76 / 99
外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う6 ─リリアンジェラ─
しおりを挟む
「王妃様に拝謁賜ります、モリーン・テルドでございます」
「モリーン・・・」
珍しく口籠った王妃は、深く一呼吸すると静かに話し始めた。
「モリーン、貴女をリリアンジェラの乳母から、リリアンジェラの宮から外します。
来賓のお客様方を饗す係に回すから、すぐ荷物をまとめて接待部に移りなさい」
接待部も勿論とても大切な仕事である。
しかし、役職者ならいざ知らず、王女付女官から接待部の一係に回されるというのは明らかな左遷、降格だ。
「お、お待ち下さいっ!何故どうしてですか?リリアンジェラ殿下は最近お言葉が乱れており、私が直して差し上げねばなりません」
やはりわかっていないのだと、パリスは小さなため息の後にモリーンに話し始めた。
「貴女に任せてから、リリはどんどんと表情を無くしていくわ」
「はい、淑女は感情を表に出してはなりませんから、リリアンジェラ殿下は大変優秀でいらっしゃいますわ」
「モリーン、本当にわかっていないようね。陛下と私はリリを人形にしてほしいわけじゃないわ。信じられないくらい小さな頃から一人で本を読むような早熟なこどもよ。放っておけば、本からの知識だけでどんどんと頭でっかちになってしまう。
服を汚すことがあってもいいのよ、言葉が乱れてもちゃんと使い分けできればそれでいい。泣いたり笑ったりすることを取り上げるような教育なら、いらないの」
パリスは、モリーンがやってきたことを否定した。
「え・・・あの、王妃様?」
「残念だわ。でもこれは貴女に任せてしまった私の責任・・・。
私はリリに今しかできない楽しいことを、たくさん経験してたくさん笑い転げてほしいと思っているの。貴族の、まして王族の令嬢は大人になったらそんなことできなくなるのだから。今しかできないことをたくさんたくさん経験させたいのよ。だから貴女ではダメなの、これは決定よモリーン・テルド」
パリスは、モリーンに異を唱えさせることなく、扉を指差して退出を促した。
「リリに挨拶くらいは構わないけれど、それ以上貴女の意見や考えを言うのは許されないと弁えなさい」
その頃リリアンジェラは、カテナと遊び疲れて、一緒に本を読んでいた。
と言ってもカテナはまだ文字が読めないので、リリアンジェラが絵本を読んでやっている。
逆のような気もするが、自分の前で臆面もなく出来ないことを見せてしまうカテナに、感じたことのない安心感を感じていた。
まるで双子王子のような気安さも。
カテナが来るようになって初めて、庭を走ったり、手を汚して花を詰んだり、カテナが持ってきたままごとセットで遊んだりもした。ぬいぐるみの熊や兎とカテナとで、四阿のティーテーブルで茶会の真似事をしたのも初めて。
本で読んだ時はこどもっぽい遊びだと馬鹿にしていたが、やってみたらとても楽しくて!
だからといって歳に見合わぬ聡明さや冷静さを失ったわけでも、淑女らしさを失ったわけでもない。
今まで経験したことがなかった、同年齢の令嬢たちとの当たり前の交流が、当たり前に楽しかったというだけ。
しかしそれを知った国王夫妻が殊の外喜んで、カテナを連れてきたマイラ・ソグへの信頼を高めたのは、モリーンにとって皮肉なことだった。
「モリーン・・・」
珍しく口籠った王妃は、深く一呼吸すると静かに話し始めた。
「モリーン、貴女をリリアンジェラの乳母から、リリアンジェラの宮から外します。
来賓のお客様方を饗す係に回すから、すぐ荷物をまとめて接待部に移りなさい」
接待部も勿論とても大切な仕事である。
しかし、役職者ならいざ知らず、王女付女官から接待部の一係に回されるというのは明らかな左遷、降格だ。
「お、お待ち下さいっ!何故どうしてですか?リリアンジェラ殿下は最近お言葉が乱れており、私が直して差し上げねばなりません」
やはりわかっていないのだと、パリスは小さなため息の後にモリーンに話し始めた。
「貴女に任せてから、リリはどんどんと表情を無くしていくわ」
「はい、淑女は感情を表に出してはなりませんから、リリアンジェラ殿下は大変優秀でいらっしゃいますわ」
「モリーン、本当にわかっていないようね。陛下と私はリリを人形にしてほしいわけじゃないわ。信じられないくらい小さな頃から一人で本を読むような早熟なこどもよ。放っておけば、本からの知識だけでどんどんと頭でっかちになってしまう。
服を汚すことがあってもいいのよ、言葉が乱れてもちゃんと使い分けできればそれでいい。泣いたり笑ったりすることを取り上げるような教育なら、いらないの」
パリスは、モリーンがやってきたことを否定した。
「え・・・あの、王妃様?」
「残念だわ。でもこれは貴女に任せてしまった私の責任・・・。
私はリリに今しかできない楽しいことを、たくさん経験してたくさん笑い転げてほしいと思っているの。貴族の、まして王族の令嬢は大人になったらそんなことできなくなるのだから。今しかできないことをたくさんたくさん経験させたいのよ。だから貴女ではダメなの、これは決定よモリーン・テルド」
パリスは、モリーンに異を唱えさせることなく、扉を指差して退出を促した。
「リリに挨拶くらいは構わないけれど、それ以上貴女の意見や考えを言うのは許されないと弁えなさい」
その頃リリアンジェラは、カテナと遊び疲れて、一緒に本を読んでいた。
と言ってもカテナはまだ文字が読めないので、リリアンジェラが絵本を読んでやっている。
逆のような気もするが、自分の前で臆面もなく出来ないことを見せてしまうカテナに、感じたことのない安心感を感じていた。
まるで双子王子のような気安さも。
カテナが来るようになって初めて、庭を走ったり、手を汚して花を詰んだり、カテナが持ってきたままごとセットで遊んだりもした。ぬいぐるみの熊や兎とカテナとで、四阿のティーテーブルで茶会の真似事をしたのも初めて。
本で読んだ時はこどもっぽい遊びだと馬鹿にしていたが、やってみたらとても楽しくて!
だからといって歳に見合わぬ聡明さや冷静さを失ったわけでも、淑女らしさを失ったわけでもない。
今まで経験したことがなかった、同年齢の令嬢たちとの当たり前の交流が、当たり前に楽しかったというだけ。
しかしそれを知った国王夫妻が殊の外喜んで、カテナを連れてきたマイラ・ソグへの信頼を高めたのは、モリーンにとって皮肉なことだった。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる