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第13章 2度目の学園生活
100 楽しい夏がやってくる
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季節は過ぎて夏がやってきた。
王立学園では前期の最終日となり明日から夏季休暇となる。生徒たちのほとんどは実家に帰省するため各々の領地へと帰っていく。夏季休暇中でも寮にいること自体は可能だ。
けれど、せっかくの長期休暇なのだからリーベやカレナたちとも一緒にいたいと考えていた。予定がない時はカレナが学園都市に借りた家に滞在することも考えたが、折角の機会ということで王都に宿をとってリーベたちと過ごす予定だった。
カレナもいくつか用事を済ませなくてはならないらしく、私がリーベと過ごせる間に用事を済ませてくるそうだ。
「次に会うのは一週間後のマギルス公爵領に向かう時だな。少し寂しくなるな」
「溜まっている公務があるのだから仕方ないでしょ。迎えに来てくれるのを待っているわ」
コルネリアスとアスカルテは公務として王都からマギルス公爵領までのいくつかの貴族と面会を予定していた。
そこで味方を増やすことと旅行を兼ねて私も同行する手筈となっていた。二人は婚約者として王城から馬車に乗り込むため途中で私も合流する予定だ。
「リーベさんも向こうで合流するのですよね?」
「そうね。先に友人と一緒にエルフの集落に向かう予定だから」
「楽しみです。ティアの楽しそうな話を聞いていて、わたくしも会ってみたいと思ってましたから」
「エルフの集落であれば私たちは訪れたことがあるなら騒ぎにもならないだろう。私も楽しみだ」
リーベのことは仲の良い友人たちには伝えていた。週末にあった出来事などを話しているうちに興味を持ったらしく機会があれば会いたいと言っていた。
リーベもこの一月くらいで一人で出掛けることができるくらいには人間に慣れてきている。ちょうどいい機会なのでタイミングがあえば紹介するつもりだ。
「私も大切な親友を紹介したいからね。二人のことはリーベにも伝えておくわ」
二人と別れた私は、寮の部屋で荷物を整理してから学園都市の居住区にあるカレナの家に向かった。
鍵を開錠して扉を開くと小さな気配が近づいてくるのを感じた。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
家に入って直ぐにリーベが抱きついてきた。
足腰に力を入れてリーベのことを受け止めると嬉しそうに見上げる彼女と目があった。
「いつになく元気じゃない?何かいい事でもあった?」
私たちとの生活に慣れてくるにつれて子供らしい部分が見れるようになってきていたが、ここまで気分が高揚しているところを見るのは初めてだった。
「ティアと休暇を過ごせるのが嬉しいのよ。いつも寂しくても我慢するきらいがあるのだから……幼子はこうでないとね」
「プレアデス様!私はそこまで幼くありません!」
リーベはプレアデスに頭を撫でられながらも抗議の声を上げた。けれど、声音からは嬉しさが滲み出ていて表情も緩んでいる。リーベの本心が透けて見えていた。
「生まれて十年くらいは赤子と変わらないわよ。特にエルフは人間と違って成長が遅いのだもの」
「余裕で数百年以上生きる貴方たちと比べたら人間の一生なんて一瞬でしょうよ」
人間の記録が紡がれるよりも昔になる太古の時代を知る者は最上位精霊など一部の存在くらいだ。少なく見積もっても数千年は生きているプレアデスにとって私たちの一生は瞬きの間に感じるはずだ。
「でもだからこそ私は貴方たち人間が好きなのよ?一生の時間が瞬きであるからこそ人間たちは命を燃やして未来へと繋ぐ……私たち精霊やエルフもそうだけれど長命種では滅多にないことだから。まぁ、エルフののんびりとした歩みも私は好きなのだけどね」
プレアデスはそう言うとリーベの頭から手を離して優しげな笑みを浮かべた。
リーベが拗ねたような表情でプレアデスのことを見上げていると奥からカレナがやってくる。
「二人とも楽しそうですよね。最近はいつもこのような感じなのですよ」
「良いことじゃない?リーベには大切だと思える人を増やして欲しいからね」
プレアデスとリーベのやり取りを見ているとまるで歳の離れた姉妹のようだった。
それから穏やかで楽しい時間を過ごし夜が明けた。
早朝に学園都市を出発し王立鉄道などを使って昼前には王都へと移動する。そのまま王都の外れにある屋敷へと向かった。
「ここが隠れ家の一つですか……思ったよりも手入れされたままなのですね」
「元々、冒険者ティアの家として買ったものだからね。保護魔術も機能しているみたいだし良かったわ」
この家はラティアーナが冒険者登録した頃に冒険者ティアとして買ったもので住民登録も合わせてある。誰かが調べたとしても問題ないようにしてある隠れ家の一つだ。
それから数日間はリーベやカレナたちと王都で観光をする時間を過ごした。
私やカレナにとっては慣れ親しんだ場所だが、初めて王都を訪れたリーベにとっては珍しいものが多いらしい。
広場や大通りでの食べ歩きやお薦めされた店で食事をしたり劇場での演劇や歌劇など様々な娯楽を楽しんだりと年相応にはしゃいでいた。
そんなリーベを隣で見ていて私たちも幸せに感じる時間だった。
そして王都に着いてから一週間ほど経った今日。
マギルス公爵領へと向かう日がやってきた。
王立学園では前期の最終日となり明日から夏季休暇となる。生徒たちのほとんどは実家に帰省するため各々の領地へと帰っていく。夏季休暇中でも寮にいること自体は可能だ。
けれど、せっかくの長期休暇なのだからリーベやカレナたちとも一緒にいたいと考えていた。予定がない時はカレナが学園都市に借りた家に滞在することも考えたが、折角の機会ということで王都に宿をとってリーベたちと過ごす予定だった。
カレナもいくつか用事を済ませなくてはならないらしく、私がリーベと過ごせる間に用事を済ませてくるそうだ。
「次に会うのは一週間後のマギルス公爵領に向かう時だな。少し寂しくなるな」
「溜まっている公務があるのだから仕方ないでしょ。迎えに来てくれるのを待っているわ」
コルネリアスとアスカルテは公務として王都からマギルス公爵領までのいくつかの貴族と面会を予定していた。
そこで味方を増やすことと旅行を兼ねて私も同行する手筈となっていた。二人は婚約者として王城から馬車に乗り込むため途中で私も合流する予定だ。
「リーベさんも向こうで合流するのですよね?」
「そうね。先に友人と一緒にエルフの集落に向かう予定だから」
「楽しみです。ティアの楽しそうな話を聞いていて、わたくしも会ってみたいと思ってましたから」
「エルフの集落であれば私たちは訪れたことがあるなら騒ぎにもならないだろう。私も楽しみだ」
リーベのことは仲の良い友人たちには伝えていた。週末にあった出来事などを話しているうちに興味を持ったらしく機会があれば会いたいと言っていた。
リーベもこの一月くらいで一人で出掛けることができるくらいには人間に慣れてきている。ちょうどいい機会なのでタイミングがあえば紹介するつもりだ。
「私も大切な親友を紹介したいからね。二人のことはリーベにも伝えておくわ」
二人と別れた私は、寮の部屋で荷物を整理してから学園都市の居住区にあるカレナの家に向かった。
鍵を開錠して扉を開くと小さな気配が近づいてくるのを感じた。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
家に入って直ぐにリーベが抱きついてきた。
足腰に力を入れてリーベのことを受け止めると嬉しそうに見上げる彼女と目があった。
「いつになく元気じゃない?何かいい事でもあった?」
私たちとの生活に慣れてくるにつれて子供らしい部分が見れるようになってきていたが、ここまで気分が高揚しているところを見るのは初めてだった。
「ティアと休暇を過ごせるのが嬉しいのよ。いつも寂しくても我慢するきらいがあるのだから……幼子はこうでないとね」
「プレアデス様!私はそこまで幼くありません!」
リーベはプレアデスに頭を撫でられながらも抗議の声を上げた。けれど、声音からは嬉しさが滲み出ていて表情も緩んでいる。リーベの本心が透けて見えていた。
「生まれて十年くらいは赤子と変わらないわよ。特にエルフは人間と違って成長が遅いのだもの」
「余裕で数百年以上生きる貴方たちと比べたら人間の一生なんて一瞬でしょうよ」
人間の記録が紡がれるよりも昔になる太古の時代を知る者は最上位精霊など一部の存在くらいだ。少なく見積もっても数千年は生きているプレアデスにとって私たちの一生は瞬きの間に感じるはずだ。
「でもだからこそ私は貴方たち人間が好きなのよ?一生の時間が瞬きであるからこそ人間たちは命を燃やして未来へと繋ぐ……私たち精霊やエルフもそうだけれど長命種では滅多にないことだから。まぁ、エルフののんびりとした歩みも私は好きなのだけどね」
プレアデスはそう言うとリーベの頭から手を離して優しげな笑みを浮かべた。
リーベが拗ねたような表情でプレアデスのことを見上げていると奥からカレナがやってくる。
「二人とも楽しそうですよね。最近はいつもこのような感じなのですよ」
「良いことじゃない?リーベには大切だと思える人を増やして欲しいからね」
プレアデスとリーベのやり取りを見ているとまるで歳の離れた姉妹のようだった。
それから穏やかで楽しい時間を過ごし夜が明けた。
早朝に学園都市を出発し王立鉄道などを使って昼前には王都へと移動する。そのまま王都の外れにある屋敷へと向かった。
「ここが隠れ家の一つですか……思ったよりも手入れされたままなのですね」
「元々、冒険者ティアの家として買ったものだからね。保護魔術も機能しているみたいだし良かったわ」
この家はラティアーナが冒険者登録した頃に冒険者ティアとして買ったもので住民登録も合わせてある。誰かが調べたとしても問題ないようにしてある隠れ家の一つだ。
それから数日間はリーベやカレナたちと王都で観光をする時間を過ごした。
私やカレナにとっては慣れ親しんだ場所だが、初めて王都を訪れたリーベにとっては珍しいものが多いらしい。
広場や大通りでの食べ歩きやお薦めされた店で食事をしたり劇場での演劇や歌劇など様々な娯楽を楽しんだりと年相応にはしゃいでいた。
そんなリーベを隣で見ていて私たちも幸せに感じる時間だった。
そして王都に着いてから一週間ほど経った今日。
マギルス公爵領へと向かう日がやってきた。
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