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第1章
第12話 様々な守り
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ユートリーの守りは隙なく固められた。
「これで安心できますね、ユートリー様」
「ええ。私たちが迂闊なことを言わないことと、そして暗部が用意したもの以外を口にしなければね」
「はい。心しておきます」
「ええ。タラ、おやつも気をつけなくては駄目よ。どうしても我慢できないなら町で買ってくること」
「はい」
ユートリーだっておやつは大好きだが、そのために命を失うわけにはいかないのだ。
「それにしても本当にすごい仕掛けですね!床下にスパイが潜んでるなんてカッコいい」
呑気なことを言うタラに、ユートリーは少々呆れた目を向ける。
大好きな小説の世界が急に目の前に現れたせいで、タラはユートリーが毒を盛られた時の恐怖を忘れてしまったかのようだ。
肩を竦めるユートリーに気づかずに、自分も床下の隠し部屋に潜んでみたいなどと、夢を見るように語るタラだった。
ユートリーに毒を盛ったと思われる女は、髪の色くらいしかわからないまま。
しかしまだ一日も経っていないのだと考えれば、かなり素早く迎え撃つ準備ができたとも言えるだろう。
「私が休んでいて、タラも離れている時間を狙ったように現れたのよ。それを考えると私が相手を知らなくとも、相手は使用人の中でも近い距離にいるか、私の生活を知り得る共犯者がいるのだと思うわ」
クローゼットの細工を確認に来たサルジャンは思案顔だ。
「とすると、今も普通に動き回っているトリーを見て、毒が効いていないようならまた現れる可能性が高いな」
「ええ、しばらくは体調が優れないと言って、早めに横になるようにすれば、誘き寄せることができるから」
「・・・。あまり気は進まない」
「ナイジェルス様の襲撃と繋がっているなら、その糸を掴まねばなりません!そのためなら少しくらい危険でもやってみせますわ。護衛たちもしっかり守ってくれています」
仕方なさそうに、こくんとユートリーに同意したサルジャンが、はっと思い出した。
「そうだ!さっき父上が、ナイジェルス殿下が襲撃されたことを使用人たちにも公にしたんだ。ソイスト公爵家は剣で襲われても王家に引けを取らない優秀な護衛に守られているし、特に私とトリーは毒も幼少から体を慣らしていたから心配するなというようなことも話されていた。タラも誰かに聞かれたら話を合わせておくようにな」
「畏まりました。毒慣らしされていたんですね!」
「いや、してないぞ」
即答する。
「え?嘘?・・・なるほど!そうすればすぐに毒が効かなくても効きにくいと思わせることができますね!」
タラが鬼の首でも取ったようにサルジャンに被せる。
「ああ。即死するような毒では流石にそうはいかないが、毒が足りなかったとまた奴らが動いてくれれば、我々は反撃の機会を作れるだろう」
なるほどなるほどと独り言ちながら、手をポンと叩くタラを見るユートリー。
「兄様、この毒は即死などはしないものだと思います。ゆっくり苦しめるみたいなことを言って笑ってましたもの」
時戻りの前に聞いたことだが、今度もゆっくり効くものに違いないと思ってユートリーは何の気なく呟いた。
「なんだと?ゆっくり苦しめる?おのれ・・・捕まえたらこの私が必ずや、殺してくれと頼むほどの目に合わせてやるぞ」
サルジャンの目が怒りのせいか赤味を帯びてくる。そしてタラも。
「そんなひどいっ!髪を丸坊主に刈り取って、顔を泥で汚し、みすぼらしい服を被せて道に括り付けてやりましょう!」
こう見えてタラも男爵家出身である。貴族の令嬢が思いつく限りの酷い目に合わせてやろうと、サルジャンに思いの丈を吐露して、ふたりは握手を交わした。
「はいはい、ぎっちぎちのぎったんぎったんにしてやってくださいませ。それより兄様、ナイジェルス様は見つかったのでしょうか」
「これで安心できますね、ユートリー様」
「ええ。私たちが迂闊なことを言わないことと、そして暗部が用意したもの以外を口にしなければね」
「はい。心しておきます」
「ええ。タラ、おやつも気をつけなくては駄目よ。どうしても我慢できないなら町で買ってくること」
「はい」
ユートリーだっておやつは大好きだが、そのために命を失うわけにはいかないのだ。
「それにしても本当にすごい仕掛けですね!床下にスパイが潜んでるなんてカッコいい」
呑気なことを言うタラに、ユートリーは少々呆れた目を向ける。
大好きな小説の世界が急に目の前に現れたせいで、タラはユートリーが毒を盛られた時の恐怖を忘れてしまったかのようだ。
肩を竦めるユートリーに気づかずに、自分も床下の隠し部屋に潜んでみたいなどと、夢を見るように語るタラだった。
ユートリーに毒を盛ったと思われる女は、髪の色くらいしかわからないまま。
しかしまだ一日も経っていないのだと考えれば、かなり素早く迎え撃つ準備ができたとも言えるだろう。
「私が休んでいて、タラも離れている時間を狙ったように現れたのよ。それを考えると私が相手を知らなくとも、相手は使用人の中でも近い距離にいるか、私の生活を知り得る共犯者がいるのだと思うわ」
クローゼットの細工を確認に来たサルジャンは思案顔だ。
「とすると、今も普通に動き回っているトリーを見て、毒が効いていないようならまた現れる可能性が高いな」
「ええ、しばらくは体調が優れないと言って、早めに横になるようにすれば、誘き寄せることができるから」
「・・・。あまり気は進まない」
「ナイジェルス様の襲撃と繋がっているなら、その糸を掴まねばなりません!そのためなら少しくらい危険でもやってみせますわ。護衛たちもしっかり守ってくれています」
仕方なさそうに、こくんとユートリーに同意したサルジャンが、はっと思い出した。
「そうだ!さっき父上が、ナイジェルス殿下が襲撃されたことを使用人たちにも公にしたんだ。ソイスト公爵家は剣で襲われても王家に引けを取らない優秀な護衛に守られているし、特に私とトリーは毒も幼少から体を慣らしていたから心配するなというようなことも話されていた。タラも誰かに聞かれたら話を合わせておくようにな」
「畏まりました。毒慣らしされていたんですね!」
「いや、してないぞ」
即答する。
「え?嘘?・・・なるほど!そうすればすぐに毒が効かなくても効きにくいと思わせることができますね!」
タラが鬼の首でも取ったようにサルジャンに被せる。
「ああ。即死するような毒では流石にそうはいかないが、毒が足りなかったとまた奴らが動いてくれれば、我々は反撃の機会を作れるだろう」
なるほどなるほどと独り言ちながら、手をポンと叩くタラを見るユートリー。
「兄様、この毒は即死などはしないものだと思います。ゆっくり苦しめるみたいなことを言って笑ってましたもの」
時戻りの前に聞いたことだが、今度もゆっくり効くものに違いないと思ってユートリーは何の気なく呟いた。
「なんだと?ゆっくり苦しめる?おのれ・・・捕まえたらこの私が必ずや、殺してくれと頼むほどの目に合わせてやるぞ」
サルジャンの目が怒りのせいか赤味を帯びてくる。そしてタラも。
「そんなひどいっ!髪を丸坊主に刈り取って、顔を泥で汚し、みすぼらしい服を被せて道に括り付けてやりましょう!」
こう見えてタラも男爵家出身である。貴族の令嬢が思いつく限りの酷い目に合わせてやろうと、サルジャンに思いの丈を吐露して、ふたりは握手を交わした。
「はいはい、ぎっちぎちのぎったんぎったんにしてやってくださいませ。それより兄様、ナイジェルス様は見つかったのでしょうか」
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