【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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「そろそろ結論を出したいのだが」
「ふざけるな!何が結論だ!私をこんな拘束したままで不当だ!不当な捕縛だあ」

 叫びまくるオートリアスに心底うんざりしたランバルディが、ガッと脇腹に蹴りを入れる。

「ゔぅっ」
「黙れ!まったく貴殿はどのような躾をしてきたのやら」

 まだ土下座をしたままのベンベロー侯爵の顔を上げさせて嫌味を言うと、またオートリアスに向き直った。

「今ここにいる貴族の中では私が頂点なのだよ、わかるか?これが現実だ。しかもこれはただの言いがかりではなく、あらゆる事柄はすべておまえ自身が引き起こしたことで証拠もある。
おまえの意思など考慮せねばならんことは一つもないのだよ。
おまえの身柄をベンベローが引き受けるかによってこれから先の処遇が決まるのだから、しばらく黙っておれ!」

 ─このところメニアとほわほわ過ごしているようだが、これが本来のランバルディだな。いや、本当はもっと苛烈な人物のはず。期せずとして同志となれたこと、幸いであったな─

 いままでずっと反目しあっていただけだが、一度事を構えたら追及の手を緩めることはない。
 カーライルはエンダライン一族がセリアズ公爵の長い腕の中に収まったことに安堵を覚えつつ、シリドイラ、ベンベロー両家への今後の仕打ちを想像すると寒気を覚えた。
 今回のことでまた、ベンベローは財産の一部を失うことになるのだろう。どちらかといえば汚れ仕事なのに、ランバルディは率先して絞り上げにいっている。
アレクシオスが絡むせいなのか?
それともいつもこうなのか。
付き合いが浅いため図りかねるが、メニアといる姿を見る限り、一度手中に収めた者に対しては寛大なようである。

 ─いずれにしても、付き合い方を間違えなければ王族以外では最強の味方だな。それにしてもオートリアスがここまでバカだとは。つける薬がないな─

「仮に、我がセリアズに貰い受けるとしたらもちろん強制労働だ。我が家は金山を領地に持つからな、当然そこに行かせる」

 鉱山は懲罰的使役にもっともよく利用されている。
その過酷さは誰もが知るもので、オートリアスの目に初めて怯えが見て取れる様になった。

「弟エイリズはベンベローの鉱山にいるのだろう?ではおまえは私の金山へ送ってやろう」
「我がエンダラインに来たいというなら、炭鉱にて労役させよう。深く空気が薄いところで真っ黒になりながら石炭を掘るのだよ。うむ、我がパルティアを傷つけた罪としては軽いと思えるが、悪くはない」
「そうか?カーライルは甘いな。私の金山は崩落しやすい危険なところを選ぶつもりだ。そのくらいでなければ納得できぬからな。して、ベンベロー侯爵」

 普通、このような場では爵位などで呼び方を統一するものだが、ランバルディたちはあえて、自分たちはファーストネームで呼び合って親しさや連携を見せつけ、ベンベローだけ爵位呼びをしてその溝の深さを見せつけていた。
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