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第1章
第24話 ナイジェルスとサルジャン
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ニイズと無事に合流したナイジェルスは、森深くに隠されたソイスト侯爵家の別邸に匿われた。
遅れて着いてきた侍従や彼らが乗ってきた馬たちも欠けることなく回収されて。
早速話をしようと意気込んだサルジャンに、ナイジェルスが
手を合わせて頼み込んだ。
「頼むジャン!まずは湯浴みを、湯をかぶるだけでもいいからさせてくれ」
「ああ、やっと一息つけたよサルジャン」
数日ぶりの湯浴みを終え、さっぱりした顔のナイジェルスに、サルジャンはいくつかわかっている事実を告げることにした。
「実はトリーも襲われました」
「なにっ!トリーは無事なのか?」
「はい、未然に防ぐことができましたので」
「よかったっ!トリーにもしものことがあったらと思ったら心臓が止まるかと思った」
ナイジェルスが落ち着かせるようにとんとんと、自分の胸を叩いている。
「言葉が足りず、申し訳ございません」
「いや、トリーが無事ということさえわかればいいんだ。それで犯人はわかっているのか?」
避けることはできない、当たり前の、しかしとても答え難い質問を投げかけられ、サルジャンは息を呑んだ。
「はい・・・。トリーに毒を盛ったのは」
「毒っ?無事だと言ったが、飲んではいないのか」
「はい、賊はトリーが寝ていると思って水差しに毒を仕込んだのですが、当のトリーはまだ寝ておらず、侵入者に気づいて寝たふりを装い、現場を見ていたのです。故にほんの一滴も口にはしておりません」
「なんと!運がよかった。例え解毒ができても後遺症が残ることがあるからな。しかし寝たふりか・・・刃物などで襲われなくてよかったよ。ではトリーがその犯人を見たのか?」
こくんと、サルジャンが頷いて。
「実行犯を目撃しましたので、その者に指示をした者も調査の上確認済です」
「私の知る者か?」
躊躇いがちに、またこくんとサルジャンが頷く。
「・・・」
王子にミイヤの名を出したら、ミイヤにはもう助かる術はない。
親を亡くしたばかりの七歳のミイヤが、リラに手を引かれて屋敷に連れられてきた時のことを思い出して、ほんの一瞬サルジャンはぼんやりとした。
「ジャン?」
ナイジェルスに愛称を呼ばれて、サルジャンは意識が散漫だったことに気がつく。
「も、申し訳こざいません」
「いや。屋敷の中の者なのか?」
「・・・はい。・・・・ミイヤです」
「なにっ?ミイヤ嬢だと?何かの間違いではないのか?ちゃんと調べたのか?」
「はい、もちろんでございます。残念ながらトリーに関してはミイヤで間違いございません」
ナイジェルスは自身の額に手を当て、何故なんだと呻いている。
「ミイヤが使った毒がこの国では入手しずらい非常に珍しいものだと判明致しまして、それをミイヤが入手することは至難。黒幕は別にいると見て探っております」
「なあジャン、本当に本当にトリーは大丈夫なのか?」
珍しい毒と聞くと王子はまた不安になる。
「そこは大丈夫です、ほんの少しも飲んでいません。それに今トリーにはソイスト暗部の護衛をつけて、全方向から警護させていますからご安心ください。それより殿下は大丈夫だったのですか」
「ああ。まあ際どかったが。虫の知らせでもあったのか、兄上が出発直前に護衛を増やしてくれていたのだよ、お陰で全員返り討ちにしてやることができた」
はははと笑ったナイジェルスは、久しぶりに熱く美味い茶を口にした。
遅れて着いてきた侍従や彼らが乗ってきた馬たちも欠けることなく回収されて。
早速話をしようと意気込んだサルジャンに、ナイジェルスが
手を合わせて頼み込んだ。
「頼むジャン!まずは湯浴みを、湯をかぶるだけでもいいからさせてくれ」
「ああ、やっと一息つけたよサルジャン」
数日ぶりの湯浴みを終え、さっぱりした顔のナイジェルスに、サルジャンはいくつかわかっている事実を告げることにした。
「実はトリーも襲われました」
「なにっ!トリーは無事なのか?」
「はい、未然に防ぐことができましたので」
「よかったっ!トリーにもしものことがあったらと思ったら心臓が止まるかと思った」
ナイジェルスが落ち着かせるようにとんとんと、自分の胸を叩いている。
「言葉が足りず、申し訳ございません」
「いや、トリーが無事ということさえわかればいいんだ。それで犯人はわかっているのか?」
避けることはできない、当たり前の、しかしとても答え難い質問を投げかけられ、サルジャンは息を呑んだ。
「はい・・・。トリーに毒を盛ったのは」
「毒っ?無事だと言ったが、飲んではいないのか」
「はい、賊はトリーが寝ていると思って水差しに毒を仕込んだのですが、当のトリーはまだ寝ておらず、侵入者に気づいて寝たふりを装い、現場を見ていたのです。故にほんの一滴も口にはしておりません」
「なんと!運がよかった。例え解毒ができても後遺症が残ることがあるからな。しかし寝たふりか・・・刃物などで襲われなくてよかったよ。ではトリーがその犯人を見たのか?」
こくんと、サルジャンが頷いて。
「実行犯を目撃しましたので、その者に指示をした者も調査の上確認済です」
「私の知る者か?」
躊躇いがちに、またこくんとサルジャンが頷く。
「・・・」
王子にミイヤの名を出したら、ミイヤにはもう助かる術はない。
親を亡くしたばかりの七歳のミイヤが、リラに手を引かれて屋敷に連れられてきた時のことを思い出して、ほんの一瞬サルジャンはぼんやりとした。
「ジャン?」
ナイジェルスに愛称を呼ばれて、サルジャンは意識が散漫だったことに気がつく。
「も、申し訳こざいません」
「いや。屋敷の中の者なのか?」
「・・・はい。・・・・ミイヤです」
「なにっ?ミイヤ嬢だと?何かの間違いではないのか?ちゃんと調べたのか?」
「はい、もちろんでございます。残念ながらトリーに関してはミイヤで間違いございません」
ナイジェルスは自身の額に手を当て、何故なんだと呻いている。
「ミイヤが使った毒がこの国では入手しずらい非常に珍しいものだと判明致しまして、それをミイヤが入手することは至難。黒幕は別にいると見て探っております」
「なあジャン、本当に本当にトリーは大丈夫なのか?」
珍しい毒と聞くと王子はまた不安になる。
「そこは大丈夫です、ほんの少しも飲んでいません。それに今トリーにはソイスト暗部の護衛をつけて、全方向から警護させていますからご安心ください。それより殿下は大丈夫だったのですか」
「ああ。まあ際どかったが。虫の知らせでもあったのか、兄上が出発直前に護衛を増やしてくれていたのだよ、お陰で全員返り討ちにしてやることができた」
はははと笑ったナイジェルスは、久しぶりに熱く美味い茶を口にした。
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