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第30話
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─まさかその世話を私に?いえ、それならトーソルド様を屋敷に連れて帰るなんてなさらないはず─
「大丈夫だ、トーソルドの面倒は伯爵家で見るから」
テューリンが告げた。
「でも、形ばかりと言っても私の夫ですから・・・」
アニエラは苦しげにそう吐き出したが、落ち着かせるようにトリアが義妹の手を握ってやる。
「トーソルドは年金を貰うことができるから、それでメイドを雇おうと考えているんだ。離れで暮せば何かあればいつでも様子を見に行ける。ただ・・・」
テューリンが続ける。
「今までのようにアニエラの生活費を確保できなくなるかもしれないので、それは伯爵家から支援するよ」
「え!いえ、そんな大丈夫ですわ。アトリエも順調ですし、今は身に余るほどのお仕事を頂いておりますの。自分の収入で使用人たちも雇い続けられると考えておりますわ」
テューリンが見込んだとおりのようだ。
「それにどちらにしても」
迷いながら話をしている様子のアニエラに、皆がドキリとする。
「じきに三年ですから」
それは離婚申立てをするということに違いない。すべては言わなかったが、家族たちは皆理解した。
「そうか。・・・だとしたらトーソルド有責だから慰謝料を」
ジャブリックは言いかけてハッとする。
今のトーソルドには慰謝料を準備することができない。いくら年金が出ると言ってもこれからの自分を養うので精一杯だろう。
伯爵家から出すか・・・と考えたのがアニエラにはよくわかった。
「お義父様、慰謝料の代わりに屋敷を頂けないでしょうか?現金を貰って新たな家を探すより、使用人たちと今までの生活を続けたいのです」
渡りに船・・・という提案だった。
あの屋敷を買うより、慰謝料の方が高いだろう。それで手を打つと言ってくれたアニエラに、ロイリーの家族たちは頭を下げた。
「その日が参りましたら、またお報せいたしますわ」
「ああ。アニエラ、トーソルドのことは本当に何もかもすまなかった」
「いいえ、そのおかげで私は今のアトリエを手に入れましたもの」
「ヨヌク家には私からお詫びに伺うよ」
「まあ、ありがとうございます。そうして頂けると・・・」
両親にはいつも笑って大丈夫だと言っていた。今さら白い結婚で離婚するとは・・・わかっているかもしれないが言いづらい。
ジャブリックが伝えてくれるならありがたいと心から思えた。
「大丈夫だ、トーソルドの面倒は伯爵家で見るから」
テューリンが告げた。
「でも、形ばかりと言っても私の夫ですから・・・」
アニエラは苦しげにそう吐き出したが、落ち着かせるようにトリアが義妹の手を握ってやる。
「トーソルドは年金を貰うことができるから、それでメイドを雇おうと考えているんだ。離れで暮せば何かあればいつでも様子を見に行ける。ただ・・・」
テューリンが続ける。
「今までのようにアニエラの生活費を確保できなくなるかもしれないので、それは伯爵家から支援するよ」
「え!いえ、そんな大丈夫ですわ。アトリエも順調ですし、今は身に余るほどのお仕事を頂いておりますの。自分の収入で使用人たちも雇い続けられると考えておりますわ」
テューリンが見込んだとおりのようだ。
「それにどちらにしても」
迷いながら話をしている様子のアニエラに、皆がドキリとする。
「じきに三年ですから」
それは離婚申立てをするということに違いない。すべては言わなかったが、家族たちは皆理解した。
「そうか。・・・だとしたらトーソルド有責だから慰謝料を」
ジャブリックは言いかけてハッとする。
今のトーソルドには慰謝料を準備することができない。いくら年金が出ると言ってもこれからの自分を養うので精一杯だろう。
伯爵家から出すか・・・と考えたのがアニエラにはよくわかった。
「お義父様、慰謝料の代わりに屋敷を頂けないでしょうか?現金を貰って新たな家を探すより、使用人たちと今までの生活を続けたいのです」
渡りに船・・・という提案だった。
あの屋敷を買うより、慰謝料の方が高いだろう。それで手を打つと言ってくれたアニエラに、ロイリーの家族たちは頭を下げた。
「その日が参りましたら、またお報せいたしますわ」
「ああ。アニエラ、トーソルドのことは本当に何もかもすまなかった」
「いいえ、そのおかげで私は今のアトリエを手に入れましたもの」
「ヨヌク家には私からお詫びに伺うよ」
「まあ、ありがとうございます。そうして頂けると・・・」
両親にはいつも笑って大丈夫だと言っていた。今さら白い結婚で離婚するとは・・・わかっているかもしれないが言いづらい。
ジャブリックが伝えてくれるならありがたいと心から思えた。
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