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「何が!何が騙されただ、この恥知らずめっ!おまえたちのせいで危うく我が家は降爵、悪く転がれば取り潰されてもおかしくなかった。セリアズ公爵閣下とエンダライン侯爵の寛大な御厚意がなければとっくにだ」
「どうせその代わりに金を毟り取られたんだろう!」
カーライルはこのとき、オートリアスのあまりの愚かさに婿に来なくて本当によかったと胸を撫で下ろした。
「毟り取られただと?人聞きの悪いことを言うな。支払って当然の慰謝料ではないか。そもそもおまえが駆け落ちなどしなければ払うことはなかった金だ」
「だからそれは」
「ああ、すまないが我らも暇ではない。そんな話を延々聞かされても困るのだが」
「あ、申し訳ございませんでした」
「こちらから話しても?」
ベンベロー侯爵は頷いたが、オートリアスは叫びまくる。
「ダメだ父上!こいつらは私をまるで犯罪者のように扱って、私に罪をなすりつける気なんだ」
「オートリアス・ベンベローよ、ちと訊ねるが」
あまりの勘違いぶりにうんざりしてきたランバルディが割って入った、
「おまえは出奔してベンベロー家に多大な損害を与えたであろう?例えそれが弟に騙されたものだとしても、アレクシオスという婚約者がいたライラ・シリドイラを選んだのは己自身、自らも婚約者を裏切り、手に手を取って逃げることを選んだのも己自身ではないか?」
「いや、だからそれは」
「だからもそれもない、結果がすべてなのだ。たとえ弟がおまえを嵌めようと、おまえがパルティア嬢を裏切らなければ何一つとして事が起きることはなかったのだぞ」
さすがに言い訳も苦しくなってきたオートリアスは唇を噛んだ。
「本当はアレクシオスとパルティア嬢の前で断罪をしてやりたかったが、パルティア嬢をゴルドーに置いてきてよかったようだ。これ以上がっかりさせずに済む」
「しかし一体なぜ昨日ゴルドーに行ったのだ?」
ランバルディとカーライルが立て続けに訊ねる。皆昨日何が起きたかはランバルディの手紙で知っているが、何故パルティアに金を返せと言ったのか知りたがっている。
「金を、私の金を」
「おまえの金とは一体何のことだ?」
そろそろ苛々が限界に近いランバルディの声音がキツくなる。
「うちから取った金は、私のものだから返してもらおうと思っただけだ」
─ん?─
物事を斜め上から見下ろすとこんな感じだろうかと、カーライルは考えていた。
「いい加減にしたまえ」
低い声がした。
「パルティアを傷つけたにも関わらず、自ら償うこともせず、運命と手を取った女性を守ることもせず、その上実家が賠償した金は自分のものだから返せだと?とてもまともとは思えない。それとも狂っているのか?」
アレクシオスが怒りを燃やしながら、静かに語りかける。
「申し訳ございません、貴方様にも大変な御迷惑をお掛け致し、代わりに謝罪致します」
オートリアスを突き飛ばすと、アレクシオスの前に土下座をするベンベロー侯爵だが
「私はこの男に訊ねているのです」
侯爵を退け、オートリアスに重ねて訊いた。
「いい気なもんだな、ライラを私に盗られたくせに」
立っていたら唾くらい吐きかけてやりたかったオートリアスだが。
「ああ、お陰様でライラより素晴らしい婚約者と出逢うことができた。
なるほど、今もまだわかっていないのだな、パルティアの優しさや美しさ、聡明さが。あれほど素晴らしい女性だというのに残念なことだ」
「はあ?あれのどこにライラが劣ると?」
隣りにカーライルがいることを忘れてうっかり貶めるようなことを口走ると、立ち上がったカーライルが靴の爪先でオートリアスの脇腹をぎゅうっと踏み上げた。
「ぎゃっ」
しかし誰も止めない。
「いつっ、痛いっ止めろ!やめてくれ」
悲鳴を上げてもカーライルがやめることはない。
「おまえに言われる筋はない」
酷く冷たい声で言うと、爪先に一際強く力を込めていった。
「どうせその代わりに金を毟り取られたんだろう!」
カーライルはこのとき、オートリアスのあまりの愚かさに婿に来なくて本当によかったと胸を撫で下ろした。
「毟り取られただと?人聞きの悪いことを言うな。支払って当然の慰謝料ではないか。そもそもおまえが駆け落ちなどしなければ払うことはなかった金だ」
「だからそれは」
「ああ、すまないが我らも暇ではない。そんな話を延々聞かされても困るのだが」
「あ、申し訳ございませんでした」
「こちらから話しても?」
ベンベロー侯爵は頷いたが、オートリアスは叫びまくる。
「ダメだ父上!こいつらは私をまるで犯罪者のように扱って、私に罪をなすりつける気なんだ」
「オートリアス・ベンベローよ、ちと訊ねるが」
あまりの勘違いぶりにうんざりしてきたランバルディが割って入った、
「おまえは出奔してベンベロー家に多大な損害を与えたであろう?例えそれが弟に騙されたものだとしても、アレクシオスという婚約者がいたライラ・シリドイラを選んだのは己自身、自らも婚約者を裏切り、手に手を取って逃げることを選んだのも己自身ではないか?」
「いや、だからそれは」
「だからもそれもない、結果がすべてなのだ。たとえ弟がおまえを嵌めようと、おまえがパルティア嬢を裏切らなければ何一つとして事が起きることはなかったのだぞ」
さすがに言い訳も苦しくなってきたオートリアスは唇を噛んだ。
「本当はアレクシオスとパルティア嬢の前で断罪をしてやりたかったが、パルティア嬢をゴルドーに置いてきてよかったようだ。これ以上がっかりさせずに済む」
「しかし一体なぜ昨日ゴルドーに行ったのだ?」
ランバルディとカーライルが立て続けに訊ねる。皆昨日何が起きたかはランバルディの手紙で知っているが、何故パルティアに金を返せと言ったのか知りたがっている。
「金を、私の金を」
「おまえの金とは一体何のことだ?」
そろそろ苛々が限界に近いランバルディの声音がキツくなる。
「うちから取った金は、私のものだから返してもらおうと思っただけだ」
─ん?─
物事を斜め上から見下ろすとこんな感じだろうかと、カーライルは考えていた。
「いい加減にしたまえ」
低い声がした。
「パルティアを傷つけたにも関わらず、自ら償うこともせず、運命と手を取った女性を守ることもせず、その上実家が賠償した金は自分のものだから返せだと?とてもまともとは思えない。それとも狂っているのか?」
アレクシオスが怒りを燃やしながら、静かに語りかける。
「申し訳ございません、貴方様にも大変な御迷惑をお掛け致し、代わりに謝罪致します」
オートリアスを突き飛ばすと、アレクシオスの前に土下座をするベンベロー侯爵だが
「私はこの男に訊ねているのです」
侯爵を退け、オートリアスに重ねて訊いた。
「いい気なもんだな、ライラを私に盗られたくせに」
立っていたら唾くらい吐きかけてやりたかったオートリアスだが。
「ああ、お陰様でライラより素晴らしい婚約者と出逢うことができた。
なるほど、今もまだわかっていないのだな、パルティアの優しさや美しさ、聡明さが。あれほど素晴らしい女性だというのに残念なことだ」
「はあ?あれのどこにライラが劣ると?」
隣りにカーライルがいることを忘れてうっかり貶めるようなことを口走ると、立ち上がったカーライルが靴の爪先でオートリアスの脇腹をぎゅうっと踏み上げた。
「ぎゃっ」
しかし誰も止めない。
「いつっ、痛いっ止めろ!やめてくれ」
悲鳴を上げてもカーライルがやめることはない。
「おまえに言われる筋はない」
酷く冷たい声で言うと、爪先に一際強く力を込めていった。
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