【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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「答えは如何に?」

 カーライルの空気を揺らすような低い声に、心を乱されながらゾーナが答えようとする。

「はっ、ははあ、あの、つ、連れもど・・」
「あ?なんだ、よく聞こえなかったが。なあ、まさかそんな馬鹿息子を連れ戻したとして、何もなかったことのようにまた私のパルティアに押し付けようなどと思っていないよな?」

 ハッと、目を開けて顔を上げたゾーナは、思わずカーライルの顔を見てしまう。
 声と表情が違い過ぎたのだ!
もう歯が鳴るどころではなくカタカタと音が立つほどに震えてしまい、うまく体を支えられなくなっていた。

「答えよ、愚かなそなたの息子はどこだ?」
「そ、それがけ、今朝とつぜ、ん」
「今朝消えたのか、誰とだ?」
「わ、わから」
「なんだ、わからんのか?おまえはそれでも親か?監督不行き届きにもほどがある!これを読め!」

 冷たく吐き捨て、皺だらけの手紙をゾーナに向かって放り投げる。
 ぱっと拾って読み始めたゾーナからは、炙られでもしたかのように脂汗がダラダラと流れ落ちていった。

 その様を横目に見ながら、カーライルが控えていたベニーに部下ソダルを呼ぶよう言った。

「ソ・・ダル?ソダル・ランデ?いや、それはあのやめ」
「なんだ、此後に及んでソダルに追跡させるのを止めてくれなどと厚かましいことは言わないよな」

 そう言われてゾーナは自分の口を手で押さえる。

 ─ソダル・ランデが出て来るのであれば、もうオートリアスは切り捨てるしかない─

 ここまで慈しんで育てた息子なのだ。馬鹿なことをして腹ただしいが、できれば息子共々助かりたかった。しかしダメなら自分たちだけでもと頭を切り替えるしかない。

 カーライルの部下ソダル・ランデは、カーライルに気に入られるほどの勇猛さを持ちながら、一つ特筆すべき能力があった。
まるで鼻の良い猟犬のように、探し人を見つけ出すのだ。
 隠れていた武将、逃げ落ちたと思わせて潜んでいた敵をことごとく見つけ出した手腕と、燃えるような髪色から赤い猟犬と呼ばれている。
 彼から逃げ延びた者は未だいないと言われているのだ。まだ学院を出たばかりのオートリアスでは太刀打ちなんて絶対に出来っこない。そう思い至り、ベンベロー侯爵家をどうカーライルから守るかに集中していった。

 執事が戻り、すまなそうに頭を下げる。

「旦那様、申し訳ございません。ソダル様は探索のためにヤイナスに出ておられ、戻りはおおよそ一月の後とのこと」
「なんだと?また遠い所に!タイミングの悪いやつめ。仕方ないな、では急ぎ戻れと伝令を打て」

 カーライルは苛つきを見せたが、ゾーナはほっと安心の息を吐き出した。

しばらく時間ができたのだ。
その間になんとか自力でオートリアスを見つけ出さねば!と。
そして自らもなんとか良い立ち回りを考えねばと、頭を巡らせていた。
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