方ないとは気づかない。
「はい」門番が奥から走ってきた。
「ちょっとあなた!門番とは、門の表に立って番をする者ではなくて?なっていないわね」
ダーマがいきなり叱咤すると、あからさまにムッとした顔を見せて訊ねてきた。
「お前は誰だ?」
「まあ、おまえですって?無礼な!私はこちらの女主人となるダーマ・エスカ男爵令嬢ですわ。覚えておきなさい」
「はあ?女主人だと?おまえ頭がおかしいんじゃないか?」
門番が下卑た表情を浮かべて嘲笑う。
かあっと頭に血が上ったダーマが
「無礼者っ!」
手を振り上げた。
「何しやがる!おまえこそ狼藉者だ!」
騒ぎを聞きつけ、駆けつけた他の門番たちに取り押さえられて屋敷の主の元へと連れて行かれる。
「そなたらは何者ぞ?我が手の者に狼藉を働いたと聞いたが」
ダーマと同じ黒髪と黒い瞳を持ち、美しく整った男が現れて訊ねたので、ダーマは身を乗りだして一気に話した。
「わたくしは、貴方様の花嫁になるため遠路をやって来たジャン・エスカ男爵が娘、ダーマでございます。お見知りおきくださいませ。狼藉を働いたのは私ではございませんわ。門番が私に無礼を働いたのです。しかし私が女主人となった暁には、あのような者も躾け直して差し上げますのでご安心くださいませ」
黒髪の男は、ただじっとダーマを見つめている。
─私の美しさに見惚れていらっしゃるのね─
ダーマが蕩けるような視線を男に送ったところ、突然不快そうに眉を寄せて立ち上がった。
「なんだ、この無礼な女は!何が私の花嫁だ!当家の女主人になるだと?私にはおとなしく従順で花のように美しい妻がおるわ。このような下賤な女は側妻にもいらん!送りつけてきた者には厳罰を与え、この女たちを叩き出せ!」
ダーマたちがのんびり旅をしている間に、既に到着した令嬢の中から花嫁は選ばれていた。
ハラ国で面倒見てもらえるからと、着替えも路銀も少ししか持たずに送られて来たので、このまま追い出されたら国にも戻れない。
それに気づいたフェリが屋敷の主に追い縋った。
「お待ちください、どうかどうか!今追い出されては、国に戻ることもできません。何卒路銀をお助けいただけませんでしょうか?」
「そうだわ!こんな遠くまで呼び寄せておいて、そのくらい出してもバチは当たらないわ」
顔色を窺うように言ったフェリはまだしも、ダーマの言動に男は完全に切れた。
「なんだ、今度は物乞いか?無礼な物言いに狼藉を働いた上、金をよこせとは恐るべき女どもだ!」
ジロっと睨まれるとフェリの足が竦む。
「あっ、あの、いえ、も、申し訳ございません。あの路銀はけっこうですので」
そう下がろうとしたが、主の怒りはおさまらない。
「この女どもを不敬罪で捉えて鞭打ちの刑に処したあと・・・そうだな。奴隷商人に売り払え」
にやにやと美しい顔を歪めて笑った。
「ちょっ!ふざけないでよ」怒鳴るダーマ。
「お許しを、どうか!謝りますからそれだけはお許しを」
ぺこぺこと頭を下げるフェリだったが、言い渡した屋敷の主は興味を失ったように手で追い払うジェスチャーを見せ、奥へと引っ込んでしまった。
あのあと、ダーマとフェリはたんまりと鞭で打たれて牢に転がされている。
フェリは黙りこくってひたすら涙を流しているが、ダーマは口汚く何かを罵り続けて。
翌日、奴隷商人が呼ばれて二人を引き取りに来た。
「若い方はまあまあ見られるから買うものがいるかもしれん。年のいった方は、掃除婦を探しているところがあるからそっちになら売れるかもしれんな」
その後、ダーマとフェリの行方を知る者は誰もいない。
完
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
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