【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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 カーライルが腹心ソダルを動かしオートリアスを追っているとき、パルティアはエルシドに行く支度を整えていた。

 ダルディーン・ムイゾリオと彼が雇った現場監督を連れていくため、前回より支度も増えた。
馬車六台、どの馬車にも人や荷物がぎっしりと詰め込まれている。

「ではお父さまお母さま!またしばらく留守に致しますがよろしくお願い致します」
「ああ、パルティア!くれぐれも気をつけて」

 スーラがハンカチを握りしめて馬車に手を振りながら、あのときとは違う、行く先に幸せが待ち受けていることを知る笑顔のパルティアを見送った。

「行ってしまいましたわ」
「ああ」

 視線を空に向け、しばらく雲を追っていたカーライルがふっと思い出したように告げる。

「スーラ。セリアズ公爵からの話、受けようと思うんだ。パルティアもアレクシオス様を気に入っているようだし、何よりもパルティアを狙う他の馬鹿者がいることが判明した」
「まあ!」
「そいつがオートリアスを唆したようだ」
「ひどい、なんてこと!」

 カーライルがうんと頷いて先を続ける。

「幸いそいつに付け込まれる前に、パルティアはアレクシオス様と出逢った。
セリアズ公爵家が後ろにつけば、パルティアはもちろん我らも安泰」
「そう・・・ですわね。エルシドから戻ったパルティアは、ずっとアレクシオス様のことばかり話していましたし、本人が良ければよろしいと思いますわ」

 ランバルディがいつまでも戻らないようなら、自分がエルシドに行って話しても良いと。
エイリズ・ベンベローの話をした時のランバルディの反応を想像すると、笑いがこみ上げた。

 ─ランバルディ卿に真実を教えたら、ゾーナ・ベンベローはバカ息子二人のために潰されるかもしれん。
 許す気などさらさらない。
バカを育てたベンベロー侯爵夫妻も同罪だ。
 スイーズが見つけ出した、エイリズの怪しい連れと親しくしている使用人は。
裏切者かと心配したが、パルティアの行き先を漏らさなかったのは僥倖だった。
本当はそんな付き合いは止めさせたいところだが、今下手に圧力をかけてこちらの動きを相手に知られてはまずい。今回はそのままパルティアに同道させ、エンダラインから出立させたので、ここから情報が漏れることはないだろう。

 もし、パルティアがアレクシオスと共にいると知ったら、エイリズがまた何かをしかけるかもしれないので、念のために護衛を増やしはしたが─

 だいぶ遠くに、小さく見えるようになった馬車からパルティアが手を振っているのが見える。

 ─セリアズと手を組んでベンベローを潰し、パルティアの幸せを守ってやる─

 カーライルは誓うようにその言葉を胸に刻んでいた。
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