10 / 100
10話
しおりを挟む
「ロリーン先生、先日のお話なのですが」
「あれ?王妃様のコンテストのことかしら」
「はい。まだ間に合いますか?」
「ええ大丈夫よ、申込みは来月末ですもの。出してみる気になった?」
「はい」
頷きながら答えたナミリアは、おずおずと白いハンカチを差し出した。
「これはな・・・に?えっ?なにこれ」
ロリーンの目つきが変わった。
パッとハンカチを開くと、なんと裏にも糸が通されて表裏どちらを見ても美しい上に、外周を飾る小さな花びらのようなレースが可愛らしく。
「このレースどんな糸を使ったのかしら?」
「それは・・・秘密ですわ」
「あっ、ひみつね!」
ふふふっと二人で笑う。
もし他にない斬新な技術を思いついたとき、それは例え師匠であっても秘密にして構わないのだ。
それを教えろというような講師なら、即刻辞めさせろとロリーンがナミリアに教え込んでいた。
「わかったわ。じゃあそこは聞かない!これは素晴らしい。自分で考えたの?」
「はいモチーフは。糸は使用人たちの手を借りて用意しました」
「使用人たち?」
「糸撚りが出来る者がいるのです」
「まあっっ!糸からなの?それは欲目でなく本当に素晴らしいわ!」
今度は窓際に立ち、日差しの下で縫い目の乱れ、糸の引きや捻じれなど一つでも欠点を見つけられないものかと目を凝らすが、何も見つけられない。
ロリーンは僅かな期間に培われたナミリアの技術力と集中力の高さに舌を巻いた。
最初ナミリアはウェディングドレスに使われていたレースを思い出して、あの糸を使いたいと考えていた。
イールズ商会に尋ねたが、取り寄せに一月はかかると言う。
上質な糸や生地の殆どは遠い東国で作られており、それに代わるものはないかと編み糸を見つめていた時に、今更だが糸が数本の細い糸から撚られていることに気がついた。
短く切って解いて見ると、強い撚り癖がついていて、このままでは使えそうにないが、侍女エーラを呼んで相談すると、解した糸に水通しをしてみたらどうかと教えられる。一本にしてしまった糸の耐久性も心配になったが。
「まあこういった飾りハンカチを使う方はおられませんから心配不要です。ナミ様もお使いになられるときは私がいつもお出ししたものを使われておりますでしょう?」
「そういえばそうね」
「飾りハンカチはハンカチとして使うのではなく、本当に飾りにすぎません」
うんうんと頷くナミリア。
「ですからどれくらい保つものか、気になさることはないのでは」
深く考えずに言ったエーラが糸を覗き込んだ。
「そういえば、確か下女に家族が糸撚りをしている者がいたと記憶しております」
「うちの下女の家族がそんなことをしているの?」
「糸撚りや機織りは家の中でできますからね。織り機は簡単に買えませんが、糸撚り機なら小さくて手に入れやすいそうですよ」
「そうだったの、知らなかったわ」
「この糸をナミ様のお考えのように使うためにはどうしたらいいか、聞いてみてもらいましょうか?」
「ええ、お願い!」
エーラは久しぶりにやる気に満ちたナミリアに、心がはやっていた。
「あれ?王妃様のコンテストのことかしら」
「はい。まだ間に合いますか?」
「ええ大丈夫よ、申込みは来月末ですもの。出してみる気になった?」
「はい」
頷きながら答えたナミリアは、おずおずと白いハンカチを差し出した。
「これはな・・・に?えっ?なにこれ」
ロリーンの目つきが変わった。
パッとハンカチを開くと、なんと裏にも糸が通されて表裏どちらを見ても美しい上に、外周を飾る小さな花びらのようなレースが可愛らしく。
「このレースどんな糸を使ったのかしら?」
「それは・・・秘密ですわ」
「あっ、ひみつね!」
ふふふっと二人で笑う。
もし他にない斬新な技術を思いついたとき、それは例え師匠であっても秘密にして構わないのだ。
それを教えろというような講師なら、即刻辞めさせろとロリーンがナミリアに教え込んでいた。
「わかったわ。じゃあそこは聞かない!これは素晴らしい。自分で考えたの?」
「はいモチーフは。糸は使用人たちの手を借りて用意しました」
「使用人たち?」
「糸撚りが出来る者がいるのです」
「まあっっ!糸からなの?それは欲目でなく本当に素晴らしいわ!」
今度は窓際に立ち、日差しの下で縫い目の乱れ、糸の引きや捻じれなど一つでも欠点を見つけられないものかと目を凝らすが、何も見つけられない。
ロリーンは僅かな期間に培われたナミリアの技術力と集中力の高さに舌を巻いた。
最初ナミリアはウェディングドレスに使われていたレースを思い出して、あの糸を使いたいと考えていた。
イールズ商会に尋ねたが、取り寄せに一月はかかると言う。
上質な糸や生地の殆どは遠い東国で作られており、それに代わるものはないかと編み糸を見つめていた時に、今更だが糸が数本の細い糸から撚られていることに気がついた。
短く切って解いて見ると、強い撚り癖がついていて、このままでは使えそうにないが、侍女エーラを呼んで相談すると、解した糸に水通しをしてみたらどうかと教えられる。一本にしてしまった糸の耐久性も心配になったが。
「まあこういった飾りハンカチを使う方はおられませんから心配不要です。ナミ様もお使いになられるときは私がいつもお出ししたものを使われておりますでしょう?」
「そういえばそうね」
「飾りハンカチはハンカチとして使うのではなく、本当に飾りにすぎません」
うんうんと頷くナミリア。
「ですからどれくらい保つものか、気になさることはないのでは」
深く考えずに言ったエーラが糸を覗き込んだ。
「そういえば、確か下女に家族が糸撚りをしている者がいたと記憶しております」
「うちの下女の家族がそんなことをしているの?」
「糸撚りや機織りは家の中でできますからね。織り機は簡単に買えませんが、糸撚り機なら小さくて手に入れやすいそうですよ」
「そうだったの、知らなかったわ」
「この糸をナミ様のお考えのように使うためにはどうしたらいいか、聞いてみてもらいましょうか?」
「ええ、お願い!」
エーラは久しぶりにやる気に満ちたナミリアに、心がはやっていた。
81
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
【完結】私は本気の恋だった
キムラましゅろう
恋愛
ミルチアは語って聞かせる。
かつて身をやつした最初で最後の恋の話を。
はじめて愛した人は、嘘偽りで塗り固められた人。
騙されていたと知ったとき、ミルチアは全てを捧げ、そして全てを捨てて逃げ出した。
だけど嘘から出た誠とはよくいったもの。ミルチアは偽りの関係からかけがえのないものを得る。
そうしてミルチアは流れ着いた港町にて一人で子を生み育てていた。
このまま親子二人で穏やかに暮らせていけたらと、そんなささやかな望みを抱くことも許されないのだろうか。
なぜ探したのか、どうして会いにきたのか。
もう二度とその双眸を見ることはないと思っていたのに……。
ミルチアが綴る恋の物語に、あなたも耳を傾けてみませんか。
小説家になろうで開催された、氷雨そら先生主催のシークレットベビー企画参加作品です。
(すでに期間は終了しております)
誤字脱字……( *ˊꇴˋ)ゴメンネ!
すでに完結している作品ですが、感想欄の管理のために数話ずつ投稿します。
だいたい1回の投稿につき5話ずつくらいです。
よろしくお願いいたします🙏✨
今回もプロローグと最終話に感想欄を解放します(。uωu))ペコリ💕
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる