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共通ルート
3話 盗難
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俺は途方にくれていた。時刻は深夜の十一時。場所はバイト先のレストランがテナントとして入居している雑居ビルの共用駐車場の一角に設けられた駐輪スペース。
そしてなぜ俺が途方にくれていたかというと、なかったからである。停めておいたはずのものが。そこにあるべきものが。
……そう、俺の自転車が。
どうやら俺は自転車盗難の被害に遭ったらしい。いつもはちゃんと鍵をかけているんだけど、今日はバイトに遅れそうになって少し急いでたから、もしかしたら施錠を忘れていたのかもしれない。
もうかなり古くなっていたし、しかもちょっと壊れかけてたから別に良いといえば良いんだけど……。
問題は今日、どうやって帰るかということなんだよな。家までは歩いて帰れない距離ではないけど、徒歩だと三十分近くかかる。数時間の立ち仕事の後は割ときつい。しかもうちの家は高台にあるから結構急な坂を上らないといけないし。
家族に電話して車で迎えに来てもらう方法もあるけど、時間帯が時間帯だけに申し訳ない。
……仕方ない。やっぱり歩くか。
それにしても今日は最悪の一日だったな。常連客の彼女はお店に来てくれなかったし、自転車は盗まれるし。
でもまあ、こんな日もあるよね。
そんなことを考えながらビルの駐車場を出て、隣接するコンビニの前を横切ろうとしていた時だった。
「あれ? もしかしてイル・マーレの店員さん?」
「……?」
えっ? 俺? イル・マーレというのは俺のバイト先のお店の名前だからたぶん俺のことだよな?
突然声をかけられた俺は、本能的に声が聞こえてきた方向に視線を向けた。するとそこには予想外の人物の姿があった。
「ごめんなさい。急に声かけられてびっくりしました?」
「あっ、い、いえ!」
「ほら、私、あれですよ、イル・マーレの常連客。覚えてるかな?」
「あっ、はい! もちろんです!」
もちろん。もちろん覚えていますとも。てか俺、最初に「あっ」って声出すのやめーや。童貞丸出しじゃねぇか……。
「よかった♪ でもこんなところで何してるの? バイト帰り?」
「あっ、はい、バイト帰りなんですけど、実は自転車を盗まれてしまって……」
いや要らんこと言うな俺。てかまた「あっ」って言ったし。
「えっ、ウソ!? じゃあ、どうやって帰るの? タクシー?」
「いや、歩いて帰ろうかな、と」
「家、近いんですか。歩いて帰れる距離?」
「三十分くらいですかね」
「えっ、遠いじゃん。しかもこんな時間に」
「そうですねぇ……」
確かに遠いけど、仕方ないからね……
「よかったら家まで送りましょうか。今日はたまたまお出かけしてたから今、車で来てるし」
そう言いながら彼女はコンビニの駐車場に止まっている一台の車を指さした。
「……えっ!? あっ、いや、そんなの申し訳ないですよ」
予想外すぎて最初は彼女の言っている言葉の意味がよく理解できなかった。彼女、俺を家まで送ってくれると言ってるんだよね? 自分の車で。
いいの? 何度も会ったことがあるとはいえ、名前も知らない男を自分の車に乗せちゃって。というかなんで? どうして俺にそんな親切を?
「いいじゃん、徒歩三十分なら車で行けばたぶん十分か十五分くらいで着くんでしょ? それに……」
そこまで言ってから彼女は、少しタメを作りながら俺の目を見つめ、悪戯っぽい笑顔を浮かべてきた。
「このチャンスを逃すと、次はないかもよ?」
そしてなぜ俺が途方にくれていたかというと、なかったからである。停めておいたはずのものが。そこにあるべきものが。
……そう、俺の自転車が。
どうやら俺は自転車盗難の被害に遭ったらしい。いつもはちゃんと鍵をかけているんだけど、今日はバイトに遅れそうになって少し急いでたから、もしかしたら施錠を忘れていたのかもしれない。
もうかなり古くなっていたし、しかもちょっと壊れかけてたから別に良いといえば良いんだけど……。
問題は今日、どうやって帰るかということなんだよな。家までは歩いて帰れない距離ではないけど、徒歩だと三十分近くかかる。数時間の立ち仕事の後は割ときつい。しかもうちの家は高台にあるから結構急な坂を上らないといけないし。
家族に電話して車で迎えに来てもらう方法もあるけど、時間帯が時間帯だけに申し訳ない。
……仕方ない。やっぱり歩くか。
それにしても今日は最悪の一日だったな。常連客の彼女はお店に来てくれなかったし、自転車は盗まれるし。
でもまあ、こんな日もあるよね。
そんなことを考えながらビルの駐車場を出て、隣接するコンビニの前を横切ろうとしていた時だった。
「あれ? もしかしてイル・マーレの店員さん?」
「……?」
えっ? 俺? イル・マーレというのは俺のバイト先のお店の名前だからたぶん俺のことだよな?
突然声をかけられた俺は、本能的に声が聞こえてきた方向に視線を向けた。するとそこには予想外の人物の姿があった。
「ごめんなさい。急に声かけられてびっくりしました?」
「あっ、い、いえ!」
「ほら、私、あれですよ、イル・マーレの常連客。覚えてるかな?」
「あっ、はい! もちろんです!」
もちろん。もちろん覚えていますとも。てか俺、最初に「あっ」って声出すのやめーや。童貞丸出しじゃねぇか……。
「よかった♪ でもこんなところで何してるの? バイト帰り?」
「あっ、はい、バイト帰りなんですけど、実は自転車を盗まれてしまって……」
いや要らんこと言うな俺。てかまた「あっ」って言ったし。
「えっ、ウソ!? じゃあ、どうやって帰るの? タクシー?」
「いや、歩いて帰ろうかな、と」
「家、近いんですか。歩いて帰れる距離?」
「三十分くらいですかね」
「えっ、遠いじゃん。しかもこんな時間に」
「そうですねぇ……」
確かに遠いけど、仕方ないからね……
「よかったら家まで送りましょうか。今日はたまたまお出かけしてたから今、車で来てるし」
そう言いながら彼女はコンビニの駐車場に止まっている一台の車を指さした。
「……えっ!? あっ、いや、そんなの申し訳ないですよ」
予想外すぎて最初は彼女の言っている言葉の意味がよく理解できなかった。彼女、俺を家まで送ってくれると言ってるんだよね? 自分の車で。
いいの? 何度も会ったことがあるとはいえ、名前も知らない男を自分の車に乗せちゃって。というかなんで? どうして俺にそんな親切を?
「いいじゃん、徒歩三十分なら車で行けばたぶん十分か十五分くらいで着くんでしょ? それに……」
そこまで言ってから彼女は、少しタメを作りながら俺の目を見つめ、悪戯っぽい笑顔を浮かべてきた。
「このチャンスを逃すと、次はないかもよ?」
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